「世界のリノベーション」日経アーキテクチュア編

昨年の暮れに発売された「世界のリノベーション」日経アーキテクチュア編です。

日経アーキテクチュア誌が、近年リポートしてきた国内外のリノベーション事例の中から厳選し、未掲載の写真や資料を加えて紹介しています。

ザハ・ハディド氏の遺作となるベルギーのポートハウスのほか、フランク・O・ゲーリー氏、安藤忠雄氏など、世界の著名建築家による「新築を超える増改築」を多数掲載しています。国内のモダニズム建築の保存再生事例や、技術・法規面を押さえつつ実現過程が詳細に書かれています。

作品紹介にあたり、リノベーションの特徴を示す6つのアイコン「包む」「載せる」「はめ込む」「くり抜く」「つなぐ」「掘る」を付けていますが、良い整理方法だと思いました。

今、小さいプロジェクトだが鉄骨造3階建ての建物に1層増築して4階建てにする「上増築」(しかも工事完了検査済証が無い)の仕事を手掛けています。この本によると「載せる」という範疇になるのですが、幾つか建築基準法の構造規定の既存遡及の壁にぶち当たっていました。現在も知恵を絞り中。

ザハ・ハディド氏の遺作となるベルギーのポートハウス「海に浮かぶダイヤ」が「載せる」の事例となっているが、既存建物とは構造的には切り離しているようです。

五十嵐太郎氏の「リノベ建築史」の視点も重要です。

建築史を俯瞰すれば、「リノベ」は昨日今日流行ったものではなく古来より「再開発」「修景/保存」「再利用」は同じような建築的創造行為であったことが理解できます。

ヨーロッパに行ってきたい・・・。

「設備設計スタンダード図集」ZO設計室

毎年、年末年始に読もうと大量の本を購入するのだが、今年最初に読み終えたのが、この本「設備設計スタンダード図集」ZO設計室・柿沼斉三・伊藤教子共著。

本来は設備設計者を対象としているのだろう、その極意を伝授する内容となっている。

建築ストックの活用・再生を業務にしていると、既存の建物の設備図面を読みこなす力が必要になってくる。名ばかり設備一級建築士なので、専門とする設備設計者に協力を仰がなければならないのだが、自分でもある程度は理解する必要があるので最新の知識は勉強しておきたい。

設備関係の更新が中心のリフォームも多くなってきているが、だからと言って設備設計者だけに業務を任せていれば良いというものでもなく総合的に判断する力量が必要となってくる。

この本の良いところは、オフィスからマンション、公共建築、戸建て住宅と規模と用途の異なる9タイプの事例を掲載していて、それぞれの図面に対して設計の決め方や留意点を記載するなど、きめ細かく解説している点だろう。

とても勉強になった。

「RENOVATION CASE STUDY BOOK 2」

リノベーションは建物単体の再生にとどまらず、街の活性化、コミュニティーの再生にも大きな役割を担っている。

「リノベーション ケーススタディブック 2」は、全国各地の店舗、文化施設、オフィス、宿泊施設、住宅の38の事例を紹介している。

巻頭特集は、リノベーションによる街の活性化に取り組む北九州市小倉、尾道市旧市街地、長野市善光寺門前を取り上げコミュニティ再生におけるリノベーションの役割、成功の秘訣を探っている。

既に見に行ったものも多く紹介されているが、遠方の為 中々行く機会がない兵庫県の豊岡・城崎温泉・出石に出向きたいと思った。

「キズカイのケンチク」

木造建築にこだわってきた東海大学・杉本祥文教授の活動の集大成ともいえる本。氏の生い立ちから木材を巡る諸問題についてふれ木造建築復権にかける熱い思いが語られてる。杉本先生とは年に数回会う機会があるのだが、生い立ちは始めて知った。祖父が伊豆修善寺で製材業を営まれていたということから木との関わりは幼少時代にあったものらしい。

「木」という一つの材料にこだわりを持って設計をしている人をうらやましく思うことがある。私などのように実現したい空間を構成するストラクチャは何でもいいと思っている輩からは なんでそんなに「木」にこだわるのか理解しがたいところである。

杉本先生が前社長・現会長職にある㈱計画・環境建築は、かって日本の建築界をリードした鬼才・木島安史さんと橋本文隆さんが設立した事務所である。

若い時に木島安史さんの作品が新建築に発表されるたびに、そのデザイン力・ダイナミックな構想力には圧倒され脱帽した。

木島安史さんの日本建築学会建築会館コンペ案が実施に採用されていたら、どんな空間を我々に提供してくれたのだろうかと建築会館を訪れるたびに思ったものだ。

この本の中には、杉本先生が関わった私の好きな建物が幾つかある。周辺環境に共鳴するかのごとく柔らかな稜線をもつ「道の駅 みかも」。木質ハイブリッドな構造の「道の駅安達・智恵子の里」等だ。

