意外と盲点・・・施行令70条(柱の防火被覆)

この記事を見ての問合せが意外と多いので追記。質問は令70条について平成12年改正以前の取り扱いがどのようなものであつたか知りたいという事だった。検査済証のある既存建物でも天井裏の部分で施行令70条の防火被覆が施行されていない案件を時々見かける。又既存不適格であるということを証明するには、過去の取扱いがどうなっていたか調べる必要がある。

1991年(平成3年)に出版された「詳解 建築基準法 改訂版」の令70条の解説では以下のように記載されている。これは昭和46年1月1日施行から平成12年5月31日までの規定についての解説。

この頃までは柱1時間耐火程度が適切という取扱いだったが、その後厳しすぎる面があるという事で「地階を除く階数が3の建築物に係る建築基準法施工令第70条の取扱いについて」という事務連絡が昭和62年12月1日に出て、現在は告示に集約されている。

この後、平成12年6月1日に改正され平成13年1月6日施行-現在有効が下記の条文

********************************

設計上や審査上で意外と盲点というか忘れてしまうのが建築基準法施行令第70条(柱の防火被覆)です。

(柱の防火被覆)第70条

地階を除く階数が3以上の建築物(法第2条第9号の2イに掲げる基準に適合する建築物及び同条第9号の3イに該当する建築物を除く。)にあつては、一の柱のみの火熱による耐力の低下によつて建築物全体が容易に倒壊するおそれがある場合として国土交通大臣が定める場合においては、当該柱の構造は、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後30分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

耐火構造・準耐火構造とする必要が無い 三階建ての鉄骨造の建物・・・例えば倉庫とか工場、専用住宅で鉄骨がむき出しの建物などの場合には、柱の防火被覆が必要です。

防火被覆の条項が構造規定関係のところにあるので、つい見落としやすい条項です。

特定行政庁によっては、1階の柱部分のみ被覆すれば、容易に倒壊しないと考え指導しているところもあると聞いています。

検査機関は、法判断の裁量権がないので特定行政庁の指示に従う事になりますが、個人的には1階の柱部分のみ被覆すれば、容易に倒壊しずらい。と考えますので簡易的な方法としては有効だと思っています。

この施工令70条の法文は、昔は下記のようなものでした。

地階を除く階数が三以上の建築物にあっては、一の柱のみの火熱による耐力の低下によつて建築物全体が容易に倒壊するおそれがある場合においては、当該柱は、モルタルその他の断熱性のある材料で皮膜しなければならない。

昭和62年当時、近畿建築行政会議の統一解釈として大阪府下では、一時間耐火として指導していた。

しかし建設省住宅局建築指導課より「地階を除く階数が3の建築物に係る建築基準法施工令第70条の取扱いについて」という事務連絡が昭和62年12月1日に出され、一時間耐火の性能を要求する事は、やや厳しすぎる面があるとして是正された経過があります。

この事務連絡では、検討方法として

1,精算による方法

2,軸力再配分による方法

が詳細な計算方法とともに示されています。

区画避難安全検証法

 最近、既存建築物のリノベ―ション事案で、避難安全検証法を利用することが多くなっている。

 現在基本設計を手掛けているプロジェクトでも、既存の機械排煙は老朽化で実質機能していなかったので、リノベーションに伴い新規の機械排煙設備を設置するのではなく階避難安全検証で排煙設備、防煙垂れ壁を適用除外させる方向で進んでいる。

 別の相談を受けた事案では、テナントからの要望で区画を広げたところ排煙機の容量が足りなくなり、排煙機の容量を変えると、それに伴い非常用発電機も変更しなければならず、結構な金額の設備投資となるので、避難検証法でどうにかならないかというもの。

 2020年4月1日に施行された防火避難関係規定の合理化にともない示された項目に、区画安全検証法(令128条6)が追加された。

 従来は令129条の階避難安全検証法、令第129条の2で全階避難安全検証法が規定されていたが、これに区画避難検証法が加わった。適用除外される項目は「排煙設備の設置」「排煙設備の構造」「内装制限」のみと限定されているが、階の一部分の検証で適用除外ができる。

 注意点は準耐火構造の壁、防火設備(遮煙性能付)で区画するというところ。

飲食店の屋外テラス -3

飲食店の屋外テラスで排煙設備が必要だと指摘され機械排煙設備を設置したと言う案件の断面図。

屋外テラスの奥行は2m。外部に面した手摺は開放された縦格子の手摺であり、天井高もあり、バルコニーや廊下等の「吹きさらし」基準である手摺の上から1.1m以上かつ天井高の1/2以上の条件は満足している。

1、「客席が常時設置され屋内的用途が発生するので床面積に算入する」という判断は、とりあえず良しとする。

2、「屋外テラスに排煙設備の設置が必要か否か」について考えてみる。建物全体としては施行令第126条の2により、排煙設備の設置が必要な建物である。

3、「屋外テラスが火気発生室か否か」は実際の使用状況によるので、安全をみて火気使用室として考える(屋外テラスでBBQ、鍋、焼肉などいう事もある)

4、「火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分として、天井の高さ、壁及び天井の仕上げに用いる材料の種類を考慮して国土交通大臣が定めるもの」(施行令第126条の2第1項第五号、平成12年建告第1436号)に該当するか否か。「排煙設備は一の防煙区画部分のみに設置」(平成12年建告第1436号)とあるが、そもそも屋外テラス部分は、外気に開放され垂れ壁等も無く防煙壁によつて区画されていない。仮に屋外テラス部分が防煙区画部分として「床面積の1/50以上の開口面積を有し、かつ、直接外気に面する」(施行令第126条の3第1項八号)は満足している。

