建築病理学の構築

「建築病理学」とは、1993年国際建築協議会で「Building Pathology」として定義され、

  1. 既存建物の欠陥の同定、調査、診断
  2. 診断された欠陥の経過予想
  3. 補修設計とその監理
  4. 補修建物のモニタリングと評価(機能、性能、経済性)

を主要な内容としている。

イギリスでは、改修の検査業務を請け負う134年の歴史を持つ公認資格「RICS」がある。

木造の分野では、一般社団法人・住宅医協会や岐阜県立森林文化アカデミー等で体系化して技術者の育成を図っている。

自分は業務としては、木造にほとんど関わっていないのだが、現在、「住宅医スクール2014・東京」を受講している。

月1回24講座+特別講義8講座を受講して実践的な調査を行い報告して認定されないと「住宅医」という称号は授与されないという。今時、粗製濫造ではないかと思われるような資格が氾濫しているなかで気骨あふれるセミナーの内容だと思ったのが受講の動機である。建築病理学を木造分野で体系化しているというので、そのカリキャラムの構成にも関心があった。

自分が業務として関与しているのは、ほとんど特殊建築物だし、鉄筋コンクリートや鉄骨造だから、そちらの総合的な診断には大いに関心があったが、住宅医セミナーのカリキュラムは、木造住宅の「リノベ+エコ」というような内容となっている。

住宅医セミナーでは、建築法規の内容が薄いと思っているが、木造住宅が主要な対象となっている事から仕方ないのかも知れない。

ただ、木造建築でも住宅からグループホームやシェアハウスへの用途変更、検査済証の無い増築等も事案として増加してきているので、もっと建築法規に触れるべきだろうと思った。

私が関わっている特殊建築物(RC・S)の増築・用途変更では、建築法規は必須であり、その分野の業務(調査・許認可)だけでプロジェクトに招聘されることが多い。

ストック活用と言っても、細分化した建築技術を統合する「総合診療医・ドクターG」ような人材を育成する「建築病理学」を学問的に構築をするべきではないかと考えるこの頃である。