建築確認申請の事前協議先

 東京都内の幾つかの特別区の建築確認申請を出す際の行政の事前協議先を収集し比較対象してみた。ネット上で公開している特別区もあるし窓口で配布している特別区もある。

 こうした各特別区の協議先一覧表を眺めていると、随分と条例・要綱等が増えたなという印象だ。


 設計者は、建築の規模が大きくなるとレギュレーション(法令、規則、基準)に適合させることに時間を取られる。建築基準法だけでなく種々の関係規定、多くの条例等も適用され、計画を変更するたびに膨大なチェック項目をひとつひとつ確認しなければならない。これに結構、時間と人員がとられるが、ここで間違うとクライアントからしばらくの間、又はずっと出入り禁止となる。そしてチョンボすれば損害賠償請求などの訴訟になる場合もある。

 経験上、ボリューム検討等では クライアントがその土地を購入するかどうか判断するのに時間的制約があるので、設計者に与えられる時間は多くはない。

 ボリューム検討段階では、骨格的な法令を間違わないようにすることが重要となる。用途地域規制、建蔽率、容積率、各種高さ制限、避難経路、駐車場進入口、東京都駐車場条例の附置義務駐車台数、地区計画等が該当するだろうか。

 クライアントから提供されるのは物件概要と地籍図程度。大体のところ設計担当者は現場を見に行かない(その時間がない)。登記簿謄本を見ない(地下鉄の借地権が敷地の一部に設定されている事がある)。というように、リサーチに充分時間が与えられない事が原因の事もある。

 設計事務所等ではボリューム検討をするシニア技術者の層が薄いと言う事もある。ペアチェックが内部できちんとできない組織もある。なんと言っても、あまりに労働時間が長い上に、経験値があるシニア技術者に仕事が集中し「金属疲労」を起こしてしまう。そうして、シニア技術者は転職する。行先は、デベロッパー、ゼネコン、CM・PM会社等。

 上司が、時代と共に増え続けるレギュレーション(法令、規則、基準)に時間と人員がかかる事を理解していないと地獄が待つている。

「近畿建築行政会議 建築基準法 共通取扱い集2022(第2版)」近畿建築行政会議

2023年正月に注文し最初に読んだ本。

昨年2022年12月15日に発行された「近畿建築行政会議 建築基準法 共通取扱い集」2022(第2版)。

2014年(平成26年)5月に、この本の意匠分野が発行され、2016年(平成28年)に構造・設備分野の取扱いが発表された。そして今回、近畿建築行政会議が主体となり近畿建築確認検査協会と連携し編集委員として参画してもらい発刊に至ったと記載されている。

近畿圏内では府県市単位で発行している取扱い集等があるが、内容が重複する場合又は差がある場合等は原則としてこの本が優先する。

この取扱い集は「改訂項目一覧表」が記載されていて、第1版からの改訂がないもの、内容が改訂された項目、条項ずれや文書等を整理した項目、新規の項目、削除した項目が判るのが読者目線だと思うし第1版から第2版の差分が判るのは、とても使いやすい。

誰かが言ったが法律は「生もの」である。法の改正や取扱いが変われば、その時点で旧来の解説書の類は役に立たなくなる。変化に対応するスピードが必要で、近畿圏という多くの都道府県の特定行政庁と確認検査機関から意見を集め、内容を整理し発行に至るのは、相当のリーダーシップが必要ではないかと推測する。

新規の項目で目に留まったのは、「吹抜けを介した採光」の規定、「増築に該当しない項目」「屋根の修繕の取扱い」「排煙方式が異なる異種排煙の区画」「給水管等が防火区画を構成する床・壁と一体となる柱・はりを貫通する場合の取扱い」「法第86条の7第1項による増築又は改築を行う場合の既存エレベーターに遡及適用される規定」等が気になって注意深く読ませてもらった。

設計者にとって法律は「武器」である。日々鍛錬にいそしむ年にしたいと思う。

土砂災害危険区域 -4

たまたま全国各地の建築法規の取り扱い基準について別な項目で調べていたら、先に記載した崖地のオープンテラスに類似したケースとして「架台等の取扱い」というのを見つけた。

横浜市建築基準法取扱基準集(令和2年4月版)

1-3 架台等について(参考)
架台その他これに類するもの(柱又は壁及び床版により構成される工作物でその床版の上部を駐車や建築物へのアプローチ等の利用に供するもの)又は機械式駐車装置の地下ピット部分については、確認申請等が必要ではない工作物ですが、日常的に人の通行、駐車等に供し構造上の安全性に配慮する必要があることから、法第 19 条、法第 20 条
など建築物に対する規制に準じた設計を行ってください。

