新ガイドライン調査への懸念

 2025年4月1日から 既存建築物の増改築等の確認申請には、新ガイドラインに基づく現況調査書の作成、添付が必要となる。

 国土交通省から2024年12月に発表された、この新ガイドライン(第1版)。3月末までには、木造以外の構造についてや、特殊建築物に言及した第2版以降が発表されるのかなと思っていたが、どうやら第1版のまま新年度を迎えるようだ。(2025年3月25日現在)

 ここで個人的意見、懸念を記しておきたいと思う。

1、全て建築士(設計者)に責任をおっかぶせてきた。建物全体の中の、わずかな調査箇所で適法か否か、あるいは既存不適格なのか判断するのは勇気がいる。

2、新ガイドラインに基づき現況調査をしたとしても検査済証のない既存建築物の増改築等の確認申請を受け付けない特定行政庁、指定確認検査機関が多数あるだろう。まず受付するか否か事前に確認しておかなければならない。

3、新ガイドライン調査、作成費用が嵩む。増改築等確認申請手数料が増額になる。つまり建築主の費用負担増となるだろう。

4、街場には、違反建築物が溢れている。既存建築物となれば尚更で、違反建築の宝箱みたいなものだ。どの段階で是正するのか、確認申請前に是正するのか、あるいは計画の増改築等で是正工事をすれば良しとするのか。確認申請決裁者が判断すればよいのでしょうかね。

5、多くの建築士は、既存建築物の増改築等の相談を受けたら右往左往するだろう

以上 とりあえずの懸念

清水建設 あと施工アンカーの設計・施工法に初の強度指定

 清水建設(株)はこのほど、日本ヒルティ(株)の協力を得て、短工期・低コストで鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体(コンクリート躯体)に鉄骨小梁を接続する「あと施工アンカー」の設計・施工法を確立、この設計・施工法の信頼性を証する初の強度指定を国土交通大臣から取得した。

https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2024/2024057.html

2022年3月の国土交通省告示第1024号の一部改正後、強度指定を取得した「あと施工アンカー」については、用途が拡大し、従来の既存コンクリート躯体とその耐震補強部材との接合に加え、鉄骨小梁など常時荷重を受ける部材との接合にも適用が可能になっていた。

 鉄骨階段の取付け、床開口における小梁の取付け等、工期短縮とコストダウンに多大な寄与は間違いない。

 清水建設と日本ヒルティに感謝!!

 

小屋裏物置(ロフト)への階段・2025

 面識のない人からメールでこんな質問があった。

 「都内新築戸建で、LDKにつながるロフトを設置したいと思っております。ロフトへのアクセスは、LDKにスケルトンの内階段を設けてロフトへ上がれる様にしたいと思っています。
 渋谷区ではロフトへ上がるのに固定階段の設置はできないと設計から言われ、取り外し可の階段であれば可能ということですが、しっかりとした固定階段で上がれるようにしたいので、どうしたものか悩んでおります。」

【回答】
 小屋裏物置(ロフト)への階段の取り扱いについては建築主事によって異なっており都内でも特別区によって異なります。最近の都内特別区の取り扱いを全て調べたわけではありませんが、渋谷区、新宿区等が固定階段不可のようです。

 昔は、固定階段絶対不可の時代もありましたが、梯子は危険性もあるため最近は、よほど大きなものでなければ固定階段可になっているのではないでしょうか

 また、「建築確認のための・基準総則集団既定の適用事例(2022年度版)」日本建築行政会議では、「小屋裏物置等への専用の階段は、法第2条第5号に規定する『局部的階段』に該当する」という記載(この記載は2017版から)があるために、それを根拠に固定階段を認めている建築主事も多いようです。

 以上のような文書もあることから、民間指定確認検査機関に確認申請を提出する場合は、必ずしも特別区の取り扱いになるとは限らず、また個々の取り扱いの判断については、確認申請を決済する民間指定検査機関に任せることがあるので、民間指定確認検査機関に御相談ください。

「佐々木睦朗作品集 1995-2024」

2025年最初に購入して読んだ「佐々木睦朗作品集 1995-2024」

実は、建築構造が好き

20代の頃 世話になった先輩達が、

みんな構造設計者だったという事もあるかもしれない

「本格的に構造をやれ」と何度も言われたけど、

D値法を少しやったくらいで終わった。

それでも構造家の本を見るのは好き

「せんだいメディアテーク」のコンペから、もう30年経ったんだなと思うと考え深い。

磯崎新、伊東豊雄、妹島和世+西沢立衛/SANAAなどと協働し、
世界を舞台に活躍を続ける
日本を代表する構造家・佐々木睦朗さん。

「せんだい」「金沢21世紀美術館」「ROLEXラーニングセンター」
「豊島美術館」などの代表作から
最新「あなぶきアリーナ香川」までの30作品収録。

空間構造の最高賞 「トロハメダル」受賞(Torroja Medal, 2023)。

その構造ディティールの美しさに魅了される。

SRC耐震診断資格者・耐震改修技術者講習を修了しました

国土交通大臣登録 耐震診断資格者講習・耐震改修技術者講習の講習修了証明書が一般社団法人日本建築防災協会から届きました。

昨年の鉄筋コンクリートに続き、今回講習が終了したのは鉄骨鉄筋コンクリート造の部門です。

耐震診断には、かれこれ30年ほど前から関わっていますが、近年は高強度コンクリートの開発もありRC造が主流でしたが、現在大規模改修時期を迎えている集合住宅の建物はSRCも多く、SRCも勉強しておこうと思い受講しました。

