1時間に5回転以上の換気能力があれば空気感染は防げる

「くらしみらい研究所が配信する建築情報チャンネル「建築ギ論」。
今回は「飲食店をクラスターにしない方法」と題して、実際の飲食店の換気状況を、建築エコノミストの森山高至氏と空調換気設備設計のプロフェッショナルである山田浩幸氏が現場で診断します。

診断の舞台は東京都武蔵野市にあるレンタルキッチンスペース「MIDOLINO_」さん。
まずは換気の状態を診断するため、建物に設置してある換気扇の能力や台数を調べ、実際に空気を吸い込む力を風速計を使って測ります

その結果「MIDOLINO_」さんは1時間に7回以上店内の空気が入れ換わっていることが判明。空気感染の予防に必要な換気回数、1時間に5回以上を上回る換気性能を有していると分かりました。

次に、新鮮な空気を取り入れるための給気を調査。窓や入口のドアをどれくらい開ければ給気の役割を果たせるかを計算しました。
その結果、高さ1800ミリ程度の建具であれば10センチ前後の窓開けで十分な換気が可能になると判窓開けを4カ所程度に分散すればもっと狭い窓開けでも給気口の役割を果たせるはずだと山田氏は断言します。

このように、飲食店の換気は多くの場合、換気の能力は十分あり窓開けもさほど必要ないことが分かりました。新型コロナウイルスの空気感染を防ぐための公式な換気指針が一日も早く策定され、飲食店が堂々と営業できるように、今後も「建築ギ論」はこの問題に取り組んでいきます。」

◆換気診断の問い合わせ先
ヤマダマシナリーオフィス
https://www.ymo-gbac.com/
(サイトのフォームよりお問い合わせください)

インフィニティ・ダイヤモンドヴェール

昨晩東京タワーの近くに行った時に撮影した写真

インフィニティ・ダイヤモンドヴェール/満月ダイヤモンドヴェールという名称だそうです。

満月の夜には、限定イベントとして、毎月1回、「満月」の明かりを引き立てるためにタワー上部を消灯し、下部を”12ヶ月のイメージに沿った季節のカラー”に輝かせるライトアップを点灯しているそうだ。

東京タワーの近くには、たまにしか行かないからライトアップを色々と変化させていることを始めて詳しく知ることができた。

妻「いつ見ても東京タワーは美しい。やっぱり東京のシンボルは東京タワーだね」

私「そうだね。僕らの年代は 何と言っても東京タワー。」

近くにいた人「コロナで観光客がなくなり、お土産屋さんも売り上げが無く大変らしいです。電波塔としての収入が東京スカイツリーに移ったので」

「ライトアップとか塗装とかのランニングコストもかかるから、そりゃ大変ですね」

東京のシンボルは存続の危機

「予防事務審査・検査基準」東京消防庁

「予防事務審査・検査基準」(令和2年9月改訂)・交益財団法人 東京防災救急協会発行、東京消防庁監修。三分冊セツトの書籍なのだが、主に見るのは「Ⅰ」の中の「消防同意事務審査要領」「用途別審査要領」「形態別審査要領」

東京で特殊建築物に関わる人なら必携ともいえる図書なのだが、昔は会社・事務所に1セットあれば足りた。現在は個人事務所なので、たまにしか見なくても用意しておかなければならない。この本、昨今は毎年のように改訂版が出される。

所轄消防署の予防課に事前相談・打合せに行く前には、該当部分を再読しておかなければならず、このところ予習をしていた。

大規模で複合的な用途の建物になると、従来の単一用途のものの考え方だけでは処理できない事も多い。そういう場合は、在館者の安全・円滑な初動避難ができるか、火災時に消防隊の安全・円滑な消防活動の確保ができているかという原点に立ち戻って考え、設計者としての判断を示さなければならない。

一方、エビデンスは大事なのだが、文書化した取扱い事例を過度に求める傾向もあり、些細な事でも所轄消防署に念を押しに行き、打合せ議事録で残すことを要求される場合もある。

大規模・複合的な建物になると関連する法令・条例は広範囲になり、事前チェックを落とすことはできないので、消防法関係だけに限らず、多様な関連書籍が増えるばかり。

安藤忠雄の建物のコンクリートコアを抜いてみたい。

専門業者に依頼しているコンクリートのコア採取。部位別に鉄筋探査を行い、鉄筋の無い部分からコンクリートコアを採取し、検体を指定検査機関に送付し、コンクリートの圧縮強度試験、中性化試験をしてもらうのだが、最近は専門業者さんの現場調査に付いて写真を撮影するのは、妻の任務にしている。

妻は建築の専門教育を受けてきたわけではないが、私のほとんどの既存建物の調査や視察に同行しているので、そんじょそこらの建築士よりは建築に詳しく、感覚的に感想を語る。

