2015年を振り返って

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【写真は、1歳2ヶ月になった初孫の初めての靴】

2015年もまもなく終わります。

今年を振り返ると、業務を通じて戦前の法律である市街地建築物法やその成立過程について詳しく勉強する機会がありました。そうしたことが刺激になり近世から建築基準法成立までの「日本建築法制史」が整理できてきました。また建築ストック活用・再生・リノベーションというような業務からイノベーションの領域に足を踏み入れた一年でもありました。

私事ではありますが、昨年の暮れに長女夫妻に子どもが生まれ、また今年初夏には長男夫妻に子どもが生まれました。たてつづけに二人の女の子の孫がいる爺ちゃん・婆ちゃんになってしまいました。

爺は、孫の誕生によって全体的には後ろ向きだつた物事に対する意識・姿勢が前向きに変わりつつあること。子どもたちの頃には、無関心に近かった食の安全、保育、子どもを巡る社会環境等に俄然関心を持つようになりました。

「生きがいは?」と聞かれたら「孫」と躊躇なく断言する爺・婆です。

そんな二人が運営する事務所ですが、2016年以降は異なる領域のコラボレーション「建築×食・栄養」によってイノベーション業務に関わっていければと考えております。

来年度も引き続きブログを中心に書き続けていきますが、幾つかの領域に関するコンテンツを結合したものに再編成したいと考えています。

今年の更新はこれで終了とさせていただきます。

今年1年間のご愛読に感謝いたします。ありがとうございました。

来年も引き続きご愛読のほど、お願い申し上げます。

来るべき新たな年が、皆様にとって良い年でありますように。

渡海

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門司港から渡海して下関・唐戸港に行った。一度は下関側から門司港の街並みを見ておきたかった。

写真は、唐戸港から門司港を映す。

以前から下関側に来てみたかったが、フェリーに乗っていた時間は5分ぐらいで、あっという間に渡海した。

海は穏やかだったし、距離も短かいし、古代から本州と九州の往来は頻繁だったろうと予想できる。

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カモンワーフという飲食店が集まる施設。

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唐戸市場と関門橋

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唐戸港フェリー乗り場から唐戸市場へ

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唐戸市場は、年末休業に入っていた。

フェリーは大人往復800円、乗船客は数名だった。

出張

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クリスマスイブに北九州に出張だった。

打ち合わせの時間が午前中だったので羽田からスターフライヤーで北九州飛行場へ。ほぼ満席だった。

スターフライヤーは、7年連続顧客満足度1位とか。椅子は革張りだし国内線としてはいい感じ。

飛行機は嫌い(怖い)なので、北九州への行き来は、ほとんど新幹線を利用しているのだが、今回は前泊する時間的余裕がなかったので飛行機を利用。

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小倉駅までのノンストップバスを待つ。

雨が上がり、暑かった。

「建築」は魅力がなくなったのか

毎年末の一級建築士の合格発表を見ていたら、今年の一級建築士の実受験者数は2万5千人あまりだったようだ。昔は毎年5万人ぐらい受験していたものと記憶していた。どうも2005年頃から低下し始めて、ここ10年程で半減したようだ。

国内の名目建設費は1992年の92兆円をピークに20年間下がり続け凡そ半減したあと、2010年・2011年頃を底に上昇に転じている。しかし2013年の東日本震災復興と2020年の東京オリンピックで一定の上昇はするだろうが、その後の未来はよく見えない。

一級建築士の受験資格があるのは大学の建築系学部を卒業して実務2年だから、年齢にして24・25歳というところだろうか。今の受験世代は、国内建設投資が下降してきた時代に育った世代で、建設業界では失われた20年とも言っているが、建設業の倒産、リストラ、他業界への転出に見舞われた時代だった。

私が一級建築士に合格したのは1982年。学生時代に見えていたのは建設業の輝ける姿だった。その象徴はゼネコンだったし、組織設計事務所だった。

今年11月、鴻池組が積水ハウスの傘下に入ったと報じられた。フジタは、2013年に大和ハウス工業に買収された。今後も不動産大手がゼネコンを傘下におく傾向は増えるだろうが、時代は変わったのだと思った出来事だった。

進化論を唱えたダーウィンは、「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」と、また最近耳にすることが増えている。2013年に小泉首相の所信表明演説で引用されたけど、この言説はダーウィンの著作にはなく、後の時代の創作であるというのが定説。まあしかし「変化に対応する」そういうことなんだろうなとは思う。

余談だが、本来のダーウィンの学説からすると「変化に対応できるというより、繁殖能力の高いもの」が生き残るらしい。

師走

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あれよあれよという間にもう師走。

12月も半ばになった。

仕事の締め切りに追われている。

たぶん年末まで・・・

書いておかなければならないことがあるのだが

手をつけられずにいる

何だか落ち着かない

と言いつつwordpressがバージョン4.4になったので

更新してテーマも新しくした。

スタイリッシュ

カスタマイズして遊んでいるような状態か?

