「愛するよりも愛されたい/令和言葉・奈良弁で訳した万葉集①」佐々木良著

1300年前、万葉集が作れた時代の日本の首都は奈良で標準語は「奈良弁」だったはずということで、現代的な意訳を試みた本。今年、香川県高松市出張の際に本屋さんで目に留まった。

万葉集の約半数は恋歌だそうで、その中から幾つかセレクトして現代的な意訳を試みている。

万葉集の1番目の歌は、雄略天皇が、その辺のねぇちゃんをナンパする歌から始まる。昔は天皇もとっても身近な存在だったのかもしれない。

万葉集の編纂に関わったと人と言われている大伴家持の歌が多い。随分ともてた人のようではあるが、伯母である大伴坂上郎女が大伴家持に贈ったという歌が普通の恋歌として意訳されているが、ちょっと違うんじゃないかなぁと思ったりした。

巻18 4086番歌 原歌

「常人の 恋ふというよりは あまりにて 我は死ぬべく なりにたらずや」

本書意訳

「そこらへんの人の恋 そんなもんちゃう! うちの恋は 死のレベルや!」

大伴坂上郎女は、妻を亡くした兄の大伴旅人の子息である大友家持を養育したと言われているし、後には娘婿になっているのだから、男女の仲の恋歌というよりは、母のような無償の愛歌としてとらえるべきではないかと思った。専門家でもないので単なる違和感程度の感想。

最近はPCで目が疲れているせいか、一般的な文庫本の文字の大きさには閉口するが、この本は見やすかった。

1300年前の奈良弁は、現代の奈良弁と同じなのかな?とか 突っ込みどころもあるのだけれど、若い人達が万葉集に親しみを覚えてくれたらよいと思う。

発行所の(株)万葉社は、香川県高松市の著者・佐々木良氏の出版社。地方の小さな出版社から こういうベストセラー本がでるのは喜ばしい。