WEB講習でしたが、顔認証システムが導入されていたので、少し静止していると「顔写真」と判断するのか動画が停止し、うつ向いていると「真面目に聴講してない」と判断するのか動画が停止するというシステムなので、意外と真面目に聴講しました。顔認証システムは良いシステムだと思います。

計画通知について、指定確認検査機関による審査・検査等が可能に

令和6年6月19日に改正建築基準法が公布され、建築基準法第18条で定める国、都道府県または建築主事を置く市町村の建築物(計画通知)について、指定確認検査機関による審査・検査等が可能となった。
計画通知に関する業務受付を開始した指定確認検査機関もある。

いいんだかどうだか。

意外と盲点・・・施行令70条(柱の防火被覆)

 その後関係者の御提供により、建設省住宅局建築指導課事務連絡「地階を除く階数が3の建築物に係る建築基準法施行令第70条の取扱いについて」(昭和62年12月1日)を受けて「低層建築物の構造耐力性能評定に関する技術規定(鉄鋼系)」(日本建築センター、昭和63年)という文書を入手した。

そこには、精算法、軸力再配分法の計算方法が詳細に記載されている。

この記事を見ての問合せが意外と多いので追記。質問は令70条について平成12年改正以前の取り扱いがどのようなものであつたか知りたいという事だった。検査済証のある既存建物でも天井裏の部分で施行令70条の防火被覆が施行されていない案件を時々見かける。又既存不適格であるということを証明するには、過去の取扱いがどうなっていたか調べる必要がある。

1991年(平成3年)に出版された「詳解 建築基準法 改訂版」の令70条の解説では以下のように記載されている。これは昭和46年1月1日施行から平成12年5月31日までの規定についての解説。

この頃までは柱1時間耐火程度が適切という取扱いだったが、その後厳しすぎる面があるという事で「地階を除く階数が3の建築物に係る建築基準法施工令第70条の取扱いについて」という事務連絡が昭和62年12月1日に出て、現在は告示に集約されている。

この後、平成12年6月1日に改正され平成13年1月6日施行-現在有効が下記の条文

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設計上や審査上で意外と盲点というか忘れてしまうのが建築基準法施行令第70条(柱の防火被覆)です。

(柱の防火被覆)第70条

地階を除く階数が3以上の建築物(法第2条第9号の2イに掲げる基準に適合する建築物及び同条第9号の3イに該当する建築物を除く。)にあつては、一の柱のみの火熱による耐力の低下によつて建築物全体が容易に倒壊するおそれがある場合として国土交通大臣が定める場合においては、当該柱の構造は、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後30分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

耐火構造・準耐火構造とする必要が無い 三階建ての鉄骨造の建物・・・例えば倉庫とか工場、専用住宅で鉄骨がむき出しの建物などの場合には、柱の防火被覆が必要です。

防火被覆の条項が構造規定関係のところにあるので、つい見落としやすい条項です。

特定行政庁によっては、1階の柱部分のみ被覆すれば、容易に倒壊しないと考え指導しているところもあると聞いています。

検査機関は、法判断の裁量権がないので特定行政庁の指示に従う事になりますが、個人的には1階の柱部分のみ被覆すれば、容易に倒壊しずらい。と考えますので簡易的な方法としては有効だと思っています。

この施工令70条の法文は、昔は下記のようなものでした。

地階を除く階数が三以上の建築物にあっては、一の柱のみの火熱による耐力の低下によつて建築物全体が容易に倒壊するおそれがある場合においては、当該柱は、モルタルその他の断熱性のある材料で皮膜しなければならない。

昭和62年当時、近畿建築行政会議の統一解釈として大阪府下では、一時間耐火として指導していた。

しかし建設省住宅局建築指導課より「地階を除く階数が3の建築物に係る建築基準法施工令第70条の取扱いについて」という事務連絡が昭和62年12月1日に出され、一時間耐火の性能を要求する事は、やや厳しすぎる面があるとして是正された経過があります。

この事務連絡では、検討方法として

1,精算による方法

2,軸力再配分による方法

が詳細な計算方法とともに示されています。

てら小屋チーム・第14回WEB打合せ

 今までは、単独プロジェクトの設計チームのWEB打合せだったが、同時並行で進んでいるプロジェクトも増えてきたことから、今回から名称を「てら小屋チーム」WEB打合せにした。

 そこで相談が増えている「新2号建物の建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)」について説明した。

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 2025年4月より建築基準法第6条1項4号の木造2階建てが、新2号に改正されるのに伴い、木造住宅等で大規模なリフォームをする場合に建築基準法上の「大規模な修繕」「大規模な模様替え」に該当し建築確認申請を提出する必要が出てきます。