 仕事、仕事

子供の貧困問題~放置すれば経済損失2.9兆円 日本財団

「子供の貧困問題:放置すれば経済損失2.9兆円 日本財団」というショッキングな記事が、毎日新聞12月3日号で報じられていた。

http://mainichi.jp/select/news/20151203k0000e040222000c.html

「研究は、今年7月~11月、日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティング(東京都)が実施した。15歳の子ども約120万人のうち、ひとり親家庭の15.5万人、生活保護家庭の2.2万人、児童養護施設の0.2万人の計約18万人を対象とした。子どもの時の経済格差が、学力や進学率の教育格差を生み、将来の所得に影響すると推定し、現状のままの場合と教育格差を改善した場合を試算した。

 大学や専門学校などへの進学率は80%に達しているが、貧困世帯の子どもは32%にとどまる。18万人の就業状況を推定すると、正社員は8.1万人、非正規社員3.6万人、無職4.8万人などとなり、現状では64歳までに得る所得の合計は約22.6兆円だった。

 一方、何らかの対策が行われ、高校の進学率、中退率が一般家庭の子どもと同じになり、大学などへの進学率が54%まで上昇したと仮定すると、正社員は9万人に増加し、非正規社員は3.3万人、無職は4.4万人に減少して、合計所得は約25.5兆円に増えた。

 所得が増加すれば、国に納める税金なども増える。税と社会保険料の個人負担額から、医療費や生活保護費などの給付額を差し引いた「純負担額」は、現状では約5.7兆円だが、改善すれば約6.8兆円になった。

 厚生労働省によると、17歳以下の子どもの貧困率は16.3%(2012年)で過去最悪を更新し、6人に1人が貧困状態にあるとされる。日本財団は「子どもの貧困を経済的観点から見た調査はこれまでなかった。国民全体の問題と捉え、官民の対策の後押しになれば」としている。【黒田阿紗子】」

外国の子供の支援をしているどころではなく、足元の日本の子供たちの貧困が危ぶまれているのだ。慈善事業に頼ることなく、緊急に経済対策としても取り組まなければならない。

「旅はゲストルーム」浦一也著

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もう10年ぐらい前に出版された本なのだが、仕事で煮詰まったときに、この本で取り上げられているホテルのスケッチをながめ、ネットでホテルを検索して、HPを見ながら海外旅行やそのホテルに泊まった場合を夢想するという、私にとって息抜き、ちょっとした現実逃避のための本である。

1994年に「TOTO通信」に連載されていた時から楽しみにして読んでいた。ここで取り上げられているホテルの多くが五つ星や四つ星の高級ホテルで、いつかは泊まってみたいなぁ~と、あこがれていた。

若い時にイタリア・コモにテラーニのカサ・デル・ファッショを見に行った時は、貧乏旅行だったし、高級ホテルは調べてもみなかったのだが、コモ湖畔の「ヴィラ デステ」は五つ星でも星が足りないとも言われているホテルだし、私が生まれて初めて海外で訪れた地がウィーンだったのだが、そのウイーン中心部にある「ホテル・インペリア・ウイーン」は迎賓館とさえ言われている。

アジアでは、ベトナムの「ホテル コンチネンタル サイゴン」とか、台湾の「ザ・シャーウッド台北」とか、自分でも手の届きそうな宿泊料のホテルもあるのだが、30歳代を最後にすっかり海外旅行とは御無沙汰してしまつた身としては、これら高級ホテルに宿泊するのは今や高嶺の花であり、夢想するにすぎないものになっている。

仕事で国内のホテルに泊まっている方だとは思うが、大概は駅近くのビジネスホテルの無味乾燥な客室ばかりではあるが写真撮影と軽く実測はするようにはしている。こうしておくと、空間のスケール感覚を養うことができる。

