包括同意基準・歴史的建築物

昨年出された国交省の技術的基準、国住指第1号平成26年4月1日「建築基準法第3条第1項第3号の規定の運用等について(技術的助言)」でも歴史的建物の活用で「包括的同意基準」を行政が策定することを推し進めるものだ。

ようやく歴史的建築物の活用にひとつの風穴があいたように思う。

以下、国住指第1号平成26年4月1日「建築基準法第3条第1項第3号の規定の運用等について(技術的助言)」の抜粋

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 1.法第3条第1項第3号の規定の適用に当たっては、歴史的建築物の保存活用が円滑に進むよう、地方公共団体が建築審査会の同意のための基準(以下「同意基準」という。)を定め、当該同意基準についてあらかじめ建築審査会の包括的な了承を得ることにより、別途、地方公共団体に設ける歴史的建築物の保存活用や構造安全性に詳しい者等により構成される委員会等において個別の歴史的建築物について同意基準に適合することが認められた場合にあっては、建築審査会の個別の審査を経ずに、建築審査会の同意があったものとみなすことができること。
2.建築審査会における同意基準の策定に当たっては、地域における歴史的建築物の実情や要望、歴史的建築物の保存活用や構造安全性に詳しい者等の意見を十分踏まえて対応すること。

また、同意基準の内容としては、次のような事項を定めることが考えられること。

ⅰ)条例で定められた現状変更の規制及び保存のための措置が講じられていること。
ⅱ)建築物の構法、利用形態、維持管理条件、周辺環境等に応じ、地震時等の構造安全性の確保に配慮されていること。

ⅲ)防火上支障がないよう、出火防止、火災拡大防止、近隣への延焼防止及び消防活動の円滑性の確保に配慮されていること。

ⅳ)在館者の避難安全性の確保に配慮されていること。

3.条例を定める地方公共団体が特定行政庁でない場合、特定行政庁である都道府県知事は、当該地方公共団体の意向を十分踏まえ対応すること。

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包括同意基準・法第43条第1項ただし書

建築基準法では、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する基準を定めているが、その中には、特定行政庁が建築計画や周辺状況等を勘案して、やむを得ないと認めたうえ建築審査会の同意を得る等の所要手続きを経た場合に、特例的に制限を解除することができる許可制度がある。

その中で許可事務の迅速化を図るため、基準に適合する場合は、あらかじめ建築審査会の同意を得たものとして取扱う「包括同意基準」を定めている。

この包括同意基準に適合しない場合は、特定行政庁が審査のうえ、許可相当と判断された場合に限り、個別に建築審査会に諮り、同意を求めることとなる。(とは言え実際は難しい)

最近、九州で法第43条第1項ただし書道路のケースに遭遇した。法第43条第1項ただし書道路の運用基準が定められていて、それに沿っている場合は、建築審査会の同意が不要との事だった。ちょつと調べてみると横浜市とかさいたま市とか「包括同意基準」「運用基準」を定めているところは多かった。

地域によっては、法第43条第1項ただし書道路の許可申請が、年間を通し大量に出される場合がある。

それらに対応するため、平成11年5月の法改正まで建築主事による運用が図られてきたことを受け、一般的な事例については運用基準をつくり、この基準に対して事前に建築審査会の同意を得ることにより、円滑な許可業務の執行を図ることが目的となっているようだ。

「サクッとわかるヤマベの木構造の極意」建築知識8月号

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執筆者の一人から案内があり、Amazonから取り寄せて読んでみた。

とても解りやすく、豊富なイラスト・写真で木構造を巡る問題を説明している。

さすが山辺構造設計事務所

けして初心者向けの本ではない。私が興味深く読んだのは「不整形の建物の場合の構造計画」「スラブ状ベタ基礎の問題点」「壁量計算用の床面積の算定」等。

木造の設計・耐震診断・調査・補強方法まで、木造住宅に携わる人にとっては必需品のような本に仕上がっている。

最近、木造2階建て住宅の許容応力度計算の計算書をペアチェツクする機会があったが、小屋裏物置などはH12年国交省告示第1351号で規定されているにも関わらず、まったく指摘がされてなく壁量算定が過小評価されていた。建築確認許可を取得した時点の指摘事項は、不整合箇所の指摘と是正のみで、最近の審査は、どうやら間違い探しに終始しているような傾向が見られる。

