「次世代への伝言・自然の本質と人間の生き方を語る」宮脇昭×池田武邦 対談

 国内外で土地本来の潜在自然植生の木群を中心に、その森を構成している多数の種類の樹種を混ぜて植樹する「混植・密植型植樹」を提唱し活動していた、生態学者の宮崎昭さんは2021年 (令和3年)に死去された。享年93歳。

 と

 2022年(令和4年)死去された建築家の池田武邦さん。享年98歳の対談集。

 2011年5月初版とあるから、お二人が亡くなられる10年ほど前に対談が行われたようだ。

 この本は邦久庵の2025年・夏の一般公開で訪れたとき、永野先生から紹介された本だったが、先に「軍艦『矢矧』海戦記/建築家・池田武邦の太平洋戦争」井川聡著を読んだので、池田武邦さんの原点については、ぼんやりと解り掛けていたので、宮崎昭さんとの植物についての対話もすんなりと受け止めることができた。

 終章の「Ⅳ、次世代への伝言」が特に記憶に残る

 「自然の摂理を敬い、従うこと」「物事を総合的に見る力を養う」「いのちは人間にはつくれない」「文明は普遍、文化は土着固有」「今、文化に根ざした行動が求められている「体で自然に触れる喜びから目も心も開かれていく」見出しを並べるだけでビビットくる。

 今年、裏木曽・加子母の神宮美林で檜の天然木を見て、自然に畏怖し、畏れ敬う気持ちを忘れてはならないと思った。それが日本文化の原点なのかもしれないと。一本一本の木に命があり、精霊が宿っていると感じた。老木と言うのは、人間の寿命よりずっと長いいのちを生きている。そのいのちを敬って、注連縄を張って神木としてきた。木は神様で、いのちは神様だという事を再認識することができた。

 ドイツ語では、文化はクルツール(Kultur)といい、文明を指すツィビリザチオン(ZiViisation)とは区別するとの事。クルツールとは土着のもので、その場所にしかないものというのは示唆的だった。

 自然を畏敬し、ふるさとの森や山、川、海と共生してるという実感覚。さらに海や山を敬う心が、日本人の心、魂なのだと思う。

 ようやくして私も 池田先生が指し示した境地にたどり着くことができたかもしれない。

てら小屋チーム・第21回WEB打合せ

 計画中、設計中のプロジェクトや秋以降の業務について進捗状況を共有した。

 出張から帰ってきて夏風邪をひき、準備ができなかったので、先月課題を出した実践的な演習課題についての発表と講評を行った。

 都内の検済無し住宅の上増築(おかぐら)に対するガイドライン調査、条例に基づく申請、増築確認申請、設計、工事監理の業務見積書の作成。工事金額に対する料率ではなく、人工計算を積み上げた報酬の見積書作成を課題とした。

 適切な調査項目、調査人工を把握しているか、設計粗利率をどのように設定するのか等、技術者として、また経営者として、設計見積書をどう作るかという課題。こうした実践的な課題は、それぞれの業務に役立っていくだろうと思う。

 ある演習課題提出者の感想「調査の項目や工事期間の想定、諸経費・粗利の考え方など色々と勉強になりました。他の設計事務所の方の設計見積を見たり、考え方を聞いたりする機会はこれまで無かったので、参考になりました。」

 

「軍艦『矢矧』海戦記/建築家・池田武邦の太平洋戦争」井川聡著

邦久庵を訪れるまで、池田武邦さんについて ほとんど知らなかった。

 今回の訪問で一般社団法人邦久庵倶楽部 代表理事で 東京大学都市デザイン研究室 助教の永野真義先生から邦久庵について解説をしてもらったが、その中で紹介された本は、「次世代の伝言・自然の本質と人間の生き方を語る」宮脇昭・池田武邦対談だった。

