「法令に基づく申請」@行政不服審査法

「法令に基づく申請」は、行政不服審査法第2条で不服審査の対象となる「不作為」についての定義として 規定されている用語だが、「法令に基づく申請」についての明確な定義はない。

「申請」については、行政手続法第2条で以下のように定義されている。

「法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を 付与する処分(以下「許認可等」という。)を
求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされ  ているものをいう」

ここから「法令に基づいて行政庁に諾否の応答義務がある場合に、 行政庁にその応答を求める行為」と考えられる。

ここで法令、条例や細則等に基づく各種の届出が「法令に基づく申請」にあたるかどうかは議論が分かれるところ。

建築確認申請で言えば、例えば「中高層予防条例」。

これは建築関係規定ではないが、お知らせ看板=標識と報告書を提出する。条例によって規模で期間を規定しているが、例えば確認申請受付の30日前に提出するとか、何月何日に確認申請を提出してくださいと副本に記載される。またその日付を確認して指定確認検査機関は受付するようにしている。

建築関係規定ではないが行政と指定確認検査機関の紳士協定で、さも関係規定のように運用されているのが実態だ。

行政は、中高層予防条例は関係規定ではないと言う一方。実際には関係規定と同様な運用を建築主、設計者、指定確認検査機関に強いている。

これをダブルスタンダードという。

【覚書】ホーリズム(Holism)

ホーリズム(Holism)とは、ある系(システム)全体は、それの部分の算術的総和以上のものである、とする考えのことである。あるいは、全体を部分や要素に還元することはできない、とする立場である。

すなわち、部分部分をバラバラに理解していても系全体の振る舞いを理解できるものではない、という事実を指摘する考え方である。部分や要素の理解だけでシステム全体が理解できたと信じてしまう還元主義と対立する。

全体論と訳すこともある。

役場の食堂@都庁

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都庁第二庁舎の 建築指導課で省エネの届出を提出し、その足で16階の環境局に行き建築物環境計画書を提出。

環境計画書は、一箇所毎に記載事項の確認と添付書類の事前チェックが丁寧に行われて、結構時間がかかった。

16階からエレベーターで降りるとき 昼にはまだ少し早かったが4階の職員食堂に立ち寄る。

ニュートウキョウで肉もやしラーメン・醤油味(490円)を食べる。

味はまあまあ。もやしが多かった。

都庁第二庁舎の駐車場代金は二時間弱で800円。

建築病理学の構築

「建築病理学」とは、1993年国際建築協議会で「Building Pathology」として定義され、

  1. 既存建物の欠陥の同定、調査、診断
  2. 診断された欠陥の経過予想
  3. 補修設計とその監理
  4. 補修建物のモニタリングと評価(機能、性能、経済性)

を主要な内容としている。

イギリスでは、改修の検査業務を請け負う134年の歴史を持つ公認資格「RICS」がある。

木造の分野では、一般社団法人・住宅医協会や岐阜県立森林文化アカデミー等で体系化して技術者の育成を図っている。

自分は業務としては、木造にほとんど関わっていないのだが、現在、「住宅医スクール2014・東京」を受講している。

月1回24講座+特別講義8講座を受講して実践的な調査を行い報告して認定されないと「住宅医」という称号は授与されないという。今時、粗製濫造ではないかと思われるような資格が氾濫しているなかで気骨あふれるセミナーの内容だと思ったのが受講の動機である。建築病理学を木造分野で体系化しているというので、そのカリキャラムの構成にも関心があった。

自分が業務として関与しているのは、ほとんど特殊建築物だし、鉄筋コンクリートや鉄骨造だから、そちらの総合的な診断には大いに関心があったが、住宅医セミナーのカリキュラムは、木造住宅の「リノベ+エコ」というような内容となっている。

住宅医セミナーでは、建築法規の内容が薄いと思っているが、木造住宅が主要な対象となっている事から仕方ないのかも知れない。

ただ、木造建築でも住宅からグループホームやシェアハウスへの用途変更、検査済証の無い増築等も事案として増加してきているので、もっと建築法規に触れるべきだろうと思った。

私が関わっている特殊建築物(RC・S)の増築・用途変更では、建築法規は必須であり、その分野の業務(調査・許認可)だけでプロジェクトに招聘されることが多い。

ストック活用と言っても、細分化した建築技術を統合する「総合診療医・ドクターG」ような人材を育成する「建築病理学」を学問的に構築をするべきではないかと考えるこの頃である。

旧巣鴨村・大塚天祖神社

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大塚天祖神社は豊島区の旧巣鴨村の鎮守様

JR大塚駅北口で御神輿に出くわした

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豊島区は江戸時代の村域では

武蔵国豊島郡上駒込村、巣鴨村、雑司ヶ谷村、下高田村、

長崎村、新田堀之内村、池袋村の7村で構成されていた

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大塚天祖神社の神楽

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旧巣鴨村は、現在の住所で言うと巣鴨1丁目~5丁目、西巣鴨1丁目~4丁目、北大塚1丁目~3丁目、南大塚1丁目~3丁目、上池袋1丁目、東池袋2丁目~5丁目

