「改訂版 既存不適格建築物の増改築・用途変更」大手前建築基準法事務所株式会社

 建築基準法では、既存建築物は、「現行法適合建築物」「既存不適格建築物」及び「違法建築物」に分かれます。古い建物が既存不適格建築物ではなく、新築時の確認申請済証、検査済証があり、その後の法律で不適合箇所が生じたものが既存不適格建築物です。

 この既存不適条項への訴求と緩和の規定は、建築基準法の中でも最も難しい部分と言われており、その内容を熟知し活用するのは容易ではありません。

 本書は、わかりやすく解説されており、既存建築物の業務に携わる者にとっては必読書的な存在になるでしょう。

 先に紹介した「建築基準法 改正履歴確認のポイント」大手前建築基準法事務所株式会社共編と合わせて活用されることをお薦めします。

 さて既存建築物の法適合状況調査を行う場合には、その調査目的を明確ににしておく必要があります。

1、既存建築物の増築や用途変更等に係る建築確認申請の手続きのため・・・一般的です

2、不動産の売買に際する資産評価の資料とするため・・・最近、リート投資法人に聞いた話では、「建築基準法適合状況調査(新ガイドライン調査)は、法的位置づけのない任意の規定であり、民間指定確認検査機関の交付する書類であるから、仮に適合証明が交付されたとしても検査済証に代替できるものではないの不動産投資の世界では、検査済証のないものとして扱う」と聞きました。あくまでも取引のあるリート投資法人で聞いたことなので全てのリートが同じ扱いかどうかは知りません。

3、既存建築物を用いた他法令の許認可を受けるため・・・弊社で最近多いのは、検査済証のない既存建築物の建築基準法適合状況調査を行い、法適合を証明し「倉庫業を営む倉庫」(陸運業)の許可を受けるというものです。既存建築物も色々で、あまりに老朽化が進んだもの、建蔽率がオーバーしているもの、もともと倉庫ではないので倉庫にすると積載荷重の設定が異なり補強工事が過大となるもの等。

 初期に渡される数少ない情報・図書で物になるか判断をしていかないとなりませんので、結構集中して進めます。

 まあジャンクな物件の中からは、たまに金が出ますので、さながら砂金とりの気分になりますね。

「建築基準法 改正履歴確認のポイント」共編 大手前建築基準法事務所株式会社

 ひと昔前までは ほとんど見向きもされなかった建築基準法の改正履歴。

 昨今の既存建築物の再生・活用に伴い、既存不適格建築物の増改築・用途変更も増加し、建築基準法の改正履歴を熟知するのは、建築士として必須事項となっている。

 しかし 他の会社のレポート等を見ると「現行法に適合していない既存不適格建築物だから改築する必要がある」とか、そもそも既存不適格ということを理解していない建築士に遭遇することは多々ある。また法曹界(弁護士や裁判官)でも既存不適格が理解できていない人に出会うこともある。そのぐらい「既存不適格」という概念は、建築基準法にある 特殊な概念でもある。

 もっとも日本の「建築確認」という制度も、世界的にみれば特殊な規定で、世界の趨勢は「建築許可」であるが、それはまた別の機会に書いておこうと思う。

 この本は、2025年4月に初版が発行された本だが、条文毎ではなく、項目ごとに「現行規制の内容」「主な改正履歴と改正の趣旨・内容」について、国土交通省が改正時に示した通達、技術的助言等を記載し、法令改正時のねらいや、その概要を記載しているので、とても分かりやすく、お薦めの本だ。

 「既存不適格建築物」(法3条第2項、3項)は、「過去の法令に適合していたが、現行法には適合しない建築物」をいい、一部の法令に適合していない状態では違法建築物とは法的に区別されている。

