現地詳細調査 -4

荒川区町屋の鉄骨3階建て外壁・屋根ALC版t=100の建物・築27年

外壁劣化・屋上防水に際立つた損傷がなかったので、内部結露であろう。3階天井裏すなわち陸屋根屋上の下の鉄骨部に発錆が見られた。鉄骨造の建物では、鉄骨部の発錆は比較的よくある事象である。

恐らく天井裏に敷き込んだグラスウールt=50に保水し結露したものと思われる。鉄骨部材・材質調査を担当していた調査員が 簡単な温湿度測定を実施してくれたが、外気温と3階室内、3階天井裏では温度はほとんど変化がなかったが、3階天井裏の湿度は外気に比べて15%程高かった。

言われたことだけ自分の担当部分だけ調査するのではなく、常に建物全体を総合的に目を配る調査員になってくれれば調査員としては一流だ。

1階の西側外壁面の内壁の石膏ボードにカビが発生していた。これも壁体内結露だろうと推測できる。

こうした詳細調査を通じて既存建物の問題点が浮かび上がる。既存建物の温熱計算をして、断熱改修を検討する必要がありそうだ。

鉄骨の部材や材質の調査の為に天井点検口を設置し天井裏を覗いたのだが、鉄部の発錆から、その場で総合的に考えるのが大事だと思っている。調査が外注だと温湿度計で測る事などしてくれないだろう。調査員達で事象から意見交換を行い方向性を見出すことができた。

都電荒川線軌道敷き緑化実証実験

都電町屋駅のホームから下を見ると軌道敷きが緑化されていた。これは今年3月から始まった「東京さくらトラム(都電荒川線)の軌道敷きにおける緑化実証実験」とのこと。

東京都交通局のサイトには下記のように書いてある。

「~官学連携による実験を開始~
東京都交通局では、平成28年3月から「都電荒川線の軌道敷きにおける緑化検証実験」を行い、日照等が良好な箇所における軌道緑化の生育状況等を確認してまいりました。
この結果等を踏まえ、東京都交通局と東京都市大学(総合研究所/環境学部)では、軌道緑化の生育条件や維持管理方法、環境への効果等をより具体的に検討していくため、下記のとおり官学連携による「東京さくらトラム(都電荒川線)の軌道敷きにおける緑化実証実験」を開始するのでお知らせします。」

「実証実験の概要
実施箇所
大塚駅前停留場付近
荒川車庫前停留場付近
町屋駅前停留場
軌道緑化の規模
合計 約430m2
軌道緑化に用いる品種
セダム属(タイトゴメ、キリンソウ、アルブム、ツルマンネングサ等)
主な検討内容
日照環境の悪い区間や停留場など、さまざまな環境下での生育状況の検討
軌道緑化の維持管理方法の検討
軌道緑化による環境面での効果や影響の検討
軌道保守点検時の作業性などを考慮した設置方法や材料の検討
実施期間
平成30年3月から平成32年3月まで 」

実験が成功し、都電荒川線全体が緑の道になると素敵だな。

札幌の路面電車

札幌 夜のすすきの交差点

横断歩道で信号待ちしていると路面電車が左折してきた

目の前を電車が通過していく

色々なデザインの路面電車が走っている

路面電車の待合所

寒冷地ならでは工夫もあり綺麗な待合所

待合所の木製の椅子が優しい曲線で作られている

現場調査準備工事・荒川区町屋

昨晩 新千歳夜9時発の飛行機で東京に戻り、自宅に着いたのは少しばかり日が変わっていた。ちょっと疲れた。

今朝は、荒川区町屋の鉄骨造3階建ての検査済みの無い建物に、エレベーター等を増築するのと二世帯住宅にするために全面的に改装する計画の詳細現場調査の準備の立会。

都市住宅は、一方向だけ道路に接している場合が多く、他は建物と敷地境界との離隔距離が無い為、地面下の調査には苦労する。

予想通りではあるが、排水管と建物との間にはガス管が敷設されており、下部には水道管等が敷設されていた。この隙間でコンクリートコアを抜くことができるだろうか。コアが抜けなければシュミットハンマーで調査するしかないかなと思案する。