 木造戸建て住宅の建築確認申請検査済取得率は、1998年(平成10年)当時は、取得率40%以下でした。大規模なリフォームの実施要望がある戸建て住宅は、築20年から築30年ぐらいの建物と言われていますから、今後戸建て住宅の大規模リフォームの相談案件の過半は検査済証がないので、建築基準法適合状況調査のあとに建築確認申請を提出する必要が増えてくるものと思います。

 建築基準法適合状況調査に沿った調査(ガイドライン調査)や改修設計に精通した設計者は多くありません。現在弊社には、全国から一級建築士を始めとした設計者から多くの相談が寄せられています。

 そこで緊急的に、検査済み証が無い建物の建築基準法適合調査に沿った調査(ガイドライン調査)→申請→改修設計→各種確認申請→検済取得のプロセスを、ひとりひとりがイニシアチブをもって実務を行えるようになるためのガイダンスを今後継続的に開催することにします。

 まずは建築基準法適合状況調査を木造から始め、非木造・特殊建築物に知識・技術を発展させてください。

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 質問も多く2時間も喋ったものだから病み上がりの身体には堪えた。

エビデンス、エビデンスとコンプライアンス鳥は今日も鳴く

最近、鳴き過ぎだろうと感じるのは「コンプライアンス鳥」。

些細な事にもエビデンスは?、打合せ議事録は?、この条文の規定の文書化された取扱いは?とか。そういう天の鳥に振り回されることが多い。

そうした中で、一般の人には建築基準法の用語「既存不適格」というのが、どうもわかりずらいようである。

もしかしたら建築関係者でもわかっていないんでないかと思う事がある。「既存不適格だから改修が必要だとか、解体建替えが必要だ」というような文書にお目にかかる事がある。また弁護士などの法律専門家にも詳しく説明が必要な場合がある。

建築基準法の「既存不適格」とは、建築・完成時の「旧法・旧規定の基準で合法的に建てられた建築物」であって、その後、法令の改正や都市計画変更などにより、現行法に対して不適格な部分が生じた建築物のことをいう。「違反建築物」と異なるし、条文毎に時期が異なる。

既存不適格であれば、増築とか用途変更をしなければ、そのまま使用していても法律的には問題は無い。注意しなければならないのは、ここでいう「既存」とは、建築基準法では確認済証があり、かつ完了済証がある既存の建物であって、ただ古い建物=既存建物を言うのではない。

しかし、それは法律的な側面であって、安全上の側面とは異なる。遵法性だけ満足していれば良いというものではない。

法律はその時々の社会経済情勢の反映でもあるから、現行法が全て正しいとは言い切れない。実際 現在の建築基準法は緩和、緩和のオンパレードだ。

ただし、こと安全基準に関わることとなると別だ。特にエレベーターやエスカレーターに関しては、強く安全性の問題を意識せざるを得ない。とりわけ不特定多数の人が使うような建物の場合は、改修が急がれる場合が多い。

【昇降機(エレベーター)】

 既存建物の昇降機(エレベーター)は、既存不適格であり法令に違反してはいない事が多い。

 ただし、新築時から30年も40年も経過していると、その間昇降機に関する安全基準は大きく変わったため既存不適格項目に基づく改善要望事項は多くなる。

 例えば2005年(平成17年)7月の千葉県北西部地震において発生したエレベーターの閉じ込め事故、2006年(平成18年)6月の港区シティハイツ竹芝のシンドラー社製エレベーターの戸開走行事故等を受け、(1)戸開走行保護装置の設置義務付け(令第129条の10第3項第1号関係)エレベーターの駆動装置や制御器に故障が生じ、かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じる前にかごが昇降したときなどに自動的にかごを制止する安全装置の設置が義務付けられた。

(2)地震時管制運転装置の設置義務付け(令第129条の10第3項第2号関係)
 エレベーターについて、地震等の加速度を検知して、自動的にかごを昇降路の出入口の戸の位置に停止させ、かつ、当該かごの出入口の戸及び昇降路の出入口の戸を開くことなどができることとする安全装置の設置が義務付けられた。

さらに2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震での昇降機の被害事例を受けて、昇降機の耐震強化を目的として、2013年にエレベーター、エスカレーターに関する耐震関係告示が制定され、2014年4月1日から施行された。このように昇降機の安全基準は大きく改正されてきている。 

 また経年変化による劣化が指摘され要是正とされる場合もある。既に昇降機の基準耐用年数(35年程度)を超えていると、新規入替の検討が必要である。事故が発生すれば人命にかかわる事であり緊急の対応が必要であるが放置される傾向がある。


【エスカレーター設備】

エスカレーター設備もエレベーターと同じ問題を孕んでいる。2014年4月1日、建築基準法施行令の一部が改正され、地震その他の振動によってエスカレーターが脱落するおそれがない構造方法の規定が追加された。これは2011年の東日本大震災でエスカレーターが脱落し被害が生じた事による法改正である。

