「建築史への挑戦 住居から都市、そしてテリトーリオへ」陣内秀信・高村雅彦編著

陣内秀信先生の法政大学教授最終講義集。

 2019年出版当時に一度読んでから、いつも机の上にあり何度も読み返している。自分にとって基軸となる本。だから書いておくことは多いし、中々読後感を記することができなかった。

 この本を「幹」にして参考となる「枝」となる本を読んでいると、何年経っても読み終わらない、読み返す「基軸」本となる。それほど陣内秀信先生の本に青春時代から影響を受けていると、今更ながら実感する。

 陣内秀信先生に直接お会いしたこともないし、陣内研究室で学びたいと思ったことはなかったが、その本から受けた影響は計り知れないのではないか。と半世紀を振り返えってみると思い起こす事は多い。

 同時代を生きてきた、ちょっとお兄さんの陣内秀信先生は、建物単体よりも都市空間の間の物語を紡いできた。研究領域の視点も住居から都市に移り、最近ではテリトーリオに広がっている。他の研究領域の人を巻き込んで とても学際的な研究を続けておられる。

 陣内秀信先生の口癖は「一点突破 全面展開」だと聞いて笑ってしまった。懐かしい1970年代初頭の言葉に触れ、ああ間違いなく同時代人だなと思った。

 あの時代の同時代人で「一点突破 全面展開」できた人は どれだけいるだろうか。そういう私も出来なかった。

 「一点突破 全面展開」できた稀有の存在である陣内秀信先生の本は、建築界のみならず現代社会人の必読書である。