 でも、時々「既存不適格建築物の賞味期限」を設定した方が良いのではないかと思う事案に出会うことがある。

 例えば昭和45年に竣工した商業ビルで、用途は店舗、延床面積は1万㎡を超えていて、常時不特定多数の人が出入りしている建物だが、排煙設備がない。排煙設備の規定の施行は、昭和46年1月1日だから、築54年の間 テナントは入れ替わったが、用途の変更もないので、ずっと排煙設備がないまま現在も稼働している。安全面から考えて既存不適格の賞味期限を設定しても良いのではないかと思った。

 又 別の事案だが、古い建物のエレベーターやエスカレーターも既存不適格となっていることが多い。これらも昨今は、法令改正により安全面が強化されているが、常時不特定多数の人が出入りしている建物に設置されている場合などは、安全面から考えて既存不適格の賞味期限を設定しても良いのではないかと思っている。

 いずれにしても、ストック活用、長寿命化に向けて今後の法的整理、課題は多いように思う。

100年後に残したい最強マンガ

 子供の頃から青春時代、そして概ね30歳代に見ていた漫画に、どんなのがあったかなと思って検索してみたら、「100年後に残したい最強マンガはこれだ!!」というサイトを見つけた。

https://ebookjapan.yahoo.co.jp/content/genre/etc/meisaku100

 私は、概ね1950~1960年代の日本の漫画文化が創られた伝説の時代から、特に1980年代ぐらいまでに沢山の漫画を見ていた。特に記憶に残っている漫画を書いておこう。

 「鉄腕アトム」(手塚治虫)・・これはどちらかと言うとTVアニメ

 「火の鳥」(手塚治虫)・・全巻保存

 「鬼太郎大全集」(水木しげる)

 「巨人の星」(原作:梶原一騎原作、画:川崎のぼる)

 「ゴルゴ13」(さいとうたかお)

「明日のジョー」(原作:高森朝雄、画:ちばてつや)

「ドラえもん」(藤子・F・不二雄)

「三国志」(横山光輝)

 「キャプテン」(ちばあきお)

 「はだしのゲン」(中沢啓治)

 「ブラック・ジャック」(手塚治虫)・・全巻保存

 「包丁人味平」(原作:牛次郎、画:ビッグ錠)

 「将太の寿司(寺沢大介)・・この漫画の影響で鮨職人になったとと言う人に時々出会う。

 「釣りキチ三平」(矢口高雄)

 「美味しんぼ」(作:雁屋哲、画:花咲アキラ)

 「課長島耕作」(弘兼 憲史)

 「ギャラリーフェイク」(細野不二彦)

 「サラリーマン金太郎」(本宮 ひろ志)

 「アドルフに告ぐ」(手塚治虫)・・全巻保存

 どんな漫画を見て、次世代に残しておきたいかというのは、生きてきた時代、年齢の違いなので、あまり意味がないと思うが備忘録的に書いてみた。

個人的には「仁-JIN」(村上もとか)、「龍-RON」(村上もとか)、「つげ義春全巻」とかもリストに載せるかな。

「アドルフに告ぐ」手塚治虫

もう随分と昔に見た漫画なのだけど、古本屋で見つけたので5巻セットで購入。

一晩で5巻全部読み終わった。

 正確には再読なのだが、最初に読んでから、あまりに月日が経過しているためか、何か新鮮というか、始めて読んだようにさえ思った。

 資料によるとこの漫画は、1983年1月6日から1985年5月30日まで、『週刊文春』(文藝春秋)に連載された。1986年(昭和61年)度、第10回講談社漫画賞一般部門受賞。

 第二次世界大戦前後の時代、ドイツと日本を舞台に、「アドルフ」というファーストネームを持つ3人の男達(アドルフ・ヒトラー、アドルフ・カウフマン、アドルフ・カミルの3人)を主軸とし「ヒトラーがユダヤ人の血を引く」という機密文書を巡って、2人のアドルフ少年の友情が巨大な歴史の流れに翻弄されていく様と様々な人物の数奇な人生を描いている。