以前の作品には木島安史・橋本文隆のDNAを色濃く継承したデザイン・構想力に秀でていた作品が多かったのだが、最近はおとなしいというか拙い作品も散見する。

今時の大学で子供達と戯れているのも良いけど、デザインの現場に復帰して指導力を発揮してもらいたいものだと影ながら思っている。

「老いる家 崩れる街~住宅過剰社会の末路」野澤千絵著

著者である野澤千絵・東洋大学教授によると「住宅過剰社会」とは、「世帯数を大幅に超えた住宅がすでにあり、空き家が右肩上がりに増えているにもかかわらず、将来世代への深刻な影響を見過ごし、居住地を焼畑的に広げながら、住宅を大量につくり続ける社会」のことと書いています。

2060年の日本の将来人口(合計特殊出生率1.35の場合)は、約8700万人と予想されていて、減少が始まった2010年の人口・1億2806万人の約7割にまで減少するとの国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2012年1月推計)が指摘しています。

国は、経済対策や住宅政策の一環として従来通り新築住宅への金融・税制等の優遇を行い、住宅建設の後押しを続けていて、住宅過剰社会を食い止めようという兆しがほとんど見られないと著者は指摘しています。

不動産は、その住宅の質や立地によっては、売りたくても買い手がつかない、貸したくても借り手が見つからないケースが続出しています。財産ではなく、固定資産税や管理費・修繕積立金を払うだけの「負動産」になりつつあるものも増加しています。

東京近郊における賃貸アパートの供給過剰による空き家の増加。越後湯沢のようなリゾートマンションの廃墟化。限界集落。

最近、弁護士や司法書士に話を聞いたところ「相続関係」の業務が増えているそうです。「相続問題」というと以前は、家族や親族間のトラブルによるものだったのが、最近は相続放棄、認知症の老人の成年後見人になったり、不動産の信託であったりと少子高齢化の波が、建設・住宅業界より一足早く押し寄せているなと感じたものでした。

私が死んだ後の日本の将来を思うと暗澹たる気持ちになってしまいますが、「住宅過剰社会から脱却するための7つの方策」も提案されており まだ方針転換すれば間に合うかもしれないという かすかな期待を抱くことができます。

「伝統的民家における温熱特性と現代住宅への応用に関する研究」金田正夫著

本書は現在、無垢里一級建築士事務所を主宰されている金田正夫氏の学位論文です。金田氏は 設計実務を続けながら法政大学に学び2011年3月に博士号を取得され、現在も実務と研究を続けられている「在野の研究者」です。

本書では、民家の温熱特性については茅葺屋根の日射遮熱効果や民家の通風特性についての既往研究は調査事例があり解明されつつあるとし、夏季における置き屋根による日射遮熱、土壁による西日遮熱、民家構成材による調湿、冬季における放射熱源と土壁の採熱・蓄熱については調査事例が少なかったので それらを補完するのが本研究の第一目的としています。

また、民家の温熱特性を現代住宅の諸条件の中で応用し、その効果を対比検証していますが、それが第二の目的としています。

とりわけ面白いと思ったのは「置き屋根(二重屋根)」による遮熱効果。夏の良好な温熱環境をつくるうえで無視できない西日遮熱の問題。民家の調湿効果を類似の新建材に特化した調湿実験の結果。約10年間にわたる実測に裏打ちされた研究成果が満載されています。

「自費出版」ですが、住宅の温熱環境に関心がある人には読んでほしい一冊です。

申込は 下記「無垢里」サイトへ

無垢里

 

新「そらまどの家」 丸谷博男著

「地球の恵みの素は、太陽の熱 その熱は、1億5千万㎞を駆け抜けてきた輻射熱です。 「そらどま」は その輻射熱を 住まいに採り入れ その輻射熱で 採暖採涼をします。 太陽の恵み「そら」の熱と 地球の恵み「どま」の熱を 両手両足を背一杯広げて 受取る仕組みです。 そして、人と住まいの健康の素「呼吸する家」をつくります。」

エコハウス研究会

エコハウス研究会のホームページ巻頭に書かれていた この言葉にほれぼれとしました。

「そらどまの家」はフランチャイズではなくオープンシステムです。

「その土地の微気候、それぞれの工務店の工法や技術力にふさわしい、きめの細かいパッシブな家づくりを創案し、皆様のものにしていただこうというものです。このような考えこそがパッシブデザインの本質と考えています」

高断熱・高気密住宅には違和感をずっと感じています。ビーニール袋にアルミの蓋住宅の傾向は、今も昔も何ら変わっていません。省エネと言いながら石油製品の断熱材を多用する矛盾。