この日も、今日のコンクリートは「あまりよくない」と言う。確かにそうだ。

以前調査した、あそこの現場のコンクリートはきれいだったと言う。その現場のコンクリートは築28年だけど37N/mm2あった。確かに、きれいなコンクリートコアは強度がある。

以前視察した安藤忠雄の建築について語りあう。

私「安藤さんの大きな建物は、やたらと歩かされて方向感覚がなくなることがあるから、そこは僕は嫌い」と言う。

妻「でも安藤さんのコンクリート打ち放しはきれいだったね、安藤さんの建物のコンクリートコアを抜いたら、とっても美しいコアが採取できるのではないか」と言う。

妻「一度コアを抜かせてもらいたい」と。

飾っておきたいようなコンクリートコアが採取できて、もしかしたら商品化できるかも知れない。「住吉の長屋45」とか。まるでスコッチウイスキーみたいだねと笑った。

この日、コンクリートコアを抜きに来てくれた専門業者の若い職人さん達と一緒に昼食の弁当を食べる。若い職人さんたちの話が聞けて楽しかった。

若い職人さんからスマホの「電子小黒板アプリ」の存在を教えてもらった。

責任者の人が、まだ新入社員の人に鉄筋探査機の使い方やコア採取後の無収縮モルタル(今はすでに配合された商品がある)の水分量、固さの確認方法等を口伝で教えていた。まだ30代だという責任者の人は、左官屋さんを見て自分の感覚でモルタルの固さを覚えたという。穴埋めと言っても結構難しい。素人がやると水分量が多すぎたり、埋めた後に凹んだりする。技術の継承と言うのは、やっぱり口伝なんだろうなと思った。

土砂災害危険区域 -3

以前書いた土砂災害危険区域のオープンテラスの構築について、区の建築主事はテラス下部が屋内的用途ではないので、建築基準法第二条の「建築物」には該当しないという判断をしめした。

今一度、建築基準法の「建築物」の定義をおさらいしてみよう。

一  建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨こ線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。」(平成5年6月25日 – 現在有効)

上記が現在の規定。

「一  建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの、これに附属する門若しくはへい、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設をいい、鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びにこ線橋、プラツトホームの上家、貯蔵そうその他これらに類する施設を除くものとする。」(昭和25年11月23日 – 昭和34年12月22日)

上は建築基準法制定時から昭和34年改訂までの規定。

庭の平坦部分につくるオープンデッキなら その安全性は自己責任の範囲でどうぞということで良いと思うが、土砂災害危険区域に指定されている崖地の上に自己所有地とはいえ、敷地いっぱいにオープンテラスを作れば、地域住民がその安全性を心配するのは当然だと思う。

塀が地震等で倒壊し歩行者の安全をおびやかしたり、事故が発生しブロック塀などの建築基準が出来たように、本件の崖地のようなところに敷地一杯にオープンテラスを作る場合、崖地の崩壊やデッキの崩壊が起きた場合は、敷地外にも影響を及ばす可能性が明らかな場合には「類する構造のもの」で「建築物」とするべきで、所有者は、それ相応の安全性を担保する責務があると言うのが私の考えです。

現役の建築主事と法律論を闘わしても平行線に終わると思いますが、振り返れば建築基準法も「環境を整える」視点から「私権の拡大」へと大きく変わってきました。

この20年程の背景は、なんといっても「新自由主義」「市場万能」「規制緩和」だと思います。今は「新自由主義」と決別する分岐点に立たされている時代を迎えています。

新型コロナウイルスの真換気対策

「くらしみらい研究所が配信する建築情報チャンネル「建築ギ論」。
今回は「新型コロナウイルスの真換気対策」と題して、いま本当に必要な飲食店の換気対策について、建築エコノミストの森山高至氏と空調換気設備設計のプロフェッショナルである山田浩幸氏が議論します。

新型コロナウイルス感染症が依然猛威を振るうなか、現在日本中の飲食店・店舗が営業の自粛あるいは営業時間の短縮を余儀なくされています。

しかし空調換気設計が専門の山田氏は、換気量が十分な店舗であれば少なくとも空気感染のリスクは現状でもかなり低いはずで、飲食店の営業を一律に制限する政策には大いに疑問があると指摘します。

また、現在国が換気の指針として示す「一人あたり30㎥/h」の換気量は、本来感染予防対策とはまったく関係のない数値で、この基準を遵守しても新型コロナウイルスの空気感染は予防できないのでは?と疑問を呈します。