かって四号建築物(三号も)の建築確認申請の審査をしていたことがあるが、木造住宅を設計している人達の技術が低下しているなぁと感じたものだ。

意匠設計者が木造伏図も書けずプレカット屋さんに全面依存し、 筋違計算も構造事務所に依頼すると聞いて 、確認申請に筋違計算書も伏図も不必要となり、「書かないから」「書けない」となってしまったのだろうか。

生産現場と乖離して図面だけ書いていると歳をとっても本当の事は何も知らない資格者(一級・二級建築士)ではどうなんだろうか。

久しぶりに「建築知識」を買ってみたが、イラスト・画像満載でリアルにわかった 気がするだけの本に進んでいるのではと思った。

まぁ こんなことを書いても年寄りの冷や水になりつつあるが・・・

【覚書】義務付け訴訟

義務付けの訴えとは、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいい、2004年の行政事件訴訟法の改正で、抗告訴訟の1つとして新たに加えられた訴訟類型。

義務付けの訴えとして、

(1)「行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき」に、行政庁に「その処分」を「すべき旨を命ずることを求める訴訟」(3条6項1号)と、(2)「行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟」(3条6項2号)の2類型を法定している。
(1)の類型は、申請権を前提とせず、行政庁が一定の処分をすべきことを義務付けるものであり(直接型義務付け訴訟)、(2)の類型は、行政庁に対して申請した者が原告となって、行政庁が一定の処分をすべきことを義務付けるもの(申請満足型義務付け訴訟)
(2)の類型については、さらに、行政庁の不作為を争うもの(不作為型)と、申請拒否処分を争うもの(拒否処分型)に分けられる。
「直接型義務付け訴訟」
マンションにより日照等を阻害されている周辺住民が、行政庁が建築主に対して、マンションの違法部分の是正命令を出すように求める義務付け訴訟
「申請満足型義務付け訴訟」
社会保障に関する給付の申請に対して行政庁が何らの処分をしない場合又はその申請が拒否された場合に、裁判所の命令により具体的な社会保障の給付をするように求める義務付け訴訟

行政(指定確認検査機関)が建築主に対して建築確認処分を出したところ,その建物の建築によって日照阻害等の不利益を受ける周辺住民が、行政を相手取って建築確認処分の取消訴訟を提起するという場合。

既に完成した建物が高さ制限規制に違反している場合に、付近住民が行政を被告として、その建物の所有者に対して違反を是正する措置をとることを命ずることを求める義務付け訴訟を提起することも可能。

後者の義務付け訴訟(いわゆる非申請型義務付け訴訟)は,2004年の行政事件訴訟法の改正で法定されたものだが、取消訴訟とは異なって「重大な損害を生ずるおそれ」がある場合に限って提起することができるものとされていてその結果、訴え自体が不適法として却下されることが多いようだ。

しかし今後この「義務付け訴訟」は、増えるように思う。

暑中お見舞い申し上げます

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暑中お見舞い申し上げます。

毎日猛暑が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

写真のような南の海には

今年の夏も行けません。

暑さはまだまだ、どうかくれぐれもご自愛ください。

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言葉には、響きがありリズムやメロディーもある。

感情や美も、意味も無意味もある。

言葉を目で追っているとき、

響きは意識の背後から忍び寄る。

詩は音のない音楽だ。

そこには、まぎれもなく恩師の言葉が残っていた。

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とーじ(土間)吹抜け南側からおーえ(御上)、なかおーえ、台所を見る

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1尺角桧の大黒柱

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「高山市伝統構法木造建築物耐震化マニュアル」

飛騨高山市内の伝統構法建築物を耐震改修する場合は、このマニュアルに沿ってという事で、高山市役所でもらってきた。高山市のサイトでもPDFで公開している。

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労作である。長年にわたる調査研究に基づき限界耐力計算に近い計算方法である近似応答計算で耐震計算を行っている。

高山市から耐震診断・耐震改修費の補助金をもらう場合は、このマニュアルの講習修了者に耐震診断を頼まないとならないらしい。受講者は、ほとんど高山市内の人達。ちょつとクローズ気味の制度。

補助金を貰うかどうかわからないが、高山市内で伝統構法の耐震改修をする場合は、このマニュアルに沿って実施してみたいと読み始めた。

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気がつけば、最近は構造関係の文書ばかり読んでいる。どうも関心事が広がりすぎて自分でも制御しきれない。

爺さん婆さんが二人で営む「拉麺専門店」を指向していたのだが、だんだん「食堂」になりつつある。

ともあれ、木造に関心がある人には読んでもらいたい一冊。