「木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について」

2024年10月3日国土交通省から発表された「木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について」を見ていた。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_kijunhou0001.html

https://www.mlit.go.jp/common/001766698.pdf

旧法6条1項4号建築物から新2号建築物になる2階建て木造一戸建て住宅がリフォーム。リノベーションを行う場合に大規模の修繕又は大規模の模様替の建築確認申請が必要になるということを注意喚起するもの。

新2号建築物は階数2以上又は延べ面積200㎡以上で、これまで無法状態だった旧4号建築物のリフォーム、リノベーションに法規制の網がかぶさってきた。軸組だけ残すスケルトン・リフォームやスッポッポン・リフォームも確認申請が必要となる。

例えば木造2階建で耐震等級を「3」にアップするようなリフォームを含有する場合、床合板、野地板合板、壁面合板等を張り替えないと耐震等級を上げることはできないので、当然ながら大規模の模様替えの確認申請が必要になる場合が想定される。

もうひとつ忘れてはならないのが、旧4号建築物は、検査済証がない手続上違反建築物や実態上の違反建築物が街場にゴロゴロしているということだ。

当然ながら大規模の模様替え確認申請の前段階として、検査済証が無い場合は、建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)等が必要となる。

「要綱飛ばし」

不動産業界の人が昔使っていた脱法行為の手法の事

現在は、多くの特定行政庁で条令化された「ワンルームマンション条令」。条例化する以前は「要綱」だった時期がある。その要綱について特別区と誓約書を締結し、建築確認申請もその要綱に沿って作成し確認済証の交付を受けながら、実際に作る建物は戸数とか、駐車台数、駐輪台数も異なる建物を建設し、完了させる。

当然ながら工事完了検査済証はない。検査済証がなくても登記できたし、銀行融資も何の問題もなく実行された時代。

私が調べた建物は、SRC14階建ての都内の賃貸マンションで、当時の基準だと計6回の中間検査が必要にもかかわらず、1度の中間検査も受検していなかった。中間検査の受検の有無は、特定行政庁に出向き知らべてもらうと判る。施工は、全国的には名の通っているゼネコン。

屋外階段から道路への避難経路(令128条)がない。建築確認申請図書で避難経路となっている部分は、しっかりテナントの店舗となっていた。火災が起きたらどうするんだろう。

まあ、こんな既存建築物は、今でも都内にゴロゴロしている。

こういう脱法行為を推奨する不動産業者と設計者がグルになっていたのが建設業界。

今頃になってコンプライアンス・コンプライアンスと言われたって、違法部分を見つけるのも直すのも費用とエネルギーがかかる話。構造安全上、避難安全上問題が多い建物は、早く解体した方が世の中の為。

建築基準法が出来てから70数年のうち60年ぐらいは「ザル」だった法律。後始末は、そりゃ大変さ。

Dキューブ 見学会

 

 昨年2023年9月末に引き渡しが完了した調布市のテナントビル「Dキューブ」の見学会があった。

 建て主が会員になっている一般社団法人 日本不動産経営協会の見学会で、16名が参加された。日本不動産経営協会は、1981年に結成された賃貸不動産経営者の団体で会員数100名余りと聞いた。

 協会の主旨は「JRMA(ジャルマ)=社団法人日本不動産経営協会は賃貸不動産経営者の組織で、相互に情報をギブアンドテイクし、不動産賃貸経営の知識を高め実践していく勉強会です。マンション、アパート、ビル等の賃貸物件を事業的規模で所有し、賃貸経営に係る知識やスキルを磨くといった、賃貸経営に前向きに取組む姿勢のある会員が集まっています。」と書かれている

 見学会の為に簡単な説明資料(A4版7頁)を作成し説明をしてきた。建物概要、建物履歴、Dキューブの選択、技術的問題、検査済証が無い既存建築物のデメリット等を出来るだけクライアントの立場でわかりやすいものと考え作成した。

 1、2階各2区画のテナント入居契約が1月末に全て完了し、1階の南側に既に昨年11月KFCがオープンしている。これから残りの3区画の内装工事が始まる。

  見学会の後、飲食店を借切った懇親会にも参加して交流してきた。参加者の多くはレジデンスのオーナーのようだったが、「すごく勉強になった」「刺激になった」「検査済取れるのがすごい」「頂いた資料を見返して、調べて勉強します」等の感想をいただいた。

 

 

追加工事完了の確認

9月末に完了検査・消防検査が済み、本契約部分の引き渡しが終わった建物の追加工事分が完了したということで確認に立ち会った。

1階南側の区画は、ケッタッキーフライドチキンの内装工事が10月初旬から始まっていて設備工事の真っ盛りだった。1階北側の区画は寿司屋さんと契約締結したそうで、これから内装設計が始まるとのこと。

テナント部分の水道、ガス、雑排水、汚水の引込み(オーナー工事分)

東側隣地境界部分(土地所有者は同じ)