豊島区全体では、129の町会があるのだけれど

御神輿を見ていると、元気な町会がうかがい知れる。

天祖神社の祭礼に際して、子供神輿なども含めると100ぐらいの神輿が出たのではないかと思われるが、写真にあるような宮入した神輿はわずか。

再開発の影響で古くから住んでいる住民は街を離れざるを得なくなり、こういう伝統的な祭礼が維持できなくなりつつある。

シロアリの生態@住宅医スクール2014

「防蟻対策の実務~シロアリ駆除と予防法の事例」と題する阪神ターマライトラボ代表の水谷隆明氏の話を聞いてきた。

住宅医スクール2014の一講座

シロアリの生態から始まり駆除や予防法について、まとまって専門家から話を聞くのは初めてだった。

ヤマトシロアリ、イエシロアリ、アメリカカンザイシロアリとそれぞれ生態が異なり、それぞれに応じた駆除方法や予防法があるとの事。

「シロアリは多数の個体によって集団(コロニー)を形成していますが、各々の個体が各々の役割担いながら高度な社会生活を営んでいます。
この各々の個体を階級(カースト)といいます。
シロアリは集団生活を行い、親が子を育て、成長しても共同生活を行い大きな集団となっていきます。
 生態学的にみると『真社会性』と言われる状態です。これは下記の3つの特徴を有しています。
 (1) 同じ種類の複数個体が協同して子供を育てています。
 (2) 生殖を行う個体と生殖を行わない個体がいます。
 (3) 親世代と子世代が共存しています。」(阪神ターマライトラボのサイトより)

 

駆除にしても予防法にしても、ただ薬剤を散布すればいいというものではなく、シロアリの家屋への浸入パターンを読み、適切な方法で対応するということをパワーポイント100枚ぐらいで丁寧に説明してもらい、シロアリに対する認識が変わった。

点検できる高さの床下を確保して定期的な点検ができるようにする等、薬剤に頼らないシロアリ対策・設計上の工夫が必要とのこと。

アカデミックな視点を持つ実務者の話しは面白い。阪神ターマライトラボでは、シロアリを飼育し生態や薬剤効果を今も実験中との事、詳細は、以下の阪神ターマライトラボのサイトに詳しく掲載されている。

http://homepage2.nifty.com/hanshin-termiteslabo/index.htm

訓示規定

法令などで定められた規定のうち、もっぱら裁判所または行政庁の職務行為に対する命令の性質をもち、規定を遵守しなかったとしても処罰の対象にはならず、また、違反行為そのものの効力も否定されない性質の規定のこと。

訓示規定に対して、規定に違反した場合に処罰の対象とされる規定を「取締規定」という。取締規定は行為そのものの有効性は否定されない。行為そのものが無効であると見なされる性質の規定は、「効力規定」と呼ばれる。

訓示規定は当事者に対して努力すべき内容を指示する規定であり、それ自体に直接的な法的効力はないと言える。訓示規定の具体例として、労働基準法第1条第1項「労働条件の原則」などが挙げられている。

さて、建築基準法では 例えばこういうのが訓示規定である。

建築基準法94条2項には、「審査請求を受理した場合においては、審査請求を受理した日から一月以内に裁決をしなければならない」とある。

実際のところ1ヶ月で採決したケース少ないのではないだろうか。受理してから概ね二ヶ月以上はかかっているように思う。各特定行政庁の建築審査会事務局に聞いたら、「それは裁量権の範囲」と軽くあしらわれるだろう。

建築法規の試験で建築基準法94条2項に関する出題があっても、試験と現実は違うということ。

 

工事の着手 -2

「工事着手の時期」は、既存不適格の適用の有り無しと絡んでくる。

「工事の着手」は、建築基準法では定義化されていない。

建築基準法第3条第2項には、改正された法の施行又は適用の際、

  1. 現に存する建築物若しくはその敷地
  2. 現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地

「1」は、工事完了検査済証を取得していて使用が開始されている場合。「2」工事中の場合で、ここで「工事の着手」時期が問題になることがある。あるいは工事着手時期の操作が発生する場合がある。 「法改正の施行日が建築確認の受付後か、あるいは確認許可後の日でも既存不適格扱いとなるか」という質問を受けたことがあるが、改正法令の適用を受けない場合の基準時は、既存建物の場合は、一般的には建築確認申請許可日が基準時となるだろうか。

尚、「基準時」は、令第137条に規定されており「法第3条第2項の適用を受けない期間の始期をいう」のだが、令第137条に掲げる規定ごとに抽出しないといけないので、中々厄介なのだ。

工事の着手 -1

知人から電話が来て「工事の着手」についての建築基準法の定義はないかと言うので、日本建築行政会議編集の「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」(2013年度版)の34頁を送ってあげた。

