相模原

3/28、書類提出の為に相模原市役所に行ってきました。市役所の前の桜の芽は、都心よりまだ固いように思えました。風は少し冷たかったですが陽射しは暖かく、何よりも空気が清浄で気持ちが良かったです。

相模原に降り立ったのは始めてです。

JR横浜線の車窓から見えた広大な敷地は、米軍の相模総合補給廠で平成26年に17haが日本に返還され、平成27年に35haが共同使用となったそうです。でも全体面積は196.7haと書かれていますから、返還されたのはほんの一部分なんですね。

これから相模原の北側部分がどう開発されていくのか興味深いところです。

相模原と言えばキャンプ座間の周辺は、歩いたりバスで基地の周辺を巡ったことがあります。

もう40年以上前の学生時代です。

そのころキャンプ座間の日本返還が浮上し、「設計第5」という教科でキャンプ座間の跡地計画が課題になりました。履修者が自由にグループをつくり計画を作成しました。

私が属したグループのテーマは、キャンプ座間は「野外環境教育の場」にするという提案内容で、色々と調査し計画を作成の後にプレゼンし「A」評価を貰いました。友人達のグループは「スーパー農場」だったような記憶があり、同じく「A」評価を貰っていましたが、「都市農業の再生」というテーマはとても良かったと思っていました。

戦後70年が過ぎても米国に従属し、米国の顔色を窺いながらの政治・経済から脱せれない。なんともなんとも・・・

「歴史的建築物活用ネットワーク」第4回会議

横浜で開かれた「歴史的建築物活用ネットワーク」第4回会議~歴史的建築物活用の新しいルールづくり~に参加してきました。

全国各地で建築基準法第3条第1項第3号に基づく条例制定化の動きが拡がってきていることが感じられる集まりでした。今回の集まりは、主催者によると全国各地の行政職員が参加している他、設計者等の参加も多くなった集まりだったようです。

「歴史的建築物の保存活用に関する最新動向」について報告する工学院大学の後藤治教授。

京都市、神戸市、横浜市、福岡市に次ぎ、歴史的建築物を次世代へ継承するための条例づくりが各地で拡がり、2016年度は川越市、鎌倉市が新たに条例を制定しました。各自治体ごとに歴史的建築物活用の課題を解決するための目的や運用の仕組みが異なり、多様な事例が生まれ始めてきていると感じました。

「歴史まちづくりに関する最新動向」について報告する東京大学の西村幸夫教授。

各地の事例報告は、京都市、横浜市、川越市、鎌倉市から報告がありました。とりわけ先駆的な取り組みを進めている京都市の「京町屋を建築基準法適用除外する際の包括同意基準の制定について」の報告は興味深かったです。建築審査会の包括同意基準は安全基準が3つのステージで構成されていて、ステージ1は「法及び条例への適合を求めるもの」、ステージ2は「既存不適格の継承を認めるもの」、ステージ3は「法又は代替基準への適合を求めるもの」で技術的基準はよく整理されており とても参考になります。

弊社は、歴史的建築物のうちの近代建築(比較的規模の大きい戦前のRCの特殊建築物)の保存・再生・活用に関わってますので、全国各地の動向は気になるところでした。

会場からの質問も多く、とても内容が充実した集まりでした。

国立新美術館 -3

ミュシャ展の行われていた2E企画室の天井、今回撮影可能エリア

「スラブ叙事詩」後ろ側に撮影可能エリアが設定され

今回5枚の絵画が展示されていました。

「ロシアの農奴制廃止」1914年作

「イヴァンチツェの兄弟団学校」1914年作

「スラブ民族の賛歌」1926年作

左「聖アトス山」1926年作

右「「スラブ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い」

1926作(未完成)

国立新美術館 -1

国立新美術館に行ってきました。

開館してから10年経つのに来るのは始めて

お目当ては建物ではなく「ミュシャ展」です。

平日の午前中でしたが国立新美術館は混んでいました。

ミュシャ展と草間彌生展と人気のある企画展が開催されているからでしょうか。春休みですものね。あちこちで卒業式が行われています。

コア東京3・2017 東京都建築士事務所協会

毎月、東京都建築士事務所協会「コア東京」と「日事連」が郵送されてきます。

定期機関誌を毎月発行するのは大変な労力がかかっているのだろうなと予想できます。関係者の皆様に感謝しながら、このカラー印刷の機関誌印刷代・郵送代に随分と経費がかかっているのだろうなWEBサイトを充実させれば事足りるのではないかと思いつつ「コア東京」をパラパラとめくりました。