 出張中だったのでアマゾンで池田武邦さんの本を検索して、出張から帰るころに届いているように注文していた何冊かの本の一冊だった。

 そして最初の読み始めたのが「軍艦『矢矧』海戦記/建築家・池田武邦の太平洋戦争」

 まずは、池田さんの太平洋戦争を知りたいと思った。昭和15年の海軍兵学校入隊から「矢矧」航海士として、マリアナ海戦、レイテ沖海戦、そして沖縄海上特攻を経て21歳で終戦を迎える。海軍大尉で終戦を迎えた。

 この濃密な6年間あまりの苛烈な戦場体験には圧倒される。池田さんは あの戦争を語り継ぐために「生かされた」存在なのかもしれない。

 池田さんは、私の父の世代でもあり、若い時には名前は知っていても、雲の上のような存在だった。何しろ日本設計の社長でもあったし。関わっていた建物のレイヤーが違い過ぎていた。

 邦久庵は妻が偶然見つけ、邦久庵倶楽部に登録して、いつかは見に行きたいと思っていた建物だつた。丁度その頃、私達も終の棲家をどうするか考えているところだった。

 その偶然ともいえるきっかけから、邦久庵は様々な視座を提供してくれる。

 

邦久庵 -1

 「邦久庵」(ほうきゅうあん)は、、2001 年に建築家・池田武邦さんが長崎県の大村湾のほとりに結んだ終の住処です。

 今回、夏の一般公開に合わせて、初めて長崎市を訪ねました。

 日本初の超高層ビルを設計し、オランダ村やハウステンボスの設計も手がけた建築家が、自然と建物の関係を見つめ直した結果辿り着いたのは、茅葺き屋根の小さな庵。

大村湾の「 琵琶ノ首鼻」と呼ばれる小さな岬に建ち、九州の材だけを用いた伝統工法で建てられています。

湾に突き出したデッキからの眺めは素晴らしく、海の音を聞く時間は本当に贅沢でした。

長崎駅

7/4岐阜、7/5名古屋を経て夕方長崎に入りました

7/7午後に長崎を離れ、7/7夜、京都に移動

参議院選挙比例区の全国遊説のような西日本横断です

西九州新幹線の武雄温泉~長崎駅間

 全国一短い新幹線の開通に伴い駅前が再開発されたそうです

出島メッセ長崎

絶滅危惧種設計者集団

 ふと気が付くと、周りの実務を担っている人達は、電気も設備も構造も、そして私達も、みんな古希を過ぎている。仲間内の最高齢者は80歳になったという。

 しかし皆現役で図面を書いているし、計算し、打合せや現場確認、行政打合せをこなしていて とても元気だ。

 それでも集まれば 仕事をしていられるのは、あと5年ぐらいかなと話している。

 「若い人を育てなかった あんた達が悪い」とか「あんた達、年寄が若い者の邪魔をしているんだから、早く引退しろ」とか陰口を叩かれているが、皆 多くの仕事を抱えていて忙しい。

 建築業界は全ての分野で「実務ができる技術者」は不足していて、若い人たちには人気がないようだし、実務に習熟してくると、業界の川上に行き、末端の実務技術者にはならない。

 生活はできるけど、ベンツとかジャガーを買って乗り回す余力はなかったな。一部の建築デザイナーさんは、多分に見栄もありそうだけど、結構乗り回している人がいるのに。

 若い人には、実務ができる建築技術者が圧倒的に少なくなるから、これからの建築業界はブルーオーシャンだよと言っている。

 きちんと図面(絵ではない)を書くことが出来て、各種計算もこなせて、現場にも理解がある実務ができる技術者・建築士ならばねと。

ECI方式

ECI方式(ECIほうしき、英語: Early contractor involvement、アーリー・コントラクター・インボルブメント方式)あるいは先行発注型三者協定方式とは、主たる元請業者がプロジェクトの初期段階で関与して設計段階への意見を提供する建設契約の一種。

従来、設計段階の終わりになってから請負業者を参加させる設計-入札-施工方式(DBB方式)とは対照的。

このモデルにより、請負業者はスキームの設計に情報を提供し、バリューエンジニアリングの変更が提案可能となる。

弊社では、以前より既存建築物の活用に係る建築工事については、ある時期から建築主の了解を得て建築業者を選定し、プロジェクトの情報開示を行い色々な技術的提案を受けている。ただ規模が比較的小さかつた事もあり、プロジェクト建築工事会社として内定してから工事請負契約までの期間もさほど長くなく、検討業務もさほど過大なものでなかったので、その業務報酬は話題にもならなかったし実際発生する事もなかった。