 今なお 色褪せない、抜群のストーリー展開。

 ドイツ人とユダヤ人と日本人の織り成す、融和と衝突、理解と誤解、異和と差別は、今なお現代的なテーマでもある。

 こうした時間が経過しても作品評価が低下せず、尚且つ時代を超えた普遍的テーマを持っている漫画や本を子供や孫達の世代に残してあげたいと思っている。

 手塚治虫では、「ブラックジャック全巻」「火の鳥全巻」を持っているが、あと どんな漫画を古本屋で見つけてこようかな。

「土地は誰のものか‐人口減少時代の所有と利用」五十嵐敬喜 著

 今年、考え始めた社会問題として「空き家活用」の問題がある。地方に出かけると地方都市の市街地から、農村部に至るまで「空き家」「空きビル」「空きテナント」の現状を目の当たりにしていた。

 弊社の主力業務である「既存建築物の再生活用」として具体的にアクションを起こせる場合は、まだ恵まれている方で、ほとんどが放置されている。

 地価高騰・バブルから一転、空き家・空き地の増大へ真っ逆さまに落ちこんでいる日本。

 生存と生活の基盤である土地はどうなっていくのだろうか。

 この本は、近年続々と制改定された、土地基本法と相続など関連する個別法を解説するとともに、外国の土地政策も参照し、都市計画との関係や「現代総有」の考え方から解決策を探っている。

 この「現代総有」の概念は、弊社が現在取り組んでいる「空き家活用の実証的研究」のベースになった考え方だ。

「現代総有」とは、「個人の所有権は尊重するが、その利用は結束した共同体が主体となり共同で行う。」「現代総有とは、可能な地域で、また必要な地域で、地域住民を中心として取り組まれる「運動」でもある」

 弊社の「空き家活用の実証的研究」は、まもなくベースとなる基地ができる。この拠点をベースに実証的研究を更に進めたいと考えている。

「境界確認の困難要因と実務対応」鈴木泰介・内野篤 共編

 建築物と敷地・敷地境界にまつわる問題は多い。

 既存建築物の敷地面積に関わることで こんな事が以前あつた。新築時の建築確認済証では建蔽率は適合していた。土地の登記簿謄本を取り寄せてみたところ確認済証に記載されている敷地面積より少なかった。謄本上の敷地面積なら建蔽率は不適合。

 そこで、とりあえず敷地の四辺をテープで実測してみたところ、新築時の確認申請副本の配置図に記載されている辺の数値と、ほぼ同じだった。既存建物があったので斜辺は実測できなかった。計画の初期段階で測量士や土地家屋調査士に依頼する以前の段階だったので、自分で実測。

 なんで敷地面積が違うんだろうと思案して、作図をしてみたところ 何という事はない、新築時の配置図の三斜法の底辺と高さを書き換えていることが分かった。多分 建蔽率がオーバーするので、敷地面積を増やして建築確認済証を取得したものであろう。つまり設計者による虚偽の建築確認申請である。

 増築時の建築確認申請の際に配置図の数値を修正した。建蔽率はどうしたのかというと、準防火地域+準耐火構造で10%加算を利用し法適合化した。

 建築物の敷地は、不動産登記法上の筆に制約されることはなく、一筆の土地の一部を建物の敷地とすることもできるし、複数の筆を建物の敷地とすることもできる。

 また敷地境界線は、厳密に境界や所有権等の範囲を明示しているものではない。判例でも、隣地と境界不明などの紛争が生じていない場合、設計の受任者は一般的な範囲で敷地の調査・確定をする義務を負っていると考えられている。(東京地判昭50・2・20判時794・89)

 建築確認申請上の敷地面積は、依頼者からの指示等により敷地の現状を調査すれば足りるので、境界確定や厳密な測量をしていなくても良いのだが、悪意のある虚偽の図面に出くわすことは多々ある。