さて今夜のホテルはどこにしょうか・・・。

日本建築学会住宅系研究報告会・10th

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異質なものに触れると脳が活性化され認知症予防になるからという友人の誘いで日本建築学会の第10回住宅系研究報告会に行ってきた。

たまに電車に乗って出かけると、目で見るもの聴くもの全てが刺激的だ。

田町の建築会館に来たのは何年ぶりだっただろうか。

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この住宅系研究報告会は、建築計画委員会・建築社会システム委員会・都市計画委員会・農村計画委員会が共同で開催しているらしく、購入した論文集も豊かな内容だった。

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第一日目の午後の部である、セッション2「集落の地域性と空間構成」とセッション3「復興とすまいの諸相」、パネルディスカッションの「地域に『住ま・ふ』ためのストック考~住宅系研究の次の10年を見据えて」のみの参加となったが、それぞれ報告者との質疑回答も活発で楽しく聞かせてもらった。

通常、住宅系の仕事には触れていないので、友人の言うように異質のものに触れると確かに脳の活性化にはなるようだ。

食を中心に据えた地域の活性化

■食の貧困化は全世代に~とりわけ重大化している子どもを巡る「食」の貧困化

日本では、子どもの6人に1人が貧困状態にあると言われています。その背後にあるのは、家庭の貧困であり親たちの貧困です。とりわけ、ひとり親(シングルマザー)家庭の貧困率は50%を超えており、深刻な状況となっています。

又、朝ごはんを食べないという食習慣を親から子へ引き継いでしまっている場合もあります。

その中で、子ども時代のまっただ中にある子どもたち、特に貧困状況にある子どもたちに対し、美味しい食事・幸せな時間・地域とのつながりを無料や低価格で提供する「子ども食堂」の試みが、全国各地で行われ急速に広がっています。

聞くところによると現在、都内で22件の子ども食堂が活動していると言われています。

これら子どもは無料若しくは低価格で、ごはんを一緒に食べようという試みです。しんどい状況にあるシングルマザー親子に「実家の様な居場所を地域につくろう」、地域で「子どもたちを見守りサポートしよう」という地域の連携の中から地域を活性化するまちづくりの取組みでもあります。

子どもだけでなく非正規雇用が40%を超えた日本では若い世代でも、「下流老人」が増えている高齢者の世代でも「食」の貧困は進んでいます。

■地域の実状や要望に応じた「食堂」が生まれている

「子ども食堂」や「ユースカフェ」、「おとしより食堂」等の世代別の企画や、通常の食堂の運営の中に組み込むなど多種多様です。しかしながらボランティアが寄付などによって運営をまかない月2回程度の食事を提供することにとどまっています。月2回の食事だと一日3回、月90回の食事のうち2/90=2.2%の食事を援助しているに過ぎません。

ボランティア運営からビジネスモデルの策定を指向

もっと恒常的に食事を提供できないか、こども達の居場所を作ることができないか、そんな思いの中から小さくてもビジネスモデルを確立して、「家業」で運営していく「食堂」を作ろうという動きが始まっています。

■地域活性化食育プロジェクト

名付けて「地域活性化食育プロジェクト」です。

食事を提供するだけでなく空き店舗・空き室の利用を図り、地域での交流を促進します。これらは、まちづくりの活動でもあります。大学・地域・行政との連携をはかりながら弊社は、その活動の中心を担っていこうと思っています。

■高度集積化ではなく住み続けられるまちづくりを

街は再開発が進みタワーマンションが建てられ、既住民の約80%以上が住み慣れた場所を去らねばなりません。一説によるとタワーマンションの2/3の住民は、転入者であり職業は医者であると言われています。

今、子どもたちの間では親の職業による差別やいじめがあると指摘され、地域に今までになかった職種の偏りを生じさせ、「いびつな街」を生み出しています。

長年関わってきた建築業務によって、いびつな街が生まれてきてしまったという現実は悲しいことです。残り少ない時間を人に役立つことをしていきたいと考えているこの頃です。

【覚書】難燃材料

難燃材料とは、

「建築材料のうち、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後5分間第108条の2各号(建築物の外部の仕上げに用いるものにあつては、同条第一号及び第二号)に掲げる要件を満たしているものとして、国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。」(建築基準法施行令第1条の六)

建築基準法施行令第1条第六号(難燃材料)
平成12年建設省告示第1402号(難燃材料を定める件)