 また、2024年(令和6年)4⽉1⽇からエスカレーターの安全基準が変わった。
近年の、エスカレーターの挟まれ事故への対応として、エスカレーターの周辺部に誘導柵、転落防止柵等を設置する場合の安全基準が見直しされた。さらにエスカレーターの転倒事故への対応として、ハンドレール停止等の異常を検出し、踏段を停止させる安全装置の設置が義務化された。
 このようにエスカレーターに関わる安全基準は、近年大きく変わってきており、利用者の安全を確保するためにも、エスカレーターの機械設備としての耐用年数が近づいている場合は、現行法令(安全基準)に適合した新規取替が必要不可欠である場合が多い。 

ただし、エスカレーターは発注から施工まで1年半。エレベーターは1年という昨今の建設事情では、中々改修のスピードは上がらない。

人間であれぱ、いくら法律的に支障がないとはいえ「身体堅牢・骨太ではあるが、脳や心臓に重大な疾病が発見され至急処置しないと死に至る状態」、「至急外科的出術が必要」というようなケースは多々あるということ。

「木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について」

2024年10月3日国土交通省から発表された「木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について」を見ていた。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_kijunhou0001.html

https://www.mlit.go.jp/common/001766698.pdf

旧法6条1項4号建築物から新2号建築物になる2階建て木造一戸建て住宅がリフォーム。リノベーションを行う場合に大規模の修繕又は大規模の模様替の建築確認申請が必要になるということを注意喚起するもの。

新2号建築物は階数2以上又は延べ面積200㎡以上で、これまで無法状態だった旧4号建築物のリフォーム、リノベーションに法規制の網がかぶさってきた。軸組だけ残すスケルトン・リフォームやスッポッポン・リフォームも確認申請が必要となる。

例えば木造2階建で耐震等級を「3」にアップするようなリフォームを含有する場合、床合板、野地板合板、壁面合板等を張り替えないと耐震等級を上げることはできないので、当然ながら大規模の模様替えの確認申請が必要になる場合が想定される。

もうひとつ忘れてはならないのが、旧4号建築物は、検査済証がない手続上違反建築物や実態上の違反建築物が街場にゴロゴロしているということだ。

当然ながら大規模の模様替え確認申請の前段階として、検査済証が無い場合は、建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)等が必要となる。

建築ストックにおける建築基準法の取扱い

 先月、「床および階段の改修に関する建築基準法上の取り扱いについて」の技術的助言が国交省(国住指第208号 令和6年8月28日)から通知された。
 これは建築基準法第6条第1項より、同第一号から第三号までに掲げる建築物の大規模の修繕※1や大規模の模様替えをしようとする場合には、確認申請が必要になるが「床および階段の改修に関する建築基準法上の取り扱いについて」の技術的助言がまとめられたもの。

【床の改修】
次の行為は、大規模の修繕および大規模の模様替えには該当しないものと取り扱うことも可能です。

床の仕上げ材のみの改修等を行う行為
既存の仕上げ材の上に新しい仕上げ材をかぶせる改修

【階段の改修】
次の行為は、大規模の修繕および大規模の模様替えには該当しないものと取り扱うことも可能です。

各階における個々の階段の改修にあたり、過半に至らない段数等の改修を行う行為
既存の階段の上に新しい仕上材をかぶせる改修を行う行為

以上の内容程度でわざわざ技術的助言を通知しなければならないほど、審査の現場は混乱しているというのだろうか。

実際、建築ストックの設計・監理に携わっていると、もっと重要かつ取扱いが分かれている事があるだろうと言いたくなる。

例えば

「装飾か増築か」

 既存の壁面にルーバーをつける程度なら装飾で、植栽棚(点検床あり)のようなものは装飾と言ってよいのか。床面積が発生しないなら装飾か。装飾物が既存躯体にどの程度応力を負担させるなら増築と取り扱わなくて良いのか。いちいち審査機関に確認するのが面倒だ。そもそも増築の定義が建築基準法では明文化されていない。今日の状況に合せて定義する必要があると思う。

「庇をつければ増築?」

新しく開口部の上に庇をつければ増築だという。建築面積が生じなく幅1.8m程度なら増築ではないという。建築面積はともかく幅1.8mの根拠は如何に。

「RCかぶり厚の補正」

内装を解体してみたらRC梁のジャンカが多い。クラックが多い、鉄筋のかぶり厚が少ない場合等がある。この時の補正・補修はポリマーモルタル等を使うんだけど、鉄筋かぶり厚を確保する為に厚塗りするのは、建築基準法的にはどうなのと思う。モルタルは鉄筋コンクリートとは違うし。一体となったものがRCと言えるのか?