 敷地境界に関わることは土地家屋調査士に相談するば事足りるのだが、設計者も基本的な事は知っていた方が良い。

 別な事例で、敷地境界に関する問題が生じたので読んだ本。

「次世代への伝言・自然の本質と人間の生き方を語る」宮脇昭×池田武邦 対談

 国内外で土地本来の潜在自然植生の木群を中心に、その森を構成している多数の種類の樹種を混ぜて植樹する「混植・密植型植樹」を提唱し活動していた、生態学者の宮崎昭さんは2021年 (令和3年)に死去された。享年93歳。

 と

 2022年(令和4年)死去された建築家の池田武邦さん。享年98歳の対談集。

 2011年5月初版とあるから、お二人が亡くなられる10年ほど前に対談が行われたようだ。

 この本は邦久庵の2025年・夏の一般公開で訪れたとき、永野先生から紹介された本だったが、先に「軍艦『矢矧』海戦記/建築家・池田武邦の太平洋戦争」井川聡著を読んだので、池田武邦さんの原点については、ぼんやりと解り掛けていたので、宮崎昭さんとの植物についての対話もすんなりと受け止めることができた。

 終章の「Ⅳ、次世代への伝言」が特に記憶に残る

 「自然の摂理を敬い、従うこと」「物事を総合的に見る力を養う」「いのちは人間にはつくれない」「文明は普遍、文化は土着固有」「今、文化に根ざした行動が求められている「体で自然に触れる喜びから目も心も開かれていく」見出しを並べるだけでビビットくる。

 今年、裏木曽・加子母の神宮美林で檜の天然木を見て、自然に畏怖し、畏れ敬う気持ちを忘れてはならないと思った。それが日本文化の原点なのかもしれないと。一本一本の木に命があり、精霊が宿っていると感じた。老木と言うのは、人間の寿命よりずっと長いいのちを生きている。そのいのちを敬って、注連縄を張って神木としてきた。木は神様で、いのちは神様だという事を再認識することができた。

 ドイツ語では、文化はクルツール(Kultur)といい、文明を指すツィビリザチオン(ZiViisation)とは区別するとの事。クルツールとは土着のもので、その場所にしかないものというのは示唆的だった。

 自然を畏敬し、ふるさとの森や山、川、海と共生してるという実感覚。さらに海や山を敬う心が、日本人の心、魂なのだと思う。

 ようやくして私も 池田先生が指し示した境地にたどり着くことができたかもしれない。

「軍艦『矢矧』海戦記/建築家・池田武邦の太平洋戦争」井川聡著

邦久庵を訪れるまで、池田武邦さんについて ほとんど知らなかった。

 今回の訪問で一般社団法人邦久庵倶楽部 代表理事で 東京大学都市デザイン研究室 助教の永野真義先生から邦久庵について解説をしてもらったが、その中で紹介された本は、「次世代の伝言・自然の本質と人間の生き方を語る」宮脇昭・池田武邦対談だった。

 出張中だったのでアマゾンで池田武邦さんの本を検索して、出張から帰るころに届いているように注文していた何冊かの本の一冊だった。

 そして最初の読み始めたのが「軍艦『矢矧』海戦記/建築家・池田武邦の太平洋戦争」

 まずは、池田さんの太平洋戦争を知りたいと思った。昭和15年の海軍兵学校入隊から「矢矧」航海士として、マリアナ海戦、レイテ沖海戦、そして沖縄海上特攻を経て21歳で終戦を迎える。海軍大尉で終戦を迎えた。

 この濃密な6年間あまりの苛烈な戦場体験には圧倒される。池田さんは あの戦争を語り継ぐために「生かされた」存在なのかもしれない。

 池田さんは、私の父の世代でもあり、若い時には名前は知っていても、雲の上のような存在だった。何しろ日本設計の社長でもあったし。関わっていた建物のレイヤーが違い過ぎていた。

 邦久庵は妻が偶然見つけ、邦久庵倶楽部に登録して、いつかは見に行きたいと思っていた建物だつた。丁度その頃、私達も終の棲家をどうするか考えているところだった。

 その偶然ともいえるきっかけから、邦久庵は様々な視座を提供してくれる。

 

