不動産登記法の「床面積」

建築基準法の「床面積」と不動産登記簿の「床面積」(建物表示登記をする際の面積)では その基準が異なり同じ面積ではないと よく言われるけど どこがどのように違うのか。

まず、最初に不動産登記法という法律の準則では次のよう決められている。

 「建物とは、屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいう。」

と規定されていて、「建物」として認められるためには、これらの要件全てを満たす必要がある。

  1. 外気分断性 : 屋根及び周壁などの外気を分断するものを有すること。
  2. 定着性 : 土地に定着したものであること。
  3. 用途性 : その目的とする用途に供し得る状態にあること。
  4. 取引性 : 不動産として独立して取引の対象となり得るものであること。

 

規則第115条

第三款 建物の表示に関する登記

(建物) 第百十一条  建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。

(家屋番号) 第百十二条  家屋番号は、地番区域ごとに建物の敷地の地番と同一の番号をもって定めるものとする。ただし、二個以上の建物が一筆の土地の上に存するとき、一個の建物が二筆以上の土地の上に存するとき、その他特別の事情があるときは、敷地の地番と同一の番号に支号を付す方法その他の方法により、これを定めるものとする。 2  附属建物には、符号を付すものとする。

(建物の種類) 第百十三条  建物の種類は、建物の主な用途により、居宅、店舗、寄宿舎、共同住宅、事務所、旅館、料理店、工場、倉庫、車庫、発電所及び変電所に区分して定め、これらの区分に該当しない建物については、これに準じて定めるものとする。 2  建物の主な用途が二以上の場合には、当該二以上の用途により建物の種類を定めるものとする。

(建物の構造) 第百十四条  建物の構造は、建物の主な部分の構成材料、屋根の種類及び階数により、次のように区分して定め、これらの区分に該当しない建物については、これに準じて定めるものとする。 一  構成材料による区分 イ 木造 ロ 土蔵造 ハ 石造 ニ れんが造 ホ コンクリートブロック造 ヘ 鉄骨造 ト 鉄筋コンクリート造 チ 鉄骨鉄筋コンクリート造 二  屋根の種類による区分 イ かわらぶき ロ スレートぶき ハ 亜鉛メッキ鋼板ぶき ニ 草ぶき ホ 陸屋根 三  階数による区分 イ 平家建 ロ 二階建(三階建以上の建物にあっては、これに準ずるものとする。)

(建物の床面積) 第百十五条  建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、一平方メートルの百分の一未満の端数は、切り捨てるものとする。

 

又、不動産登記事務取扱手続準則第82条には下記のように記載している。

 

不動産登記事務取扱手続準則第82条

(建物の床面積の定め方) 第82条

建物の床面積は,規則第115条に定めるところによるほか,次に掲げるところにより定めるものとする。

一 天井の高さ1.5メートル未満の地階及び屋階(特殊階)は,床面積に算入しない。ただし,1室の一部が天井の高さ1.5メートル未満であっても,その部分は,当該1室の面積に算入する。

二 停車場の上屋を有する乗降場及び荷物積卸場の床面積は,その上屋の占める部分の乗降場及び荷物積卸場の面積により計算する。

三 野球場,競馬場又はこれらに類する施設の観覧席は,屋根の設備のある部分の面積を床面積として計算する。

四 地下停車場,地下駐車場及び地下街の建物の床面積は,壁又は柱等により区画された部分の面積により定める。ただし,常時一般に開放されている通路及び階段の部分を除く。