日本の風土と共に息づいてきた伝統工法の知恵を生かした家づくりは憧れですが、庶民には高嶺の花であるという現実も存在しています。

「週刊 東洋経済8/12-19合併号・親の住まい 子の住まい」

2019年には世帯数が5307万でピークを迎える

2033年には空き家が2167万戸を超え3戸に1戸は人が住まなくなる。

2050年・現在の居住地の約20%が「誰も住まない土地」になる。団塊ジュニア世代がすべて75歳以上に

今後の日本を展望すると、確かに住環境は激変していくのだろう。

今でもその兆候は見られるし、爺が心配しても仕方ないのかも知れないが、何だか暗澹たる気分になってしまう。

子育て世代の住まいは一戸建てかマンションか。はたまた購入か賃貸か

老後の住まいはどうするのか。

そう言えば 他人ごとではなかった。

NICHE 04

母校の校友会にわずかばかりの寄付をしたところ、出版されたばかりの「NICHE 04・ドイツ建築探訪!」が送られ来た。

いずれ購入しょうと思っていたので丁度良かった。

仕事に追われていてパラパラめくっただけで紹介記事を書くのはおこがましいが、こういう大学の知的資源やネットワークを生かした本を世の中に出し、社会に貢献していくのは大学の使命である。

大学はまだ死んでいなかった。

教育界の品位を下げた「もり・かけ」ばかりではないのだ。

日本語とドイツ語のバイリンガルになっているのだが、かってドイツ語を専攻していたのに今やさっぱり読めなくなっている。

「ブルーノ・タウト再考」を始め、ドイツ建築を特集している。仕事で煮詰まっている時に気分転換で、しっかり読むことにしよう。

「NICHE 04」出版

 

「ひつじの京都銭湯図鑑」大武千明著

京都の街中を歩いていると意外と銭湯に出くわします。レトロなものやモダンな外装のものあり、ひとつひとつの銭湯が個性的です。

仕事に追われている時は、活字の本を読む余力がありませんが、この本のようなイラストが多い本は、ちょつとの合間の息抜きにピッタリです。

銭湯の営業中は、カメラ撮影が不可なので記憶にとどめておいてイラストにされていたそうですが、結構可愛らしいイラストが散りばめられています。

京都銭湯巡りの小トリップ。

何だかワクワクしてきます。

「伝統民家の生態学」

学生時代に伝統民家について学んでいた時、伝統民家の秀でた温熱環境について感覚的・情緒的に語るものはあったが、科学的に調査し考察をした研究は少なかったように記憶しています。

そうした中で花岡利昌氏の研究は刺激的でした。

1991年に初版が発行されたこの本は、各地の伝統民家についての調査と研究の集積であり、伝統民家の形態に地域性をもたらしているのがその風土、すなわち気候や地形などの自然条件であることを物語っています。

今、省エネや環境建築が業務の中心になってきて、改めて伝統民家について生態学的アプローチをされている研究文献を再読しているところです。

【伝統民家の生態学・目次】

第一章 伝統民家と風土
第二章 住居気候とその測定方法
住居気候/住居気候測定における問題点/測定法/測定結果の処理
第三章 加賀白山麓の大壁造り民家
白峰村の大壁造りの構造/白峰村の自然環境/大壁造り民家の住居
気候/(附記1)大和高原の真壁造り民家
第四章 飛騨白川村の合唱造り
合唱造り民家の構造と分布/合唱造りの住居気候
第五章 庵美の分棟民家
分棟民家の構造/庵美の気候風土/分棟民家の住居気候
第六章 庵美の高倉
庵美大島の高倉/庵美式高倉の構造/高倉の屋内気候
/改造高倉の室内気候
第七章 大隅の二棟造り民家
二棟造り民家/二棟造り民家の構造/二棟造り民家の住居気候
と瓦葺き住宅との比較
第八章 沖縄先島(石垣)の民家
石垣の風土と伝統民家/先島の宮良殿内と分棟民家/先島民家住
の居気候
第九章 四国の竹床(簀掻床)民家
竹床民家/竹床民家の構造/竹床民家の室内気流
第十章 岐阜高山の吹き抜け民家
吹き抜け民家の構造/吹き抜け民家の室内気候
第十一章 出雲の屋敷防風林
築地松/自然環境と対象民家/築地松の効果
第十二章 山形の土座民家
山形の土座/自然条件と対象民家/土座の室内気候
第十三章 新潟の土座民家
新潟の風土と土座/土座の構造/土座の温熱環境
第十四章 近江伊香の土座民家
伊香型の土座民家/伊香型民家の構造/土座の温熱状況
第十五章 アイヌの伝統民家「チセ」
アイヌの冬の住生活/チセの種類と構造/住居気候の測定内容
/チセの住居気候/冬季のチセの防寒性能とそのメカニズム/
(附記2)秋田横手のカマクラ/(附記3)雪の断熱性を利用した
上越のアイディア住宅
第十六章 山梨のオンドル民家
オンドル室の構造/測定方法/測定結果
第十七章 韓国の伝統民家におけるオンドル
韓国のオンドル事情/在来式オンドルの測定/セマウル温水ボイラー
オンドルの測定