(まち建企第 2287 号 平成 20 年3月4日)
(建建企第 811 号 平成 22 年8月9日改正)

斜面地の多い横浜市ならではの取扱い基準だと思う。この架台等の取扱い基準は、現行はシンプルな表現だが、以前は法12条5項に基づく築造計画書の提出を求めていた。以下 昔の横浜市の架台指導基準。

■架台等の指導について(指導基準)

架台等の築造における指導については、次により行うものとします。

1、架台等の意義

架台その他これらに類するもの(以下「架台等」といいます。)とは、柱又は壁及び床板により構成される工作物で、その床版の上部を駐車その他の利用に供するものをいいます。

2、適用範囲

この取扱いは、高さが2m超える架台等に適用します。

3、築造計画書の提出

築造主は、架台を築造しようとする場合において、工事着手前に法12条5項に基づく架台等築造計画書(以下「築造計画書」といいます。提出するものとします。

4、築造計画書の審査

築造計画書が提出された場合においては、構造の安全その他の事項について審査を行うものとします。

5、技術基準

技術基準については、法19条、法20条及び法44条を準用するほか、建築物に準じた指導を行うものとします。

6、施工状況報告

築造主は、架台等の工事が完了した場合においては、施工状況について報告するものとします。

7、8略

(横浜市建企指第1007号 建築局長 平成5年4月1日)

【長屋】千葉県建築基準法施行条令

【千葉県建築基準法施行条令】

第八節 長屋
(木造長屋の形態等)
第四十二条 木造建築物等である長屋(耐火建築物又は準耐火建築物であるものを除く。以下「木造長屋」という。)は、六戸建て以下としなければならない。ただし、主要構造部を準耐火構造としたものについては、十二戸建てにまですることができる。
2 木造長屋の地階を除く階数は、二以下としなければならない。ただし、政令第百三十六条の二に定める技術的基準に適合し、かつ、次の各号に定めるところによるものは、その地階を除く階数を三とすることができる。
一 延べ面積(主要構造部が一時間準耐火基準に適合する準耐火構造である部分の床面積を除く。)は、五百平方メートル以下とすること。
二 各戸が重層しないこと。
三 地階部分は、主要構造部(階段を除く。)を耐火構造とすること。
3 前項第一号及び第二号の規定は、知事が当該建築物の構造及び敷地の状況により安全上及び防火上支障がないと認める場合は、適用しない。
一部改正〔昭和五二年条例四一号・平成三年二一号・五年二八号・一二年七五号・一五年六一号・二七年五一号〕
(出入口)
第四十三条 長屋の各戸の出入口は、その一以上が道に面しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する長屋については、この限りでない。
一 六戸建て以下の長屋で、その出入口が、道に通ずる幅員二メートル以上の敷地内の通路に面するもの。ただし、六戸建て以下の木造長屋で、地階を除く階数が三のものにあつては、その出入口が、道に通ずる幅員三メートル以上の敷地内の通路に面するもの
二 耐火建築物又は準耐火建築物で、その出入口が道に通ずる避難上有効な敷地内の通路に面するもの
2 階段等のみにより直接地上に達する住戸にあつては、その階段口(当該階段等が地上に接する部分をいう。)を出入口とみなし、前項の規定を適用する。
一部改正〔昭和四六年条例一五号・五二年四一号・平成三年二一号・五年二八号・一五年六一号〕
(内装)
第四十三条の二 階数が二以上の耐火建築物又は法第二条第九号の三イに該当する準耐火建築物以外の長屋は、最上階を除く各階の天井(回り縁、竿さお縁その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを難燃材料でしなければならない。
追加〔平成三年条例二一号〕、一部改正〔平成五年条例二八号・一二年七五号〕