一般には難燃合板、難燃繊維板、難燃プラスチック板などの材料が難燃材料に含まれる。

その物が薄く下地の不燃性能に影響されるクロスや塗料・吹付材等については、下地面材(基材)との「併せ技」で認定を取得している。

このような材料は、下地の種類に応じてその仕上がった状態での不燃性能が異なってしまう。

塗料などで国土交通省防火材料/不燃材料認定とあり認定番号NM-■■■■とあっても、決められた基材での認定なので、かりに木材等の可燃物に塗装しても難燃材料とはならない。

木部系塗料で樹脂限定(松系等)で認定を取得しているものがある。

国士舘大学世田谷キャンパス

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久しぶりに世田谷区役所に行ってきた。東急世田谷線の松陰神社前で下車して住宅街を抜けていくのだが、いつも道を間違えてしまう。

しばらく来なかったうちに、国士舘大学世田谷キャンパスが新しくなっていた。

写真は、メイプルセンチュリーホールで2013年に竣工したらしい。体育館とか温水プール、フィットネスジム、学生ラウンジからなる複合施設。

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上の写真は中央図書館・情報メディアセンター

雨交じりの天気だったので写真を撮る意欲も起きず、スナップのみ。

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世田谷区役所第一庁舎。前川国男さんの設計で1960年に竣工したので55歳

大分疲れてきた感じがするが、残しておいて欲しい庁舎建築のひとつ。

検査体制はひとつも機能しなかった

友人からの情報によると 今、建設会社や大手の設計事務所では、「杭」に関する建築主からの照会とその対応に追われ通常業務が出来ずにいるらしい。あの耐震偽装事件の頃を思い起こして、現役の人達は大変だろうなと思った。

横浜市の「パークシティLaLa横浜」の傾きに端を発して次々と明らかになった旭化成建材の杭打工事のデーター偽装は、全国各地の公共施設にまで波及し、さらにジャパンパイル等の他の杭打ち業者にまで広がっており、地盤と杭の認定工法の問題、施工管理のありかた、重層構造、工事検査体制、確認中間検査など建設業界の構造的問題を幾つも露呈し、業界全体の信頼を揺さぶる問題に広がってきている。

あの耐震偽装事件とその後の建築基準法の改正を経て、建設業界への信頼も回復し少しは落ち着いていたように見えたが、今回の問題は、耐震偽装のときより大きな問題になっていく予感もある。これから原因究明・保障・行政処分・法改正と収束していくのに10年近い年月がかかるのだろうか。

今度の事件を知り残り少なってきた人生を、未だに建築業界に投じて糧を得ている事が、なんだか空しく感じている。そんな個人的思いを書いていても仕方ないので「検査体制」について書いておきたい。

元請け建設業者には、施工管理を行う監理技術者を置き安全を確保する責任がある。今回の問題では、建物の安全にとって最も重要な基礎杭が支持層(強固な地盤)に届いておらず、杭を固定するコンクリートのセメント量のデータも偽装していた。施工会社(元請け)の三井住友建設の監理責任が果たされていなかった。(そこには、工事現場の職員構成が一握りの正社員と工事期間に限定された契約社員・派遣によって成り立っているという工事管理体制のあり方も問われるだろう)

「パークシティLaLa横浜」は、三井住友建設の設計施工であり、三井住友建設一級建築士事務所の管理建築士には、建築法令や条例で定める基準に適合するよう設計、監理することが義務付けられているわけだから、設計上の工事監理者の検査は、まったく機能していなかったことを示している。(杭打ち工事の最初のみ立ち合い、後は、杭打ち業者まかせだったという報道もある。重点監理方式では結局施工業者任せとなる)

1998年の建築基準法改定で、それまで地方自治体の建築主事が行っていた建築確認検査を、民間の「指定確認検査機関」でも可能にするなどした建築行政の規制緩和はどうだったのかということを振り返り、問わなければならないのではないかと思う。

建築会社・設計事務所・指定確認検査機関と勤務した経験から、現在の建築に関わる「検査」は形式的になるばかりだ。(指定確認検査機関の検査員の一日あたりの検査件数を調べてみれば、驚愕すると思う。例えば特殊建築物だと膨大な施工実施報告書を見なければならないが、その時間は少なくなる一方だし、特殊建築物でも住宅でも相当な件数を一日に検査することが強要されている)