その他にもいろいろある。「エレベーターピット下の居室利用」「エレベーターのオーバーヘッド確保の為にエレベーターシャフト部分だけ高さを増す事」

事件は現場で起きているんだよ

「逐条解説 建築基準法 改訂版 」逐条解説建築基準法編集委員会 ・編集

予約注文していた「逐条解説 建築基準法 改訂版」が届いた。実に12年ぶりの全面改訂である。

「建築基準法」を条文ごとに趣旨、解釈を整理した唯一の解説書で令和6年4月1日施行までの最新内容を盛り込み、上下巻セットでずっしりと重く充実の内容
 
法令遵守徹底のために、自治体の建築関連部署、指定確認検査機関、設計事務所、建設会社、コンサルタント事務所など、建築基準法を扱う職場の必備図書ではあるが、事務所に1冊常備で良いような図書も、個人事務所では購入しなければならないのが、少々負担。何しろ この本のお値段は19,800円(税込)

【主な改正点】
平成26年改正
構造計算適合性判定制度の見直し、木造建築関連基準の見直し、容積率制限の合理化 …など

平成30年改正
維持保全計画の作成義務の範囲の拡大、耐火構造等とすべき木造建築物の対象の見直し …など

令和4年改正
建築確認審査の対象となる建築物の規模の見直し、高さ制限、建蔽率・容積率に係る特例許可の拡充 …など

令和5年改正
「建築基準法施行令」の改正による、定期調査の指定可能対象範囲の拡大、物流倉庫等に設けるひさしにかかる建蔽率規制の合理化 …など

秋の夜長に、じつくりと読みましょうかね。

「建築物の防火避難規定の解説2023」日本建築行政会議編

「建築物の防火雛規定の解説2016(第2版)」の発行以降に行われた建築基準法令及び国土交通省告示の改正内容、さらに関係各方面からの質疑回答を反映している。

いつも前版との差分を確認するのだが、新しい項目の追加は見られなかった。

「耐火構造の屋根の例示仕様について」の内容が追記されているのが目についたが、質疑回答を本文に反映した変更が多いように思う。

ともあれ特殊建築物が業務の中心になっている設計者にとっては、今や必携書となっている。

エレベーターピット下の利用

下記の記事は、かれこれ10年ほど前に書いたものだ。自分でも時々書いたことを忘れる。

現在進行形のプロジェクトでテナントからELVピット下を店舗として使いたいという希望があった。

では、ちょつくら確認審査機関に相談してみるかと思ったが、ちょっと知恵を巡らす。

「駄目だと言う法規定はない。ようは構造安全性が担保されれば良いということだ」ということで相談。OKもらう。構造担当者と打合わせしよう。


【2013年1月17日記載】

エレベーターのピット下を居室、物置などとして使用することは原則として禁じられている。

やむを得ず使用する場合には、特定行政庁に事前相談し承認が必要。

また、つり合いおもりに非常止め装置を設けなければならないので昇降路および機械室を広げ、かつ、ピットスラブを2重スラブとする必要がある。

この二点は最低条件。

以下、「昇降機技術基準の解説」に措置方法が記されている。

  • ピット床を二重スラブとし、つり合おもり側にも非常止め装置を設ける
  • ピット床を二重スラブとし、つり合おもり側直下部を厚壁とする
  • エレベーター1基分のみのピツト下を人の出入りのきわめて少ない物置、ポンプ室等に使用するもので、そのポンプ室等の出入口側と反対側につり合おもりを設ける場合は、一重スラブとすることができる。なお出入口の戸は施錠装置を有する鋼製、その他の金属製とする。

「昇降機技術基準の解説 2009年版」付 昇降機耐震設計・施工指針

税込価格8,000円 送料500円

体裁:A4判 約450頁,A4判 約200頁

監修:国土交通省住宅局建築指導課
編集:財団法人 日本建築設備・昇降機センター/社団法人 日本エレベータ協会

来年2025年(令和7年)4月1日法改正の内容が国土交通省から発表された。

令和4年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)」の施行期日を定める政令及び施行に必要な規定の整備等を行う政令が、4月16閣議決定された。

https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_001001.html

 2025年(令和7年)4月1日から省エネ基準適合の全面義務化や構造関係規定の見直しなどが施行される。

区画避難安全検証法

 最近、既存建築物のリノベ―ション事案で、避難安全検証法を利用することが多くなっている。

 現在基本設計を手掛けているプロジェクトでも、既存の機械排煙は老朽化で実質機能していなかったので、リノベーションに伴い新規の機械排煙設備を設置するのではなく階避難安全検証で排煙設備、防煙垂れ壁を適用除外させる方向で進んでいる。

 別の相談を受けた事案では、テナントからの要望で区画を広げたところ排煙機の容量が足りなくなり、排煙機の容量を変えると、それに伴い非常用発電機も変更しなければならず、結構な金額の設備投資となるので、避難検証法でどうにかならないかというもの。

 2020年4月1日に施行された防火避難関係規定の合理化にともない示された項目に、区画安全検証法(令128条6)が追加された。

 従来は令129条の階避難安全検証法、令第129条の2で全階避難安全検証法が規定されていたが、これに区画避難検証法が加わった。適用除外される項目は「排煙設備の設置」「排煙設備の構造」「内装制限」のみと限定されているが、階の一部分の検証で適用除外ができる。