【長屋】京都市建築基準法施行条令

【京都市建築基準法施行条例】
(長屋)
第6条の2 都市計画区域内にある長屋は、次に定めるところによらなければならない。
(1) 法第23条に規定する木造建築物等である長屋(耐火建築物又は準耐火建築物を除く。)は、5戸建て以下で、かつ、階数を2以下とすること。ただし、令第136条の2各号に掲げる技術的基準に適合する場合には、階数を3とすることができる。
(2) 前号の長屋の側面には、隣地境界線との間に50センチメートル以上の空地を設けること。ただし、隣地境界線が、公園、広場その他これらに類する空地に接するときは、この限りでない。
(3) 各戸には、便所及び炊事場を設けること。
2 前項の長屋の各戸の主な出入口は、道路(法第43条第1項ただし書の規定による許可を受けた長屋にあっては、当該長屋が当該許可の内容に適合するためその敷地が接しなければならないとされた道又は通路を含む。第2号において同じ。)に面して設けなければならない。ただし、主な出入口が次の各号のいずれかに該当するものは、この限りでない。
(1) 2戸建てで敷地内の幅員2メートル以上の通路に面するもの
(2) 耐火建築物又は準耐火建築物で各戸の界壁が耐火建築物にあっては耐火構造、準耐火建築物にあっては準耐火構造であり、かつ、両端が道路に通じる敷地内の幅員3メートル以上の通路又は一端が道路に通じる敷地内の幅員3メートル以上、長さ35メートル以内の通路に面するもの
(3) 公園、広場その他これらに類する空地に面するもの
(昭54条例24・追加、昭63条例30・平5条例6・平7条例12・平13条例11・平27条例32・一部改正)

【長屋】大阪府建築基準法施行条令

【大阪府建築基準法施行条例】
(長屋)
第六条 都市計画区域内の長屋は、次の各号に定めるところによらなければならない。
一 各戸の主要な出入口は、道路(法第四十三条第一項ただし書の規定による許可を受けた長屋にあっては、省令第十条の二の二第一号に規定する空地、同条第二号に規定する公共の用に供する道又は同条第三号に規定する通路を含む。以下この号において同じ。)に面すること。ただし、長屋が次のイ又はロに該当し、かつ、各戸の主要な出入口が道路に通ずる幅員三メートル以上の敷地内の通路(イに掲げる長屋にあっては、道路から各戸の主要な出入口までの長さが三十五メートル以内の通路に限る。)に面する場合は、この限りでない。
イ 床面積の合計が三百平方メートル以下のもの
ロ 耐火建築物又は準耐火建築物であるもの
二 桁行は、二十五メートルを超えないこと。ただし、耐火建築物又は準耐火建築物である場合は、この限りでない。

【長屋】神奈川県建築基準条令

【神奈川県建築基準条令】
(長屋の出口)
第 19 条 長屋の各戸の主要な出口は、道に面して設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当し、かつ、安全上支障がないと認められる場合は、この限りでない。
(1) 主要な出口から道に通ずる敷地内通路の幅員が 3 メートル(2 以下の住戸の専用の通路については、2 メートル)以上である場合
(2) 周囲に公園、広場その他の空地がある場合
(長屋の構造等)
第 20 条
3 階を長屋の用途に供する建築物は耐火建築物又は政令第 115 条の 2 の 2 第 1 項の技術的基準に適合する準耐火構造とした準耐火建築物とし、4 階以上の階を長屋の用途に供する建築物は耐火建築物としなければならない。ただし、重ね建て長屋の用途に供する部分のない建築物にあっては、準耐火建築物又は政令第 136 条の 2 の技術的基準に適合する建築物とすることができる。

2 長屋の用途に供する部分の床面積の合計が 600 平方メートル以上の建築物は、耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない。

3 長屋の各戸の界壁の長さは、4.5 メートル以上としなければならない。ただし、当該建築物の構造若しくは形状又は周囲の状況によりやむを得ないと認められる場合は、その界壁の長さを 2.7 メートル以上とすることができる。

4 長屋の各戸は、直接外気に接する開口部を 2 面以上の外壁に設けなければならない

多世帯住宅について考えた

このところ多世帯住宅について考える機会があった。

ひとつは知人からの質問で、都内に計画中の三階建ての建物で親夫婦、子供夫婦、子供奥様の親という血縁関係が住む住宅が共同住宅だと言われたとのこと。外部階段を共有していて、家族構成が変化すれば第三者に賃貸することも容易な形態。

私も以前 横浜市でそういう多世帯住宅の設計に携わった経験があり、その時は、共用の外部階段を内部階段にして多世帯住宅で申請した経験があり、そういうことを話しておいた。

ところで横浜市は昨年、平成26年9月に「横浜市建築基準法取扱基準法」を一部改正し「多世帯住宅の取扱い」を加えた。image-0002

 

日本建築行政会議編の「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」(2013年版)を受けて、「世帯ごとに分離した台所、食堂等の部分が2までのものとし、3以上の住宅については、原則として共同住宅として扱う」というもの。

まあ「形態」で考える建築基準法の取扱いとしては妥当なんだろうなぁと思うけど、いまひとつ すっきりしない。

二世帯住宅を計画する場合、例えば親夫婦のいずれか、若しくは両方が無くなったり、片親の介護が必要になったときでスペースの転用を考える場合、子供が独立して生計を営むようになり、不要な部屋の転用を考えた場合とか、将来の家族構成の変化なども見込んで計画のバリエーションも考えておかないとならない。

