「老いる家 崩れる街~住宅過剰社会の末路」野澤千絵著

著者である野澤千絵・東洋大学教授によると「住宅過剰社会」とは、「世帯数を大幅に超えた住宅がすでにあり、空き家が右肩上がりに増えているにもかかわらず、将来世代への深刻な影響を見過ごし、居住地を焼畑的に広げながら、住宅を大量につくり続ける社会」のことと書いています。

2060年の日本の将来人口(合計特殊出生率1.35の場合)は、約8700万人と予想されていて、減少が始まった2010年の人口・1億2806万人の約7割にまで減少するとの国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2012年1月推計)が指摘しています。

国は、経済対策や住宅政策の一環として従来通り新築住宅への金融・税制等の優遇を行い、住宅建設の後押しを続けていて、住宅過剰社会を食い止めようという兆しがほとんど見られないと著者は指摘しています。

不動産は、その住宅の質や立地によっては、売りたくても買い手がつかない、貸したくても借り手が見つからないケースが続出しています。財産ではなく、固定資産税や管理費・修繕積立金を払うだけの「負動産」になりつつあるものも増加しています。

東京近郊における賃貸アパートの供給過剰による空き家の増加。越後湯沢のようなリゾートマンションの廃墟化。限界集落。

最近、弁護士や司法書士に話を聞いたところ「相続関係」の業務が増えているそうです。「相続問題」というと以前は、家族や親族間のトラブルによるものだったのが、最近は相続放棄、認知症の老人の成年後見人になったり、不動産の信託であったりと少子高齢化の波が、建設・住宅業界より一足早く押し寄せているなと感じたものでした。

私が死んだ後の日本の将来を思うと暗澹たる気持ちになってしまいますが、「住宅過剰社会から脱却するための7つの方策」も提案されており まだ方針転換すれば間に合うかもしれないという かすかな期待を抱くことができます。