『「工事の着手」の時点とは、「杭打ち工事」「地盤改良工事」「山留工事」又は「根切り工事」に係る工事が開始された時点のことをいう』

工事の着手

今時、「工事の着手」時点は何時かと聞かれるのは珍しい。

法令が大きく変わる時には、改正前にとりあえず建築確認だけ降ろしてダミー施工会社に一部掘削なりさせておいて「工事着手」させ、その後確認申請は、大きく計画変更確認申請をして正式に実施図面を完成させ施工会社と契約して本当の工事着工。確認から正式着工まで1年以上という、手法が流行ったりした。

いわゆる「かけこみ着工」なのだが、工事の継続性があるのかないのか、偽装もできるし、中々わかりづらいものだ。

ところで、知人の相談には現場の写真が添付されてきた。

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敷地は道路より約1.6mほど高かった。

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掘削して山留のH鋼を設置している

現地2

道路より約1.6m高かった敷地の土砂を掘削し平坦にし、山留H鋼を打ち込み矢板も設置している。この時点でも工事施工会社と工事監理者は工事着工前の準備工事中と言い張っているらしい。

驚き、桃の木、山椒の木である。

不作為

古い建築審査請求の裁決書をながめていた。

中野区の「17中建審・請第1号審査請求事件」。

審査請求の内容は、「一低層地域にある○○会社が所有する建物は、法第48条が定める用途地域制限に違反しているから是正してほしい旨、繰り返し(5回も)特定行政庁に求めたにもかかわらず、法第9条第1項の規定に基づく違反の是正命令を発しないことは建築基準法に違反する不作為にあたる」という請求。

行政不服審査法第2条第2項の「不作為」とは、「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内になんらかの処分その他公権力の行使に当たる行為をすべきにかかわらず、これを発しないことをいう」

この裁決書では、「不作為の前提となるべき、法令に基づく申請」が存在しない「審査請求人(近隣住民)が不作為庁(中野区)に対して行った一連の要求(是正申出書)は、法令に基づく申請にはあたらない」とし「したがって、請求人の要求に対して不作為庁が違反の是正に必要な措置をとることを命じることその他の行政指導等を行わなかったとしても、これをもって行審法にいう「不作為」ということはできない。よって請求人の本件請求は、行審法にいう「不作為」に該当しない事項を対象として行われた不適当なものである」として住民からの不作為の審査請求を却下している。

この場合、具体的にどのような経過で住民が5回も行政指導をお願いしたのかわからないが、住民側が不作為の審査請求まで出すのは余程の事だと思う。不作為の審査請求があることを知っていて活用しているのはあまり多くない。

処分庁(中野区)が弁明の中で「住民の要望」は、「特定行政庁に対して職権の発動を求めたものに過ぎず、行審法第2条第2項に規定する「法令に基づく申請」にはあたらない」と主張している」

だとしたら建築基準法には規定されていても、条例や細則等に規定されていないような事柄。

例えば「工事現場の危害の防止」が建築基準法に明白に違反している場合でも、近隣住民などは、お上にお願いするだけで、職権の発動はすべて行政の裁量であるから黙っていろと言っているのに等しい。

施行者側に何らかの処分を求めて不作為の審査請求を出しても行審法第2条第2項に規定する「法令に基づく申請」には該当しない事となり 建築基準法に違反していても事実上免責されてしまう。

「することができる」と「しなければならない」

建築中の建物の山留工事について、安全上不安があると近隣住民が都内の特別区に要望書をもって陳情に行ったという。

「要望書」は、施工者が工事説明で配布した山留計算書に対して第三者の技術者が意見書を付けるという体裁のもので、私も見せてもらったが、施工者の計画は山留計算における背面側上載荷重が極めて少なく、非常に不安がある内容だった。

紹介議員(区議)を通じていたせいか部長と課長が対応してくれて、施工者なり工事監理者に何らかの指導をすると言ってくれたそうだ。

根切、山留については、建築基準法施行令第136条の3に規定されているが、この規定に違反していることが明白になった場合、建築基準法第9条第10項による職権の発動をしてもらわないといけない。

とはいっても条例や施行細則に記載がない限り 事前に施工計画書などを届け出る必要はなく、近隣住民側が不信に思い第三者に技術的検討でもしないかぎり事前の問題点を発見できたりすることはできない。

