「ふらりと歩き ゆるりと食べる京都」柏井壽著

「鴨川食堂」の著者である歯科医で小説家の柏井壽さんの「京都・食べ散歩」の本。観光客の喧騒とは無縁の、歩いて楽しい京都の路地「七つの道」と、地元の人の舌を堪能させる名店が紹介されている。紹介されている「七つの道」は下記。

第一の道 蓮台野を歩く/第ニの道 千本通を北から南へ/第三の道 雨宝院から出水の七不思議へ/第四の道 京都御苑と、その周りを歩く/第五の道 四条通を歩く/第六の道 紅萌ゆる丘から、真の極楽を辿り、熊野の社へ/第七の道 豊国神社から西本願寺まで

京都には、その昔「鳥辺野(とりべの)」「化野(あだしの)」「蓮台野(れんだいや)」という3箇所の風葬地があった。風葬地というのは、亡くなった方々の遺体が捨てられて野ざらしにされていた所。

都市内の北にある大徳寺の近くが蓮台野といい。その船岡山周辺を「紫野(むらさきの)」と言うのだが、この辺りを以前から歩いてみたいと思っていた。「紫野」と聞くと美しい、あるいは高貴なイメージが浮かぶのだが、実は結構おどろおどろしい名称だったりする。

蓮台野に遺体を運ぶ際に、千本通という道を通って運んだそうで、平安時代の千本通は死体を運ぶ道。葬送の地への道であった千本通には卒塔婆(そとば)が千本立てられていたので千本通と言われるようになったとか。遺体を運ぶ際に血が流れ、周囲が遺体の血の色で染まっていたので「紫野」という地名になったという説がある。

平清盛が平家一門の拠点とした六波羅の地。鴨川よりも西側がこの世、鴨川よりも東側があの世とされていた。鴨川は三途の川に見立てられ、それより東があの世と見立てられていたとか。今の六波羅密寺、六道珍皇寺がある。

道の端々にある小さな寺院。お堂にも京都の長い歴史が刻まれている。

歴史好きには たまらない大人の散歩道と食事処が紹介されていて、私より歴史オタクの娘に、「この本面白かったよ」と見せたら持っていかれてしまった。