「日本木造遺産」藤森昭信(著)・藤原光政(写真)

 藤森照信氏が文章を、建築写真家の藤塚光政氏が写真を。プラス、それぞれの木造遺産について構造学の観点から、東京大学生産技術研究所の腰原教授がコラムを寄稿するという贅沢な本です。

 この本は、2019年から足かけ5年にわたる雑誌「家庭画報」の連載のうち32の木造遺産を雑誌とはまた異なる仕立てで再構成した本だそうです。

 既に見た建物も沢山あったが、この本を読みなおしてみると、気が付いていないことや、新しい知見が溢れていた。まだ見ていなかった建物もあり、探訪したい建物が増えた。

 「千年の時を超える知恵」が日本木造遺産には伝承されている。

「生きるための農業 地域をつくる農業」菅野芳秀著

 日本の農業の実態は、ペンを持つ農民から聞くのが一番と思い、この本を読んだ。

 山形県長井市で50年間、地域循環型家族農業を営む著者が、農業の現場から届ける百姓エッセイ。

 いま農村で何が起きているのか、衝撃的な見出しが目に入ってくる。「大規模農業には農民も農村も不要」「生産費を賄えないコメの価格」「農仕舞いに追い打ちをかける農業機械の更新」「大規模化がつくる赤茶けた田んぼ、生き物がいない水田」等

 大規模農業は、化学肥料・農薬・殺虫剤の利用とセットであり、その結果田んぼの中の小動物がいなくなり、カエルも少なくなった。虫がいないから田んぼの虫を食べるツバメもスズメもトンボも少なくなった。

 カエルの声が一晩中聞こえる田、赤とんぼが舞う秋の情景。これは家族農業・小規模農家が低農薬で頑張っている証でもある。

 そうした一次産業に従事する人たちが 日本の国土を守り、景観を環境を守ってきた。

 日本の農業を支えてきた家族農家の人達が生活できなくなっている農業政策自体間違っている。大規模化促進と輸入米拡大は邪道だ。農協の解体を目論んでいる人達もいるんだろうと思う。

「俺たち百姓の時代的役割は、いままで培ってきた農と暮らしの知恵を活かし、地域の足元から生活者と連携し、ともに生きるための農業をつくりだしていくことだろう。負けていてはダメだ」と著者は書く。

 農業・林業・漁業で暮らす人々にリスペクトし、生活が成り立つようにすべきだ。それが何よりもSDGSであり、日本の国土を守ることに繋がるのではないか。

「Iの悲劇」米澤穂信著

「I」とは、都市から地方への移住を意味するIターンの事

 舞台は田舎の中の田舎、市全体の過疎化に加え、恐らく東北の山間部を設定しているのだと思うが、ひとつの限界集落が無人になってしまい「死んだ集落」となった。そうした「死んだ集落」も、もう日本の地方では見慣れた光景になってしまったが・・・。

 その「死んだ集落」に行政が中心になって都市から新住民を呼び込み、一旦は集落を復活させるが、やがて新住民は少しずつ、集落を離れ、永遠の眠りにつく。

 移住者を増やすという取り組みは、人口減少の我が国の地方自治体では、どこもかしこも取り組んでいる。一見前向きな政策も、地方自治体の財政状態から見たらインフラ整備の予算もなく、とんでもなく負担でもある。

 行政の現場と地方の現状に視点を向けた社会派ミステリーの体裁をとってるが、反転する結末が面白いし、Iターン政策について考えてしまう本。

 婆ちゃんの本棚から借用した本だったけど、一気に読んでしまった。

「建築物の防火避難規定の解説2025」

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 2023年度版に続き2025年度版が発行された。商売道具とはいえ、法令が変わるたびに、こうした本を購入し目を通しておかなければならない。

 さて、どこがどう変わったのか、相変わらず差分対照がないので よくわからない。

 フォローアップの避難検証法の質疑回答が掲載されたように思う。まあ避難検証法等の性能規定については、恐らく一級建築士が10人いたら、そのうち9人ぐらいは知らないというだろう極めて専門的な分野。

