この作品の主人公は、大名(晩年は伏見奉行)、茶人、作庭家、建築家、書家として名を遺した小堀遠州です。フィクションですが、晩年の小堀遠州(小堀政一)が、利休、石田三成、沢庵、古田織部等との邂逅を綴る形で書かれていて、茶の湯の精神とか茶室について理解を深めるための本になっていると思います。
孤篷庵(こほうあん)は、京都市北区紫野にある臨済宗大徳寺派大本山大徳寺にあります。建築関係の本にはよく登場し、時には建築士の試験などにも登場しますが、たまにしか一般公開しませんし茶室内部の写真撮影は禁止なので、著名な割には実物を見た人は少ないと思います。そういう私も何度か大徳寺には行っていますが実物を見たことはありません。
この庵号の「孤篷」は「一艘の苫舟」の意で、小堀政一(遠州)が師事した春屋宗園から授かった号です。
なにか全てを暗示しているような庵号でもあります。
この本を読んで、すこし即物的な建築の世界から離れて、精神世界に触れることができたような気がします。