2014年師走

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【雪の金沢市民芸術村】

あっという間に今年もあと二日になりました。

12月中旬の金沢出張から帰ってきてから体調を崩してしまい

気力が湧かない日々が続いてました。

それでも何とか年賀状を出し、

新年発行の弊社の2014年下期の業務と

現在進行形のプロジェクトを紹介する

「TAF通信・2015」

をまとめながら2014年を振り返っていました。

2014年は、様々なプロジェクトに関わる中で、

色々な方とお会いし、お世話になりました。

これらの方々に、この場を借りて改めてお礼申し上げます。

今年の更新はこれで終了とさせていただきます。

今年、1年間のご愛読に感謝いたします。

ありがとうございました。

  来年も引き続きご愛読のほど、お願い申し上げます。

来るべき新たな年が、皆様にとって良い年でありますよう

それでは、良いお年を!!

金沢市民芸術村 

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12/17の猛吹雪の中、金沢市民芸術村に足を伸ばした

金沢市役所に掲示されていた「谷口吉郎・谷口吉生の建築」展ポスターを見て、どうしても見ておきたいと思った。

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この日は、調査の為の準備で足場を設置したり、大梁調査の為に大工さんが天井を撤去している。明日からのコア採取や鉄筋探査箇所の確認で10人ぐらい現場には人が入っているが、18日は建築基準法適合状況調査+耐震診断、19日は別建物の建築基準法遵法性調査+耐震診断補助調査で二日間現場に張り付き、かつ調査をしないといけないので、行くなら金沢市役所から現場に戻るこの時間しかないと思い、タクシーに飛び乗った。

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【職人大学校の一群】

1919年に金沢紡績(後に錦華紡績に改称)が開業し1923年から1927年にかけて、現在の各工房の元になった倉庫群が建設された。
その後、1941年に大和紡績株式会社金沢工場となり、最盛期には約2千人の工員を有した工場も、産業構造の変化と共に規模縮小を余儀なくされ、1993年に操業停止。
そこで1993年12月に金沢市がこの敷地を買い取り、公園として整備を進めた「建築再生プロジェクト」

金沢・雪

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爆弾低気圧が北海道・東北・日本海側を襲った12月17日、建築基準法適合状況調査の為に金沢に行ってきた。

朝早く越後湯沢経由で向かったが、越後湯沢から黒部あたりまでは吹雪で「特急はくたか」は30分遅れぐらいで金沢に着いた。

金沢市役所で打ち合わせをして21世紀美術館の前でタクシーをひろう

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雪とか吹雪とか言うような生易しいものではなかった。

大粒の霰は降るし、突風が舞うし・・・

17日、18日と本当の雪国を体感してきた。

違反建築物と既存不適格建築物

「違反建築物」とは、建築基準法等の関係法規に適合していない(違反している)建築物のことで、建物自体が法に適合していない場合(実体違反)と、法で定められている手続き(確認申請や完了検査など)を行っていない場合(手続き違反)がある。

工事完了検査済み証の無い建物は、「手続き違反」の建物と捉え、「実態違反」かどうかは、建物が使用開始した当時に工事完了検査をしていないので「そもそも実態違反か否か」わからないのだから、その建物が建築された時点の法令に適合していたかどうか「建築基準法適合状況調査」をすることによって判断される。

とはいっても、工事完了検査済み証の無い建物のほとんどが建築確認済を取得した図面とは異なっていたり、違反箇所があり、無届出で用途変更や増築、変更が行われている。

新たに増築や用途変更をする場合、それらも直して法適合させるのだが、違反箇所は直して確認申請を取得した状態に一旦戻して、それらを確認してから 新たな増築なり用途変更確認申請を受付するという「手続き」論が障害になり、結局 新たに増築や用途変更をして法適合させるのはしないでおこう=確認申請出すのは止めた! という建築主もいる。

まあ この「手続き論」の話しは、又の機会にすることにして

建築された時点で法令に適合していたが、法改正等により現行の法令に適合しなくなった状態の建物は「既存不適格建築物」と呼び、違反建築物とは区別される。

例えば、竪穴区画の規定は昭和44年5月1日施行だが、昭和44年5月1日より前に建築確認済証が交付された建物は、竪穴区画の規定を満たしていなくても違反ではなく、既存不適格扱いとなる。

ただし、既存不適格建築物の増築や用途変更などを行う場合は、一定の規模・範囲内である場合を除き、既存不適格扱いになっていた規定についても法令に適合させなければ違反建築物となる(遡及適用)

「違反建築物と既存不適格建築物」意外とわかっていない設計者が多い。

既存木造住宅の調査 -4

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築50年近い平屋の木造住宅の現況調査に参加した

外壁板張り、内部は漆喰の築50年近い部分と築40年ほど経過した増築部分とからなり、増築した部分あたりからの雨漏りが起きている住宅で、解体して建て直すと聞いた。

古い建物は下地が良くわからないことが多く、現在では当たり前のようにクロス下地は石膏ボードだが、塗り壁やらが混在しているとわかりづらい。

電気のスイッチプレートを外して下地の石膏ボートを確認しているのが上の写真。

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土台には檜が使用されていて、現況調査の段階では土台、基礎は 意外にも健全なようだった。

