もしかしたら5000年前の私の故郷は信州だったかもしれない。そんなことを思ってしまう考古学の本。
長野県の八ヶ岳を中心とした地域では、いまから5500年前~4500年前の縄文中期の遺跡数がずば抜けて多く、国宝「縄文のビーナス」等数々の土偶が発見されている。そこから考古学の世界では「井戸尻文化」と呼ばれているそうだ。その範囲は関東西部から山梨・長野をひとつの文化圏と考える研究者は多いようだ。
それを支えたのは、落葉樹の森の恵みと栽培管理、そして黒曜石。
黒曜石は、天然のガラスで弓矢の矢尻に使われるが、八が岳の周辺は黒曜石の一大産地で、遠く青森の三内丸山遺跡からも八ヶ岳西麓産のものが発掘されている。
この本の著者である藤森英二さんのお爺さん、藤森栄一さんも著名な在野の考古学者だった。今では定説になったと思う「縄文中期農耕論」を提唱していたが、最近の研究で実証されている。この本でも新しい研究として栽培の可能性があるものとしてシソ・エゴマ・マメ類(ダイズやアズキの仲間)があげられている。
とにかく全体がビジュアルで分かりやすく、とくに縄文のビーナスや仮面の女神の二つの国宝土偶のディティール写真は圧巻だ。
2017年に発刊されて現在は第5刷を超えているというから静かなベストセラー本だといえる。
信州の秘めたるポテンシャルは深い。
考古学の旅へ いざなつてくれる。
建築にどっぷりつかっていると頭が酸性になるので 時々中和させないと・・・