【1989年撮影】
20世紀を代表する哲学者 ウィトゲンシュタインと建築家 パウル・エンゲルマンにより生み出された「ストンボロー邸」1928年竣工。
オードリー・タンの本を読んでいて、「ウィトゲンシュタインから強い影響を受けた」と書かれてあり驚いた。ウィトゲンシュタインの「論理哲学論考」昔、本をパラパラとめくった記憶もあるが歯が立たなかった。
ウイトゲンシュタインの後期の思想は「言語ゲーム論」と呼ばれ、言語の意味を特定のゲームにおける機能として理解すべきものとオードリー・タン氏は書く。ウイトゲンシュタイの言葉の使い方について、その言葉がどんな意味を伝えるのか、一つの単語がいったいどのような意味を伝達するのかを、非常に厳格に捉え、言葉の使い方次第で、まるでひとつひとつの単語の概念がそれぞれの役割を変えていくかのように変わっていく。それらは論理関係を通じて連結するが、この連結の方式も固定したものでなく、実際の状況に合わせ、まるで絵を書くように世界の真実の状態を反映させると。オードリー・タン氏のAI推論はウイトゲンシュタイから学んだものだと。
その頃私は、哲学者としてのウイトゲンシュタインには、あまり関心がなかった。今でもさほど関心があるわけでもないが、同じような出会いがあっても受け取る側によって異なるものだと、つくづく思う。
昔、大先輩にこう言われたことを思い出した。
「ひとりひとりの心には、それぞれ深い井戸があり、その井戸にはまり込むと抜け出させなくなるよ。」と、そういわれてから哲学の勉強を止めて経済学に変更した。
そういえば、私がまだ30代の頃ウィーンの「ストンボロー邸」を見に行っていた。その時の写真(ポジ)はどこだつたかなと探してみたのが ここに掲載する写真で1989年の撮影。ウイトゲンシュタインには、あまり関心がなかったのだろう。写真もさほど撮影していない。
アドルフ・ロースの弟子 パウル・エンゲルマンとの共同で設計された、ウィトゲンシュタインが生涯で唯一関わった建築・姉のための住宅「ストンボロー邸」
本棚を探してみたら、このストンボロー邸の小冊子が出てきた。多分この建物で購入したものだろう。
こんなチケットも出てきた。記憶にないが有料だったのだろう。
ウィトゲンシュタインの哲学が色濃く現れているとも言われる内部空間、そして徹底的に、偏執的にこだわったディテールの数々。現代から見れば幾何学的でしかなく、つまらない建物なのだが、100年前では異端の建築だったのかも知れない。
私が見に行った1989年当時でも 異色の存在感を放っていた。景観的には違和感があるようにも思えたが。
姉・マルガレーテは、一度もこの家に住むことはなかったと伝えられている。