今号の気になった記事は「VOICE from editor」の記事でした。ようするに巻末の編集後記ですね。加藤峯男さんの建築法規の変遷、ストック活用に即した法体系の見直しの思いが記載されていました。

そこには加藤峯男さんが一級建築士を受験した1970年の建築基準法法令集・赤本と現在2016年度版の赤本の厚さが比較された写真が掲載されていました。頁数で言うと5倍になっていると指摘されていました。

「建築基準法の基礎的規定や意味合い」を若い人が理解していないと加藤峯男さんが嘆くのはわかりますが、その一因は大学や専門学校での建築法規の履修が戦後一貫して軽視されてきたからだと思います。1970年頃も大学では建築法規は2単位で現在もほとんど2単位だと思います。社会が複雑化しそれに対応し法令もこれだけ増えてきたのに、資格受験のための建築法規の学習では試験が終われば忘れてしまいます。しかも試験技術が最重要な要素である現代の資格試験では建築法規の基本を学ぶことには無理があると思います。

やはり設計実務を通じて徐々に全体像が掴めてくるのだと思います。

指定確認検査機関に勤めて審査をしていれば建築基準法と関係規定には詳しくなりますが、建築プロジェクトの遂行においては消防法や都市計画法などのあまたある法令・条例を読み理解しなければなりません。

建築法規を学ぶとしたら、やはり大学教育の中で学ぶ時間を増やさないといけないのではないかと思います。そしてどういうカリキャラムが必要か、よく考えないといけないと思います。

加藤峯男さんは「既存ストックを円滑に活用できるように法体系を見直す」必要性を訴えていますが、建築関係者は大概思っているのではないでしょうか。

どう改善するべきか建築関係団体から具体的な提起が必要になっていると思います。

内閣府・規制改革会議での業界関係者の意見等を読んでますと「床面積1000㎡以下は用途変更確認申請は不要として欲しい」等の意見もみられますが、業界関係者の利便や都合ではなく建物を使用する人の安全性に配慮した建築法規の改正が必要だと思います。

私見としてはストック活用に伴う建築基準法改正案はありますので、いずれ発表する機会があるかもしれません。

省エネ適合も かれこれ10年前に話題になりました。施行は本年4月1日から随時実施され やがて300㎡以上の建物は省エネ適合が必要となるでしょう。

ストック活用の法令も見直されることは歴史的必然だと思います。

「耐震改修事例に学ぶ実務者講習会」東京都建築士事務所協会主催

東京都建築士事務所協会主催の「耐震改修事例に学ぶ実務者講習会」に参加してきました。上の写真は本年度版のテキストです。

耐震改修事例の紹介は下記です。

  1. 都営住宅・青木あすなろ建設特許・摩擦ダンパーを用いた制震ブレース工法
  2. 集合住宅・矢作建設工業特許。ピタコラム工法フレームタイプ
  3. 事務所ビル・オイルダンパーブレースによる制震補強・耐震スリット
  4. 集合住宅・下階壁抜け柱のSRFシートによる耐震補強
  5. 市庁舎コンバージョン
  6. 集合住宅・PC外付けフレーム

事例1、2、3はガチガチの構造的説明で専門用語が多くてわからないところが多かったのですが、他の事例は、コンバージョンの一部としての耐震補強や耐震補強工事の施工上の問題点・苦労話でよく理解できました。

事務局によると参加者の4割が意匠関係者ということでしたので、内容も構造技術者しか分かり合えない内容だけでなくしたのかもしれません。耐震改修というと建築主や管理組合の人達に、専門的な判断をどう伝え、理解してもらえるか苦労しますね。

大規模な事例が多く、しかも一般的な工法が少なかったので もう少し中高層の建物の補強方法を知りたい思っていたら、過年度のテキストにそれが掲載されているということで事務局の方に頂戴しました。

これは過年度のテキストで「耐震診断と補強設計の要点」「補強設計マニュアル」という、知りたかった事が満載されていました。

これは平成27年のテキストで(実物は青い表紙)「耐震診断と補強設計における課題」は役立つ内容でした。

弊社は、ストック活用の一部として耐震診断・耐震補強に関わりますので、調査方法や耐震補強工法の選択に関心があります。こうした実務者向けの無料講習会に参加することができただけで事務所協会に加入してよかったなと思えました。