 注意点は準耐火構造の壁、防火設備(遮煙性能付)で区画するというところ。

【覚書】別棟解釈

建築基準法では、

・総則規定(確認申請・完了検査の手続き)は、敷地単位

・単体規定(防火、避難、構造等の規定)は、棟単位

・集団規定(高さ制限、用途地域等の規定)は、敷地単位

で法規制を準用することになつており、防火・避難・構造等の単体規定においては、原則として適用単位は棟単位であり、棟の部分ごとに法適用が異ならない。

【別棟解釈】

ただし、例外的な取扱いとして次の規定があり、同一棟であっても別棟として解釈することになっている。

〈構造別棟〉(法第20条第2項、令第36条の4)

建築物の2以上の部分が、エキスパンションジョイント等の相互に応力を伝えない構造方法のみで接している場合には、法第20条の構造規定の適用にあたっては、それぞれ別の建築物とみなす。(法第20条「構造規定」のみの解釈であり、他の規定では別棟にならない。)

〈避難別棟〉(政令第5章第2節、令第117条第2項)

建築物が開口部の無い耐火構造の床又は壁で区画されている場合は、それぞれ別の建築物とみなす。(政令第5章第2節「避難施設」のみの解釈であり、他の規定では別棟にならない。)

〈排煙別棟〉(政令第5章第3節、令第126条の2第2項)

建築物が準耐火構造の床若しくは壁又は防火設備(遮煙・常閉等)で区画されている等の場合は、それぞれ別の建築物とみなす。(政令第5章第3節「排煙設備」のみの解釈であり、他の規定では別棟にならない。)

〈防火別棟〉(法第21条、第26条、第27条、第61条)

「建築物省エネ法等の改正法」交付(令和4年6月17日)の法第21条、第26条、第27条、第61条の改正により、政令・告示で定める区画等をすることで、防火規定上それぞれ別の建築物とみなすことができるようななった。(政令未定)

建築基準法施行規則等改正

 2023年(令和5年)12月に公布された「建築基準法施行規則等の一部を改正する省令」の施行日は、改正法(2年以内施行)の施行期日と同じ2024年(令和6年)4月1日。

 現在進行形のプロジェクトで、本年4月1日以降に確認申請(本受付)になる案件は対応しておかなければならない。

<建築基準法施行規則 改正の概要>


1、建築確認申請時の添付書類の追加(施行規則第1条の3関係)
建築確認申請時の添付書類について、改正法等により新設された建築基準関係規定の審査に必要な書類 (防火上および避難上支障がない主要構造部を区画する床・壁の位置等を明示した各階平面図等)が追加される。
2、区画された主要構造部の部分の位置等の表示(施行規則第8条の4(新設)関係)
建築基準法第2条第9号の2イに規定する防火上および避難上支障がない主要構造部を有する建築物については、その位置等を建築物の出入口等の見やすい場所に表示することが必要になる。
3、様式の改正(施行規則第2号様式等関係)
耐火建築物に係る主要構造部規制の合理化等に伴い、確認申請書において建築基準法第2条第9号の2イに規定する防火上および避難上支障がない主要構造部を有する建築物であるか否かを明示させる等、様式の改正が行われる。

1番目の防火上および避難上支障がない主要構造部を区画する床・壁の位置等を明示した各階平面図等は、きちんとした設計者は以前から作成していた。

2番目の案内板の表示はサイン計画に盛り込まなければならない。

R6基本建築関係法令集

予約していた2024年(R6年)版の基本建築関係法令集が届いた。

頭の中を上書きする作業を始めなくちゃ

法令編と告示編の2分冊。

随分と長い間、この井上書院のブルー本にはお世話になっている

 過去の法令集は捨てるのが忍び難く溜まっていく

今年は合わせて建築設備関係法令集を購入した

自分の中では、今年は設備関係知識のバージョンアップ・イヤー

設備設計一級建築士の更新講習を受ける年でもあり、

並行して、空調や電気のセミナーへ参加する予定

技術者は 怠けていると頑張っている人に追い抜かれてしまう

「持続可能社会と地域創生のための・建築基本法制定」建築基本法制定準備会編

『なぜ二十一世紀になってから姉歯事件に象徴される社会を揺るがすような建築の諸問題が起きているのか。そこには制定後七十年経つ「建築基準法の制度疲労」という根本的な問題がある』と本書は指摘する。

 建築基準法は改正するたびに複雑怪奇で糸が絡んだ蜘蛛の巣のような法令となっていく。確かに制度疲労なのかも知れない。

 形式的で形骸化。書類上整っていれば良い。間違い探しの確認申請審査。最低基準のはずだったのに最高基準とはき違えている人。建築基準法の世界にいると何だか精神的に疲れてしまう。 

 「建築基本法は、建築の理念と関係者の責務をうたうものであり、それに対する具体的な規制や制限、罰則などは自治体が条例で具体化する必要がある」と本書は書く。

 地方自治分権が前提となつているので中々大変な作業ではある。

また『「建築基本法」が目ざすもの(案)・2012年3月 建築基本法制定準備会(会長 神田 順) <120327版>』では次のように書かれている。


『1.建築基本法の理念
「 豊かで美しい成熟社会を築くために、安全で質の高い建築と地域環境をつくる 」
-建築と地域環境を価値ある社会資産として蓄積し、世代をこえて引き継いでゆくこと-①建築と地域環境の質を高めて、安全と安心、健康と環境をまもり、豊かな成熟社会を創っていきましょう
②建築と地域環境が本来持っている価値を守り、社会的・文化的資産として次世代に継承していきましょう
③建築と地域環境作りに対する役割と責任を確認しあい、協力して美しい都市のたたずまいを作り出していきましょう
⇒「質の高い建築づくりで、豊かで美しい成熟社会をめざす」ために、建築基本法が必要なのです