 東京は暑いので、日中はできるだけ外に出ず、クーラーの効いている部屋で、もっぱら、こうした専門書を読む。

「建築・まちづくりのための 空き家大全」田村誠邦他編著

これまで あまり関わることもなく、さほど関心もなかった空き家問題

いざ調べていくと 結構深刻な状態が日本全国で起きている

 この本は もともと日本建築学会特別研究委員会「縮小社会における都市・建築の在り方特別研究委員会」(2018年)等の共同メンバーの活動が基になっているので、問題のアブーローチが学際的。問題と対策、利活用が1冊で分かるようになっている。

 とりわけ、第3部の「空き家を活かした50の事例」は多彩で、興味深い事例が紹介されている。

 仕事の中心が「既存建築物」だとプロジェクト毎に現代の社会的な問題と関わるざるを得ない。最近は「高齢者の住まい」「空き家活用」「都心の高層マンション等の諸問題」「まちづくり」等、考えなければならないことが多すぎる。

 地方の空き家活用に取り組んでいく 良い本を見つけた。

「日本の血脈」石井妙子著

Version 1.0.0

 河崎秋子さんの「父が牛飼いになった理由」を読んで、依然読んだ本の中で、それぞれの人物のルーツ(家系や出自)を追った本があることを思い出した。

 石井妙子さんの「日本の血脈」。2011年2月から2012年12月まで「現代の家系」というタイトルで月刊「文藝春秋」に連載され、2013年に文庫版が出版された。

「読者が興味を抱いているであろう話題の人を、その人が生み出された背景とともに紹介する」という意図が書かれている。家系や出自という個人のプライパーシーに係るデリケートな問題に踏み込むのは難しいとは思うが、この「日本の血脈」は、とても興味深かったことを思い出した。

 大概、読んだ本には付箋紙や赤色鉛筆が加ええられているから、それらをざっくりと拾い読みした。

 今に生きる人の二代、三代前から語ることから時代は明治、あるいは江戸時代に遡る。日本の近代化が、どのような変遷を経てきたのか、振り返ることができる本でもある。

 人は産み落とされてこの世に出る。当然先祖のDNAを受け継ぐ。例えば孫だと1/4の私のDNAが伝達される。この先祖からの連続性を無視することはできないのではないか。自分のルーツを見直してみたいという衝動に駆られている。

「父が牛飼いになった理由」河崎秋子著

Version 1.0.0

直木賞作家・河崎秋子氏が綴る約400年のファミリーヒストリー


『ともぐい』で第170回直木三十五賞を受賞し、10年にわたって自然や動物と対峙する作品を書き続けてきた作家・河﨑秋子。

こんな平易な文体のものを書けるのか、ちょつと驚きだった


河崎秋子氏の実家は父・崇が公務員を「脱サラ」し開業をした「河﨑牧場」である。


なぜ、父は牧場経営を始めたのか。その謎を辿るため戦国時代からの家系図を遡る。
金沢で武士だった先祖、満洲で薬剤師をしていた祖父、満洲から大阪、そして北海道へと移り住んだ父、そして牧場経営の苦労を背負った祖母と母……400年以上に及ぶファミリーヒストリーが、20世紀の日本と戦後の北海道の酪農史へと繋がっていくノンフィクション。

人は一代で作られるものではないということを再確認した。自分のルーツを探す旅が、必要かもしれない。

「埼玉 森のカフェと緑のレストラン」

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これも妻が書店で買ってきた本

「埼玉で出会える 安らぎの空間へ」とある

免許は返納していないが、最近 車の運転をするのが億劫になった

そのことを取ってみても高齢化の証なのかも知れない

10年前なら、このような雑誌を片手にドライブして

「森のカフェと緑のレストラン」を訪ねただろうな

そんな気持ちになる 魅力的な空間が取り上げられている

都会の人は「癒し」を求めているのだろうか

BRUTUS CASA 2025.5 「安藤忠雄×青春」

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妻が本屋で買ってきた BRUTUS CASA 2025年5月号「安藤忠雄×青春」