建築基準法に基づく中間完了検査も機能しなかった。報道では指定確認検査機関については個別名が出ていないが、いずれ明らかになることだろう。

2005年におきたマンション耐震強度偽装事件から10年。また大規模なデータ偽装が再びおこったことは、国・自治体が徹底解明とともに、再発防止にむけて安全性確保のための建築確認検査についての体制整備、中立・公正な第三者による検査体制の確立など抜本的改善を図る必要がある。

しかし道は遠い。

水戸市低区配水塔

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水戸市役所は現在、改築中で丁度 半分ぐらい建屋の解体が進んでいた。

市役所は幾つかの仮設建物に分散して業務が行われているが、

本庁舎臨時庁舎や三の丸臨時庁舎と渡り歩かないとならない。DSCF2087_RDSCF2094_R

三の丸臨時庁舎の道路向かいにあるこの低区配水塔は、水戸市街の低地部分に給水するため、水道技師・後藤鶴松の設計・市の直営工事により昭和7年に完成し、平成11年度まで現役で活躍していた。その優美な姿は建設直後から評判が高く、平成8年に国指定の登録有形文化財になっている。

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小石川二丁目マンションが確認申請取消処分

昨日、友人から電話がかかってきて、東京都建築審査会が小石川二丁目マンション(ル・サンク小石川後楽園)の建築確認申請を取消したと新聞で報じていると知らされた。

【東京新聞 2015年11月14日朝刊】

『文京区で建設中のマンションが建築基準法に違反しているとして、近隣住民が都建築審査会に建築確認を取り消すよう求めた審査請求があり、審査会が取り消しの裁決を下していたことが分かった。法律で安全確保が定められた、道路に直接通じる出入り口がある「避難階」に問題があるとされた。裁決は2日付。
このマンションは文京区内の傾斜地に位置し、地上8階地下2階建て。約100戸は完売している。急坂に面した地下1・2階と、地上1・2階が避難階となる。
 審査会は、このうち、一階の駐車場から道路へ出るために約2.5メートルの高低差があるスロープを上らねばならない構造になっていることなどを問題視した。区内の9人の住民が行った審査請求の申立代理人を務める日置雅晴弁護士は「危険なマンションに人が住むことを未然に防ぐ画期的な裁決」と話した。
 建築確認は民間の検査機関が行い、都に報告した。検査機関を指導・監督する都は、審査会の裁決を受け、建築主に「違反状態」の是正を指導できる。』

もうかれこれ10年以上争われている係争案件だったし、2005年にも清水建設の設計施工で確認が出され、(株)東京建築検査機構(TBTC)にて建築確認が許可されたものが東京都建築審査会で確認取り消しになっている。その後清水建設は事業から撤退し、設計は日建ハウジングシステム、施工は安藤・間で事業が進められていた。事業者は最初からNIPPOと神鋼。

都市計画法の開発許可に対する審査請求、棄却などを経て、今回の建築確認申請は2012年に都市居住評価センターが建築確認処分。2012年9月28日に付近住民9名が東京都建築審査会に審査請求をしていた。審査請求から裁決までに3年かかっている。まあ都市居住評価センターは、国交省に再審査請求なりをするだろうから、まだまだ係争は続くことだろう。

本年9月に確認申請の執行停止が東京都建築審査会で決定されていたので、最終的には建築確認申請は取消されるだろうと個人的には予想していた。

実は、この2015年9月7日付の執行停止処分が出たこと自体が画期的な裁決で、事例も少ないのではないかと記憶している。

この案件については、もっと住環境に配慮した事業計画や設計がなされても良かったのではないかと思っていた。

友人から電話で聞かれたことはこうした係争案件で敗訴した指定確認検査機関の確認検査員(決裁者・担当者)は、これから起きるであろう事業者等からの損害賠償請求についていかなる保証義務を負うのかということだった。

たぶん担当した確認検査員は、針の筵の上に座らされている精神状態だろうから、ここで書くのは控えさせてもらう。

この案件についての事実経過は下記のサイトが詳しい

小石川二丁目マンションの無秩序な開発・建築を考える

『2025年の建築「七つの予言」』

2025年建築

人口減少、建築・住宅ストックの増大等、急速に変わりつつある今日の日本の社会状況、経済環境に対応する建築業界の将来を考えるための本。
建築・不動産に関わる実務者や研究者、関連メーカー、学生などが参画する一般社団法人「HEAD研究会」が開催した、連続シンポジウム「七つの予言──その先の建築」の再録を中心に構成されている。
全4回の連続シンポジウムでは、松村秀一・東京大学大学院教授による建築講義「七つの予言」(業界予測、技術予測等)を踏まえた上で、それらに関する予見的な活動を始めていると思われる第一線の建築家や不動産事業者、建築・住宅関連の研究者などが講演と議論の内容が記されている。
松村教授による新たな書き下ろしが加えられ、連続シンポジウムの企画・監修者である嶋田洋平氏(建築家、HEAD研究会フロンティアタスクフォース委員長)による各回解説などを加えて編集された本。

