既存不適格

 既存不適格(きぞんふてきかく)は、建築・完成時の「建築基準法や各種規定の基準に適合して建てられた建築物」であって、その後、法令の改正や都市計画変更などにより、現行法に対して不適格な部分が生じた建築物のことをいう。

 既存建築物が全て該当するわけでなく建築確認済証・完了検査済証がある建物だけが、既存不適格の恩恵に預かることができる。

 まず第一に、これを理解していない建築士は多い。また「既存不適格」を「違反状態」と考えている建築士も多い。 

 「既存不適格」建築物は法文上で定義された用語ではないが「現に存在している建築物」で、その後の法改正によって法に不適合になったものに対しては建築基準法が適用されない旨を記した法3条2項の内容を示した言葉として使われている。

 例えば建築基準法第3条第2項が「いわゆる既存不適格建築物に定めた規定である」(「詳解 建築基準法・改訂版 平成13年11月発行)と記載がある。

 何故この規定が出来たかという説明として上記の「詳解 建築基準法」では、住居地域内の建蔽率を取り上げて「現在は適法であるが、都市計画法の改正により建蔽率が少なくなり、かつ、なんらの経過処置も規定されていないとしたら。これらの建築物は改築、修繕などの工事を一切しない場合でも違反建築物となってしまう」これは「法的安定性を害する」と記載している。

 既存不適格建築物に対して大規模な修繕・模様替えあるいは増改築等を行う場合、基本的には既存不適格の部分にも新規定を適用する必要がある。しかし、全ての項目を新規定に合わせることは難しいため、法86条の7では制限の緩和を定めている。

 法文上定義されていない用語の為か、「既存不適格」という概念が建築基準法に限られた定義なのかわからないが、建築関係の訴訟に関わると、この「既存不適格」という言葉や意味を弁護士や裁判官がわかっているのかどうなのか疑問になることがある。

 法文上定義されていない用語は多い。「竪穴区画」もこの間まで法文上は出てこなかったし、「スバンドレル」という用語も最近では死語のようだ。若い建築士に言っても法文に記載がないから知らないと言われた。

「スパンドレル」とは防火区画に接する外壁で、区画の内側から外側へ、外気を介した炎の回り込みを防ぐ部位のことで、外部延焼防止帯ともいう。