・よって屋内的用途が発生するこによる床面積算入の問題と排煙設備の設置は別の次元の問題と考えられる。

・屋外テラスを機械排煙設備として、どれほどの排煙機を設置したのかと思いきや、屋外テラス部分の容積で計算したそうだ。地球の面積は5.10×108km2だから、排煙機は1㎡につき1㎥の空気の排出能力を持つ莫大な容量の排煙機を設置しないと矛盾する。

・以上により屋外テラス部分は外部とし、飲食店内部の排煙設備設置のみで良かったのではなかったかと思う。


「屋外テラスに機械排煙設備は必要なのか」という、当該建物の建築主からの問いかけに対する私なりの回答でした。

飲食店の屋外テラス -2

【海外の参考画像】

ある複合ビルの2階、3階の飲食店区画の前にテラス席があり、椅子テーブルもきっちり記載し、指定確認検査機関に事前相談に行ったところ「テラス軒下の部分は屋内的用途が発生するので床面積に算入する」と言われたそうです。まあそういう判断もあるかも知れません。設計者も、容積率に余裕があるので床面積算入については特に反論はしなかったようです。

設計者と指定確認検査機関との間に下記のやりとりがあったそうです。(概要)

審査機関「床面積が発生する以上 建物室内ですね」
設計者「外気に有効に開放されていますよ」

審査機関「屋内的用途がある以上 室内だから排煙設備が必要だ」

設計者「テラス部分は自然排煙ということで良いですか」

審査機関「自然排煙でいいけど、飲食店の本当の屋内側(テラスサッシ内側)の排煙設備はどうなっているの?」

設計者「機械排煙です」

審査機関「じゃあ異種排煙区画となるね。このテラスと店舗の間のサッシは、開放したりするの」

設計者「サツシを開放して屋外テラスと室内側は一体で営業することはあると思います」

審査機関「異種排煙区画は、不燃材で常時閉鎖が必要です」

設計者「屋外テラスも機械排煙とします」

こうして屋外テラス席の部分も機械排煙とすることで、確認申請は決裁されたそうです。

皆さんは どう思いますか?

 ・・・続く

小屋裏物置の法改正履歴

元々

国土交通省(旧建設省)の通達(昭和32住指発第461号)による「普通の構造の小屋裏の一部を利用し、季節的に不要な物等を置く設備を設けたものと認められる程度のもの等は、通常階数に算入されない。」というのが基本的な考え方のベースにあります。

住宅の小屋裏物置に関する規定条文は、建築基準法施行令第2条第1項第八号です。

この規定は、昭和50年に改正されて現在も有効です。

「八  階数 昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の8分の1以下のものは、当該建築物の階数に算入しない。また、建築物の一部が吹抜きとなつている場合、建築物の敷地が斜面又は段地である場合その他建築物の部分によつて階数を異にする場合においては、これらの階数のうち最大なものによる。(昭和50年4月1日 – 現在有効)」

昭和55年に「小屋裏利用の物置の取扱いについて(昭和55年2月7日住指発第24号)」が発出されて 以下のことが記載されています。


昭和55年2月7日


建設省住宅局建築指導課長・建設省住宅局市街地建築課長から特定行政庁あて通知
 標記については、すでに「昭和32年6月1日付け住指受第461号徳島県土木部建築課長あて」例規が示されているが、最近この種の形態を有する住宅の建築が増加しつつあることにかんがみ、その取り扱いの統一を図るため、今後は左記により取り扱われたい。

          記

 住宅の小屋裏部分を利用して設ける物置(以下「小屋裏物置」という。)で、次の各号に該当するものについては、建築基準法の規定の適用に当たつては、階とみなさないこととする。
一 小屋裏物置の部分の水平投影面積は、直下の階の床面積の1/8以下であること。
二 小屋裏物置の天井の最高の高さは、1.4m以下であること。
三 物の出し入れのために利用するはしご等は、固定式のものとしないこと。

(昭和55年2月7日)


さらに平成12年に「建築基準法の一部を改正する法律の施行について(平成12年6月1日住指発第682号)」が発出されており、この中の第5項(2)に下記の事が記載されており、この時に1/8から現在の1/2に取扱いが変わりました。

「(2) 木造建築物の耐震壁の配置規定の整備(令第46条並びに告示第1351号及び第1352号関係)
 木造の建築物については、基準の明確化を図る観点から、木造建築物の耐震壁の配置の方法に関して建設大臣が定める基準によらなければならないこととした。建設大臣が定める基準においては、建築物の部分ごとの耐震壁量の割合等を定めた。
 また、小屋裏、天井裏その他これらに類する部分に物置等がある場合において、当該物置等の最高の内法高さが1.4メートル以下で、かつ、その水平投影面積がその存する部分の床面積の2分の1未満であれば、当該部分については階として取り扱う必要はないものであるが、近年このような物置等を設置する事例が増加してきていることを踏まえ、軸組等の規定を整備した。なお、構造計算が必要となる場合においては、令第85条の規定に基づき当該部分の積載の実況を反映させて積載荷重を計算することが必要である。」

注意しなければならないのは、小屋裏収納の面積が、その存する階の床面積の1/8を超えた場合は、軸組計算に面積を加算しなければいけないという事です。

 固定式階段の有無については、昭和55年当時は、固定梯子も不可とする取扱いでしたが、現在は「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例(2022年度版)」に小規模な階段に関する記述があり、「小屋裏物置等への専用の階段は、法第2条第5号に規定する「局部的な小階段」に該当する」とあり、一般的に固定階段を認める取扱いとなっています。しかし階段設置を不可としている特定行政庁もあります。

