今、日本の集合住宅には、「高経年マンションの増加や居住者の高齢化(2つの老い)」にどう取り組むかという課題があり、国土交通省でもその検討が始まっている。
2022年なかばから2023年3月まで既存団地の調査を行ってきた。具体的には劣化と遵法性について、埼玉県内と茨城県内の43団地、124棟の現地調査を行って高経年集合住宅の実情をリアルに見て維持修繕、管理の問題を知った。その調査を経て考えたことを少しずつ書いておきたいと思う。
今 アフォーダブルハウジングという概念や取り組みが、SDGsのゴール11「住み続けられる街づくり」の達成に向けた推進や、世界各地の都市部を中心とした住宅価格の高騰を背景に注目されている。
アフォーダブル(affordable)とは「手ごろな価格」「手に入れやすい価格」という意味なので、アフォーダブルハウジングは「手ごろな価格で手に入る、もしくは住み続けられる住宅」ということになる。
いわゆるセーフティーネットの意味合いが強い低所得者をはじめとした住宅確保が困難な層に向けた住宅供給だけでなく、平均的な収入の方も含めた多くの市民が安定した生活を送れるような、適正価格の住宅を供給する取り組みとなっている。
調査した団地では、高齢者、シングルマザー、外国人(技能実習生、特定技能)等が多く住んでいた。団地に住まう人の世代構成、所得構成、人種が多様になっていた。
一方で市街地に近いような立地にある利便性の良い団地の駐車場には外車も見られ、若い人も居住するなど、建物は古くても低家賃と利便性で選択されて入居率が高い団地もあった。一方で階段の無い集合住宅の4階や5階は、入居率が低いことも知った。
住宅価格の高騰が顕著な世界の大都市圏では、すでにアフォーダブルハウジングに関するさまざま取り組みが進められている。世界各地の先進的な事例、日本でも始まりつつある事例とともに既存高経年集合住宅の潜在能力(ポテンシャル)と課題について考えていく。