久しぶりに この手の雑誌をじっくりと読んで見た

表紙は、韓国にできたミュージアムSANの2023年に増設された瞑想空間

CASAの特集は、グラングリーン大阪のVSで開催されている

「安藤忠雄×青春」展

安藤さんの集大成ともいえる展示会のようだ

7月21日まで開催か・・・

「世界で一番おもしろい構造デザイン」日建設計構造設計グループ

2025年 年初に買った本の中の一冊

新しいプロジェクトを構想しているとき、傍に置いて参考にしている

勿論、この本の中で取り上げられているような、

大きなプロジェクトには関与していないが

構造設計者とプロジェクトについて対話するときの

ヒントになる事が書かれている

ずっと半年ぐらい結論が出せていないデザイン・構造上の

悩みを抱えている

幾度か間をあけて計画しているが、ピタッとくる解決方法が見つからない

そういう時に、いろんな本を引っ張り出してきて苦悶する

「伝説の銀座マダム おそめ」石井妙子著

 かつて銀座に川端康成、白洲次郎、小津安二郎ら文化人、知識人、政財界人が集まる伝説のバーがあった。その名は「おそめ」。マダムは元祇園芸妓であり、京都と銀座に二つのバーを持っていた。

 ライバルとの葛藤など、さまざまな困難に巻き込まれながらも、己を強く通して生きた女性の半生を描いている。まるで暴走する車のような、止まることができない人だったように見える。

 その一方 夜の銀座の水商売の戦略ストーリーのイノベーション変遷を知ることができ興味深い。

 一人の女性の生涯を綿密な取材をもとに丹念に掘り起こした隠れた昭和史。

 この本の存在を知ったのは、競争戦略の研究者である楠木建さんの「戦略読書日記」。その中で紹介されていた22冊の本の一冊であり、戦略と経営の本質を探究する思考の基になった本ということで、興味を持って読んでみた。

 若い時から勤め先が新橋から八重洲周辺が多かったこともあり、銀座は、社会人になってからは東京でも一番馴染みのある地域である。

 もっとも銀座のクラブには若い時に接待のお供で一度行ったきりで、あれから半世紀行ったことはない。

 半世紀前上司に、座ったら一人5万円だと言われた記憶が残っている。

 その頃の私の給料のほぼ一月分。それでも社会勉強だからと若者を連れていく余裕が日本社会にはあった。

 

「ネット情報におぼれない学び方」梅澤貴典著

 岩波ジュニア新書だから、若い人たち向けの本なのだろうが、実にわかりやすい内容だった。

 「情報リテラシイー」とは、情報の信頼性を見抜く能力の事なのだが、現代のネットの中では、特にSNSではデマ、誹謗、中傷が横行、席巻していて気持ち悪くなる。

 自ら情報の信頼性を見抜く能力を身につけながら、自ら学ぶ力を伸ばす。そうすることで、それまでは存在すら知らなかった「人生の選択肢」を増やすことができる。

 この本には知的探求の「ワザ」が5個書かれている。

1、確かな情報を集める

2、幅広い知識体系を育てる

3、自分の探求テーマを見つけ

4、解決策を考えだし

5、言葉で伝える

「学びは終わりなき旅」

「蔦屋重三郎・江戸のメディア王と世を変えたはみだし者たち」山村竜也監修

 この本は、映画「HOKUSAI」を観た頃に買った。もともとは、曲亭馬琴の事が詳しく知りたくて読み始めたのだが、この時代を彩った人々が、実に多才であったことを知ることができた。

 この本の監修者である山村竜也さんは、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~の時代考証担当者である。