この行政の「職権の発動」は、中々腰が重い。法文の最後に「~することができる」とあるように、すべて行政の裁量にゆだねられている。

建築基準法は、行政側が対応するものは「~することができる」だが、建築主や設計者や施行者は「~しなければならない」と本当によくできているというか・・・

上記の陳情の際、行政側は「民間の指定確認検査機関を利用した場合、工法の変更は強制できない」という 発言をしたという。

これは、責任逃れの発言としか思えない。

第一 指定確認検査機関で確認処分をするとき、山留工事の施工計画は設計図書には含まれない。

行政は、2005年の最高裁判決を忘れてしまったのだろうか。

「建基法の規定から判断すると、建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることについての確認 (建基法6条1項、6条の2)に関する事務を、地方公共団体の事務とする前提(同4条、地方自治法2条8項)に立 ったうえで、民間機関をして、上記の確認に関する事務を特定行政庁の監督下(報告、是正権限)において行わ せる(建基法6条の2第3項、同4項)こととした、と言うことができる。     
   そうすると、民間機関による確認に関する事務は、建築主事による確認に関する事務の場合と同様に、 地方公共団体の事務である。 
  その事務の帰属する行政主体は、当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する 建築主事が置かれた地方公共団体であると解するのが相当だ。 
  したがって、民間機関の確認に係る建築物について、確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、民間機関の当該確認につき、 行訴法21条1項所定の「当該処分または裁決に係る事務の帰属する公共団体」に当たるというべきであって、 横浜市は本件確認に係る事務の帰属する公共団体に当たると言うことができる。 
 A社は本件確認を横浜市の長である特定行政庁の監督下において行ったものであること、 その他、本件の事情の下においては、本件確認の取消訴訟を横浜市に対する 損害賠償請求に変更することが相当であると認めることができる(最高裁2005年6月24日決定)」

 

 

大学教育における建築法規

その昔、社会人になりたての頃のこと

先輩に「意匠設計者にとって一番大事な事、勉強しなければならないことは何だと思う?」と問われて 少し逡巡して「デザインでしょ」と言った。

先輩は、「法規」だよと言った。

これにはガツーンときた。

実は、若い時は法規は苦手だった。大学で建築法規の勉強はしたし法令集は持っていたが、どうも法文が頭に入らず苦手意識が抜けなかった。

社会人になってほどなく担当したのが、ある会社の川崎の寮だったが、都市計画法の開発行為(都計法29条)をしなければならなかった。測量以外の手続きはすべて行えというのが上司の指示だったが、苦手な建築法規だけでなく 一度も見たこともない都市計画法と施行令、開発行為の手引きに悪戦苦闘した。

公園、道路、水路、排水と各担当課と協議を整え同意文書をつくりと毎日のように役所に通い苦労していたが、先輩に聞いても誰も開発行為の許認可をしたことがなく教えてもらえずに役所の担当者に教えてもらいながらの業務だった。多分土木系の事務所に外注した方が経費は掛からなかったと思うが、今考えると良い勉強をさせてもらったと思う。

建築や都市をつくる上で、法規の役割はとても大きい。社会人になればすぐ直面するのが建築法規を理解しているかどうかだ。

大学教育における建築法規は、今も昔も2単位らしい。

知人に聞くと、建築士試験対応の授業内容で演習中心になっているところもあると聞く。常時使用する法令集は昔の3倍(2分冊)ぐらいの厚さになっているから、それだけ関係法も含めて法令が増えたということだろう。

建築基準法、関係規定だけでなく民法、不動産登記法等、もっと広範囲の法令を教養として勉強してきてもらいたいものだ。

若い設計者からは すっとんきょな質問を時々受け面喰う。

「自分の敷地なのに 何で こんな規制うけなくちゃならないんですか?」「非常用照明なんか必要なんですか?」書き上げると疲れてくるからやめよう。

最後に

「建築基準法はザル法なんでしょ」

「建築基準法が悪いんじゃない。使う人たちがザルにしているだけ」と答えるようにしている。

お願いだから大学や専門学校で建築法規をもっと勉強させて。

 

 

山手通りの家 -3

知人「やあ あれ わかった?」

私 「ごめんごめん 五層竪穴区画無しの件だね」

知人 「仕事忙しかったの?」

私 「ちょっとね 盆前だから まとめなきゃならないことがあって」

知人「忙しくて何よりでした。それで どう?」

私 「う~ん あれは イルージョンだね」

知人「えっ そうなの?」

私 「最初、床面積が100㎡以下なので準耐火建築物ロ-1かと思ったんだけど、階段は鉄骨造だし、他の状況からみても耐火構造の建物。防火地域で階数が3以上だから、耐火建築物にしなければならないし、耐火構造だと階段部分の竪穴区画(令第112条第9項)は逃れられない」

私 「5階=ルーム5は、天井高さが2010mmなので居室として確認申請が通るわけがない。でもベットが設置され寝室としての利用なので居室だし・・・」

知人 「建築確認申請は許可になっているようだね」

私 「そう確認と中間検査はA指定確認検査機関、完了検査はB指定確認検査機関になっている」

知人「ロ準耐なら可能は可能?」

私 「そう、防火地域以外で主要構造部が実際にロ準耐の仕様なら・・」

知人「耐火構造でありえるとしたら?」

私 「1,2階の店舗部分と3階部分で区画して5階は非居室」

知人「ということは 確認申請図書と実際の建物は祖語があると」

私 「断定はできないけど 可能性は大いにある」

知人「これ以上調べられない?」

私  「役所に情報公開請求を出す。そうすると役所は指定確認検査機関に法第12条第5項の報告を求めるから、ある一定の確認図書は公開される。そうすると今よりははっきりするんじゃないかな。ただし内部は個人情報保護とかで黒塗りにされてくる可能性が大だから、どれだけわかるかは定かではないけどね。」