法令の規定を変更しないで通達類で取扱いを変更してきているので、法令集も法文・施行令の規定・告示を拾い読みしただけでは解りづらいです。

【国交省告示】非常用の照明装置を設置すべき居室の基準見直し

平成30年3月29日国土交通省では、非常用の照明装置を設置すべき居室の基準を合理化する告示を、本日、公布・施行した。

「ホテル、旅館等の多数の者が利用する建築物等については、原則として、すべての居室(共同住宅の住戸、寄宿舎の寝室等は対象外)とその避難経路に非常用の照明装置の設置が義務付けられています。
今般、避難行動に関する調査研究等を踏まえ、非常用の照明装置を設置すべき居室の基準を合理化することとし、以下のとおり、告示を改正いたしました。
本改正により、ホテル、旅館等の整備費用の低減に加え、既存の建築物における用途変更が円滑化されることが見込まれます。
なお、住宅宿泊事業法における非常用照明器具の設置方法に関する基準及び国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業の用に供する施設の建築基準法における取扱いについては、いずれも建築基準法に基づく非常用の照明装置の基準を引用していることから、今回の見直し内容が同様に反映されます。」

<改正の概要>
「規制の適用を受けない居室」として、次の居室を加える。
・床面積が30㎡以下の居室で、地上への出口を有するもの
・床面積が30㎡以下の居室で、地上まで通ずる部分が次の(1)又は(2)に該当するもの
(1) 非常用の照明装置が設けられたもの
(2) 採光上有効に直接外気に開放されたもの

001228597

001228598

仏様の居室

先だって調査した御堂は、月1回2時間だけ御開帳され住職が御経を読むとの事だった。

調査に参加したメンバーに、「この建物は、建築基準法上の居室か否か」と問いかけてみた。すると居室とするものと非居室とするものに意見が分かれた。

「居室」の定義は、法第2条第4号において「居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室」と定義されている。

あくまでも人間様の視点で書かれてる建築基準法の場合では「継続性」が極めて少なく「非居室」と考えるのが妥当だと思うと言った。

尚、「採光のための開口部を設けることを要しない居室について」は、平成7年建設省住指発第153号というのが出され解釈の統一化が図られている。

平成7年建設省住指発第153号
採光のための開口部を設けることを要しない居室について
平成7年5月25日
建設省住宅局建築指導課長から特定行政庁建築主務部長あて通知
 近年、建築物の機能の高度化及び多様化、照明設備及び換気設備の機能の向上、国民の住生活様式の多様化等により、居室の利用形態が多様化しており、建築基準法(昭和25年法律第201号。以下「法」という。)第28条第1項ただし書に規定する「温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室」の解釈について、地方により統一を欠く向きもあるので、その統一を図るため、今後は左記により取り扱われたい。

一 温湿度調整を必要とする作業を行う作業室
 次に掲げる居室は、法第28条第1項ただし書に規定する「温湿度調整を必要とする作業を行う作業室」に該当するものとする。
(一) 大学、病院等の実験室、研究室、調剤室等温湿度調整を必要とする実験、研究、調剤等を行う居室(小学校、中学校又は高等学校の生徒用の実験室を除く。)
(二) 手術室
(三) エックス線撮影室等精密機器による検査、治療等を行う居室
(四) 厳密な温湿度調整を要する治療室、新生児室等
二 その他用途上やむを得ない居室
 次に掲げる居室は、法第28条第1項ただし書に規定する「用途上やむを得ない居室」に該当するものとする。
(一) 開口部を設けることが用途上望ましくない居室
1) 大音量の発生その他音響上の理由から防音措置を講ずることが望ましい居室
ア 住宅の音楽練習室、リスニングルーム等(遮音板を積み重ねた浮き床を設ける等遮音構造であること並びに当該住宅の室数及び床面積を勘案し、付加的な居室であることが明らかなものに限る。)
イ 放送室(スタジオ、機械室、前室等で構成されるものをいう。)
ウ 聴覚検査室等外部からの震動・騒音が診察、検査等の障害となる居室
2) 暗室、プラネタリウム等現像、映写等を行うため自然光を防ぐ必要のある居室(小学校、中学校又は高等学校の視聴覚教室を除く。)
3) 大学、病院等の実験室、研究室、消毒室、クリーンルーム等放射性物質等の危険物を取り扱うため、又は遺伝子操作実験、病原菌の取扱い、滅菌作業、清浄な環境の下での検査、治療等を行う上で細菌若しくはほこりの侵入を防ぐため、開口部の面積を必要最小限とすることが望ましい居室
4) 自然光が診察、検査等の障害となる居室
ア 眼科の診察室、検査室等自然光が障害となる機器を使用する居室
イ 歯科又は耳鼻咽喉科の診察室、検査室等人工照明により診察、検査等を行う居室
(二) 未成年者、罹病者、妊産婦、障害者、高齢者等以外の者が専ら利用する居室で法第28条第1項の規定の適用を受けない建築物の居室に類する用途に供するもの
1) 事務室(オフィス・オートメーション室を含む。)、会議室、応接室、職員室、校長室、院長室、看護婦詰所(いわゆるナース・ステーション)等事務所における事務室その他執務を行う居室に類する用途に供する居室
2) 調理室、印刷室等飲食店等の厨房、事務所等の印刷室その他作業を行う居室に類する用途に供する居室(住宅の調理室で食事室と兼用されるものを除く。)
3) 舞台及び固定された客席を有し、かつ、不特定多数の者が利用する用途に供する講堂等劇場、演芸場、観覧場、公会堂、集会場等に類する用途に供する居室
4) 管理事務室、守衛室、受付室、宿直室、当直室等事務所等の管理室に類する用途に供する居室
5) 売店等物品販売業を営む店舗の売場に類する用途に供する居室

川口市・納戸の取扱い

埼玉県川口市が この9月1日から運用を開始すると言う「納戸の取扱い」が話題を呼んでいる。

川口市建築基準法関係の解説及び運用基準

戸建て住宅で採光が取れない場合、確認申請の図書上だけ「納戸」と記載し、実態は照明、コンセント等の設備や、畳敷き・床の間があるようなものは「居室」であるという至極まっとうな取扱いである。