 その山村さん曰く蔦重の最大の功績は「喜多川歌麿と東洲斎写楽を育て世に送り出したこと」に尽きると。

 確かに現代でも「歌麿」と「写楽」の絵は、強烈な印象を我々に残している。

 ともかく蔦重を取り巻く人々は、奇人、変人、奇才、粋人のオンパレードで楽しい。

「イラストで読む建築・日本の水族館五十三次」宮沢洋・編著

日本は100館近い水族館を有する知る人ぞ知る「水族館大国」だそうだ。

 この本を読んで、結構自分も水族館に行っていたことに気が付いた。サンシャイン水族館、葛西臨海水族園、しものせき水族館・海響館、沖縄美ら海水族館、旭川市旭山動物園、アクアマリンふくしま、ほたるいかミュージアム。

 その中でも特に強く記憶に刻まれているのは、沖縄美ら海水族館の黒潮の海。幅35m×奥行27m×深さ10mの巨大水槽には圧倒された。その水槽の中を悠々と回遊する大きなジンベイザメには驚いた。この水槽は、世界最大級の大きさらしい。

 日本は技術面からも「水族館先進国」とのこと。

 これまで水族館は、建築的視点で語られることは多くありませんでしたが、水族館が、大人から子どもまで幅広い世代が建築を体感し楽しむことができる貴重な存在なのだと再認識した。

「佐々木睦朗作品集 1995-2024」

2025年最初に購入して読んだ「佐々木睦朗作品集 1995-2024」

実は、建築構造が好き

20代の頃 世話になった先輩達が、

みんな構造設計者だったという事もあるかもしれない

「本格的に構造をやれ」と何度も言われたけど、

D値法を少しやったくらいで終わった。

それでも構造家の本を見るのは好き

「せんだいメディアテーク」のコンペから、もう30年経ったんだなと思うと考え深い。

磯崎新、伊東豊雄、妹島和世+西沢立衛/SANAAなどと協働し、
世界を舞台に活躍を続ける
日本を代表する構造家・佐々木睦朗さん。

「せんだい」「金沢21世紀美術館」「ROLEXラーニングセンター」
「豊島美術館」などの代表作から
最新「あなぶきアリーナ香川」までの30作品収録。

空間構造の最高賞 「トロハメダル」受賞(Torroja Medal, 2023)。

その構造ディティールの美しさに魅了される。

「未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること」河合雅司著

 この国が人口減少社会にあることは「常識」だ。人口減少という社会構造の変化を企業、自治体、地域のそれぞれの現場で、起きうることをどれだけ具体的に正確に予想してるだろうか。

 2025年には後期高齢者(75歳)が5.5人に1人。65歳以上は3.3人に1人という高齢化社会になる。今年1年間の出生数が70万人割れになるかもしれず、この国の人口はどこまで減っていくのだろうか。

 そんな衝撃的な現実を前にしてもなお、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。

 この本「未来の年表 業界大変化」は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。

 見聞きしていると現実逃避しているのではないかと思う経営者も見かける。 

 いまだに売り上げは右肩上がりで増えていくと信じている経営者。今仕事があるからと社員を増やそうとする経営者。建築業界をみれば、工事会社はあくまでも見積合わせに固執したり。プロポーザルという名で公平性を装った業者選定が いまだ有効だと思っている人達もいる。

 日本のゼネコンには総合技術力が未だにあり、デザインビルドが最善だと思っている人達がいるが、現在の日本のゼネコンは建築商社化しており、多重下請け構造のアウトソーシングで、かろうじて成り立っている現状だ。ゆえに中抜き中抜きの積み上げで、建築工事費は高くなるばかり。

 デザインビルドの最大の欠点は、品質管理の第三者性が担保されていないことだ。床に勾配があつたり、柱が垂直でなくても工事が進んでいくスーパーゼネコンの多くの事件が噴出しているにも関わらず、大手ブランド信仰はなくならない。

 人口減少社会、マーケットの縮小という 日本の社会構造の変化にどう対応し準備するか。そうしたことを考えるきっかけになった本である。