「工手学校・日本の近代建築を支えた建築家の系譜・工学院大学」

明治、帝国大学総長であった渡邊洪基は、建築家の辰野金吾や土木を専門とする古市公威と共に、8つの学科を擁する「工手学校」を設立し日本の建築界に多くの卒業生を輩出しました。

 本書は、工学院大学建築学部同窓会誌『NICHE』に掲載された「輝かしき先輩たち」と題された連載を基に再編集したもので日本の近代建築を支えた工手学校の歩みを、13人の建築家の歩みを通して描かれています。
同窓生だからこの本を持ち上げるわけではなく、日本の近代建築史を学ぶ上での貴重な資料です。とりわけ私が興味深く読んだのは戦前の台湾の活動でした。「戦前期工手学校卒業生の台湾における活動-八坂志賀助を事例として」「工手学校卒業生と台湾総督府の土地調査事業」「飯田豊二と日本統治時代初期の台湾鉄道」「進藤熊之助と日本統治時代初期の台湾鉄道」の四編は、今は資料が少ない戦前の台湾について多くの教示を得ました。
それと 今亡き建築家・内井昭蔵さんの御父さん・内井進さんが同窓だ初めて知りました。
とても面白い本です。

「孤篷の人」葉室麟著

この作品の主人公は、大名(晩年は伏見奉行)、茶人、作庭家、建築家、書家として名を遺した小堀遠州です。フィクションですが、晩年の小堀遠州(小堀政一)が、利休、石田三成、沢庵、古田織部等との邂逅を綴る形で書かれていて、茶の湯の精神とか茶室について理解を深めるための本になっていると思います。
孤篷庵(こほうあん)は、京都市北区紫野にある臨済宗大徳寺派大本山大徳寺にあります。建築関係の本にはよく登場し、時には建築士の試験などにも登場しますが、たまにしか一般公開しませんし茶室内部の写真撮影は禁止なので、著名な割には実物を見た人は少ないと思います。そういう私も何度か大徳寺には行っていますが実物を見たことはありません。
この庵号の「孤篷」は「一艘の苫舟」の意で、小堀政一(遠州)が師事した春屋宗園から授かった号です。
なにか全てを暗示しているような庵号でもあります。
この本を読んで、すこし即物的な建築の世界から離れて、精神世界に触れることができたような気がします。

NICHE 2017 vol.40

「NICHE」と「NICHEダイジェスト」は工学院大学建築同窓会誌ですが、2014年から建築とデザインの学際的な架け橋として、海外取材に基づく特集記事と連載 を中心とした業書・書籍版(有料)「NICHE」と広報誌「NICHEダイジェスト」に分かれています。

「NICHEダイジェスト」は、「NICHE」から抜粋した内容と大学に関係した記事で構成され同窓生や大学関係者に無料で配布されています。

2015年の「台湾建築探訪」2016年「フランス建築探訪」そして今号「ドイツ建築探訪」と、最近の内容は同窓会誌のレベルをはるかに超えていると言って良いと思います。

今号も

  1. ブルーノ・タウト再考
  2. バウハウスとその時代
  3. ドイツ派、妻木頼黄と矢部又吉

と興味深い特集記事が組まれています。

そして 亡き武藤章先生が1968年に設計された「工学院大学旧白樺寮」が閉鎖され解体される方針に対して、建築系同窓会が土地の借地権と建物を引き継ぎ、一部を減築し夏季利用に限定した、アールトと北欧デザインづくしの「白樺湖夏の家」として生まれ変わった様子が速報版として紹介されています。

学生時代に白樺寮に一度行ったことがありますが、約半分ぐらい減築し暖炉のあったリビングの部分を残してリノベーションした様子ですが、とても懐かしいですね。

武藤章先生の傑作・八王子図書館が解体されたのは残念ですが、白樺寮が保存出来て良かったです。関係者の皆さんありがとうごさいます。

「聖地巡礼 Rising  熊野紀行」内田樹×釈徹宗

日本の霊性を再生するシリーズの第2弾。熊野古道・熊野本宮大社・花の窟神社・那智の滝・・熊野にむき出しの宗教性を見る。

この正月に「聖地巡礼」シリーズは発行されている第1弾から第3弾まで一気に読みましたが、この「熊野紀行」について書き留めておくのが遅くなりました。

祖先は、一体いつの頃から「霊性」や「神」の存在を感じたのでしょうか。古代の人々にとって大自然の中で生きていくことは過酷だったと思います。大自然の脅威と恵は、古代人の心に「恐れ」と聖なるものへの「畏れ」(おそれ)を生み出します。