 極めて正論である。であるからこそ、こうした方向に舵をとらなければならないのだと思う。

ということで、この度「建築基本法制定準備会」正会員としての入会が認められたので、今後はこれらの理念に沿って活動したい。

建築確認申請の事前協議先

 東京都内の幾つかの特別区の建築確認申請を出す際の行政の事前協議先を収集し比較対象してみた。ネット上で公開している特別区もあるし窓口で配布している特別区もある。

 こうした各特別区の協議先一覧表を眺めていると、随分と条例・要綱等が増えたなという印象だ。


 設計者は、建築の規模が大きくなるとレギュレーション(法令、規則、基準)に適合させることに時間を取られる。建築基準法だけでなく種々の関係規定、多くの条例等も適用され、計画を変更するたびに膨大なチェック項目をひとつひとつ確認しなければならない。これに結構、時間と人員がとられるが、ここで間違うとクライアントからしばらくの間、又はずっと出入り禁止となる。そしてチョンボすれば損害賠償請求などの訴訟になる場合もある。

 経験上、ボリューム検討等では クライアントがその土地を購入するかどうか判断するのに時間的制約があるので、設計者に与えられる時間は多くはない。

 ボリューム検討段階では、骨格的な法令を間違わないようにすることが重要となる。用途地域規制、建蔽率、容積率、各種高さ制限、避難経路、駐車場進入口、東京都駐車場条例の附置義務駐車台数、地区計画等が該当するだろうか。

 クライアントから提供されるのは物件概要と地籍図程度。大体のところ設計担当者は現場を見に行かない(その時間がない)。登記簿謄本を見ない(地下鉄の借地権が敷地の一部に設定されている事がある)。というように、リサーチに充分時間が与えられない事が原因の事もある。

 設計事務所等ではボリューム検討をするシニア技術者の層が薄いと言う事もある。ペアチェックが内部できちんとできない組織もある。なんと言っても、あまりに労働時間が長い上に、経験値があるシニア技術者に仕事が集中し「金属疲労」を起こしてしまう。そうして、シニア技術者は転職する。行先は、デベロッパー、ゼネコン、CM・PM会社等。

 上司が、時代と共に増え続けるレギュレーション(法令、規則、基準)に時間と人員がかかる事を理解していないと地獄が待つている。

既存不適格

 既存不適格(きぞんふてきかく)は、建築・完成時の「建築基準法や各種規定の基準に適合して建てられた建築物」であって、その後、法令の改正や都市計画変更などにより、現行法に対して不適格な部分が生じた建築物のことをいう。

 既存建築物が全て該当するわけでなく建築確認済証・完了検査済証がある建物だけが、既存不適格の恩恵に預かることができる。

 まず第一に、これを理解していない建築士は多い。また「既存不適格」を「違反状態」と考えている建築士も多い。 

 「既存不適格」建築物は法文上で定義された用語ではないが「現に存在している建築物」で、その後の法改正によって法に不適合になったものに対しては建築基準法が適用されない旨を記した法3条2項の内容を示した言葉として使われている。

 例えば建築基準法第3条第2項が「いわゆる既存不適格建築物に定めた規定である」(「詳解 建築基準法・改訂版 平成13年11月発行)と記載がある。

 何故この規定が出来たかという説明として上記の「詳解 建築基準法」では、住居地域内の建蔽率を取り上げて「現在は適法であるが、都市計画法の改正により建蔽率が少なくなり、かつ、なんらの経過処置も規定されていないとしたら。これらの建築物は改築、修繕などの工事を一切しない場合でも違反建築物となってしまう」これは「法的安定性を害する」と記載している。

 既存不適格建築物に対して大規模な修繕・模様替えあるいは増改築等を行う場合、基本的には既存不適格の部分にも新規定を適用する必要がある。しかし、全ての項目を新規定に合わせることは難しいため、法86条の7では制限の緩和を定めている。

 法文上定義されていない用語の為か、「既存不適格」という概念が建築基準法に限られた定義なのかわからないが、建築関係の訴訟に関わると、この「既存不適格」という言葉や意味を弁護士や裁判官がわかっているのかどうなのか疑問になることがある。

 法文上定義されていない用語は多い。「竪穴区画」もこの間まで法文上は出てこなかったし、「スバンドレル」という用語も最近では死語のようだ。若い建築士に言っても法文に記載がないから知らないと言われた。

「スパンドレル」とは防火区画に接する外壁で、区画の内側から外側へ、外気を介した炎の回り込みを防ぐ部位のことで、外部延焼防止帯ともいう。

 