コアを抜く予定の他の二カ所は、スラブ配筋でコンクリートが厚かったので斫るのに苦労した。配筋はD13@200縦横だった。

地盤が悪い為に耐圧版なのだがコンクリートガラを粉砕した再生砂で埋め戻しし、よく転圧してからコンクリートスラブを打設していた。地中梁の施工状態も良好で、最初に施工された基礎工事会社はいい仕事をされている。

明日の、現場詳細調査の準備はできた。

現地詳細調査 -3

鉄骨の材質調査の為にサムスチールチェッカーを使ってみた。

物事は全て準備が必要で検査部分の錆止め塗装と黒皮をサンダーで除去した。

調査部分に測定用プローブを押し当てる。

メーターの針が赤い表示部分(SS400)を示している。

梁・柱・ダイヤフラムを検査する。

この建物の建設時期はSS材とSM材しか使っていなかった頃だからサムスチールチェッカーでも事足りるだろう。

最後に調査チーム全員に、サムスチールチェッカーを体験してもらった。

鉄骨の材質調査をしてくれる会社はそう多くない。まだビジネスにならないからだろうか。今回も弊社で測定器具をレンタルし、天井裏の狭い個所でサンダー掛けをしてから測定を行った。

時々、一級建築士だか職人だか わからなくなってくることがある。

塗装を落とすのに、紙やすりではかったるいので、サンダーと替え用品を購入した。ついでに電源コードのドラムを買い。脚立も買い。安全保護メガネや高性能防塵マスクも買ってしまった。それに養生関係の諸品や掃除用具も用意しなければならなくなった。

調査に来ている姿かたちからは、ただの職人にしか絶対見えないだろうな。

葛西臨海水族館

葛西臨海水族館に行ってきた

実に30年振りぐらいになる

1989年に竣工した当時に来て以来の来訪

設計は、谷口吉生さん

川の向こう側は 孫曰く ネズミの国

葛西臨海・海浜公園は、豊かな自然に囲まれて 子供連れの家族で賑わっていた。

オープン当時は禿坊主だった記憶がある。30年近い月日がこんなにも環境を豊かにさせることに驚いた。

現地詳細調査 -2

現地詳細調査も物件の規模等に応じて調査チームを編成しないとならない。今回の八王子の場合は、重量鉄骨造2階建て200㎡以下と規模は小さいので、以下のように調査チームを編成した。規模が大きくなるとそれぞれの調査パートに補助員を付け研修する事もあるが今回は内部も狭いので調査員だけとした。

  • 内部実測調査 1人
  • 外部実測調査 1人
  • 外部劣化調査+傾斜測定+床高低差調査 1人
  • 鉄骨部材及び材質調査 1人
  • 統括(私)

以上5人の調査チームである。その他に非破壊・微破壊検査の方々

外部の実測調査を担当した人は 某会社の社長夫人で一級建築士。普段は主に住宅関係のリフォームの図面を書いているとか。今回が調査参加4回目なので補助員から調査員に昇格。

実測調査4回目ともなれば、こちらが調べて欲しいことをきちんと見ている。

Q  電気の分電盤の写真撮った?

A     撮りました。12回路です

Q    契約アンペアは?

A    45Aです。

Q    電柱の番号調べた?

A    写真撮りました

ふむふむ 成長著しい !(^^)!