知人 「調べてくれる?」

私 「これ以上は、有償だよ。経費がかかるから」

知人 「検討します」

 *8/13、一部記載に不備があり修正しました。

防火地域内で階数が3以上あるに、床面積が100㎡未満だからロ準耐でも良いと誤解される表現がありました。この建物は耐火建築物である必要があります。

山手通りの家 -2

【建物概要】

建築場所 : 東京23区内、山手通り沿い

用途規制 : 近隣商業地域、防火地域、40m高度地区

容積率400%、建蔽率80%(基準)+10%(角地)(実際は耐火+防火100%で申請)

道路 :  前面道路幅員40m (山手通り)、側道路・幅員6.84m、角地

主要用途 :  店舗併用住宅(具体的用途不明・実際は1階物販店・駐車場、2階物販店、住宅として使用は、3階~5階)

敷地面積 : 24.32㎡

建築面積 : 17.92㎡

延べ床面積 : 89.60㎡

構造規模 :  鉄筋コンクリート 地上5階建て

建築確認・中間検査 :   A指定確認検査機関

完了検査 :  B指定確認検査機関

山手通りの家 -1

1週間ほど前、知人から電話がかかってきた。

知人「新建築7月号に掲載されいる住宅なんだけど、地上5階建てで五層も階段の竪穴区画がないんだ。うちも こういう竪穴区画の無い住宅を提案したいんだが どうやったらできる?」

私「五層竪穴区画無しなんて無理だっぺ・・」

知人「でも雑誌に掲載されているからには、建築確認降りてるだろうな~。資料送るから知恵貸してよ」

私「了解」

この知人は研究熱心で建築雑誌に掲載されている建物で、建築基準法的に面白そうな物があると私に振ってくる。そして、この住宅の概要・資料が送られてきた。

私「資料みたよ。この場所だいたいわかる。山手通りは結構行き来しているからね」

私「S区の場合、山手通リ沿いは防火地域だね。床面積が100㎡未満だけど階数が3以上だから耐火建築物。防火地域でなければロ準耐で設計する方法もある」

知人「鉄筋コンクリート造のロ準耐って主要構造部のどれかの部位の仕様を変えるだったよね」

私「そう。鉄筋コンクリート造りだと外壁・屋根・床がコンクリートで耐火構造仕様になっているから、階段を木造にしたりするんだよね」

知人「鉄骨階段じゃ駄目?」

私「鉄骨階段だと耐火構造になるでしょ。幾ら準耐火ロ-1とか記載しても実態上の仕様が耐火構造になるから」

知人「イ準耐と耐火構造は竪穴区画必要でロ準耐だと竪穴区画しなくていいっていうのも一般には説明しずらいところだ」

私「専門家でも 中々理解しずらいところ」

知人「でも この建物は耐火建築物である必要がある」

私「そうだね もう少し調べてみるよ。」

知人「全館避難安全検証法だったりして」

私「住宅は発熱量高いし、以前シュミレーションしてみた事あるけど この手のプランでは無理だと思うよ」

知人「そうなんだ・・」

私「では 調べてから電話するよ じゃあね」

ということで、知人から課題を与えられてしまった。

やれやれ

【法令メモ】

建築基準法施行令第112条第9項(9項区画・竪穴区画)は「主要構造部を準耐火構造とし、かつ、地階又は3階以上の階に居室を有する建築物」が対象です。

準耐火構造というのは建築基準法第2条七号の2に規定されていて、45分準耐(面積区画は1時間準耐)、例示仕様は平成12年建告第1358号。

「主要構造部を準耐火構造とし」とは、準耐火建築物である場合は、準耐火(イ-1、2)が該当し、準耐火(ロ-1、2)は対象外。

法令上の用語として「上位の性能を有する材料・構造等は、下位の材料・構造等に含有されるものとして整理」(平成12年建住指第682号通知)されたから、主要構造部を耐火構造としたものも対象建築物となる。

わかった?

わからないしょ

でも法文上はこうなる 

 

 

求道学舎

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大正15年に建てられた学生寮を美しく個性的な歴史的建物として後世まで残していくため、コーポラティブ方式により住宅として再生(リノベーション)をはかった2004年竣工のプロジェト。

元設計は、求道会館と同じ武田伍一

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求道会館2階から撮影

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求道会館左手の路地の奥にある

ここから奥には無断では入れません

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別世界へのアプローチという感じ

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共同住宅で人が住んでいるので建物の中は見れなかったが、目の保養になった。

土地の権利は現在の土地所有者である宗教法人(単立法人で求道会)が持ち、 参加者は定期借地権にて共同(「準共有」)で62年間借り受ける。その土地にある「歴史的な建物」を通常 のマンションと同様区分所有し、参加者で結成する建設組合にてリノベーション(修復)した。「借りた土地」の上に「今ある建物」を ディベロッパーが介在することなく「参加者で再利用する」から、余計な経費がかからず、魅力的な価格が実現された。