 

飲食店の屋外テラス -3

飲食店の屋外テラスで排煙設備が必要だと指摘され機械排煙設備を設置したと言う案件の断面図。

屋外テラスの奥行は2m。外部に面した手摺は開放された縦格子の手摺であり、天井高もあり、バルコニーや廊下等の「吹きさらし」基準である手摺の上から1.1m以上かつ天井高の1/2以上の条件は満足している。

1、「客席が常時設置され屋内的用途が発生するので床面積に算入する」という判断は、とりあえず良しとする。

2、「屋外テラスに排煙設備の設置が必要か否か」について考えてみる。建物全体としては施行令第126条の2により、排煙設備の設置が必要な建物である。

3、「屋外テラスが火気発生室か否か」は実際の使用状況によるので、安全をみて火気使用室として考える(屋外テラスでBBQ、鍋、焼肉などいう事もある)

4、「火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分として、天井の高さ、壁及び天井の仕上げに用いる材料の種類を考慮して国土交通大臣が定めるもの」(施行令第126条の2第1項第五号、平成12年建告第1436号)に該当するか否か。「排煙設備は一の防煙区画部分のみに設置」(平成12年建告第1436号)とあるが、そもそも屋外テラス部分は、外気に開放され垂れ壁等も無く防煙壁によつて区画されていない。仮に屋外テラス部分が防煙区画部分として「床面積の1/50以上の開口面積を有し、かつ、直接外気に面する」(施行令第126条の3第1項八号)は満足している。

・よって屋内的用途が発生するこによる床面積算入の問題と排煙設備の設置は別の次元の問題と考えられる。

・屋外テラスを機械排煙設備として、どれほどの排煙機を設置したのかと思いきや、屋外テラス部分の容積で計算したそうだ。地球の面積は5.10×108km2だから、排煙機は1㎡につき1㎥の空気の排出能力を持つ莫大な容量の排煙機を設置しないと矛盾する。

・以上により屋外テラス部分は外部とし、飲食店内部の排煙設備設置のみで良かったのではなかったかと思う。


「屋外テラスに機械排煙設備は必要なのか」という、当該建物の建築主からの問いかけに対する私なりの回答でした。

飲食店の屋外テラス -2

【海外の参考画像】

ある複合ビルの2階、3階の飲食店区画の前にテラス席があり、椅子テーブルもきっちり記載し、指定確認検査機関に事前相談に行ったところ「テラス軒下の部分は屋内的用途が発生するので床面積に算入する」と言われたそうです。まあそういう判断もあるかも知れません。設計者も、容積率に余裕があるので床面積算入については特に反論はしなかったようです。

設計者と指定確認検査機関との間に下記のやりとりがあったそうです。(概要)

審査機関「床面積が発生する以上 建物室内ですね」
設計者「外気に有効に開放されていますよ」

審査機関「屋内的用途がある以上 室内だから排煙設備が必要だ」

設計者「テラス部分は自然排煙ということで良いですか」

審査機関「自然排煙でいいけど、飲食店の本当の屋内側(テラスサッシ内側)の排煙設備はどうなっているの?」

設計者「機械排煙です」

審査機関「じゃあ異種排煙区画となるね。このテラスと店舗の間のサッシは、開放したりするの」

設計者「サツシを開放して屋外テラスと室内側は一体で営業することはあると思います」

審査機関「異種排煙区画は、不燃材で常時閉鎖が必要です」

設計者「屋外テラスも機械排煙とします」

こうして屋外テラス席の部分も機械排煙とすることで、確認申請は決裁されたそうです。

皆さんは どう思いますか?

 ・・・続く

飲食店の屋外テラス -1

【東京中央区内のカフェ、1階屋外テラス・可動テーブルと椅子】

常設テラス席の場合、軒下に屋内的用途があるために床面積算入する場合もあります。しかし確認申請図書に記載されていれば指摘を受ける可能性がありますが、固定テーブル、固定椅子の場合はともかく、可動の場合はどうでしょう。営業時間内だけ配置し、それ以外は収納するような場合など判断が分かれます。

屋内的用途とは、居住や収納などを目的とする部分を指すもので、家屋内や駐車場内などが対象となります。

下記、国土交通省が定める屋内用途の対象部分です。(建設省住指発第115号
昭和61年4月30日特定行政庁建築主務部長あて住宅局建築指導課長通知)

・居住
・執務
・作業
・集会
・娯楽
・物品の陳列
・保管
・格納
・その他の屋内的用途を目的としない部分

こちらの対象とならない、屋外部分とみなされる箇所は、壁のように雨風を防ぐことができる設備がない場所を指します。外気に解放されていても車や物を置いている場合は屋内的用途に含まれます。ポーチのように雨風を防いでいても屋内的用途に含まれないケースもあります。

又飲食店にテラス席を設置する場合は、保健所に「屋外客席設置届」を提出しなければなりません。

設置にはいくつかの条件があります。

屋内の客席と隣接した場所に設置すること、テラスの範囲をしっかりと区別すること、屋内の客席よりも客席数が少ないことなどのルールがあります。