松村教授は、いつ神の啓示を受けたのかは知らないが、なにやらちょつといかがわしさも感じる本の題名で、しばらく前に買っておいたが積んだままだった。風邪で休んでいて新しい本も買えなかったので読んでみた。

近年、建築系の大学出身者で設計者×不動産×建築施工と多面的に活動しビジネスにしている若い人達が増えている。「建築家は専業」と教わった我々の時代とは「建築家の職能」も随分と様変わりしているようだ。
ともかくリノベーション(ストック活用)や地域再生・まちづくり、新しい社会状況・経済環境に対応する建築の構法・建築技術に関心を持っている方は、読んでおいた方がよいだろう。

霜月(しもつき)

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【門司港ホテルの客室の窓から】

10月末の京都・北九州の出張から帰ってきてから風邪をひき

市販の薬に始まり、病院から処方された薬を飲んでいるのだが、

いまだに咳が止まらなくなり呼吸が苦しくなる。

もう11月、霜月(しもつき)だというのに

充分に仕事に集中できていない。

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【門司港ホテルの客室】

今年の後半は、ほぼ北九州のプロジェクトにかかり切りになった

現在の仕事の内容は「コンバージョンの為の検討調査業務」で、

今年の12月には一区切りつくのだが、

来年以降、複数年にわたって

このプロジェクトと関わるかどうかは微妙なところ

いつのまにか、北九州が自分にとって身近な存在になってきている。

三宣楼

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 門司港レトロ地区にある木造三階建ての料亭「三宣楼」(さんきろう)

昭和6年に開業し昭和30年頃廃業

地元の保存活動の末、北九州市に寄贈

平成26年に保存修復が完成し公開されている。

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玄関

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個室だったところ

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2階大広間

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かしわうどん@小倉駅

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 北九州市小倉駅の在来線ホーム(7、8番線)にある

「かしわうどん・そば」・北九州駅弁当さんの店

駅の立ち食いソバのたぐいは大好きだ

蕎麦・饂飩と一口に言っても全国各地で麺の硬さや使う粉が異なり、

汁の味わいも相違し地方性が如実に現れる。

小倉駅で何か食べようと思っても駅ビルに入っている飲食店は、

ほとんどが大手チェーン店で食指が伸びない。

その点、駅の立ち食いそばには、期待を裏切られたことがあまりない。

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「かしわそば」は、あっさりめの汁に、

少し甘辛く煮た鶏肉が乗せられているのだが違和感はない

これがスタンダードらしい。

美味しかった。

別のホームではラーメン専門の店がホームにあるようだが

いまだ食べたことがない。

ぶらり京都街中 -2

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 四条河原町

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鴨川

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高瀬川

若い時見に来た安藤忠雄のタイムズはどこだったかなぁと探したら

場所を勘違いしていたことに気がついた。

タイムズは三条通りと木屋町通りの角だった

高瀬川を見ていたら心穏やかな気持ちになり、

しばし川に沿って歩いてみた

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高瀬川と鴨川の間にある京町屋を改装した一軒家レストラン

スコルピオーネ吉右(きちう)

京野菜を使ったイタリアンらしい

このあたりで足が疲れたので市バスに乗り京都駅に

新幹線に乗り北九州市に移動した。

ぶらり京都街中 -1

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 京都での仕事が思いのほか早く終わり、

烏丸御池から京都駅にむかって、ぶらりぶらり街なかを歩いた。

上の写真は三条通りの中京郵便局

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イノダコーヒー本店・三条通りから少し入る

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京極かねよ・鰻の店

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ろっくんプラザ新京極六角公園

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寺町通りの古美術・版画の大書院

浮世絵が沢山売られている

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久しぶりに錦市場を覗いて歩いた。

焙煎中の番茶の香りに誘われて、100g購入

「歴史的遺産の保存・活用とまちづくり(改訂版)」

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2006年で少し古い本だが文化財の法制度や補助事業、関連法規や防災面の取組み、アメリカや日本における実践例、町家や茅葺の再生、NPOの動きなども記載されている。