「時代に逆行してる」と息巻いている人や「現代住宅に採光は不要だ」等と言う人もいるそうだが、他の特定行政庁や指定確認検査機関は見てみぬふりをしているだけである。実は黙認は罪なのだ。川口市のように「取扱い」を明文化して堂々と議論するべきだろう。私は「偉いぞ川口市」と言ってやりたい。

こんな取扱いを明文化しなければならないほど川口市の戸建て住宅は極小敷地に目いっぱいに建っている住宅が多いのだろう。他の地域でも確認申請上では納戸と書きながら戸建て分譲チラシでは寝室になっているのが多くみられる。

明治の中旬頃に全国各地で制定された「長屋建築規則」でさえ、前面路地は2.7m(9尺)、後ろと脇は0.9m(3尺)という離隔距離を定めている。当時は長屋のほとんどが平屋建てだったのにこれだけの採光・通風に配慮した数値を定めていた。

今や隣の家との距離が、1メートルというのは遠い昔の話であり都会の一般庶民の居住環境は悪化するばかりである。

建築基準法の採光規定については議論する余地がある。

例えば

  1. 坪庭・ライトコート等に接する場合の居室の採光緩和
  2. 吹抜けを介して連続する居室(1・2階)の採光緩和
  3. 太陽光採光システム(レンズ集光+光ファイバー伝送方式)による採光の緩和

技術的に検討すべきことは沢山ある。

川口市が投じた「納戸の取扱い」が建築基準法の採光規定の見直しに一石を投じることになれば良いなと思っている。

【長屋】千葉県建築基準法施行条令

【千葉県建築基準法施行条令】

第八節 長屋
(木造長屋の形態等)
第四十二条 木造建築物等である長屋(耐火建築物又は準耐火建築物であるものを除く。以下「木造長屋」という。)は、六戸建て以下としなければならない。ただし、主要構造部を準耐火構造としたものについては、十二戸建てにまですることができる。
2 木造長屋の地階を除く階数は、二以下としなければならない。ただし、政令第百三十六条の二に定める技術的基準に適合し、かつ、次の各号に定めるところによるものは、その地階を除く階数を三とすることができる。
一 延べ面積(主要構造部が一時間準耐火基準に適合する準耐火構造である部分の床面積を除く。)は、五百平方メートル以下とすること。
二 各戸が重層しないこと。
三 地階部分は、主要構造部(階段を除く。)を耐火構造とすること。
3 前項第一号及び第二号の規定は、知事が当該建築物の構造及び敷地の状況により安全上及び防火上支障がないと認める場合は、適用しない。
一部改正〔昭和五二年条例四一号・平成三年二一号・五年二八号・一二年七五号・一五年六一号・二七年五一号〕
(出入口)
第四十三条 長屋の各戸の出入口は、その一以上が道に面しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する長屋については、この限りでない。
一 六戸建て以下の長屋で、その出入口が、道に通ずる幅員二メートル以上の敷地内の通路に面するもの。ただし、六戸建て以下の木造長屋で、地階を除く階数が三のものにあつては、その出入口が、道に通ずる幅員三メートル以上の敷地内の通路に面するもの
二 耐火建築物又は準耐火建築物で、その出入口が道に通ずる避難上有効な敷地内の通路に面するもの
2 階段等のみにより直接地上に達する住戸にあつては、その階段口(当該階段等が地上に接する部分をいう。)を出入口とみなし、前項の規定を適用する。
一部改正〔昭和四六年条例一五号・五二年四一号・平成三年二一号・五年二八号・一五年六一号〕
(内装)
第四十三条の二 階数が二以上の耐火建築物又は法第二条第九号の三イに該当する準耐火建築物以外の長屋は、最上階を除く各階の天井(回り縁、竿さお縁その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを難燃材料でしなければならない。
追加〔平成三年条例二一号〕、一部改正〔平成五年条例二八号・一二年七五号〕

【長屋】京都市建築基準法施行条令

【京都市建築基準法施行条例】
(長屋)
第6条の2 都市計画区域内にある長屋は、次に定めるところによらなければならない。
(1) 法第23条に規定する木造建築物等である長屋(耐火建築物又は準耐火建築物を除く。)は、5戸建て以下で、かつ、階数を2以下とすること。ただし、令第136条の2各号に掲げる技術的基準に適合する場合には、階数を3とすることができる。
(2) 前号の長屋の側面には、隣地境界線との間に50センチメートル以上の空地を設けること。ただし、隣地境界線が、公園、広場その他これらに類する空地に接するときは、この限りでない。
(3) 各戸には、便所及び炊事場を設けること。
2 前項の長屋の各戸の主な出入口は、道路(法第43条第1項ただし書の規定による許可を受けた長屋にあっては、当該長屋が当該許可の内容に適合するためその敷地が接しなければならないとされた道又は通路を含む。第2号において同じ。)に面して設けなければならない。ただし、主な出入口が次の各号のいずれかに該当するものは、この限りでない。
(1) 2戸建てで敷地内の幅員2メートル以上の通路に面するもの
(2) 耐火建築物又は準耐火建築物で各戸の界壁が耐火建築物にあっては耐火構造、準耐火建築物にあっては準耐火構造であり、かつ、両端が道路に通じる敷地内の幅員3メートル以上の通路又は一端が道路に通じる敷地内の幅員3メートル以上、長さ35メートル以内の通路に面するもの
(3) 公園、広場その他これらに類する空地に面するもの
(昭54条例24・追加、昭63条例30・平5条例6・平7条例12・平13条例11・平27条例32・一部改正)