それにしても連日講習会にに参加していると毎回設計事務所時代の同僚や指定確認検査機関時代の同僚と顔を合わせます。中には、しばらく連絡が途絶えていた人もあり近況を伝え合えることができました。やっぱり、引きこもりは良くないなと思ったところです。

設備設計一級建築士定期講習

今日は終日、設備設計一級建築士の定期講習でした。かれこれ一年前に更新講習の案内が来ていたのに忘れていて、3月31日までに定期講習を受講しなければならないのに 気がついたら東京で開催される最後の講習、3/9確認サービス主催しかありませんでした。

三年毎とはいえ、最近の法令改正の要点を全体的に再確認しておくのは必要なことだと思いました。又「確認審査で指摘されることの多い不備事項」や「既存不適格について」は、とても役に立つ内容でした。

ただ、設備設計に関する科目は、あまりにも建物が大規模で 採用されている設備技術も最先端すぎて、たぶん遭遇することはないと思いましたので一般知識として聞きました。内容は、カタカナ語と略アルファベットが多すぎて、なんだかチンプンカンプンでした。日本語で表現できるものは日本語で表記して良いのではないかと思いました。

  • アンビエント (室全体)
  • タスク(人の居るところ)
  • VAV(変風量制御)
  • VWV(変水量制御)
  • VRV(変冷媒量制御)
  • BCP(事業継続性)
  • デマンドレスポンス(エネルギーインフラの供給状況に応じて、ビル側の需要量を調整制御する)
  • GSHP(基礎杭利用型地中熱ヒートポンプシステム)
  • PMSM(二巻線式永久磁石同期電動機)

以上が今日初めて聞いたカタカナと略アルファベットでした。

知識だけでは仕事を遂行できないのですから、もっと規模の小さいもので実践的な知恵が身につくような講習が必要なのではないかと思いました。

終了考査もテキストのポイントから40問出題されるだけの形式的なものですから20分で終わってしまいました。

 

京都なり田・上賀茂本店

上賀茂神社一の鳥居の東側は、室町時代から上賀茂神社の神官が住んだ住居「社家(しゃけ)」がよく保存されています。

賀茂川が上賀茂神社境内を流れ、明神川と名前を変え各社家の前を流れています。

またここは「上賀茂伝統的建造物群保存地区」です。

「社家」で見学できる建物として「西村家庭園」があります。

その社家群の手前にすぐき漬で有名な「京都なり田・上賀茂本店」があります。

ここのすぐき漬けは、過度に発酵が進んでおらず酸っぱくなく、ほどよい酸味で私のすぐき漬けに対して持っていたイメージを修正してくれました。

石畳み

店内の様子

色々な京漬物を売っています。

京都なり田

遮熱措置

倉庫業の登録は10種類に分類されますが一類倉庫は、求められる構造基準が厳しい分、保管可能な物品の種類も多くなっています。危険物及び高圧ガス、10℃以下保管の物品を除いた全ての物品の保管が可能です。

一類倉庫の施設設置基準は、倉庫業施行規則運用方針(H14.3.29付け、国総貨施第25号)に詳しく記載されていますが、その中に表題の「遮熱措置」(則第3条の4第2項第6号)があります。

既存の自己用倉庫を一類倉庫として登録申請するためには施設設置基準を満たさなければなりませんが、その中の一項目である「遮熱措置」の規定は、屋根・外壁・開口部の平均熱貫流率が4.65W/㎡・K以下となるようにしなければならないと定められています。

熱貫流率、熱伝達率、熱伝導率等、建築の環境計画を学んだ人なら基本的な事を知っていれば容易に計算できますが、外皮の平均熱貫流率が4.65W/㎡・K以下というのは、結構緩い基準のようにも思えます。

私の試算では、屋根が折版の場合は断熱ペフt=4mm、外壁は角波サイディングに石膏ボードt=9.5程度があれば平均熱貫流率は満足するようでした。

もつとも運用方針でも、天井がある場合や準耐火構造の屋根、外壁の場合は適合しているものとして扱うとありますから、さほど厳しい基準ではないということです。

福岡市「用途変更の取扱い」(建築基準法第87条)