五 停車場の地下道設備(地下停車場のものを含む。)は,床面積に算入しない。

六 階段室,エレベーター室又はこれに準ずるものは,床を有するものとみなして各階の床面積に算入する。

七 建物に附属する屋外の階段は,床面積に算入しない。

八 建物の一部が上階まで吹抜になっている場合には,その吹抜の部分は,上階の床面積に算入しない。

九 柱又は壁が傾斜している場合の床面積は,各階の床面の接着する壁その他の区画の中心線で囲まれた部分による。

十 建物の内部に煙突又はダストシュートがある場合(その一部が外側に及んでいるものを含む。)には,その部分は各階の床面積に算入し,外側にあるときは算入しない。

十一 出窓は,その高さ1.5メートル以上のものでその下部が床面と同一の高さにあるものに限り,床面積に算入する。

【外気分断性】

建物の内部に外気が自由に出入りすることを防止するための屋根及び周壁等の存在をいう。これは、建物の用途に見合った生活空間が屋根及び周壁等によって確保されていることを必要とするものだが、必ずしも物理的なものに限定する趣旨ではなく 用途に応じて判断することになる。

屋根と柱のみのカーポートは、周壁等が存在せず外気分断性が無いので建物として認められない。

【定着性】

建物は、土地の定着物だから、物理的に土地に固着している必要があり、かつ、 永続的に土地に定着して使用されることが必要。

基礎工事のされていない組み立て式の物置等は、簡単に動かすことができるので 定着性がなく建物として認められない。

【用途性】

建物は一定の用途の為に人工的に造られるものだから、その用途に見合った一定規模の生活空間が確保されている必要がある。このことを「人貨滞留性」というそうです。

【取引性】

不動産として売買ができるかどうか。

こうして不動産登記法の「床面積」について詳細に見てみると、建築基準法の「床面積」との差異が見えてくる。

 

 

面積の算出方法・端数処理 -3

下記の図は、福岡県建築確認申請の手引き(2010年版)の中の「面積算定の取り扱いについて」

今、建築基準法の取り扱いとして全国的な基準となっている「建築確認のための・基準総則集団規定の適用事例」(日本建築行政会議編)が出版される前の原案には、この福岡県の取り扱いが提案されていた。

が、み~んなこれまでバラバラな対応をしてきたので、今更全国一律の取り扱いにするのは異論が出て同意が得られず出版される際に外された項目のひとつ。

 

 

面積の算出方法・端数処理 -2

ちょうど東京・荒川区の「建築基準法関係の解説及び運用基準」を読んでいたので、荒川区の取り扱い基準をベースにして考えてみる。

 

1.面積の算出の仕方、端数処理について


                           作成日 平成22 年4 月1 日

(1)敷地面積の求積方法は、原則として三斜法、ヘロン三斜法によるものとする。やむを得ず、座標法により求積する場合は、土地家屋調査士法に基づく土地家屋調査士又は測量法に基づく測量士若しくは測量士補の作成とし、作成者が氏名及び資格を記載の上押印するものとする。
( 2 ) 三斜法により求積した場合は面積求積線及びその距離並びに面積計算表、座標法により求積した場合は測点及び測点間の距離並びに座標面積計算表を記載するものとする。
( 3 ) 求積の単位は、距離についてはメートル、面積については平方メートルとする。
( 4 ) 端数処理について、敷地面積、建築面積は小数点以下2位まで有効とし、3位以下は切り捨て、床面積は各階ごとに小数点以下2位まで有効とし、3位以下は切り捨てる。( 計算過程段階では端数処理を行わない。)
( 5 ) 延べ面積は、各階ごとに算出された端数処理後の面積を合計する。

( 6 ) 建ぺい率、容積率の算出は、原則として小数点以下2位まで有効とし、3位以下は切り捨てる。

http://www.city.arakawa.tokyo.jp/kurashi/sumai/kenchiku/kakunin_kensa/shinsei.files/unnyoukijyunn.pdf

 

よく整理された取り扱い基準だと思う。

 

1)敷地面積の求積方法

荒川区の取り扱いては「原則として三斜法、へロン三斜法」とあるが、昨今は座標法が主流になりつつあるのではないだろうか。

ここは「座標法により求積する場合は、土地家屋調査士法に基づく土地家屋調査士又は測量法に基づく測量士若しくは測量士補の作成とし、作成者が氏名及び資格を記載の上押印するものとする。」敷地求積図を添付するというのが実情にあっていると思う。

