「空き家サミット2016」に参加してみました。
基調報告のひとつは、東京都計画調整担当課長から都内の空き家の状況が報告された。「平成25年時点の空き家は約82万戸、空き家率は平成10年からほぼ横ばいで、平成25年では11.1%」「内訳は、空き家のうち約60万戸は賃貸用であり、平成20年と比較して10万戸以上増加している」「長期不在・取り壊し予定の空き家は、平成20年比較して減少しているものの、約15万戸存在」「都内区市町村の空き家の実態調査は、まだ始まったところ」
もうひとつの基調報告は、「豊島区における空き家問題とその対策・活用」で現状は全国的な空き家問題である戸建て住宅の空き家問題とは少し異なる様相が見られる。「豊島区では世帯構成がファミリー世帯22.2%、単独世帯60.9%である」「住宅数は増加傾向だが56%が民営貸家(すなわち単身者アパート・マンション等)」「面積30㎡未満の物件が多く、増加している」
統計には表れていないかもしれないが外人向けシェアハウスも相当数増加していると個人的には思っています。
木密地区に住んでいて思う事を少し書いてみます。
この10年、豊島区東池袋地域は再開発が進み、長く住んでいた住民は流出。古い住宅や事業所跡地は、単身者アパート・マンションに建て替えられた。よって町会は再編成され子どもは減少。新しく建替えられたアパートのあおりを受け古くなった賃貸住宅には、外人入居者が増え、住民は治安の悪化を心配する。
結婚しても、低価格のファミリー向け賃貸住宅の供給は少なく、子育て世代への施策が充実していて物価等も安い北区等に転出する傾向があります。(例えば北区と千代田区は高3まで医療費無料・豊島区他は中3まで)
UR賃貸等の空き室傾向を見ていると豊島・文京・新宿などは空き室がほとんどありません。
豊島区は、単身者が歳を重ねても定着する傾向が見えてきた。その単身者の多くは非正規労働者で所得が少なく、人口が増加しても税収は減少し、豊島区は将来財政破綻の可能性があるという衝撃的な指摘で、以前NHKで特集されていました。
豊島区からの基調報告における「現時点における主な課題」についての私的意見
1、空き住戸、空き室は思いのほか見つからない
賃貸住宅は再転用されやすい。単身者用→外人用シェア・老人向け→貧困ビジネス等と意外と老朽化しても転用できる。しかもほとんどが正規の手続きを踏んでいない。
2、法令によつて利活用を断念
住宅以外の用途に転用しようとしても、従来からの住宅は違反建築・法不適合・検査済み無し・再建築不可(接道)であることが多く、前段階で活用不可となる事が多い。つまり計画の土俵にもあがらない物件が多い。
3、空き家オーナー・家族の合意形成が大事
相続の問題もあり「個人所有物件」の活用は予期しないことに直面することが多い。
4、貸したい人と借りたい人とのスピード感の違い
民間ベースでは、個別の需要が見込まれて経済的合理性を勘案して事業計画に着手するのでマッチングは中々難しい。
5、入居者の関心は家賃
豊島区は土地の実勢価格や評価額が高いので、民間ベースで再活用ビジネスを計画した場合は、中古リノベ―ションであつても家賃を安く供給するのは難しい。既存建物調査→耐震診断→耐震補強工事→その他リノベーション工事という正規の手順を踏んでいくとどうしても工事原価と営業経費が積み増しされます。
空き家は、昭和55年(1980年)以前の建物が多いので、耐震診断+耐震補強工事は不可欠となるのがほとんどだと思われます。
近接他区(板橋・練馬等)の方が有利になるケースが多い。又城南に比べると城北の所得水準は低いので購買層が限定されという傾向もみられます。
空き家の維持管理の問題と切り離し、都市のバランスのとれた成長と維持から空き家問題を考えると
ワンルームマンション規制の再検討。シェアハウスの規制。子育て世代向け施策の充実。公的住宅施策の作成が必要で、民間事業者を主体とした施策のスキームだけを考えても難しいのではないでしょうか。空き家という量はあっても、活用したいという潜在的需要が少ないところに色々なスキームを作ってみても、ビジネスにはなりづらいのではないかという感想を持ちました。