「聖地巡礼 ビギニング」内田樹×釈徹宗

思想家・武道家の内田樹さんと浄土真宗本願寺派・如来寺住職、相愛大学教授の釈撤宗さんの対談集ですが、どこか部屋の中で静止した状態で対談するのではなく、実際に聖地を巡礼し、つまりを移動しながら対談したものをまとめた珍しい形式の対談集です。

聖地巡礼プロジェクトの目的は、「霊的感受性を敏感にして霊的なものの切迫を触覚的に感じる事」と書かれています。つまり五感のレーダーを研ぎ澄まさなければならないのだと思います。

私にとって聖地巡礼と言えば、サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼で、それを目指して、色々と資料を集めて準備していた時もありました。フランスからピレネー山脈を超えスペインを横断する巡礼路は、一か月以上かかり、最低でも徒歩で100Km以上歩かねばなりません。そんな体力はないからと、考古学的関心から日本の社寺仏閣を回り始めてしまい最大の目標から少し遠のいていますが、諦めたわけではありません。

しかし この本に書かれている日本の聖地巡礼も めちゃくちゃ行きたくなってしまいました。

この「聖地巡礼 ビギニング」の第一回は、ことし「真田丸」で有名になった「大阪・上町台地縦走」です。「かすかな霊性に耳をすませる」と添えられています。上町台地は南北に強い地脈を持ち、突端は生駒山と東西に一直線にあり、見える縦軸と心象的な横軸がクロスするという都市デザインが古代よりあったことを知りました。

内田樹さんが「大阪は本来霊的なセンターであり、それが都市としての力を賦活(活力を与える事)していたはずでしたけれど、世俗の力によって本来の霊的エネルギーが枯渇している」と書いています。大阪は、最も世俗的な人と政党に長く地方政治を担わせていますが現代的箱物やカジノでは復活は難しいでしょうね。

第二回は「京都・蓮台野と鳥辺野~異界への入口」です。「死者との交流」の地が京都の街の中にあったのは、まったく知りませんでした。これは、絶対行かねばならないと思いました。

第三回は「奈良・飛鳥地方~日本の子宮へ」で三輪山と大神神社です。「どの神社が一番好きか」と聞かれたら「大神神社」と答えていたので、「霊的トポス(場所)には透明感がある」というのは共感できました。私が今までで強い透明感を感じたのは大神神社と上高地でした。奈良は情念の南部、ロゴスの北部と言いますが、奈良南部は原日本の風景を感じるので大好きな土地です。

「出かけよう! 宗教性をみがく旅へ」