【長屋】大阪府建築基準法施行条令

【大阪府建築基準法施行条例】
(長屋)
第六条 都市計画区域内の長屋は、次の各号に定めるところによらなければならない。
一 各戸の主要な出入口は、道路(法第四十三条第一項ただし書の規定による許可を受けた長屋にあっては、省令第十条の二の二第一号に規定する空地、同条第二号に規定する公共の用に供する道又は同条第三号に規定する通路を含む。以下この号において同じ。)に面すること。ただし、長屋が次のイ又はロに該当し、かつ、各戸の主要な出入口が道路に通ずる幅員三メートル以上の敷地内の通路(イに掲げる長屋にあっては、道路から各戸の主要な出入口までの長さが三十五メートル以内の通路に限る。)に面する場合は、この限りでない。
イ 床面積の合計が三百平方メートル以下のもの
ロ 耐火建築物又は準耐火建築物であるもの
二 桁行は、二十五メートルを超えないこと。ただし、耐火建築物又は準耐火建築物である場合は、この限りでない。

【長屋】神奈川県建築基準条令

【神奈川県建築基準条令】
(長屋の出口)
第 19 条 長屋の各戸の主要な出口は、道に面して設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当し、かつ、安全上支障がないと認められる場合は、この限りでない。
(1) 主要な出口から道に通ずる敷地内通路の幅員が 3 メートル(2 以下の住戸の専用の通路については、2 メートル)以上である場合
(2) 周囲に公園、広場その他の空地がある場合
(長屋の構造等)
第 20 条
3 階を長屋の用途に供する建築物は耐火建築物又は政令第 115 条の 2 の 2 第 1 項の技術的基準に適合する準耐火構造とした準耐火建築物とし、4 階以上の階を長屋の用途に供する建築物は耐火建築物としなければならない。ただし、重ね建て長屋の用途に供する部分のない建築物にあっては、準耐火建築物又は政令第 136 条の 2 の技術的基準に適合する建築物とすることができる。

2 長屋の用途に供する部分の床面積の合計が 600 平方メートル以上の建築物は、耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない。

3 長屋の各戸の界壁の長さは、4.5 メートル以上としなければならない。ただし、当該建築物の構造若しくは形状又は周囲の状況によりやむを得ないと認められる場合は、その界壁の長さを 2.7 メートル以上とすることができる。

4 長屋の各戸は、直接外気に接する開口部を 2 面以上の外壁に設けなければならない

【長屋】東京都建築安全条例

【東京都安全条例】
(長屋の主要な出入口と道路との関係)
第五条 長屋の各戸の主要な出入口は、道路又は道路に通ずる幅員二メートル以上の敷地内の通路に面して設けなければならない。
2 木造建築物等である長屋(耐火建築物又は準耐火建築物を除く。)にあっては、主要な出入口が前項の通路のみに面する住戸の数は、三を超えてはならない。
(昭二八条例七四・昭三〇条例三一・昭三五条例四四・昭四七条例六一・平五条例八・平一二条例一七五・一部改正)

足立区議会「東京都建築安全条例に基づく長屋規制の見直しを求める意見書」全会一致で可決

以前より、その安全性が問題になっていた「重層長屋」。

都内では、足立区、世田谷区、練馬区などで「大規模な重層長屋」の計画や建設が進められています。

足立区西竹の塚2丁目に建設中の重層長屋の建築確認の取り消しを求める審査請求が提出されました。今後、足立区建築審査会で審議がされます。

12月22日、東京都建築安全条例の規制を強化するよう求める意見書が足立区議会本会議で全会一致で可決されました。

東京都建築安全条例に基づく長屋規制の見直しを求める意見書
当区において、現在、道路や避難経路の安全性を考慮しない複数の大規模長屋計画が予定され、建築工事が進められている。この状況は、震災時や火災時において長屋居住者や隣接住民の避難及び消火活動に困難をきたし、地域の安全を脅かしている。
このため、隣接住民より建築確認の取り消しを求める建築審査請求が提出されるとともに、地域住民からは建築確認の取り消しを求める要望書も提出されている。
しかしながら、「東京都建築安全条例」には、準耐火建築物の長屋に対する戸数制限などの定めがなく、今後もこのような長屋が多数建築されることが懸念される。安全な長屋計画を誘導するためには、都条例の規定整備が不可欠である。
よって、足立区議会は東京都に対し、良好な住環境の整備を図るため、東京都建築安全条例の見直しを強く求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。

平成28年12月22日
議長名
東京都知事あて

足立区・東京都建築安全条例に基づく長屋規制の見直しを求める意見書

足立区竹ノ塚の重層長屋の接道は、行き止まりの法42条2項道路で現況幅員は1.8m~1.5mほどしかないとの事です。(下図・黒い線)

この法42条2項道路が接道する やや広い道路は法42条1項1号道路で、足立区道路台帳では、幅員5.4mほどしかありません。

建設中の建物が62戸(32戸と30戸の二棟)と大規模で、居住者は100人を超えることが予想されます。

近隣商業地域、容積率300%、建ぺい率60%、第三種高度地域、準防火地域、日影規制5-3時間、測定高さ4m、景観計画区域(一般)となっています。

東京都安全条例では準耐火建築物の長屋の戸数制限はありませんが、もともとこれほど大規模な重層長屋を想定した法整備ではありませんから、その安全性・防火性などについて地域住民が心配するのは当然だと思います。

赤丸部分が建設地で東武スカイツリーライン・竹ノ塚駅から近い立地です。

建築法からの考察は、さらに資料が集まり現地を見てから詳しく書くことにしたいと思います。

いずれにしても重層長屋については、社会問題化することが求められています。

*12/25 記事を修正しました。

季刊大林・№13「長屋」

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現在の集合住宅の原型は、江戸時代の長屋ですが、明治時代になっても、その形態は継承されたと言われています。