この後内装材等を撤去した後の劣化調査をしてみないとわからないが、残念ながら劣化調査に参加できない

増築部分からと思われる雨漏りに悩まされなかったら、この建物は もう少し長生きさせてあげられたのではないかと、帰路の電車の中で思った。

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壁、天井、床と断熱材が入っておらず、これではさすがに東京でも冬は寒かったはずだ。

床下は土で 温度12度、湿度39%だった。

地下室マンションと平均地盤面

平均地盤の定義は、建築基準法施行令第2条第1 項第6号で「建築物の高さは地盤面からの高さによる」と定義されており,同条第2 項で「地盤面」とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい、その接する位置の高低差が3mを越える場合においては、その高低差3m以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう。と規定されており、建築物における高さの基準となる地盤面を「平均地盤面」と呼んでいる。

(高さの基準のひとつである,道路斜線制限における地盤面については別の扱いで「道路中心の高さ」)

平均地盤面の算定方法は、建物が地盤に接する部分のいずれかの位置における高さを基準として、建物が接する外周の各辺ごとに基準の高さとの高低差によって生ずる面積を算出し、その面積の合計を各辺の合計の長さで割ることによって基準からの平均地盤面の高さが算出される。(平均GL=土に接している面積/外周長さ)

ここまでは法文のおさらい=教科書どおり

しかしその算定において法等の中に周囲の地面と接する位置を、どの位置でどの高さを用いるのか等の規定がなく設計者等の判断により異なっているのが現状。

特定行政庁は、からぼり等の取扱いなどの基準を定めて指導をしているが、それでも細部については、設計者等が判断をして計画をしている。

平均地盤面の算定にあたって、建物の接する位置をどこで見るのか、からぼり(ドライエリア)の扱いをどうするのか、接する地盤面が盛り土している等の扱いについてはケースバイケース。

設計者なら平均地盤高の算定は自由自在に操れるだろう。わずかな高さの調整を盛土、犬走、階段等で行えば良いのだから。

地下室マンションにするのもしないのも、平均地盤の調整で充分可能だ。

それ故か、地下室マンションと平均地盤高にまつわる係争・建築審査請求は多い。設計者が住民説明、調停、確認申請と幾度も計画を変更し平均地盤高を調整し、しかも住民側等に図面を見せている場合は、尚更だ。

指定確認検査機関は、建築確認申請に出された平均地盤高しかみてないが、実際は紆余曲折のすえ申請図ができることの方が多い。条例で定めている場合以外は、盛土に対する法的な制限はないから、平均地盤は自由自在に調整できる。

平均地盤高を調整する為に、盛土・犬走・階段等を設定して平均地盤高を操作している事が事実関係を示す図書から推察できるなら、それらを制限させなければならないのではないかと最近思う。

 

建築面積哀歌(エレジー)

 

 

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建築面積にまつわる話し

一番上は、三方が壁に囲まれている(両袖壁)バルコニーの場合は、建築面積に算入する。日本建築行政会議編の「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」(2013年度版・49頁)等で示されている取扱い基準。この場合袖壁の長さに関係なく「黄色」部分は建築面積に算入する。

中段は、片袖壁で構造的に片持ちスラブとなっており、はね出しで「軒、ひさし、はねだし縁その他これらに類するもの」として取り扱えれるので、建築面積には算入しない。

上二段については、昨今ではかなり一般的な取扱いかと思う。

さて問題は下段。

両袖壁があるバルコニーだが、右側袖壁との間に数センチの床スリットをもうけているので、「物理的にはねだしとなっているので、建築面積には算入しない」「否、水平投影面積が基本なのだから算入するべき」と意見が分かれているケース。

とある指定確認検査機関が「建築面積には算入しない」として「確認」した案件で とある都内の建築審査会が「認容」した取扱いなのだが、私が都内の他の指定確認検査機関や特別区建築指導課にヒアリングしてみたところ意見が分かれた。結局のところ「建築主事判断」ということになるようだ。

この案件の建築審査請求は、下段の判断等を含めて特別区の建築審査請求で棄却され、現在国交省に再審査請求を提出中と聞く。

上記(下段)のバルコニーを建築面積非算入にすると、1割ぐらい 建ぺい率は稼げるのだが、これでは都市計画による規制そのものがなしくずしになる恐れもある。

もともと「建ぺい率」とは、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合のことで、その上限を定めることにより敷地内に適当な空地を確保し、採光・通風等を満足させ、防災上の安全を確保しようとするもの。ちなみに「容積率」とは、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合のことで、その上限を用途地域毎に定めることにより、街全体の環境や土地の高度利用を図ろうとするもの。

そして建築面積は、「建築物の外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」(建築基準法施行令第2条第1項第ニ号)であり「建築物が敷地をどの程度覆っているか」かの規定である。

「自分さえよければいい」は現代の風潮だが、建築主・建築業界の「私権」の為だけに、建築はあるわけでなく常に社会的存在であり、環境に配慮したものでなければならないのだと思う。

こんな脱法的で姑息な手法で建築基準法の精神が侵されているのを聞くと なんだか哀しくなる。

注記: 上記建物には屋根があります。