私達の祖先は、自然をも超越した完全無欠の「神」ではなく、自然の中に存在し、災害も恵も合わせ与える厳しくも温かい「神」を望みました。

自然が作り上げた神聖な場所は、全国各地に未だ多くありますが、この熊野はとりわけ濃厚な霊性を感じられる地だと言われています。

はるか古代から自然への信仰を飲み込み、それらを原点として神社神道へと展開していく熊野信仰は、六世紀に仏教が伝わると神仏習合が進み、「熊野権現信仰」が広まります。

熊野古道は、滅罪と救いを求めて難行を行う人々が開いた命の道です。古代や中世においては、今では想像も出来ないほど険しい山道だったに違いありません。それだけに宝前に辿りついた人々は皆 涙したと言います。以前サンティアゴ・デ・コンポステーラの道の巡礼の終点である大聖堂に着いたときも皆涙すると聞きました。

熊野古道とサンティアゴ・デ・コンポステーラの道の二つ道の巡礼を達成した人は「二つの道の巡礼者」と呼ばれます。

サンティアゴ・デ・コンポステーラの道は、「徒歩または馬で少なくとも最後の100km以上を巡礼する」「自転車で少なくとも最後の200km以上を巡礼する」のいずれかを達成する必要があります。熊野古道は、「徒歩で滝尻王子から熊野本宮大社(38km)まで巡礼する」「徒歩で熊野那智大社から熊野本宮大社(30km)間を巡礼する」「徒歩で高野山から熊野本宮大社(70km)まで巡礼する」「徒歩で発心門王子から熊野本宮大社(7km)まで巡礼するとともに、熊野速玉大社と熊野那智大社に参詣する」のいずれかひとつ。
巡礼は、再生のエネルギーを神から分け与えていただく儀式です。プリミティブな聖地である熊野へ出かけましょう。

「日事連 2017・4」日本建築士事務所協会連合会 

日事連4月号は、「木の魅力」の特集です。

「川下から川上へ・木材産地における構造変化」筑波大学生命環境系准教授・興梠克久(こうろきかつひさ)氏へのインタビューが読みごたえがありました。

2015年の国産材素材供給量は2004万9千㎥と、1997年以来18年ぶりに2000万㎥台に回復したそうですが、素材需要増加の要因について聞いています。

200年代以降の流通の合理化には、大きく分けて三つの傾向が見られるとあります。

1、商社が国産材に関わる事業に進出して来た。

2、原木市売市場の商社化

3、素材生産業者の取りまとめ団体の商社化

大資本である商社が、日本の木材市場の再編成を図ったことが最大の要因です。為替の変動(円安)から国産材へと軸足を移したことも大きいようです。

工務店や設計事務所が核となり、地域材を大消費地に供給する動きが全国各地にみられます。

岐阜県の中島工務店が「完結型林業」ということで紹介されています。

ヒノキ材の産地である岐阜県中津川加子母に所在する中島工務店は、工務店が川下流域の林業や製材業の中心となり、森林組合や製材所と共に協力体制を構築し、社寺仏閣から木造住宅まで幅広く手掛け、関東・中部・関西の大都市圏に建てています。

何となく農業の六次産業化の林業版というような感じを受けました。

加子母に一度行ってみたいと思っています。

特集では他に、地場材を使った地域の建築として奈良県の取組みや全国の地域材活用方針や取り組みが一覧表に整理され紹介されています。

「奈良の木」BOOK

「奈良の木」BOOK を頂戴しました。

発行は「奈良の木」マーケッティング協議会。奈良県南部の吉野地方の吉野材・吉野杉は、木目が美しく強度に優れている高級材として有名ですが、近年は製材生産高の低迷が続いているそうです。

奈良県産材の利用拡大を目指して、その魅力を伝えるための製材、奈良県産材を使った公共建築、民間の建物、小物、家具などを紹介しています。

「奈良県産材は、ヤング係数が高く強度性能が優れている」というのは始めて知りました。杉のヤング係数の全国平均値はE70ですが、奈良県産材の平均値はその1.3倍のE90と書かれています。

奈良県産材は年輪幅が狭く、密度が高い為ヤング係数も高くなっているようで、現在は一本一本ヤング係数を測定し強度等級を付けているそうです。

奈良県産スギ材を使った床材、不燃材開発、壁倍率2.6倍の大臣認定取得のスギ厚板耐力壁、スギ厚板床などの商品開発は興味深かったです。

コア東京3・2017 東京都建築士事務所協会

毎月、東京都建築士事務所協会「コア東京」と「日事連」が郵送されてきます。

定期機関誌を毎月発行するのは大変な労力がかかっているのだろうなと予想できます。関係者の皆様に感謝しながら、このカラー印刷の機関誌印刷代・郵送代に随分と経費がかかっているのだろうなWEBサイトを充実させれば事足りるのではないかと思いつつ「コア東京」をパラパラとめくりました。

今号の気になった記事は「VOICE from editor」の記事でした。ようするに巻末の編集後記ですね。加藤峯男さんの建築法規の変遷、ストック活用に即した法体系の見直しの思いが記載されていました。