福岡市住宅都市局建築指導部建築審査課が平成28年8月に取りまとめた「用途変更の取扱い」(建築基準法第87条)は、下記の項目で用途変更のポイントが整理され、とてもわかりやすいものになっています。

  • ポイント1、確認申請の手続き
  • ポイント2、既存建築物の適法性
  • ポイント3、用途変更部分の適法性
  • ポイント4、既存不適格建築物への現行規定の適用

その他「用途変更の流れ」では、既存建物が検査済証を受けていない場合は、福岡市住宅都市局監察指導課で違反是正指導を受けることになっています。

それに代わって民間指定確認検査機関で国交省ガイドラインに基づき適合状況調査により確認申請を行うことができる場合があります。

先日 博多出張の際、福岡市監察指導課で計画案件の概要、適合状況調査の具体的で詳細な説明(事前電話では基本的に内諾を得ていた。)をしてきました。そして弊社の行う建築基準適合状況調査報告書に添付する図書として福岡市の様式である「建築物施工状況報告書」「委任状」「始末書」を受領してきました。

この「始末書」というのが福岡市独自で興味深かったですね。建築基準法に何らかの違反をし、それを放置してあった場合には当事者としての責任を明確にするために「始末書」を提出させるというのは必要だと思います。

だいたい検査済証のない建物は、何らかの違反箇所があるのが普通ですが、それをどの時点で是正するのが適切かというと、法12条5項報告なり国交省ガイドライン調査を提出し、是正工事を完了検査した後に建築確認申請の提出ということが通常だと思います。

指定確認検査機関に申請した場合は、違反是正後に確認申請提出となることが多いです。

ところが行政に法第12条5項報告を行い、行政に建築確認申請を提出する場合は、違反是正は、確認申請工事と一緒でも良いということになるケースが多いのです。こうすると本来のリノベーション工事と違反是正工事を連続して工事会社に発注することができタイムロスが少なくなります。

こうしたことが 弊社が指定確認検査機関を使わない理由のひとつでもあります。

福岡市・用途変更の取扱い

アクロス福岡 -1

福岡市役所から見たアクロス福岡

思っていた以上に緑化されていました。

段状の林のような様相です。

東京・豊島区役所庁舎も建物の緑化を言うなら

このぐらいの緑化はしてもらいたかったですね。

ステップガーデンになっていて一般の人も利用できます。

心臓に負担が多いので当然ながら登りませんでした。

この建物の形態が、天神中央公園との

一体性を重視して成り立っていることが

初めて理解できました。

天神中央公園側から見るとアクロス福岡に三角形の穴が開いています。

アクロス福岡は遠目では丘に変化していました。

博多出張 ING

2/13~2/15 博多出張中です。

写真は 2/13早朝 新幹線からの富士山の写真です。

朝陽を受けて とてもきれいでした

博多駅筑紫口です。

少し風は冷たいですが晴天です。

今日は調査現場での打合せ、福岡市役所などで打合せをしてきました。

建築士事務所登録数は減少の一途

先日届いた日事連(一般社団法人・日本建築士事務所協会連合会)の2017・2月を読んでいたら、国土交通省から発表された建築士・建築士事務所の登録数が掲載されていました。

平成28年度上半期末一級建築士の登録数は、363,530人という総数のみ公表されています。一級建築士は年々総数は増えていくのですが、現在65歳以上で概ね15万台の登録番号ですから、現役の実数は20万人程度であまり変化はないのかもしれません。都道府県別、年齢別の登録状況が発表されれば、もっと詳しく動向がわかるのですが。

一方、一級建築士事務所の登録数は、平成28年度上半期末で個人・法人合計で78,334事務所で、平成27年度上半期の79,062事務所から728事務所の減少と記載されています。

建築士事務所の登録数は平成12年度をピークに減少の一途をたどっています。

この傾向をどう考えるかというのは諸論あるのですが、建築経済が縮小している。独立開業が難しくなっている・・・・というところが一般的でしょうか。

日事連加盟数が14,861事務所で、全登録事務所の14.1%しか加入していない。東京は加入率10.1%だそうです。

他の「士」業とは異なり任意加入だからか、あるいは存在意義が低いのか。

そう言えば建築士事務所協会に入ってから営業電話とカタログ、郵便物が多くなった。名簿が独り歩きするのは困ったものです。

都市計画法と建築基準法

都市計画法と建築基準法との関係で問題になることが多いのが、都市計画法第29条(開発行為の許可)、都市計画法第37条(建築制限)、と建築基準法の建築確認申請の本受付時期、確認決済時期、工事完了済証交付時期(使用開始時期)等についてです。

