都内の土砂災害区域内・つまり崖の下に住む住民の方から相談を受けていた。
以前は樹木に覆われていた斜面の下に大谷石の擁壁がある。その崖の上の敷地の建物の新しい所有者が崖の上・敷地全域にテラスを築造する工事を開始した。当然樹木は伐採、地表面は裸になり木の板で土留めのような工事をしている。またテラスを支えている支柱の基礎は根切が浅く、中には置いてあるように見えるところもある。このテラスは大規模で斜面部分に築造し約100㎡はあるのではないだろうかと思われた。
東京都内の土砂災害危険区域の指定は、東京都の管轄で建設局河川部が担当している。
建設局河川部に相談したところ、危険性があることは確かだが都が要請、指導する権限はないとのこと。建築物であれば建築申請等が必要になるが、区が申請不要と判断すればそれ以上の対応は難しい。
しかし都から区の建築課に電話をすることくらいなら可能とのことだった。
相談をした際の都の主な見解。
・木の土留めは評価できない。仮設とすら言い難い。
・大谷石は機能するとは見ていない。大谷石の考え方については区でも説明あり、
現在の建築基準を満たしていないものの、長い年月その状態にあることから、構造
上の計算はできないが、長年の安定性への信頼度からそのまま残しているケースは多いとのことだった。→ 実際本職が現地を見た限りでは、かなり風化が進んでいる大谷石擁壁だった。
・水害だけでなく地震による危険もある。
・自分たちであればこのような工事は行わない。
・切り株を残してもツツジを植えてもあまり意味はないと考えられる。
樹木を取り除いてしまった今の状態をより安全にするには、排水処理をしたうえで法面をコンクリで固めるか、しかるべき擁壁を建てることが望ましい。
一方 区の建築指導課監察係は、屋根のない構造物であり、テラスの下が屋内的用途でない事から建築基準法第2条に規定する「建築物」には該当しないので、指導や是正命令はできない。ただし設置者は、安全性を考慮したうえで設置すべきだと考えられるから、テラス及び崖地法面の安全性については住民に丁寧に説明するよう要請すると回答。
区から回答があってから三週間。未だ設置者から地域住民への説明はない。