定期借地権設定+コーポラティプ方式という建築再生プロジェクト

http://www.abrain.jp/hongoh6/index.html

[mappress mapid=”3″]

求道会館 -3

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2階

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天井 左官鏝絵模様

コードだけで吊るされた照明器具

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天井裏との空気流通を図る開口

5個という数字には、

宗教的な意味が込められているとのこと

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暖炉のデザインは、武田伍一が

英国で見たマッキントッシュの「キモノ型」デザインに

刺激されたものと近角氏が説明してくれた。

【建物データー】

設計 : 武田五一

延床面積施工 : 149.141坪(492.93m)

階数 : 地上2階

 構造 : 煉瓦造 一部鉄筋コンクリート

原設計設計期間  : 1903年頃~1915年

原設計施工期間 :  1915年5月~1915年11月

施工  : 初代戸田利兵衛(戸田組)
復原工事設計監理 文化財工学研究所

復原工事設計期間 : 1996年9月~2002年3月

復原工事施工 :  戸田建設

屋根は二重野地(木造+センチュリーボード)ガムロンシート防水 石綿スレート菱葺一部銅板葺
外壁はモルタル塗一部煉瓦
正面ファサード・玄関ポーチはタイル貼(備前伊部) 一部洗い出しモルタル
笠石は特殊コンクリート(フェロコンクリート)

http://www.kyudo-kaikan.org/

求道会館 -2

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2階から

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屋根2×6トラス

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祭壇

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「近角常観(ちかずみじょうかん)は明治3年滋賀県に生まれた浄土真宗大谷派の僧侶で、親鸞聖人の信仰を伝える歎異抄を原点に据え、悩み煩悶する人間が絶対他力によって救済されることを自らの入信体験を基に繰返し説き、 仏教界のみならず幅広く同時代の知識人に大きな影響を与えた。

近角は若き日の欧州留学の体験をふまえ、青年学生と起居を共にして自らの信仰体験を語り継ぐ場として求道学舎を本郷のこの地に開き、明治35年から昭和16年に没するまでその経営に心血を注いだ。

また、広く公衆に向けて信仰を説く場として、大正 4年にこの求道会館を建立。

その壇上から有縁のものへ語りかけると共に、広く社会に対して仏教の有るべき姿を訴えた。その主張は政教分離の立場から国家による宗教管理とともに教団の政治参画にも強く反対し、宗教界の自立性の喪失に警鐘を鳴らし近代仏教の確立に大きく貢献した。」(求道会館サイトより)

 

 

求道会館 -1

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文京区本郷の求道会館が月に一度の

一般公開日だったので訪れてみた。

この建物は、1915年竣工だからまもなく100歳

近角常観氏によって建てられたものだが、一般公開日には

お孫さんにあたる建築家・近角真一氏から

説明をしていただいた。

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左側面・求道学舎への路地

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背面・南面

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東京都指定有形文化財

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ポーチ柱脚部

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岐阜県立 森林文化アカデミー 

6/24に開催された自立循環型住宅研究会・関東ゼミの岐阜県立 森林文化アカデミーの辻充孝准教授の宿題を、先週一か月経ってからメールで提出した。

宿題は、課題住宅の外壁断熱材を変更したときの  UA値、  Q値、 ηA値、  μ値の各数値を計算して出すという宿題。

全問正解だった。恥かかなくてよかった。

御褒美に辻先生の作られた。XMLファイル・環境デザインサポートツールeDe(Ver 6.0)を解説書とともに頂戴した。

ざっくりとしか見てないが、実務にも大いに使えそう。

うれしい。

さて、標題の「岐阜県立 森林文化アカデミー」は、岐阜県立の専門学校だが、私が存在を知ってから一年ぐらいしか経っていない。一度学校にお伺いしたと思っているのだが、まだ機会が無い。

ホームページを見たところ、しびれるような言葉が書き連ねられていた。

森林と人との共生を目指して
21世紀に私たちが当面する最大の課題は、地下資源の大量消費に支えられた持続不能な今日の社会を、循環型の社会に移行させていくことだと言われています。 

森林文化アカデミーが目指しているのも、自然を代表する「森」と再生可能な「木」の活用を通して、自然の循環と一体になった持続可能な社会を築くこと です。岐阜県は豊かな森林資源に恵まれ、すぐれた「ものづくり(匠)」と「木造建築」の伝統があります。この岐阜県に自由で実践的な高等教育の拠点として 森林文化アカデミーが設立されました。自然と人との新しい関わり方を探り、持続可能な循環型社会の形成に寄与できる人材を育成することが、本アカデミーの 目標になっています。 

地域の森林をめぐるさまざまな問題は、国や地方の行政だけでは解決できません。住民を個人として、あるいはボランティアグループや団 体の一員として、問題の解決を目指して学習し、積極的に関わっていく姿勢が求められます。このアカデミーはそうした生涯学習の機会を提供しようとしていま す。地域の森林を活性化し、森の文明、木の文化の再興に情熱を抱く人であれば、年齢を問わず歓迎します。