明治期の建築法制では、長屋建築条例が各地につくられています。その「長屋建築条例」を全国各地から収集し比較分析した先覚者の研究も見られます。

深川江戸資料館の常設展示室では、天保年間(1830年~1844年)の深川佐賀町の街並みの一部(5世帯)を想定再現していますが、規模が小さい為か何となく雰囲気はわかるものの今一つです。東京では現存していませんが、大阪には現存し改修して今でも使われている長屋があるそうです。

深川江戸資料館の展示でも参考にしたのが、この『季刊大林・№13「長屋」』です。

この1982年に発表された『季刊大林・№13「長屋」』は、とても先駆的な研究であり、江戸と大阪の長屋の比較がされているうえに、長屋の平面図と立面図が再現されているため全貌が掴める内容になっています。

「長屋」は、社会的システムつまり法で規制するというのは、古くて新しいテーマです。

「長屋」は、共同住宅の一形態であるのに 何故 現代の建築基準法では「特殊建築物」と定義されなかったか。建築基準法では定義がなく、各地の解釈にゆだねられたのはどうしてか。今なお、各地で紛争を起こす「重層長屋」や接道の問題は、なかなか厄介です。

明治のころから「長屋」の防火性・衛生は、社会的問題だったということが分かる貴重な本です。

中・大規模木造建築における内装制限の緩和

中・大規模木造建築における内装制限の緩和処置は三つの方法がある。

  1. 天井に準不燃材料を用いる(平12建告第1439号)
  2. スプリンクラー設備等+排煙設備を用いる(令第129条第7項)
  3. 避難安全検証法(令第129 条の2、令第129条の2の2)

1)天井に準不燃材料を用いる(平12建告第1439号)

一般に、特殊建築物の居室等では天井と壁に難燃材料を張ることが必要だが、天井を石膏ボードなどの準不燃材料とすることにより壁の仕上げに木材を使うことができる。

平成12年5月31日 建設省告示第1439号

難燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを定める件

第1 建築基準法施行令第129条第1項第一号ロ及び同条第4項第二号に規定する難燃材料でした内装の仕上げに準ずる材料の組合せは、次に定めるものとする。

一 天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げにあっては、準不燃材料ですること。

二 壁の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げにあっては、木材、合板、構造用パネル、パーティクルボード若しくは繊維版(これらの表面に不燃性を有する壁張り下地用のパテを下塗りする等防火上支障がないように措置した上で壁紙を張ったものを含む。以下「木材等」という。)又は木材等及び難燃材料ですること。

第2 建築基準法施行令第129条第1項第一号ロ及び同条第4項第二号に規定する難燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げの方法は、第1第二号の木材等に係る仕上げの部分を次に定めるところによりすることとする。ただし、実験によって防火上支障がないことが確かめられた場合においては、この限りでない。

一 木材等の表面に、火炎伝搬を著しく助長するような溝を設けないこと。

二 木材等の取付方法は、次のイ又はロのいずれかとすること。ただし、木材等の厚さが25ミリメートル以上である場合においては、この限りでない。

イ 木材等の厚さが10ミリメートル以上の場合にあっては、壁の内部での火炎伝搬を有効に防止することができるよう配置された柱、間柱その他の垂直部材及びはり、胴縁その他の横架材(それぞれ相互の間隔が1メートル以内に配置されたものに限る。)に取り付け、又は難燃材料の壁に直接取り付けること。

ロ 木材等の厚さが10ミリメートル未満の場合にあっては、難燃材料の壁に直接取り付けること。

2)スプリンクラー設備等+排煙設備を用いる(令第129条第7項)

スプリンクラー設備等の消火設備と排煙設備が設けられている場合は、内装制限の適用が除外され天井、壁等すべての内装に木材が使える。

自動式のスプリンクラー設備と排煙設備(令第126条の3)を併設した場合は、「建築物の部分については適用しない」とある。建物の一部をスプリンクラー+排煙設備を設置して内装制限適用外とし、他の部分は排煙設備のみ設置とした場合に、スプリンクラー設置部分と他の部分の区画は防火区画等の措置までは決められていないので、排煙設備の構造を満たす防煙区画(防煙垂れ壁・防煙間仕切壁等の設置)で同項を適用することができる。

3)避難安全検証法

避難安全検証法が成立すれば内装制限を緩和することができる。

施行令第129 条の2 「階避難安全検証法」 (全館避難安全検証法も同じ)第1 項に「建築物」(主要構造部が準耐火構造であるか、又は不燃構造で造られたものに限る)とあり準耐火構造ロ-1(外壁耐火)の場合は、避難安全検証法は適用できない。ただし耐火性能検証法(施行令第108 条の3 第3 項)により技術的基準に適合したものは準耐火構造に含めるとある。

告示H12第1436号・一部改正(2015.03.18)

先頃、平成12年建設省告示第1436号の一部が改正された。

第四号中「ニ」が「ホ」に、「ハ」が「ニ」なった。

詳細は官報参照20150318h064940005

新規追加された「ロ」について記載する

ロ 避難階又は避難階の直上階で、次に掲げる基準に適合する部分
【当該基準に適合する当該階の部分(以下「適合部分」という。)以外の建築物の部分のすべてが令第126条の2第1項第1号から第3号までのいずれかに該当する場合 又は適合部分と適合部分以外の建築物の部分とが準耐火構造の床若しくは壁若しくは同条第2項に規定する防火設備で区画されている場合に限る。】

(1) 建築基準法別表第1(い)欄に掲げる用途以外の用途 又は児童福祉施設等(入所する者の使用するものを除く。)、 博物、 美術館 若しくは図書館の用途に供するものであること。

