わずか35年あまりしか空間を体験することを許さなかった工学院大学八王子図書館。
武藤章先生の代表作とも言える八王子図書館は、工学院大学八王子キャンパスの核となる施設であったが昨年2015年10月解体された。
学生時代1年間ゼミで武藤章先生の教えを受けた。設計演習でも指導を受けたが、先生はとても論理的だけど文学的な一面もあって、私が好きだった立原道造の詩を先生も好きでとても親近感を覚えていた。設計の成績はそれなりに良かったけど、自分は設計はあまり好きではなく、卒論は伊藤ていじ先生のもとでお世話になることとなった。それ以来、先生に会う機会がないまま月日は経過したが、あまりにも早く武藤章先生は他界してしまった。
八王子図書館の完成は、私が大学を卒業した後だったし、当時は東京から離れていたので、残念ながら実物は見ていない。雑誌等で見て記憶に残っていた程度だったが、まぎれもなく武藤章先生の代表作のひとつになるだろうと思っていた。
さて、この本は消えゆく建築の新しい保存方法を提起した「本」である。
惜しむらくは、解体時の変状調査をしておくと良かったように思う。一種の「解剖」なのだが、ストック活用の立ち位置からは有意義な資料が得られたように思う。
とにかく写真72枚、意匠図108枚、武藤章先生の八王子図書館に寄せる思い、関係者の証言、なんと申請図書まであり圧倒される。
端正なプロポーションで緊張感のあるデザイン・武藤章の空間を是非体験あれ
【本の紹介】