そこには加藤峯男さんが一級建築士を受験した1970年の建築基準法法令集・赤本と現在2016年度版の赤本の厚さが比較された写真が掲載されていました。頁数で言うと5倍になっていると指摘されていました。

「建築基準法の基礎的規定や意味合い」を若い人が理解していないと加藤峯男さんが嘆くのはわかりますが、その一因は大学や専門学校での建築法規の履修が戦後一貫して軽視されてきたからだと思います。1970年頃も大学では建築法規は2単位で現在もほとんど2単位だと思います。社会が複雑化しそれに対応し法令もこれだけ増えてきたのに、資格受験のための建築法規の学習では試験が終われば忘れてしまいます。しかも試験技術が最重要な要素である現代の資格試験では建築法規の基本を学ぶことには無理があると思います。

やはり設計実務を通じて徐々に全体像が掴めてくるのだと思います。

指定確認検査機関に勤めて審査をしていれば建築基準法と関係規定には詳しくなりますが、建築プロジェクトの遂行においては消防法や都市計画法などのあまたある法令・条例を読み理解しなければなりません。

建築法規を学ぶとしたら、やはり大学教育の中で学ぶ時間を増やさないといけないのではないかと思います。そしてどういうカリキャラムが必要か、よく考えないといけないと思います。

加藤峯男さんは「既存ストックを円滑に活用できるように法体系を見直す」必要性を訴えていますが、建築関係者は大概思っているのではないでしょうか。

どう改善するべきか建築関係団体から具体的な提起が必要になっていると思います。

内閣府・規制改革会議での業界関係者の意見等を読んでますと「床面積1000㎡以下は用途変更確認申請は不要として欲しい」等の意見もみられますが、業界関係者の利便や都合ではなく建物を使用する人の安全性に配慮した建築法規の改正が必要だと思います。

私見としてはストック活用に伴う建築基準法改正案はありますので、いずれ発表する機会があるかもしれません。

省エネ適合も かれこれ10年前に話題になりました。施行は本年4月1日から随時実施され やがて300㎡以上の建物は省エネ適合が必要となるでしょう。

ストック活用の法令も見直されることは歴史的必然だと思います。

建築士事務所登録数は減少の一途

先日届いた日事連(一般社団法人・日本建築士事務所協会連合会)の2017・2月を読んでいたら、国土交通省から発表された建築士・建築士事務所の登録数が掲載されていました。

平成28年度上半期末一級建築士の登録数は、363,530人という総数のみ公表されています。一級建築士は年々総数は増えていくのですが、現在65歳以上で概ね15万台の登録番号ですから、現役の実数は20万人程度であまり変化はないのかもしれません。都道府県別、年齢別の登録状況が発表されれば、もっと詳しく動向がわかるのですが。

一方、一級建築士事務所の登録数は、平成28年度上半期末で個人・法人合計で78,334事務所で、平成27年度上半期の79,062事務所から728事務所の減少と記載されています。

建築士事務所の登録数は平成12年度をピークに減少の一途をたどっています。

この傾向をどう考えるかというのは諸論あるのですが、建築経済が縮小している。独立開業が難しくなっている・・・・というところが一般的でしょうか。

日事連加盟数が14,861事務所で、全登録事務所の14.1%しか加入していない。東京は加入率10.1%だそうです。

他の「士」業とは異なり任意加入だからか、あるいは存在意義が低いのか。

そう言えば建築士事務所協会に入ってから営業電話とカタログ、郵便物が多くなった。名簿が独り歩きするのは困ったものです。

「聖地巡礼 リターンズ 長崎、隠れキリシタンの里へ」内田樹×釈徹宗  

この正月に読んだ、内田樹×釈徹宗の「聖地巡礼 リターンズ~長崎、隠れキリシタンの里へ」聖地巡礼シリーズの第三弾です。

「聖地」は、幾つかの類型に分けることができると書かれています。

1、その場が本来的に持つ特性による聖地

2、物語(ストーリー)による聖地

3、個人の経験や思い入れで成り立つ聖地

この第三弾の聖地巡礼で取り上げているキリシタンの足跡は、どちらかというと「物語による聖地」の傾向にあります。この地で繰りひろがれたキリシタンの関係の事件や逸話は、強い宗教性を帯びていて、とても重く心にのしかかります。

「信徒発見」(禁教後250年間信徒が潜伏)や「二十六聖人殉教」は、世界のカトリック教会でも歴史上名高い事件です。日本国内での評価以上にカトリックの中では評価が高いと聞いています。

私にとって長崎は どちらかと言うと避けていた土地です。

それは、いま映画が放映されている「沈黙-サイレンス-」の原作である遠藤周作の「沈黙」を若い時に読んだことに起因するかもしれません。読後は気がめいって、出来れば避けていたかったと思ったものでした。

1/21から放映された映画も、多分クオリティーが高くて良い作品だとは思いますが、面白いという性格の映画ではないのではないかと予想しています。

 