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■都市計画法第37条 通称:制限解除、公告前申請

「開発許可を受けた開発区域内の土地においては、前条第3項の公告があるまでの間は、建築物を建築し、又は特定工作物を建設してはならない。ただし、次の各号の一に該当するときには、この限りでない。
(1)当該開発行為に関する工事用の仮設建築物を建築し、又は特定工作物を建設するとき、その他都道府県知事が支障ないと認めたとき。
(2)法第33条第1項第14号に規定する同意をしていない者が、その権利の行使として建築物を建築し、又は特定工作物を建設するとき。」
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上記が都計法第37条の条文ですが第一項による制限解除申請を行い承認された場合に建築等が可能となります。
「建築が可能」とは、取りも直さず「建築確認の本受付」「建築確認決済」「建築工事」は可能となります。建築工事の工事完了検査・済証交付は、都計法開発行為の工事完了検査済証交付後にすれば、建築の使用は制限されます。
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■横浜市・都市計画法(開発許可制度)に関するよくある質問
Q2-4 開発完了前に建築確認申請はできますか
A  建築確認申請は可能ですが、確認済証の交付を受けても都市計画法上は建築工事に着手できません。なお、建築工事を同時に行わなければ開発行為が適切に行えない正当な理由がある場合には、建築制限の解除願を承認しています。
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■容易ではない建築制限解除

都市計画法第29条による開発行為をする必要がある場合、安易に都市計画法第37条第1項による制限解除ができるものとして工程を組んではいけません。

制限解除の詳細規定は、行政庁による「開発行為の手引き」「開発許可制度の解説」等の中に詳細に記載されています。

例えば埼玉県の「開発許可制度の解説」では「審査基準」を下記のように記載しています。

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審査基準
開発許可を受けた開発区域内の土地において、法第36条第3項に規定する工事完了の公告前に建築物の建築又は特定工作物の建設を支障ないと認めるのは、次の各号の全てに該当するときとする。
1 建築等しようとする建築物等は、当該開発許可に係る予定建築物等であること。
2 工事工程上、開発行為に関する工事の完了前に予定建築物等の建築等を行う必要があると認められること。
3 開発区域が現地において明確にされていること。
4 開発行為又は開発行為に関する工事により設置される公共施設の工事がほぼ完了していること。
5 建築等工事の完了に先行して開発行為に関する工事が完了する見込みであること。
6 造成の規模や地盤の性質に鑑み、開発行為と建築行為を同時に施工しても開発区域及びその周辺の安全性に支障をきたさないこと。
承認に付する条件〉
本条の承認は開発工事の工程上、開発行為と建築行為を同時に行うことが合理的と認められるときに、やむを得ないものとして例外的に認められるものです。完了検査を受けずに当該区域を建築物等の敷地として使用することを認めるものではあり
ませんから、原則として工事完了公告前に建築物等を使用することは認められません。このため、法第37条第1号の承認に際しては、原則として次の条件を付します。
条件 工事完了公告前に承認に係る建築物等を使用しないこと

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また、制限解除を承認すると都市計画法の工事完了検査を飛ばす業者も多い為、あまり建築制限解除を積極的に承認しない傾向の行政もあります。

一方小規模の場合は申請を不要としている場合もあります。つくば市では、開発面積が1000㎡未満の小規模開発行為で自己の用に供する開発行為は、一括で建築制限解除したものとみなし個別の申請は不要としています。

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建築基準法の接道基準は満たしているか

次に問題になることが多いのは、建築基準法第43条の「建築物の敷地が道路に2m以上接しなければならない」の規定です。特殊建築物の場合は、条例で定めれた接道長さの規定によります。

一敷地の開発区域で既存の道路に接道しているような場合には問題になりません。

開発区域を幾つかの区画に分け、開発行為による道路をこれから造成する場合は、開発行為による道路(建築基準法第42条第1項第ニ号道路)が実態としては存在していないので、建築基準法第43条は満たしていないことになります。よって建築制限解除の承認を受けていても建築確認申請を本受付することができないことになります。