建築ストックの業務では、既存の「調査」はかなり重要な要素。

いざ仕事が決まったから学生を集めるとか、他社の所員を借りるとか、調査に不慣れな人を人海戦術で というのでは いい調査にはならない。また一級建築士を持つていれば正確な調査ができるというものでもない。

調査をする人を常日頃 自社で養成しておくことが必要。ただし社員を増やせという意味ではない。どうやって優れた調査員を養成していくのかは課題でもある。

そんなことは調査会社に頼めばよいのだと言う人もいるだろうが、そう気にいる手頃な価格の調査会社は中々見つかるものではない。

それにアウトソーシングしていると、どうしても自分達で考える力が低下してしまう。

しかも特殊建築物の調査が出来る人はそう多くない。規模が大きくなると法令の知識が必要不可欠になる。しかも建築基準法に限れば現行法、改正の履歴、そして戦前の市街地建築物法についての知識も必要になるが、この事については又書く機会があると思う。

現地詳細調査 -1

4/18に掘削して露出した地中梁の配筋探査。白いチョークで書かれた線が鉄筋の位置で数字はかぶり厚さを示している。

下の方の穴が圧縮強度試験にかけるコンクリートコアを採取した穴で、上の方の穴は鉄筋の交差部で鉄筋の径を調べるために開けた穴。主筋D-22であることが確認できた。

無収縮モルタルで穴を埋めた。

埋め戻しは、私が行った。久しぶりに汗をかいた。今日の身体を使った労働はこの埋め戻しだけ。砕石とコンクリートの復旧は、増築工事をするときに一緒にしてもらおう。

自分で埋め戻しをしたので多少外注費を減ずることができた。家族で焼肉ぐらい食べれるかな。

日本建築センター・技術セミナー「欧州各都市のリノベーション等(改修・用途変更)の事例を紹介しながら、既存建築物の活用術を学ぶ」(団地再生、産業遺産(工場等)、駅舎・港湾まで)

4/18午後から、日本建築センターの技術セミナー「欧州各都市のリノベーション等(改修・用途変更)の事例を紹介しながら、既存建築物の活用術を学ぶ」(団地再生、産業遺産(工場等)、駅舎・港湾まで)に行ってきた。

ほとんどが欧州のリノベーション事例の紹介だった。既に雑誌や出版物で紹介されているもので「技術セミナー」と銘打っているにもかかわらず、意匠的観点に終始しテクニカルな分析はなかった。

例えば、欧州の共同住宅で上に一層ないしは二層増築する事例が幾つか紹介されていたが、欧州の法規制には明るくないが、日本で上増築しようと思ったら基礎耐力の問題だけでなく建築基準法が遡及するために全て現行法に適合させなければならない。非常に難関のプロジェクトになってしまう。

新耐震の建物であろうと地震力が増大するから補強が必要だし、現行法に適合させなければならないので様々な部位を構造的に検証し補強しなければならない。審査機関からも構造適判機関からも矢が束になるような指摘が降ってくる。

日本建築センターが主催している技術セミナーなんだから、法的な問題点を挿入してくれると良かったのにと思った。

「建築ストックの再生・活用には、柔軟な法規制が必要だ」とは、色々なところからよく聞く話だが、具体的な改正試案は見たことが無い。

欧州と異なり、20世紀後半の建築ストックを再生・活用することになる日本では、RC・S造の耐震診断や補強技術は比較的体系化していると聞く。建築病理学・耐震診断・補強技術を集大成すれば、世界を牽引する技術力を持つ事になると思う。

「建築ストックの再生と活用」を担う建築家は、デザイン至上主義ではまとめ上げれないのではないかと思う。かなりテクニカルな面も詳しい「ドクター・ゼネラル」でないとプロジェクを牽引できないだろう。

ともあれ、欧州特にオランダには行きたいと思い少しずつ調べていたので参考になったセミナーだった。

現場調査準備工事・八王子高尾町

今日は、現場調査の準備工事の立ち合いの為 朝から八王子へ行った。

またしても検査済証の無い建物の用途変更+増築 調査・申請・設計業務の為の現場詳細調査。

明日のコンクリートコア採取の為に土間を掘削した。立水栓があったので水道管に注意しながらコンクリートカッターを入れたのだが、あまりにも浅い位置に敷設してあったので、給水管も排水管もカッターで切ってしまった。

