「記者失格」柳澤秀夫

NHKの「あさイチ」で一躍有名になり、その後NHKを退局し現在は各種テレビ番組でコメンテーターとして活躍されている柳澤秀夫さんの本。

戦争報道記者、癌との戦い、組織ジャーナリズムの矛盾が赤裸々に語られている。「へぇ そうだったんだ」と今になって知ることが多かった。

「第5章 現実は、ひとことではくくれない」に書かれていた「0か、1かのデジタル思考は、グラデーションを捨象する。だけど、ものごとの本質は、アナログ的なグラデーションのなかにこそあるのではないのだろうか」 に強く同感した。

「キャッチ商法化するメディア」での「人間は、頭で考えるより先に、単純化されたものや扇情的なものに感性で飛びつく。テレビはもともと、見てもらってなんぼのものだ。キャッチすることは必要だと思う。だけど、キャッチすることばかりに長けて、店の暖簾をくぐらせてたあとに食べさせるものがまずいのでは仕方ない。」

「ジャーナリズムの元々の意味は日記であり、記録だ。記録するものは事実でなければならない」「あくまでもファクト、事実を丁寧に積み重ねる。対象に近づかなければ事実はなかなか見えてこない。だからこそ、何があっても現場に行かなければいけない。それが我々の仕事だ。」生涯、記者としてあり続けようとする柳澤さんの思いが伝わってくる。

今、メディアだけでなく日本全体が「キャッチ商法化」している。この本を読んでそう思った。