
かつて銀座に川端康成、白洲次郎、小津安二郎ら文化人、知識人、政財界人が集まる伝説のバーがあった。その名は「おそめ」。マダムは元祇園芸妓であり、京都と銀座に二つのバーを持っていた。
ライバルとの葛藤など、さまざまな困難に巻き込まれながらも、己を強く通して生きた女性の半生を描いている。まるで暴走する車のような、止まることができない人だったように見える。
その一方 夜の銀座の水商売の戦略ストーリーのイノベーション変遷を知ることができ興味深い。
一人の女性の生涯を綿密な取材をもとに丹念に掘り起こした隠れた昭和史。
この本の存在を知ったのは、競争戦略の研究者である楠木建さんの「戦略読書日記」。その中で紹介されていた22冊の本の一冊であり、戦略と経営の本質を探究する思考の基になった本ということで、興味を持って読んでみた。
若い時から勤め先が新橋から八重洲周辺が多かったこともあり、銀座は、社会人になってからは東京でも一番馴染みが地域である。
もっとも銀座のクラブには若い時に接待のお供で一度行ったきりで、あれから半世紀行ったことはない。
半世紀前上司に、座ったら一人5万円だと言われた記憶が残っている。
その頃の私の給料のほぼ一月分。それでも社会勉強だからと若者を連れていく余裕が日本社会にはあった。