弊社から工事会社を推薦しても、建築会社から一切のバックマージンを貰わない事を宣言している。あるいは特定の材料・構法等を指定し採用されたとしてもバックマージンをもらう事はない。そうすることで仕事を通じて親しくなっても工事金額の査定、チェックには厳密でいる事ができる。

現在進行形の既存建築物のプロジェクトでは、このECI方式で建築会社の書類選考を実施している最中である。

ところが要領を受け取った建築会社も、言葉は聞いたことがあっても、実際に経験した事がある人はいないようで、とりわけ上層部に戸惑いがあるようだ。勿論、弊社もECI方式に基づく本格的な業者選定は初めてで、役所の要領を書き換えて単純化したが、それでも固い固い書類になった感は否めない。メンゴ。

大規模でもあり工事仮設計画や安全計画、エスカレーターやエレベーターの早期発注もあり、またVEを含む工事費の調整なども勘案しECI方式を提案したのだが、「令和の時代」の大規模な既存建築物の工事発注方式では最も適切な方法なのではないかと思っている。

「日本木造遺産」藤森昭信(著)・藤原光政(写真)

 藤森照信氏が文章を、建築写真家の藤塚光政氏が写真を。プラス、それぞれの木造遺産について構造学の観点から、東京大学生産技術研究所の腰原教授がコラムを寄稿するという贅沢な本です。

 この本は、2019年から足かけ5年にわたる雑誌「家庭画報」の連載のうち32の木造遺産を雑誌とはまた異なる仕立てで再構成した本だそうです。

 既に見た建物も沢山あったが、この本を読みなおしてみると、気が付いていないことや、新しい知見が溢れていた。まだ見ていなかった建物もあり、探訪したい建物が増えた。

 「千年の時を超える知恵」が日本木造遺産には伝承されている。

「生きるための農業 地域をつくる農業」菅野芳秀著

 日本の農業の実態は、ペンを持つ農民から聞くのが一番と思い、この本を読んだ。

 山形県長井市で50年間、地域循環型家族農業を営む著者が、農業の現場から届ける百姓エッセイ。

 いま農村で何が起きているのか、衝撃的な見出しが目に入ってくる。「大規模農業には農民も農村も不要」「生産費を賄えないコメの価格」「農仕舞いに追い打ちをかける農業機械の更新」「大規模化がつくる赤茶けた田んぼ、生き物がいない水田」等

 大規模農業は、化学肥料・農薬・殺虫剤の利用とセットであり、その結果田んぼの中の小動物がいなくなり、カエルも少なくなった。虫がいないから田んぼの虫を食べるツバメもスズメもトンボも少なくなった。

 カエルの声が一晩中聞こえる田、赤とんぼが舞う秋の情景。これは家族農業・小規模農家が低農薬で頑張っている証でもある。

 そうした一次産業に従事する人たちが 日本の国土を守り、景観を環境を守ってきた。

 日本の農業を支えてきた家族農家の人達が生活できなくなっている農業政策自体間違っている。大規模化促進と輸入米拡大は邪道だ。農協の解体を目論んでいる人達もいるんだろうと思う。

「俺たち百姓の時代的役割は、いままで培ってきた農と暮らしの知恵を活かし、地域の足元から生活者と連携し、ともに生きるための農業をつくりだしていくことだろう。負けていてはダメだ」と著者は書く。