(2) (1)に規定する用途に供する部分における主たる用途に供する各居室に屋外への出口等(屋外への出口、バルコニー又は屋外への出口に近接した出口をいう。以下同じ。) (当該各居室の各部分から当該屋外への出口等まで及び当該屋外への出口等から道までの避難上支障がないものに限る。) その他の当該各居室に存する者が容易に道に避難することができる出口が設けられていること。

これは、「子ども・子育て支援法等施行に伴う幼保連携型認定こども園」の建築基準法の取扱いを定めたことによる関連改正。

公布即日から施行されたので、設計図書への記載方法が変わる。

従来 H12告示第1436号四-ハー■ → H12告示第1436号四 – ニ-■となる。

 

【覚書】避難安全検証法でできないこと

【避難安全検証法で適用除外できると勘違いされやすい項目】

■面積区画

面積区画は、施行令第112条第1項に規定され、1500m2以下(自動消火設備設置で3000m2以下)で区画しなければならない。

全館避難検証法では、高層区画、竪穴区画及び異種用途区画は除外できるが、面積区画は適用できないため1500m2または3000m2ごとの区画は確保しないといけない。

面積区画を拡大するには防火区画検証による。

■重複距離

重複距離は施行令第121条第3項に規定され、施行令第120条の歩行距離の数値の1/2を超えないことになっている。この規定は避難安全検証法では除外できない。

■特別避難階段の付室

階避難安全検証法では施行令第123条第3項第一号の規定が除外できる。

この規定は付室の排煙設備の設置に関するものなので、付室の設置については避難安全検証法では除外できない。

■非常用エレベータ乗降ロビーの排煙

非常用エレベータ乗降ロビーの排煙は施行令第129条の13の3第3項第二号に規定されているため避難安全検証法では除外できない。

したがって乗降ロビー兼用付室の場合の排煙設備は、仕様規定に準処しなければならない。

■避難階段の幅員

避難階段の幅員は施行令23条、施行令24条に規定されているため避難安全検証法では除外できない。

ただし、物販店舗の合計幅員については全館避難安全検証法で適用除外が可能となる。

■防煙区画面積

階避難安全検証法では、防煙区画面積は1500m2まで拡大できる。

■排煙口までの距離

30mを超えた位置にある排煙開口の排煙は有効開口部の排煙には加えない。

ルートCでは30mを超える事が可能な場合もある。

建築基準法改正履歴

この正月に建築基準法の改正履歴を自分なりに整理してみた。

もともと一枚に年次別(施行順)になっていたのだが、全般総則・集団規定・一般構造規定・設備関係規定・防火避難規定・構造・エレベーター・エスカレーター等に分割して、少し改正内容を詳しく記載したものにした。

建築基準法の改正履歴などは、増改修設計、用途変更、遵法性調査等の業務に関わらないと必要ない事かもしれないが、建築基準法65年の歴史を振り返ると中々面白い。

その中で、最近遭遇した事をひとつ紹介する。

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上図は、自然排煙口の排煙上有効な開口部についての取扱いで、「建築物の防火避難規定の解説(2012)」79頁に説明されている事項だが、もともとは昭和46年12月4日住指発第905号で大阪府建築士会からの照会に対する回答「建築基準法の疑点について」がもとになっている。

排煙設備が新設されたのは昭和46年1月1日施行の建築基準法改正によるが、最近調査した建物は昭和46年7月確認許可なのだが、回転窓の開閉角度が15度ぐらいしか開かない。現在では常識的な上図の取扱いから有効開口面積を計算すると面積が足りなくなり不適合となる。

しかし取扱いが示されたのが昭和46年12月4日住指発第905号の時期で建築確認許可日の後なので適合・不適合・既存不適格についてのジャッジは既存不適格とした。

この回転角度の少ない窓をそのまま利用するとなると自然排煙設備が足りなくなるので、例の告示第1436号というのが活躍することになるだろう。

古い建物は、工事完了検査済証があっても、階段竪穴区画が完結していない。令第128条の敷地内避難通路が確保されていない。自動車車庫との異種用途区画が成立していない等、何で?、何で?という事に遭遇したりする。当時の確認・完了検査は当然、特定行政庁だから充分な打合せが必要となる。

知人は、私がやっているストック活用に関する業務は「妖怪ウオッチ」のようだねと評していたが、建築ストックの活用に関する業務には、可愛いのから悪いのまで様々な「妖怪」が潜んでいる。

連続的空間領域における採光について -1

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無印良品の新シリーズ・縦の家をながめていた

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中央にシースルーの階段を配置し、最上部にトップライトを設置して採光をとっている。

三階建ての住宅としては、さほど新鮮味のある平面計画ではない。今までも多くの設計者が採用しているのではないだろうか。

まあ 1階の寝室は右側窓から採光(法的な)をとるのは難しいそうだ。敷地条件によっては2階のダイニングキッチンも採光(法的な)はOUTになるかもしれない。

このベースプラン(3.64m×8.19m)の場合、各階の床面積は

1階:23.18m2 / 2階:29.81m2 / 3階:29.81m2 / 計:82.80m2となっている。

現行法では、階をまたいでは採光をとることができないが、このように三層吹き抜けで階段部に間仕切りがない連続的な空間が構成されている場合で、階段最上部あるいは階段壁面部に採光に有効な開口部があるときは隣地境界線側に採光に有効な開口部を設けなくても実際のところ採光が得られるのではないだろうか。