いくら開発許可申請で「道路」が設計上担保されていても、設計通り工事されているか検査してみないとわかりませんから、実態として接道を満たしているかは大事だと思います。

これを解決するために建築基準法第43条第1項ただし書を活用すべきと指導するところもありますが、住宅ならば包括同意基準がありますが、一般的には建築審査会の同意が必要となりますので、時間も経費もかかり屋上屋を重ねるがごときのようにも思えます。

以上のように都市計画法では良くても建築基準法では不都合な場合もありますから、開発行為が絡むプロジェクトでは調整が必要となります。

自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-明日館講堂」-2

自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-明日館講堂」に参加してきました。

現在、耐震対策工事が進められている重要文化財・自由学園明日館・講堂の修理現場の見学ということで以前から楽しみにしていました。

「講堂」は、1927年(昭和2年)に建てられ、昭和25年頃屋根葺替、昭和37年に部分修理、平成元年に屋根葺替・部分修理、平成13年に設備改修が行われ、平成26年11月から平成29年7月にかけて屋根葺替、耐震補強工事等が行われています。

築90年の建物が今まで比較的良好な状態で利用されてきたのは、この屋根の葺替を始めとした幾たびかの修繕工事がなされてきたからだと思います。

修理工事中の写真は撮影させていただきましたが、インターネットでは公表しないという約束になっていますので、工事看板だけ掲載しておきます。

設計監理は文建協、施工は大成建設東京支店で、見学では文建協の田村さん、大成建設の方から詳細な説明を受けました。

設計者の遠藤新は、自分が設計する講堂の構造の特徴・空間デザインの特徴を「三枚おろし」に例えて論じています。従来の講堂建築は、構造を梁行(輪切り)で設計されていたが、風や地震で倒壊することが多く椀木や控柱で補強するよう法規で決められていたそうです。

この明日館講堂は、市街地建築物法第14条による「特殊建築物」だった思われますが、その第14条は、「主務大臣ハ學校、集會場、劇場、旅館、工場、倉庫、病院、市場、屠場、火葬場 其ノ他命令ヲ以テ指定スル特殊建築物ノ位置、構造、設備又ハ敷地に關シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得 」とあり「必要な規定を設けることができる」とありますが、勉強不足で まだその規定は探し出せていません。

明日館講堂は、平面を桁行方向に三分割し、さらに前後に空間を設けて合わせて九つのゾーンを連続的でありながら、それぞれのゾーンにふさわしい機能を持たせています。遠藤新の空間デザイン論は、中々優れてると思いました。

この講堂は、耐震診断の結果「大規模な地震の際には倒壊の危険がある建物」であること、解体調査の結果、講堂の外壁が外側に倒れ、屋根の棟は中央を最大に垂れ下がっている状態だったそうです。その事は、既存の構造体が屋根の重量を完全には支え切っていなかった事を表しています。

補強工事に際しては、遠藤新の思想を残しつつ「基礎と軸組の健全化」「内在骨格の強化」「壁面・床面・屋根面の補強」の三点を軸に行われたと説明を受けました。

すでに屋根の葺き替えは完了し、新しい銅板屋根が黄金色に輝いていました。

川越

行政との打合せの為に川越市に行きました。

終わった後、少し時間があったので川越駅西口から巡回バスに乗ってみました。今日からまた寒くなるという予報でしたが、今日も日中の陽射しは暖かったですね。

氷川神社で下車しお参りしてきました。当然ながら御朱印をいただいてきました。

御朱印も少しスタンプラリー化してきていますが、そのうちまとめて聖地巡礼をしてきたいと考えています。

バスの中から川越市立美術館。

久しぶりに川越に来ましたが、なんか活気がありました。駅ビルに星乃珈琲店があり、池袋でも東武ホープセンターにしかないのにと思ったりして軽い嫉妬(笑)。随分と商業施設が充実してきたように思います。