 農業・林業・漁業で暮らす人々にリスペクトし、生活が成り立つようにすべきだ。それが何よりもSDGSであり、日本の国土を守ることに繋がるのではないか。

ベルトラン ラーシェ ル ブルターニュ カグラザカ

今年に入って、日中 神楽坂周辺に出かけると立ち寄る事が多い

ガレットとクレープの専門店

神楽坂の路地奥にある

フランス語が飛び交う、ちょっと雰囲気が違う店。

ちょっぴりワープした気になります

勿論 日本語も通じます

最近 好きになったシードル。アルコール度数が低い

リンゴジュースのソーダ割を飲んでいるような感じ

冷製のカボチャのスープと暖かい魚介のスープ

サラダも美味しい。暖かい鰯が入っていた

ホタテとラタティユのガレット

海老とホタテのポアレが載っているガレット神楽坂

客の8割から9割が女性客

爺婆は、場違いな気もしていたが、顔を覚えられていた

「Iの悲劇」米澤穂信著

「I」とは、都市から地方への移住を意味するIターンの事

 舞台は田舎の中の田舎、市全体の過疎化に加え、恐らく東北の山間部を設定しているのだと思うが、ひとつの限界集落が無人になってしまい「死んだ集落」となった。そうした「死んだ集落」も、もう日本の地方では見慣れた光景になってしまったが・・・。

 その「死んだ集落」に行政が中心になって都市から新住民を呼び込み、一旦は集落を復活させるが、やがて新住民は少しずつ、集落を離れ、永遠の眠りにつく。

 移住者を増やすという取り組みは、人口減少の我が国の地方自治体では、どこもかしこも取り組んでいる。一見前向きな政策も、地方自治体の財政状態から見たらインフラ整備の予算もなく、とんでもなく負担でもある。

 行政の現場と地方の現状に視点を向けた社会派ミステリーの体裁をとってるが、反転する結末が面白いし、Iターン政策について考えてしまう本。

 婆ちゃんの本棚から借用した本だったけど、一気に読んでしまった。

「炭火焼肉 しちりん」

下呂から、加子母に移動し内見+打合せを済ませ昼食

 「けいちゃん」を食べることになったのだが、以前 中津川駅近くで食べたときの印象が良くなかった(美味しくなかった)ので躊躇したのだが、この店は美味しいからというので入店。中津川市加子母地内の「炭火焼肉 しちりん」

けいちゃん+飛騨牛ホルモン定食

ジンギスカン鍋に和紙が敷いてある。

紙が焦げないように焼くのがコツだとか

ニンニクが効いてる。

ホルモンが混じっているせいか、味に深みがある。

「けいちゃん」のイメージを一新させた出会いでした。

色々な「けいちゃん」を食べ歩きたい

てら小屋チーム・第20回WEB打合せ

 計画中、設計中のプロジェクトや秋以降の業務について進捗状況を共有。例年盆明けから3月の年度末までは、とても忙しくなるので協力を依頼した。

Aプロジェクトは、既存建築物の改修工事に伴う各種補助金について、詳細な内容が担当者から説明があり、申請する補助金を絞り込み、行政にヒアリングするものを決めた。

Bプロジェクトは、シニア向け共同住宅にコンバージョンする計画だが、既存一般図、計画図ができたので担当者から説明。設備・電気や他のチーム員から意見をもらった。

Cプロジェクトは、専用住宅で既存図、計画図について担当者から説明。子供室の在り方について意見が交わされた。

Dプロジェクトは、実施設計が完了したので設計予算の算定のため現在積算中。中部圏の業務については増改修工事に伴う設計事務所としての工事見積書は、より実勢に近い見積書を作成する事にしている。東京圏に関しては今後の検討課題。

 実践的な演習課題を出した。

 都内の検済無し住宅の上増築に対するガイドライン調査、条例に基づく申請、増築確認申請、設計、工事監理の業務見積書の作成。工事金額に対する料率ではなく、人工計算を積み上げた報酬の見積書作成を課題とした。