東京都建築士事務所協会のコア東京2017.1月号に、研修旅行「世界遺産と長崎の教会群を見る」の記事が掲載されていました。

長崎の教会建築は、様式は多様で、構造も木造、石造、鉄筋コンクリート造等多種にわたっていますが、建築の要素だけ取り出しても深く理解できない土地かと思います。

釈徹宗さんが、聖地を訪ね場合は、ロゴス、パトス、エトス(信仰や宗教体系が生み出した土地の生活様式や習慣)、トポス(場が持つ力)のこの四つをバランスよく感じ取ることが聖地巡礼の基本姿勢と書かれています。

他の事象から切り離し、建築・建築技術だけみることは 避けなければならないと再認識した次第です。

「土浦亀城と白い家」田中厚子著

この正月から「土浦亀城と白い家」田中厚子著、鹿島出版会刊を読んでいました。

「白い家」に代表されるているのは、現存する昭和10年竣工の土浦亀城と信子の建築家夫妻の自邸です。

土浦亀城邸は東京都有形文化財、docomomo20に選ばれていますが、傑作ですね、今見ても見劣りしない とても美しいデザインの住宅です。

戦前の木造住宅の構法、使用材料等もわかり、建築病理学的にも一級品の資料と言えます。

土浦邸フレンズ

この本では、この土浦亀城邸と、土浦夫妻の生涯を丹念な文献調査や関係者からの聞き取りをもとに描き切っています。

歴史的な本を書くなら、縦糸は関係文献を余すことなく読み込み、横糸は出来るだけその時代の関係者から聞き取り調査をする。縦糸と横糸が折り重なって布となる。ちょつと中島みゆきの歌「糸」のようでもありますが、それが歴史的な本に厚みを持たせるのだと思います。

土浦夫妻はライトのもとで夫妻で師事し、日本で国際様式のデザインで建築を数多く作っていますが、その個人の歴史を描く中で、戦前のエリート知識人の暮らしぶりや、タリアセンで出会ったヴェルナー・モーザー、アントン・フェラー、リチャード・ノイトラ等の交流や戦前戦後の歴史が浮かび上がってきます。

近代建築史を学ぶ上では、必読的な本だと思います。

「今、ある良い建物を これからも使い続けていくために」

工学院大学校友会・新春の集い2017で工学院大学教授の後藤治教授から頂戴した「今、ある良い建物を これからも使い続けていくために」既存建物を使い続けていくための諸制度見直し研究会の発行です。

このJIA再生部会や東京弁護士会歴史的建造物部会が協力してできた冊子を読んでみました。

歴史的に価値ある建築物の多くは、相当の年数が経過している為に現在の諸法律に適合していません。建築物を長期間継続して使い続けていくためには、大規模な改修や用途変更等もときには必要になります。しかし現行の法的基準を満たそうとすると工事費が嵩んだり、場合によってはその歴史的価値さえ失ってしまうこともあります。

今、多くの歴史的建築物は、経済的合理性の御旗のもと解体を余儀なくされています。

一方、歴史的建築物を社会的資源と捉えなおし、用途変更・増築等をして活用する事例も増えています。廃校からホテル・結婚式場。事務所から飲食・物販店舗からなる商業施設。廃校から道の駅等 各地で事例は生まれています。

この冊子は、日本建築家協会(JIA)再生部会と東京弁護士会歴史的建造物部会で、技術的な面と法的な面から様々な検討を行い、建築基準法第3条1項3号「その他条令」の規定を運用し、建築基準法適用除外の条令制定を勧めています。またその事に役立たせる目的でまとめられています。

社会的システムという法整備も喫緊の課題ですけど、個人的には、それと両輪で建築病理学の体系化が求められていると思います。

「ゲニウス・ロキ~建築の現象学をめざして」クリスチャン・ノルベルグ=シュルツ著

1994年に出版された「ゲニウス・ロキ~建築の現象学をめざして」。

昨年末に読んだ「聖地巡礼」内田樹×釈撤宗対談集の中で「霊的トポス」と言う言葉が出てきていたので、この本を所有しているのを思いだし抜粋的に読み直してみました。

建築関係の本は、しばらく倉庫に預けていたのですが、昨年末に借りていた倉庫を撤収し所有していた本を整理・処分した中で残した本の一冊でした。

ゲニウス・ロキとは「地霊」と邦訳されます。ラテン語のゲニウス (守護霊) とロキ (場所・土地) を合わせた言葉です。どの土地 (場所) にもそれぞれ特有の霊があるから,その霊の力に逆らわず建物を建てたり、地域開発をすべきだという考え方です。

鈴木博之先生の「東京の地霊(ゲニウスロキ)」が出版されたのは何時だったでしょうか。1990年にサントリー学芸賞・芸術・文学部門賞を受賞しているので初版はそれ以前でしょうか。あの時期、もう30年ぐらい前ですが、私のなかでは「ゲニウス・ロキ」は、建築行為の理論的支柱でした。設計コンペの時は、その土地の場所性とか歴史性を調べることにばかりに力が入り、未消化の時は、結局参加を断念したりと、やたらとスケッチと資料ばかり増える傾向にありました。