さらに、森山氏は結核感染の研究がコロナ対策にも生かせるはずだとして、コロナの感染予防に必要な本当の換気指針の早急な策定を提言します。」

土砂災害危険区域 -2

この崖地は、大谷石の擁壁の上が斜面で、以前は高木が植わっていた。

昨年になつて崖の上の住宅・3階建ての所有者が変わり内部の改修工事と崖地にデッキテラスの設置工事が始まった。高木類は全て撤去され地肌が露出した。

2021年2月の工事写真

大谷石の擁壁・2021年2月

bella ciao

スペインのドラマ「ペーパー・ハウス」の挿入歌がとても印象的だったので、覚書として記録する。「さらば恋人よ(イタリア語:Bella ciao)」とは、イタリア内戦の時に創作され、イタリアパルチザンによって歌われた歌曲であり、作詞者・作曲者ともに不明とのこと。この曲は、自由とレジスタンスの賛美歌として、国際的に歌われるようになっている。

https://www.youtube.com/watch?v=spCdFMnQ1Fk&t=44s

【Bella ciao】
Una mattina mi son svegliato1
o bella ciao, bella ciao, bella ciao, ciao, ciao,
una mattina mi son svegliato
e ho trovato l’invasor.2

O partigiano, portami via,
o bella ciao, bella ciao, bella ciao, ciao, ciao,
o partigiano, portami via
che mi sento di morir.3

E se io muoio da partigiano4
o bella ciao, bella ciao, bella ciao, ciao, ciao,
e se io muoio da partigiano
tu mi devi seppellir.

E seppellire lassù in montagna,
o bella ciao, bella ciao, bella ciao, ciao, ciao,
e seppellire lassù in montagna
sotto l’ombra di un bel fior.

Tutte le genti che passeranno,
o bella ciao, bella ciao, bella ciao, ciao, ciao,
tutte le genti che passeranno
mi diranno: «Che bel fior!»

E questo è il fiore del partigiano
o bella ciao, bella ciao, bella ciao, ciao, ciao,
e questo è il fiore del partigiano
morto per la libertà.
E questo è il fiore del partigiano
morto per la libertà.

【さらば恋人】

ある朝目覚めて
さらば恋人よ
ある日目覚めて
侵略者をみつけた

パルチザンよ ぼくを連れて行って
さらば恋人よ
パルチザンよ ぼくを連れて行って
死ぬ場所へ

ぼくはパルチザンとして死ぬ
さらば恋人よ
ぼくはパルチザンとして死ぬ
君はぼくを埋めてくれ

山に埋めてくれ
さらば恋人よ
山に埋めてくれ
きれいな花の影に

通り過ぎる人は
さらば恋人よ
通り過ぎる人は
「なんてきれいな花だ」と言うだろう

これはパルチザンの花
さらば恋人よ
これはパルチザンの花
自由のために死んだ

土砂災害危険区域 -1

都内の土砂災害区域内・つまり崖の下に住む住民の方から相談を受けていた。

以前は樹木に覆われていた斜面の下に大谷石の擁壁がある。その崖の上の敷地の建物の新しい所有者が崖の上・敷地全域にテラスを築造する工事を開始した。当然樹木は伐採、地表面は裸になり木の板で土留めのような工事をしている。またテラスを支えている支柱の基礎は根切が浅く、中には置いてあるように見えるところもある。このテラスは大規模で斜面部分に築造し約100㎡はあるのではないだろうかと思われた。

東京都内の土砂災害危険区域の指定は、東京都の管轄で建設局河川部が担当している。

建設局河川部に相談したところ、危険性があることは確かだが都が要請、指導する権限はないとのこと。建築物であれば建築申請等が必要になるが、区が申請不要と判断すればそれ以上の対応は難しい。
しかし都から区の建築課に電話をすることくらいなら可能とのことだった。

相談をした際の都の主な見解。
・木の土留めは評価できない。仮設とすら言い難い。
・大谷石は機能するとは見ていない。大谷石の考え方については区でも説明あり、
現在の建築基準を満たしていないものの、長い年月その状態にあることから、構造
上の計算はできないが、長年の安定性への信頼度からそのまま残しているケースは多いとのことだった。→ 実際本職が現地を見た限りでは、かなり風化が進んでいる大谷石擁壁だった。
・水害だけでなく地震による危険もある。
・自分たちであればこのような工事は行わない。
・切り株を残してもツツジを植えてもあまり意味はないと考えられる。

樹木を取り除いてしまった今の状態をより安全にするには、排水処理をしたうえで法面をコンクリで固めるか、しかるべき擁壁を建てることが望ましい。

一方 区の建築指導課監察係は、屋根のない構造物であり、テラスの下が屋内的用途でない事から建築基準法第2条に規定する「建築物」には該当しないので、指導や是正命令はできない。ただし設置者は、安全性を考慮したうえで設置すべきだと考えられるから、テラス及び崖地法面の安全性については住民に丁寧に説明するよう要請すると回答。

区から回答があってから三週間。未だ設置者から地域住民への説明はない。