 木造住宅2階程度の検済無し住宅の増築は、今後一定の需要が見こまれるが、これを適切に調査・申請・設計・監理を一括してできる設計者は多くない。

 適切な調査項目、調査人工を把握しているか、設計粗利率をどのように設定するのか等、こうした実践的な課題は、それぞれの業務に役立っていくだろうと思う。

「建築物の防火避難規定の解説2025」

EPSON MFP image

 2023年度版に続き2025年度版が発行された。商売道具とはいえ、法令が変わるたびに、こうした本を購入し目を通しておかなければならない。

 さて、どこがどう変わったのか、相変わらず差分対照がないので よくわからない。

 フォローアップの避難検証法の質疑回答が掲載されたように思う。まあ避難検証法等の性能規定については、恐らく一級建築士が10人いたら、そのうち9人ぐらいは知らないというだろう極めて専門的な分野。

 東京は暑いので、日中はできるだけ外に出ず、クーラーの効いている部屋で、もっぱら、こうした専門書を読む。

下呂温泉 川上屋花水亭 -3

露天風呂 河原の湯 早朝

下呂温泉の泉質は、単純温泉(アルカリ性単純温泉)

効能は、リウマチ、運動機能障害、神経症、神経麻痺、病後回復、疲労回復など。

下呂温泉でも場所によって泉質が違い、飛騨川の西と東では微妙に異なるとか

「川上屋花水亭」のお湯は「pH9.1」

アルカリ性特有の石鹸効果によりツルツルした肌ざわりで「美人の湯」とも呼ばれているとか。じんわり後から身体が温かくなる、とても良いお湯でした。

下呂温泉では、5本の源泉井戸から最高79度の温泉が毎分2,300リットル湧き出しているそうで、「川上屋花水亭」は、源泉かけ流し、一部循環ろ過併用方式との事。

昭和7年(1932年)の創業の老舗温泉旅館です。とても料理がおいしかった。

とりわけ、お米が印象に残っている、全国のお米コンクールで数々の賞を受賞している「銀の朏」使用しているとの事。「銀の朏」は岐阜県飛騨地域で、低農薬で科学肥料を一切使用せずに栽培されているお米。

「川上屋花水亭」は、「お湯良し、料理良し、接客良し」の三拍子揃った宿でした。

自家焙煎珈琲の店 緑の館

下呂温泉から少し高山側の岐阜県下呂市萩原町の

「自家焙煎珈琲の店 緑の館」で一休み

内部の撮影は禁止なので外観だけ

創業50年で、コーヒーに特化し、万人に好かれるより本当にコーヒーが好きな1人に愛してもらえる喫茶店を目指したそうです。

店内にはジャズ、アンティーク時計、アメリカ電子ピアノ等が置かれ、こだわり続けた店づくりをしているそうです。

店内の雰囲気も良く、とても人気のある店だという事がわかります。

各自別な珈琲とリングトースト小倉バターを食べたけど、3人でも多いぐらいのボリュームで、餡子もバターもいっぱいで、とても美味しかった。

珈琲焙煎室と珈琲豆の販売所

中々の豆の種類

エチオピアを買い求めた

そば処 山法師

愛知県下での打合せ、現場確認を経て岐阜県の下呂に移動

 高山本線に沿って国道64号線を下呂に向かう途中、岐阜県加茂郡川辺町にある「そば処 山法師(やまほうし)」で遅い昼食。昼食のオーダーストップ直前の入店だった。

天丼セットを食したが、そばつゆがとても美味しい

こんなところに 良い店を発見

岐阜では、結構人気のある店と聞いたが、最近は地方に美味しい店が多い

古民家にグランドピアノが

駐車場側から

「建築・まちづくりのための 空き家大全」田村誠邦他編著

これまで あまり関わることもなく、さほど関心もなかった空き家問題

いざ調べていくと 結構深刻な状態が日本全国で起きている

 この本は もともと日本建築学会特別研究委員会「縮小社会における都市・建築の在り方特別研究委員会」(2018年)等の共同メンバーの活動が基になっているので、問題のアブーローチが学際的。問題と対策、利活用が1冊で分かるようになっている。

 とりわけ、第3部の「空き家を活かした50の事例」は多彩で、興味深い事例が紹介されている。

 仕事の中心が「既存建築物」だとプロジェクト毎に現代の社会的な問題と関わるざるを得ない。最近は「高齢者の住まい」「空き家活用」「都心の高層マンション等の諸問題」「まちづくり」等、考えなければならないことが多すぎる。

