「オルタナティブ・原田左官工業所の仕事」

原田左官工業所は、店舗左官という分野を切り開いた東京文京区の左官屋さんで、店舗関係の設計や工事をしている人には結構知られている。その原田左官工業所の社長である原田宗亮さんの本。昨年の秋に出版されたようだ。久しぶりに大きな本屋に行き見つけた。

そういう私も若い時は飲食店の設計に多く携わっていた時期があり、色漆喰を左官屋さんに塗ってもらったあと、たわしでたたいたり、ビー玉を二つに割り塗り壁に埋め込んだりと色々な表現を試してみた事があった。ヨーロッパ各地で見た左官に啓発されていた頃だった。

「オルタナティブ」という言葉には、「既存・主流のものに代わる何か」という意味があるという。それは多分、職人の手仕事なんだろうと原田さんは思つているのだろう。あらゆる分野で商業主義に支配された現代では、建築も無味なものに置き換わっている。商業主義に抗いながら、生きていくのは容易な事ではない。

この本には、様々な左官の可能性を示唆する表現が紹介されてる。私は、このブックカバーになっている「版築」の表現が結構好きだ。

野帳場の左官工事は、めっきり少なくなっただろうが、非日常の世界を演出する店舗左官の分野で原田左官工業所さんには、まだまだ挑戦を続けて欲しいと思う。