三階建ての1階部分を他人に貸したら住宅から(特殊建築物)共同住宅で違反になるというのも建築ストックの活用上は、制限つけすぎかと思う。200㎡以下の住宅は「特定住宅」として緩和するとか必要。

「家族」といっても血縁関係でつながっているのが「家族」というわけでもなく、現代では多様化してきている。難しいね~。

山留め工事の施工計画書@横浜市

横浜市で2013年4月1日以降に工事着工する建物で、高さ3mを超える根切工事をする場合は、「山留め工事の施工計画書」等の提出における工事範囲が拡大されていた。

工事着工前に、「山留め工事の施工計画書」の提出が必要だったのは、私の知る限り横浜市、藤沢市、川崎市、渋谷区・・。いずれも起伏のある地形が多い場所。

東京の城南とか、北区なども起伏がありそうだが、擁壁や崖の脇に地階のある建物の工事現場を覗くと、根切や山留工事が適切に工事がされているのか、近隣住民でなくてもちょっと心配になる。

近隣住民などの当事者であれば尚更不安の種だろう。

万が一斜面や擁壁の崩落事故が起きた場合に、工事会社に保証能力が十分にあるのかも住民の不安の一要素になっている。

事故が起きた場合は、施工会社だけでなく工事監理者の責任も問われるので、しっかり工事監理は必要。

横浜市建築基準法施行細則の改正に伴い、平成25年4月1日以降に着工する工事からは、指定確認検査機関で確認を受けた物件についても「山留め工事の施工計画書」等の提出が必要です。
【制度改正の目的】

横浜市内では、斜面地における戸建住宅等の建設現場において、山留め仮設工事に十分な検討・準備が行われなかった結果、斜面の崩落事故や、これに伴い近隣敷地に危険な状況を生じる事例が発生しています。
こうした危険な状況の発生を防止するため、横浜市では、横浜市建築基準法施行細則を改正し、これまでも工事施工者又は工事監理者にお願いしていた山留め工事に関する報告について、提出対象となる工事範囲の拡大等を行うこととしました。
【制度改正の概要(横浜市建築基準法施行細則第17条の3 H25.4.1施行)】

1.横浜市建築主事に確認済証の交付を受けた物件に加え、指定確認検査機関で確認済証の交付を受けた物件についても提出の対象となります。
2.提出書類が変更になります。

◦高さが3メートルを超え5メートル以下の根切り工事を行う場合
⇒山留め工事の施工計画概要書等
◦高さが5メートルを超える根切り工事を行う場合
⇒山留め工事の施工計画書等

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/shidou/anzen/tetsuzuki/yamadome.html

「近畿建築行政会議 建築基準法 共通取扱い集」

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滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山の行政と指定確認検査機関によって構成されている近畿建築行政会議の建築基準法の共通取扱い集の初版が発売された。

「住宅用エアコン等の室外機を設置した開放廊下、バルコニーの床面積」「飾り柱等がある場合のバルコニーの床面積」「敷地内に2棟ある場合及びドライエリアからの採光」「住宅等における納戸」「小規模な鋼製の置型倉庫(物置)」・・・

日本建築行政会議の「建築確認のための  基準総則・集団規定の適用事例」より一歩踏み込んだ内容が網羅されているが、まだ共通取扱い項目が少ない。今後協議を継続して共通取扱い項目が増えてくれると実務上大いに助かる。

東京、関東もこういう共通取扱い集ができてくれると助かるのだが・・・。

既存の建築物に対する緩和~大阪府建築基準施行条例改正

大阪府の建築条例を調べていたら、今年H25年4月に大阪府建築基準施行条例が改正になって、その中で第9条の3(既存の建築物に対する制限の緩和)が追加されていた。

(既存の建築物に対する制限の緩和)
第九条の三 法第三条第二項の規定により第八条の二及び第八条の三の規定の適用を受けない第八条の二各号に掲げる建築物について増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替(以下この条において「増築等」という。)をする場合においては、当該増築等をする部分以外の部分に対しては、これらの規定は、適用しない。
(平二四条例一五二・追加)

これは「増築や大規模な修繕等を行う既存の建築物又はその部分については、避難上の有効性が低下しないにもかかわらず、増築等に伴って既存の避難口誘導灯及び防火戸の仕様を変更させることは過度な負担となることから、当該制限を緩和【第9条の3関係】」ということらしい。

建築ストックの活用に向けて法的整備がなされている。