あとからの工事だったんだろうな~。あまりに浅すぎる敷設。まあよくあることだ。

配筋探査とコア抜きの為に掘削の位置を少し拡大した。

鉄骨の調査の為に天井点検口を設置した。

ハイテンションボルトは、トルシア型を使用しているようだ。鉄骨の溶接の状態は良さそう。ダイヤフラムも図面どうりで一安心。

明日は、詳細調査だ。

現場に神宿る

久しぶりに会った大学の先輩が、私の書くこのブログを見てるらしく会うなり「試験の為でも審査のためでもない建築法規の本を書け」と言われた。「わかりやすいイラストを添えて」と、大学を出て役所で定年まで勤めた先輩なのだが、私が役所と渡り合って得た法的知識は貴重だという。若い人達に知らしめたほうが良いというのだ。

そんなものかなぁと思う。

我々ぐらいの年齢になると自分で図面を書き申請書類を持って役所に行く人は少なくなる。役所に指摘された事は、直接聞いているので肌身についている。「現場に神宿る」と昔の人は良く言ったもので、建築基準法の取扱いや指摘された事項には建築基準法の問題点がゴロゴロ転がっている。

建築法規の中に散りばねられている「原動機の0.75KW」「天井高1.4m」「天井高2.1m」「道路幅員4m」・・・これらの数値がどうして決められたのかと、寄り道ばかりしてるから 本になんかまとまらないと思うよとも言ったのだが・・

多くの建築系団体には法規委員会のようなものがあるが、現場から離れた管理職とか経営者によつて構成されているせいからか、法令改正の視点が現場にいる我々の視点とは乖離していることが多い。

まあ 冥土の土産に「悪知恵・建築法規」とでも題し あれこれ書いて自費出版してみようか。暇になったら・・・

木材の材質調査

以前 鉄骨造の既存建築物調査で鉄骨の材質調査方法について書いたことがあるが、では木造では樹種の特定はどうしているのか、古民家等で限界耐力計算をするときに樹種の特定や木材の強度がどの程度あるのか、どうやって判断しているのかと疑問に思った。

そこで分かったことは、通常は樹種の特定は目視だそうだ。匂いでわかるという人もいたし、適当と言い放す人もいた。木材の割れの比率で強度を低減するという人もいた。ようするにまちまちで 木造病理学と言っても材料強度についてはあまり深く研究されていないようだった。

しかし 世の中には、そういうことを研究する人がいることが分かった。またそういう計測器があるそうだ。

上の写真は、木材試験機ファコップ / FAKOPPというハンガリー製の測定器。一台税込定価842,400円という高価な測定器だ。商品説明書にはこう書いてある。

「打ち込みセンサーに衝撃を与え、発生するエネルギー(応力波)が受信用センサーに到達するまでの時間(μs)を測定します。物質に振動を与えるとその振動(衝撃)は地震の波のように伝達します。 ファコップはその原理を応用した高性能な伝播時間測定器です。 木材の片側から衝撃波を発生させ、反対側の受信センサーに到達するまでの時間から、木材内部の腐食、空洞や密度などの推測が可能です。」とある。

岐阜県の建築アカデミーで1台所有しているそうで、「微小な時間(マイクロ秒)単位を 測る”ストップウォッチ”のイメージ」のような測定器と吉野先生からは教えられた。

「ヤング係数=伝播速度の2乗÷密度
(Pa)  (m/秒)  (kg/立米)

という関係があり、柱、梁、桁のヤング係数の 推定に使われています(まだ実験段階?)。

1)パラメーターに密度があるので、密度がわからないと正確に推定できない。
⇒密度を統計学的に扱うことで、この問題点の解決を名古屋大学農学部
の山崎真理子先生らが研究されています。

2)測定値が相当ばらつくたたき方によって、数値がかなり変わるので
たくさんたたくとか、たたき方を一定にするとかの工夫が必要です。」

ということで名古屋大学農学部 の山崎真理子先生が研究されていることが分かった。別ルートでも山崎先生に辿りついたので この分野では山崎先生が権威なのだろう。

古民家をコンバージョンする相談がきており、その時に木材強度の推定をやってみたいと思っている。