試算してみると

1階必要採光面積(概略) 23.18m2×1/7=3.32m2

2階必要採光面積(概略) (29.81m2-13.24m2)×1/7=2.37m2

3階必要採光面積(概略) (29.81m2-13.24m2)×1/7=2.37m2

・2階リビング、3階サンルーム水回りを3.64m×3.64m=13.24m2として、道路側であろう開口部より採光が確保されるものと仮定した。

階段最上部のトップライトは、どの程度の開口面積があれば三層の有効採光を確保できるであろうか。

3階 2.37m2÷低減率=無 =必要採光面積 2.37m2

2階 2.37m2÷低減率=0.8 =必要採光面積 2.97m2

1階 3.32m2÷低減率=0.7     =必要採光面積 4.75m2

合計 10.09m2÷3(トップライト) = 必要採光面積 3.37m2

1間角強のトップライト面積が必要となるが、少し大きすぎるというか、暑くてたまらないかなぁ・・・ 階層による低減は必要ないのかもしれない。

低減無だと、

合計 8.06m2÷3=2.69m2

これで1.6m角程度だから低減しなくてもよいかもしれない

是非、無印良品さんにはモデルハウス等で実際の照度計測をしてもらいたいものだ。

【無印良品・縦の家】画像は下記のサイトから拝借しました。

http://www.muji.net/ie/tatenoie/

 

防火フィルム

避難安全検証法を用いた場合、避難経路等に面するガラス等を用いた間仕切壁は防火設備としての性能が必要となる場合がある。 防火設備となると価格の高い耐熱ガラスや意匠性を損なう網入りガラスしか選択できないのが現状だ。 そこで、単板ガラスに張ることで防火性能を満足するフイルムを探した。 ネット検索でヒットしたのは、下記の清水建設の2011年ニュースリリースで、大臣認定を取得済みで2011年秋には外販を始めると書いてある。それに安価なようだし、もう時間が経過しているから外販しているはずと思い、記載してある栃木県の製造会社を探したが見つからない。 img129 https://www.shimz.co.jp/news_release/2011/826.html

そこで清水建設本社→清水建設技術研究所→三生技研→SVC(愛知県)へと電話をかけ、ようやく製造販売している会社にたどり着きカタログと見本を送ってもらった。 img127

商品名はファイヤーブロック

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製造会社に聞くところによると、中々量産化が難しかったらしい。製造ラインは幅1.5m×長3mらしいが、現在商品化しているのは1m角との事。

ところで、この材料は建築基準法第64条(外壁の開口部の防火戸)で施行令第136条の2の3(準遮炎性能に関する技術的基準)で告示例示がない為大臣認定が必要。準遮炎性能20分で屋内に面するものに限られている。

防火性能のある安価で透明なフイルムは、中々難しいのかもしれない。

坂の上の雲ミュージアム -2

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この吹き抜け空間を実現するために、

全館避難安全検証法(ルートC)が採用され

竪穴区画の規定を適用除外している。

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3階から5階までスロープでつながる

吹き抜けの展示エリアは避難経路でもある。

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各階の避難安全を確保するため

要所にガラススクリーンや防煙用スクリーンシャツターを設け

煙拡散防止を行っている。

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また、階段室に煙が流入しないように階段室加圧防煙システムを採用している。

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http://www.sakanouenokumomuseum.jp/

設計 : 安藤忠雄建築研究所

所在地  : 松山市一番町三丁目20番地

敷地面積 :  3384.64m²

建築面積 :  936.80m²

延床面積 : 3122.83m²

構造規模 : 鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造 地下1階/地上4階

 

 

【屋根】ポリカボネート板

屋根材にポリカボネート板や強化プラスチック板等の国土交通省大臣認定の受けたものは「不燃性の物品を保管する倉庫に類する用途」の屋根には使用できる。

 

平成12年5月31日建設省告示第1434号  不燃性の物品を保管する倉庫に類する用途を定める件

 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第109条の5及び第136条の2の2の規定に基づき、不燃性の物品を保管する倉庫に類する用途を次のように定める。

平成12年5月31日 建設省告示第1434号

不燃性の物品を保管する倉庫に類する用途を定める件

 建築基準法施行令第109条の5及び第136条の2の2に規定する不燃性の物品を保管する倉庫に類する用途は、次に掲げるものとする。

一 スケート場、水泳場、スポーツの練習場その他これらに類する運動施設

二 不燃性の物品を取り扱う荷捌き場その他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない用途

三 畜舎、堆たい肥舎並びに水産物の増殖場及び養殖場

附 則(平成12年5月31日 建設省告示第1434号)

この告示は、平成12年6月1日から施行する。

 

「スケート場、水泳場、スポーツの練習場その他これらに類する運動施設」類する用途としてテニス練習場、ゲートボール場、スポーツ専用で収納可燃物がほとんどなく又見通しがよく非難上の支障のないもの。

「不燃性の物品を取り扱う荷捌き場その他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない用途」同等以上のものとは、

  • 通路・アーケード・休憩所
  • 十分に外気に開放された停留所、自動車車庫(30m2以下)、自転車置き場
  • 機械製作工場

 

 

避難上有効なバルコニー @ 京都市

「京都市建築法令実務ハンドブック」(H24.1.1)での「避難上有効なバルコニー」の取り扱い。

「解釈編」

京都市では、避難専用バルコニーの面積は有効内法面積だった。
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避難専用バルコニーでない場合は、3m2以上という取り扱いを示している。

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排煙設備の異なる室の区画 @ 福岡県

「福岡県建築確認申請の手引き」(2010年追補版)に記載されている、H12年建告第1436 号第4号ハの「壁及び天井の室内に面する部分」「その下地」の取り扱い。

令第126条の3の規定による排煙設備を設置した部分と同告示適用部分相互間の防煙区画の取り扱いを示している。

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H12年建告第1436号第4号ハ(四)を適用しようとする当該室と自然排煙設備室との壁等は、「不燃間仕切り」。出入口は「不燃戸」としている。

告示では出入口の戸の仕様については明記されていないが、最近は東京都内の特定行政庁や指定確認検査機関でも「不燃戸」で指導される傾向が増えてきているようだ。

「注)4」は、H18年に追記された。