西武・東武・JRと三路線の準ターミナル駅で、新宿・池袋・大宮等に近いということで近年住宅価格が上がっていると聞きました。

道が平坦で自転車で移動するには便利、意外とバス路線が充実しているように思えました。

しかし ここ川越でも、蔵の街には騒がしい中国人観光客が押しかけていました。

合間の時間で街を歩くのでなく、もっと ゆつたりと街を歩きたいものです。

エキスパンションジョイントのクリアランス

既存建物にエキスパンションジョイントを設置して増築する建物で、エキスパンションジョイントのクリアランス(有効な隙間)が問題になりました。

隙間(クリアランス)は設計者が変位量の大きさにより決定します。

参考文献としては、ちょっと古いですが日本建築センター発行の「構造計算指針・同解説1991年版」(現在は、「2015年建築物の構造関係技術基準解説書」に統合)に「相互の建築物の一次設計用地震力(建築基準法施行令第88条第1項に規定する地震力)による変形量の和の2倍程度以上を推奨」と記載されています。

また1995年10月「阪神・淡路大震災における建築物の被害状況を踏まえた建築物耐震基準・設計の解説」では、エキスパンションジョイントのクリアランスは、大地震時にも建物相互が衝突しないように、構造計算により算出し設定することが望ましい」と記載されています。

施行令第82条の2【層間変形角】には、「建築物の地上部分については、第88条第1項に規定する地震力によって各階の高さに対する割合が1/200(地震力による構造耐力上主要な部分の変形によって特定建築物の部分に著しい損傷が生ずるおそれのない場合にあっては、1/120)以内であることを確かめなければならない」とあります。

なので上記による略算式としては、クリアランス=エキスパンションジョイントの地上高さ×1/200×2(双方の建物が地震で変形する為)×2倍となります。

10mだと 10000/100×2=200mm

20mだと 20000/100×2=400mm

30mだと 30000/100×2=600mm

という結果になります。略算式だと3階建て程度で200mmのクリアランスが必要ということになります。

問題になった案件は構造計算ルート1-1で、軒高9m以下鉄骨造3階の増築です。

層間変形角の計算は不要なのですが、X・Y方向の層間変形角を算出したところX方向で1/500、Y方向で1/1400でした。パラペット高さを9600mmとしてX方向の変位量は19.2mm、Y方向の変位量は6.9mmとなります。以上により一般的なクリアランスである50mmに設定しました。

既存建物に増築する場合のエキスパンションジョイントのクリアランスは、低層の建物は略算式によらず 実際の変位量、層間変形角から判断して決定した方が良いと思います。

「聖地巡礼 リターンズ 長崎、隠れキリシタンの里へ」内田樹×釈徹宗  

この正月に読んだ、内田樹×釈徹宗の「聖地巡礼 リターンズ~長崎、隠れキリシタンの里へ」聖地巡礼シリーズの第三弾です。

「聖地」は、幾つかの類型に分けることができると書かれています。

1、その場が本来的に持つ特性による聖地

2、物語(ストーリー)による聖地

3、個人の経験や思い入れで成り立つ聖地

この第三弾の聖地巡礼で取り上げているキリシタンの足跡は、どちらかというと「物語による聖地」の傾向にあります。この地で繰りひろがれたキリシタンの関係の事件や逸話は、強い宗教性を帯びていて、とても重く心にのしかかります。

「信徒発見」(禁教後250年間信徒が潜伏)や「二十六聖人殉教」は、世界のカトリック教会でも歴史上名高い事件です。日本国内での評価以上にカトリックの中では評価が高いと聞いています。

私にとって長崎は どちらかと言うと避けていた土地です。

それは、いま映画が放映されている「沈黙-サイレンス-」の原作である遠藤周作の「沈黙」を若い時に読んだことに起因するかもしれません。読後は気がめいって、出来れば避けていたかったと思ったものでした。

1/21から放映された映画も、多分クオリティーが高くて良い作品だとは思いますが、面白いという性格の映画ではないのではないかと予想しています。

 

東京都建築士事務所協会のコア東京2017.1月号に、研修旅行「世界遺産と長崎の教会群を見る」の記事が掲載されていました。

長崎の教会建築は、様式は多様で、構造も木造、石造、鉄筋コンクリート造等多種にわたっていますが、建築の要素だけ取り出しても深く理解できない土地かと思います。

釈徹宗さんが、聖地を訪ね場合は、ロゴス、パトス、エトス(信仰や宗教体系が生み出した土地の生活様式や習慣)、トポス(場が持つ力)のこの四つをバランスよく感じ取ることが聖地巡礼の基本姿勢と書かれています。

他の事象から切り離し、建築・建築技術だけみることは 避けなければならないと再認識した次第です。