建物を保存するだけでなく、現在の生活に役立つものとして活用しようとする業務に従事しているものには必読かもしれない。

特に興味深かったのは「近代に建てられた建築の保存・再生の技法」梅津章子氏の論文。以前京都市に行って景観条令に関する資料を貰ってきて読んでいたので その源泉のような内容の論文で感心した。

さらに「歴史的遺産の地域的活用手法」三船康道氏の論文も興味深い。「活用を点から面に進める各種手法」の成功している実例は参考になる。

最近は、事務所の仕事も従来の「調査関係」から「公共施設リノベ」へと変わってきている。公共施設の「点」のリノベーションも都市や地域の文脈の中で見ていかないとならないと常々思っている。

歴史的価値か経済的合理性か・・九州大学箱崎キャンパスの場合

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福岡市東区箱崎6丁目にある九州大学箱崎キャンパスは、九州帝国大学・同工科大学の設置に伴い1911(明治44)年に開設された。同キャンパス内には長い歴史を物語り、大正から昭和戦前・戦中にかけて建てられた近代建築が数多く残っている。今では同時期の建物が多く現存していない日本では、九州大学箱崎キャンパスの建築群は、歴史的建造物として大きな価値を有している。

箱崎キャンパスは福岡市西区と糸島市に跨る伊都キャンパスへの2019(平成31)年までの移転が予定されており、これらの建築群の将来が危ぶまれている。

そうしたなか2012年、移転後の取扱いについて方向性を探るべく、主要な近代建築を対象として有識者による調査が行われた。(九州大学箱崎キャンパスにおける近代建築物の調査ワーキンググループ)

これによって保存活用への道が開けたものもあれば、逆にその後解体撤去されたものもあり、建築群の将来は移転計画が進むにつれて明暗が分かれ始めている。

「九州大学箱崎キャンパスにおける近代建築物の調査ワーキンググループの評価報告」(2012年、H24.12.25、第5回九州大学跡地利用将来ビジョン検討委員会参考資料より)によると、近代建築物の客観的評価として以下の4つの大項目、7つの中項目を設定している。
■歴史的評価

1、大学の歴史的経過と結びついた価値評価
2、 社会、時代の歴史的経過と結びついた価値評価、産業遺産など

■建築学的評価

1、建築の意匠史的側面からの価値評価、様式、近代建築、モダニズム建築、インテリアデザイン、営繕の制度的評価

2、 建築の技術史的側面からの評価、構法、素材、建築設備、環境配慮など
■文化的評価

1、社会全般に対する文化的資産、芸術性、社会性、シンボル性
2、地域の文化資産、地域景観資産としての評価、地域への貢献

■再活用度評価

1、街づくりとしてのランドマークなどの利用価値評価、敷地、敷地建物としての再利用のしやすさ

各建物の評点の他に、耐震性能(Is値)、コンクリート中性化深さの平均、コンクリート圧縮強度が示されている。

この中で「安全性に問題有りと認められる近代建築物」として、「コンクリート圧縮強度が13.5N/m㎡以下もしくはコンクリート中性化深さ(平均)が40mm以上の建築物もしくは施設の特殊性から再活用困難とされる建築物」と位置付けている。

古い建物の再生に関わると歴史的価値か経済的合理性か悩む日々が続く。

硫酸ナトリウムの結晶成長によるコンクリート劣化現象

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とある鉄筋コンクリートのビルの地下室スラブで見付けた 硫酸ナトリウムの結晶とおもわれるもの。

硫酸ナトリウムは、火山国の日本列島の土壌に基本的に含まれているもので、その結晶成長は全国どこでもある現象なのだが、住宅医協会によると既存木造住宅の調査をした時に住宅の基礎でたまに見られると言う。

私が特殊建築物・鉄筋コンクリートの建物で硫酸ナトリウムの結晶成長を見たのは始めてだった。

硫酸ナトリウムは、一定の温湿度条件になると結晶化し、コンクリートをボロボロにするものだが、この建物ではスラブ表面が荒れている他に顕著な傷みは見られなかった。

どういう条件で硫酸塩が発生したのかということだが、私は、地下水位-1.8mでしかも海に近いという土壌・立地により室内の環境が整い発生したのではないかと考えている。

現地調査の為 建物に入ったとき とても湿度が高いと感じていたが、湿度も関係するのだろうか。