 木造建築講座では、木造住宅のスペシャリストを養成することを目的として

暮らしをつなぐネットワークを構築

 日本の森林の有効活用や住宅ストックを活かした地域活性、居住空間としての安全性や健康的な配慮など、複合的にからみあった要素を適切につなぎ合わせ、人間の生活の場にふさわしい「木の建築空間」を創っていきます。

 地域の木を使った設計技術の習得にとどまらず、地域独特の建築言語や人々のくらしを調査・活用することによって、山とまちをつなぐ木材と人のネットワークを構築し、地域に根ざした木造設計者として自ら起業し実践できる人材を育成していきます。

■山と町をつなぎ地域資源の活用を暮らしのなかで提案できる建築設計者

■建築と暮らしの関係を考慮し木の空間を提案できる設計企画者

■木材について熟知し、既成の生産・流通・品質基準を再構築できる木材加工技術者

■構造特性を把握し、実務者への技術支援ができる木質構造設計者

私事ではあるが、大学卒業を数か月後に控えたある夜。研究室でひとり本を読んでいたら、恩師伊藤ていじがやってきて声をかけてくれた。私は何気なく将来の事を語った。「木造を勉強したい」と。

一か月ほど経ったある朝、先生から自宅に電話が来て「京都の数奇屋建築をやっている棟梁が東京に来ていて、新卒をとっても良いと言っているが会うか?」と言うものだった。

その時は、設計をやりたいという頭しかなく、しかもアトリエ系事務所に内定をもらっていたので、その旨を話して 先生にお断りをした。ちょつと後から逢っても良かったかなと後悔したが、寝起きで頭がぼーっとしていて短絡的だったかもしれない。

数寄屋建築の棟梁の下で木造を勉強していたら 今頃どうしていただろうか・・・

人生の分岐点は、不意にやってくる。

今考えれば、設計を仕事とするのは 様々な経験を経て歳を取ってからでも良かった。

関心ごとが多くて、木造一筋の道を自分は歩けなかったが、若い人は、建築を学んだ後でも、岐阜県立森林文化アカデミーのようなところで もう一度勉強してみるのも良いだろう。

ということで紹介でした。

【岐阜県立 森林文化アカデミー】

501-3714 岐阜県美濃市曽代88 岐阜県立森林文化アカデミー
TEL 0575-35-2525/FAX 0575-35-2529

http://www.forest.ac.jp/

 

 

 

奈良県庁

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奈良県庁

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 1965年に竣工して 49年

途中1997~1999年にリニューアルして元気な建物

設計は片山光生氏。

そう、壊されるはずの東京国立競技場の設計も片山光生氏

という事で思い出して掲載。

「書くことが無いのだろう」

いえいえ

「ありすぎるが、ちょつと所要が重なり時間がとれない」

これでも記事の更新には結構時間がとられるのですよ

【写真は2014年初春のものです】

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登小路に沿って低層部があり、そのピロティ

打放しコンクリートの木目のテクスチャは健在

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【奈良県庁舎・建物データー】

設計:片山光生
リニューアル共同設計監理:奈良県総務部管財課本庁舎整備室
所在地:奈良県奈良市登大路町
用途:庁舎
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造
規模:地上6階、地下2階
竣工:1965年2月
リニューアル:
主棟・議会棟-1999年12月
東棟-1997年5月

 

「建築に係る行政訴訟判例カルテ」@建築学会

日本建築学会 建築法制本委員会の「建築専門家の行政訴訟参加に関する研究小委員会」が平成25年2月にまとめた「建築に係る行政訴訟判例カルテ」。

PDFで公開されているが、A4版で250頁のぶ厚い資料である。

「行政訴訟においては、建築基準法等の建築関係法の制定背景や基準の趣旨、その規定の果たしている役割と他の規定との関連性など建築に関する知識と経験を有する建築専門家の関与が重要と思われる。」とあり、このカルテは「行政訴訟を対象として、裁判判例を通じて、建築専門家の関与の必要性を明らかにすることを目的として判例の分析を行った。」と書かれている。

内容は、以下の項目が章立てて展開されている

  1. 訴訟要件
  2. 建築確認
  3. 建築物と敷地
  4. 建築物と道路
  5. 建築物の規模・配置
  6. 建築物の用途
  7. 既存不適格の発生ほか

その他

「ドイツの建築規制・建築許可・建築紛争に関するメモ」

「Land  Use Planning and development regulation lawの一部邦訳まで記載されているという。お得な情報が満載の資料。

まぁ こういう資料を読むのは、一部の研究者か建築審査請求に色々と思いがある人など限られているだろうが・・・。

建築法規も深みに入っていくと 底なし沼のように捕捉される。あるいは「オタク」的な世界だろうか。

建築審査請求 -2

弁護士を代理人とする場合、住民側代理人も建築主側代理人も建築審査請求は初めてという事も多く。結構、頓珍漢なやり取りが交わされたりする。

又、数々の建築審査請求の事例を見ていると、手練れの建築専門家が加われば・・・とか思うことも多い。

建築審査請求は、指定確認検査機関制度になってから増えたようにも思うが、以下に整理して記載しておこう。

****************

1.審査請求とは

• 建築基準法に基づく(建築確認)処分に不服がある場合やこれらによる申請を出したのに、処分が行われない(不作為)場合に、市町村や都道府県の建築審査会に不服を申し立てることができる。
•申し立てを受けると建築審査会で審理を行い、申立てに対する裁決を行います。処分又は不作為が違法又は不当と判断された場合は、裁決により処分が取消される。