 地方の空き家活用に取り組んでいく 良い本を見つけた。

少子化に思う事

 厚生労働省によると、去年1年間に国内で生まれた日本人の子どもの数は68万6061人となり、前年より4万1227人減少。

 出生数が減少するのは9年連続で、1899年に統計を取り始めて以降、初めて70万人を下回りました。出生数はすべての都道府県で減少しているとあります。

 国立社会保障・人口問題研究所がおととし公表した将来予測では、日本人の出生数が68万人台になるのは2039年と推計していて、想定より15年ほど早く少子化が進行しているそうです。

 日本人の出生数は、最も多かった第1次ベビーブーム期の1949年には269万人余りいましたが、その時と比べると4分の1近くまで減少しています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250604/k10014825201000.html

 少子化で思い出したのが 若い時に読んだシュンペーターの本です。昔読んだ本を探し出すのが大変で、いずれは書棚に全部の本を並ばせてあげたいと常々思っているのですが、中々実現しません。

 それはともかく

 ジョセフ・アロイス・シュンペーターは、1883年にオーストリア=ハンガリー帝国領のトリーシュという 小さな町に生まれたとあります。この地は、現在はチェコ領。   

 100年以上前に活躍した人ですが、イノベーションの理論家として 今でもビジネス界では人気のある評論家だそうです。

 さて そのシュンペーターは、100年以上前に「資本主義の発展過程では、家族制度も形骸化して、少子化が進展し、それが資本主義を機能不全に陥らせる」と論じていました。

 資本主義の精神は損得勘定を優先させる「経済的合理主義」の精神が基本にあり、その経済的合理主義の精神が社会のあるゆる分野に浸透していくと結婚して子供をつくり、育てるという行為は、経済合理性が無いために少子化が進むと予測していました。  家族に縛られることや、親や子のために自分を犠牲にすることは、経済合理的ではなく、割に合わないからです。家族を持つ、子供を育てる、親の面倒を見るという事は損得勘定で考えることではなく、それらの行為の動機は「情愛」です。

 しかし合理主義の精神に支配された資本主義社会では、情愛などという経済合理性がないものは、尊重されないのです。我々は 現実世界の中で、経済的合理性とそれに反する情愛の狭間で揺れ動いているのです。

 もともと資本主義を発展させてきた動機は、自分の子や孫たちに財産を残していきたいから利潤を追求するのだと言います。シュンペーターは、「子や孫のために」という行動の動機を「家族動機」と呼んでいます。

 「資本主義は発展するからこそ崩壊する」現在の社会情勢を俯瞰すると含蓄のある言葉をシュンペーターは残しています

てら小屋セミナー2025 加子母フィールドツアー 原点に還る旅

 「てら小屋セミナー2025・加子母フィールドツアー」は、木から建築ができるまでの過程を体験的に学ぶことと、神宮備林で樹齢何百年の木々達と触れ合う機会でもありました。

 またツアーを通じて、通常では中々体験できない20歳代から70歳代の世代間交流をリアルに行う場でもあり、同じ時間を共有し会話をすることで、お互いに刺激になったのではないか思います。

 そして、人として建築技術者として「原点に還る旅」でもありました。

 都会で仕事をして生活していると、身体は満たされても心は空腹になっていくような気がしていました。

 渡合温泉で早朝に小鳥のさえずりと小川のせせらぎの音だけの世界に身をおいていた時、何か心の空腹が満たされていくような気がしました。それは、たぶん「癒される」という事なのでしょう。

 先人達は、自然の音のだけの世界で、癒され、思考し、行動していたのだなと思うと、こういう空間に時々立ち戻る必要があると思いました。

 また、建築技術者として、生産者や流通経路に思いを寄せる必要性を強く感じました。

 それは「凧の糸」なのではないか。我々は、糸を切ったら、どこに飛んでいくかわからない「凧」で、常に現場との糸を切らしてはいけないのではないかと思ったツアーでした。

 【神宮備林・二代目大ヒノキの前でツアー参加者と】