建築士の作成した三斜法の敷地求積図は怪しいし・・・失礼。

2)床面積の端数処理

ここで重要なのは「計算過程段階では端数処理を行なわない」ということである。「 延べ面積は、各階ごとに算出された端数処理後の面積を合計する。」というのは、もつと設計者、審査者に徹底する必要があるのではないかと思う。

最近目にした確認申請図書で、共同住宅の各戸の小数点三位以下を切り捨てた専有面積と共用部面積という部位別に端数処理したものを合計して各階の延べ面積を算出しているものがあった。

容積率に余裕があれば良いのだが、分譲マンションのことだから容積対象面積は限度いっぱいで、部位別には端数処理をしないで各階で集計していくと全体で1m2程 容積対象面積が増加した。

計画は容積対象面積の余裕が0.3m2しかなかつたので容積率オーバーになってしまった。

3)建蔽率・容積率の端数処理

「建ぺい率、容積率の算出は、原則として小数点以下2位まで有効とし、3位以下は切り捨てる。」とあるが、ここは異論がある。

建蔽率、容積率については小数点第三位を四捨五入し小数点第二位で表記した方が不利側なので良いのではないか。

面積の算出方法・端数処理 -1

指定確認検査機関に勤め 様々な設計者・設計図書に出会うと 面積の算出方法や端数処理が バラバラであることを知った。

最近も遵法性調査の中で様々な指定確認検査機関・行政で決済した確認申請図書に出会ってると こんなに根本的なことが 今でも全国一律でなくて良いのかと思つてしまう。

確かに面積算定時の小数点以下の取り扱い(端数処理)は、建築基準法に規定はないが、昭和41年住指発87号が取り扱い上の目安となっていたはずだし、下に示すように国交省のサイトには今もQ&Aとして掲載されている。

 

Q: 面積の端数処理について    (1997/09/08   建設省 住宅局 建築指導課)
A: 御質問の端数処理については,メートル法が導入された昭和41年の建築指導課長からの通達(住指発第87号)に規定されています。

(抜粋)
なお、不動産登記法施行令第4条及び8条に,地積及び建物の床面積の単位と端数処理の方法が別記の参考のように定められているので,確認その他の事務についても,これに準じて行うよう念のため申し添える。

{参考}
○不動産登記法施行令第4条
「地積は、水平投影法により,平方メートルを単位として定め,1平方メートルの100分の1(宅地及び鉱泉地以外の土地で10平方メートルをこえるものについては,1平方メートル)未満の端数は,切り捨てる。」

○同施行令第8条
「建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影法により,平方メートルを単位として定め,1平方メートルの100分の1未満の端数は切り捨てる。」
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/q&a/sg_arepm.htm

 以下に住指発第87号を掲載する。

 昭和41年3月25日住指発第87号

メートル法の完全実施について

昭和41年3月25日 住指発第87号
建設省住宅局建築指導課長

標記については、計量法施行法第3条によって、経過措置として昭和41年3月31日までは、土地又は建物に関する計量単位として、尺貫法の使用が特例として認められていた。従って、昭和41年4月1日以後は、メートル法以外の単位を用いてはならないことになるので、建築物の確認、報告、統計その他及び公営住宅建設等の実施に当たってはこれらの標示をすべてメートル法によるよう、その徹底を図られたい。
なお、不動産登記法施行令第4条及び第8条に、地積及び建物の床面積の単位と端数処理の方法が別記参考のように定められているので、確認その他の事務についても、これに準じて行なうよう念のため申し添える。

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〔参考〕
○不動産登記法施行令第4条
「地積は、水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、1平方メートルの100分の1(宅地及び鉱泉地以外の土地で10平方メートルをこえるものについては、1平方メートル)未満の端数は、切り捨てる。」
○同施行令第8条
「建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、1平方メートルの100分の1未満の端数は、切り捨てる。」

 

さて端数処理については、住指発第87号に従うとして敷地面積・建築面積・床面積・建蔽率・容積率について別々に考える。