2.審査請求の申立先
•物件所在地を所轄する建築審査会へ申し立てる。
•審査請求書の提出は、建築審査会の事務局。(最寄の特定行政庁へ相談)

まず、特定行政庁に建築確認申請図書の開示請求(情報公開請求)を行う事。その請求に基づいて特定行政庁は、処分庁等に対して建築基準法第12条第5項報告を求める。とにかく確認申請図書を入手して建築の専門家達が検証することが不可欠になる。まれにパフレットとか新聞折り込み広告、住民説明用計画図等で建築審査請求を提起する人がいるが、図面開示とその検証に基づき、法的な文書の作成が必要

3.審査請求ができる期間

審査請求は処分のあったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければならない(行政不服審査法第14条第1項)。

また、処分があった日の翌日から1年が経過すると審査請求はできなくなる(行政不服審査法第14条第3項)。

上記の期間を過ぎた後になされた審査請求は、原則として不適法なものになり、却下裁決となる。

4.審査請求の流れ

審査請求は、原則として書面で審議を行う。
審査請求人、処分庁の双方から書面の提出を受け、口頭審査(口頭審理)を経て、裁決をする。
5.裁決の種類

•認容裁決
処分に違法又は不当が認められ、処分が取消される裁決です。取り消されると、処分は、処分をした日に遡って効力を否定される。

不作為についての審査請求では、不作為庁に対し、速やかに申請に対する何らかの行為をすべき旨を裁決する。

•棄却裁決
処分に違法又は不当が認められず、審査請求を退ける裁決です。

•却下裁決
審査請求が法定の期間を経過した場合や、処分を取消す利益がないときなど不適法であるとき、審査請求を退ける裁決です。審査請求の中身については審理されない。

6.その他

・執行停止申立て

審査請求をしても、処分は裁決で取消されるまでは有効として扱われるので、処分の執行を停止したいときは、執行停止申立てをする必要がある。処分の執行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認められたときは、執行が停止される。
(建築確認処分に対する審査請求をしても、建築確認処分の効力は裁決で取消されるまで継続する。この場合、建築確認処分の効力が存続しているので、工事は継続して行われる。工事が継続することにより何か重大な損害を受ける場合等は、執行停止申立てをする必要がある。

・審査請求と裁判の関係

建築基準法令に基づく建築確認処分や都市計画法令に基づく開発許可処分などについての取消しの訴えは、 原則として審査請求の裁決を経た後でないと、提起できない(行政事件訴訟法第8条第1項ただし書、建築基準法第96条、都市計画法第52条)。

【参考】用語解説
•不作為
 法令に基づく申請に対して、相当の期間内に何らかの処分をするべきにも関わらず、何の処分もしないこと

•裁決
 審査請求に対する審査会の決定。裁判の判決と同様なもの

•異議申立て
 審査請求と同様に処分等に対して不服を申し立てる制度。審査請求とは違い処分庁自身が、申立てに基づいて決定を下す制度
 

 

 

建築審査請求 -1

事務所を始めてから、世の中には建築主と設計者のトラブル。近隣とのトラブルが実に多いことを知った。

そうした相談が、知人や弁護士を通して持ち込まれる。

  • 設計者が建築主の希望を聞き入れて設計してくれない。
  • 外壁の材料の耐久性・防水性が不安として施工会社が降りたが、設計者が設計変更しない。
  • 設計を途中解約したが、まだ基本設計しか終わっていないので設計者に設計料の返還請求したい(契約12%、50%支払済み)
  • 隣地に幼稚園が計画されているが、子供の声はうるさいので中止させたい。(この相談には正直困った)
  • 擁壁下の隣地に地下2階の建物が計画されているが、擁壁が崩壊しないか不安
  • 設計が完了し工事見積りを取ったら工事費が予算の倍以上になった。設計変更しても予算内への減額は無理。設計を解約して設計料の返還請求ができるか。

等々

それらの相談から、あるものは民事訴訟となり、あるものは建築審査請求へとなっていく。

指定確認検査機関に勤務していた時は、処分庁として建築審査請求を受取る側で、徹夜して抗弁書を起案したり、公開口頭審査に出席した。現在は、住民側の専門家として建築審査請求に加わり、建築審査請求の提起、反論書の作成にも加わっている。

建築審査請求に両方の立場で関わった人は、そう多くないようだ。

どちらの立場になっても、建築審査請求に関わると結果が出るまでは胃がキリキリする。