今はどうなんでしょうか、「場所性」とか「歴史性」とか重要視されているんでしょうかね。設計行為そのものとは少し距離を置いてしまったので よくわかりません。

尚、所蔵していた本が少々くたびれていたので、新しく買おうかなとamazonで調べたら中古で54,000円の値がついていてびっくりしました。

「聖地巡礼 ビギニング」内田樹×釈徹宗

思想家・武道家の内田樹さんと浄土真宗本願寺派・如来寺住職、相愛大学教授の釈撤宗さんの対談集ですが、どこか部屋の中で静止した状態で対談するのではなく、実際に聖地を巡礼し、つまりを移動しながら対談したものをまとめた珍しい形式の対談集です。

聖地巡礼プロジェクトの目的は、「霊的感受性を敏感にして霊的なものの切迫を触覚的に感じる事」と書かれています。つまり五感のレーダーを研ぎ澄まさなければならないのだと思います。

私にとって聖地巡礼と言えば、サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼で、それを目指して、色々と資料を集めて準備していた時もありました。フランスからピレネー山脈を超えスペインを横断する巡礼路は、一か月以上かかり、最低でも徒歩で100Km以上歩かねばなりません。そんな体力はないからと、考古学的関心から日本の社寺仏閣を回り始めてしまい最大の目標から少し遠のいていますが、諦めたわけではありません。

しかし この本に書かれている日本の聖地巡礼も めちゃくちゃ行きたくなってしまいました。

この「聖地巡礼 ビギニング」の第一回は、ことし「真田丸」で有名になった「大阪・上町台地縦走」です。「かすかな霊性に耳をすませる」と添えられています。上町台地は南北に強い地脈を持ち、突端は生駒山と東西に一直線にあり、見える縦軸と心象的な横軸がクロスするという都市デザインが古代よりあったことを知りました。

内田樹さんが「大阪は本来霊的なセンターであり、それが都市としての力を賦活(活力を与える事)していたはずでしたけれど、世俗の力によって本来の霊的エネルギーが枯渇している」と書いています。大阪は、最も世俗的な人と政党に長く地方政治を担わせていますが現代的箱物やカジノでは復活は難しいでしょうね。

第二回は「京都・蓮台野と鳥辺野~異界への入口」です。「死者との交流」の地が京都の街の中にあったのは、まったく知りませんでした。これは、絶対行かねばならないと思いました。

第三回は「奈良・飛鳥地方~日本の子宮へ」で三輪山と大神神社です。「どの神社が一番好きか」と聞かれたら「大神神社」と答えていたので、「霊的トポス(場所)には透明感がある」というのは共感できました。私が今までで強い透明感を感じたのは大神神社と上高地でした。奈良は情念の南部、ロゴスの北部と言いますが、奈良南部は原日本の風景を感じるので大好きな土地です。

「出かけよう! 宗教性をみがく旅へ」

「立原道造の夢見た建築」種田元晴著

「今時、立原道造を取り上げて本にした人がいるんだ」という驚きと敬意をもって、この本を読んでみました。

『詩人・立原道造の建築家としての思想を解読。自然豊かに書かれた透視図から「田園」を志向する建築感を始めて浮かび上げさせる』との内容説明がされています。

立原道造についての著作は過去にも多く、全集も出ていますし、その中には図面やスケッチ、透視図の類も収集掲載されています。著者は学部卒論の時から立原道造を調べていて、関係者の本も丁寧に拾われて立原道造の世界を探求されていますが、全体の印象は、過去の著作類からの「よくできたトレース」という感じを受けました。

それでも全集を読んだことがない、詩人・立原道造を知らないという建築分野の方が立原道造に近づくための入門書としての完成度は高いと思います。

私は、中学生の時に立原道造の詩に出会いました。多感で純粋な中学生には衝撃的な詩でした。高校生に入り、すでに勤めていた姉に頼み「新建築」を定期購読し様々な建築や建築家の存在を知りました。その一方「詩作」に励んでいました。

私にとって立原道造は、初恋の人のようなものです。

憧れの人であり、手繰り寄せて思想を分析する事など思いもよりませんでした。立原道造の詩と建築は、一体不可分で分離して考えることは出来ないと思います。

立原道造は、誰よりも先に花開き、誰よりも早く散ってしまった花です。

わずか24歳。

戦争の時代を生き抜いたら、侵略戦争を賛美し国威発揚の戦争詩を書いていただろうか。田園主義を捨て古典主義的建築を設計していただろか。

そんなことは誰もわかりません。

石本建築事務所を休職してからの北から南への旅は、軍国主義が闊歩する時代にあって、きれいなまま死するための旅立ちにも感じているのです。