施主と最近できたと言うセイロン紅茶専門店でお茶したが、美味しくて2杯飲んでしまった。また寄ってみよう。

建物の全容が見えてくると、色々な声が施主の下に飛び込んでくるそうだ。「とてもきれいになった」「ここまで直すなら建替えた方が良かったのでは」・・・

建物所有者が岐路に直面したとき選択肢は沢山ある。「建替える」「既存建物を活用する」「更地にして駐車場にする」建替える場合でも「容積率一杯に建て替える」場合も「現状の規模」の場合もある。色々とスタディしてみないと、どの選択肢が、この場所、所有者にとってベストな解決方法か。考える事は山ほどある。これについては、又別の機会に書いておこうと思った。

VBJ「事例から学ぶガイドライン調査~成功事例と失敗事例~」

 7月20日に開催されたビューロベリタスジャパン(VBJ)のオンラインセミナー「事例から学ぶガイドライン調査~成功事例と失敗事例~」を拝聴した。

 東京都建築士事務所協会で準備している書籍のなかで、ガイドライン調査すなわち「検査済証がない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」について執筆を担当していたので、機会があればこういうセミナーを受講している。

 VBJは以前から課題別のセミナーを多数開催しており、このガイドライン調査についてのセミナーも幾度か開催しているようでした。1時間のセミナーの中で説明事項もよくまとめられて手慣れた感じを受けました。

 国交省に届出をしたガイドライン調査をする指定確認検査機関は全国で38社(2022.4.1現在、但し実質業務をしていない会社が数社)あるが、ヒアリングをしてみると同じガイドライン調査でもアプローチの異なる会社も散見します。

 VBJは、国交省が2014年(平成26年)に発表した このガイドライン調査の内容を忠実に履行していると感じていました。

 セミナーで説明していた「Q&A」は、実例を通じて良くまとめられており、こういう「Q&A」も作成してみようかなと思いました。

 さて このガイドライン調査が発表されてから8年経過して、全国での実施事例も概略1,000件を超えているようです。(公表数字ではなく私のヒアリングによる概数)このあたりで日本建築行政会議あたりが音頭を取って事例研究をおこない、ガイドライン調査のバージョンアップを図ってはいかかがでしょうか。

 

 

セミナー「建築ストックの再生と活用・リノベーションの肝と心」

10月7日、中野区内で日本建築家協会関東甲信越支部・中野地域会と東京都建築士事務所協会中野支部共催のセミナーで講師をしてきました。

今年の新型コロナウイルス感染拡大で伸び伸びとなっていた企画でしたが、ようやくオフラインの集まりが開催出来るようになりました。大きな会議室に定員の半数以下の人数で参加者を絞った集まりにしたそうです。それでも雨の中20人程の参加者がありました。

私は、2019年に同様なテーマでセミナー講師をしていますので、今回はそれらに加筆して検査済証の無い建物の増築4件、用途変更2件の事例報告を行いました。

参加者は、習熟した実務者がほとんどで、セミナー後の質問も沢山ありました。

参加者と同じ実務者ですから、セミナーと言うよりは、公開カンファレンスのようなものかもしれません。20人程度というのは規模としては 意外と適正で質問も多くでやすい規模かもしれません。

「検査済証のない既存建築物等における取扱」の改訂検討が進む

検査済証のない既存建築物の法適合性の確認については、平成26年7月に国土交通省より「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況業務のガイドライン(以下、「ガイドライン」)が公表され、指定確認検査機関が調査者になることができることが位置付けられました。

国交省に登録した指定確認検査機関は、31社(平成28年11月28日時点)です。

現在、国交省では「ガイドライン」の改訂に向けて検討が進められているそうです。改訂内容は、チェックリストの詳細化、調査方法、調査範囲の明示、指定確認検査機関の役割の明確化等が行われる予定で、「技術的助言」を発出する予定と聞きました。

これ先立って国交省が平成27年12月に全国425特定行政庁/450特定行政庁にアンケート調査をしたところ、「ガイドラインに基づく法適合状況調査の活用を図っているか」という設問に対して「あまり活用していない」が279特定行政庁65.6%という結果でした。

「活用されない理由は」

  1. 相談された実績事体がない
  2. ガイドライン以外の調査方法で既に法適合状況調査に対応しているため
  3. 具体的な調査方法が明記されておらず、不明確な部分が多い等

弊社は、指定確認検査機関勤務の経験も踏まえて、国交省「ガイドライン」以前から、全国の特定行政庁で個別に調査方法や調査箇所などの打合せを行い「2」の「ガイドライン」以外で直接特定行政庁に申請し検査済証のない既存建築物の増築・用途変更の申請を行ってきました。

一方、大阪府内建築行政連絡協議会(以下、「大連協」)では、「ガイドライン」ができる8年前である平成18年5月に「既存建築物の増築等の法適合性の確認取扱い要領」(以下、「取扱要領」)を制定し、各特定行政庁において既存建築物の増築、改築等を行う場合の法適合性の確認を行っていました。

「取扱要領」は、4回の改正を経て平成27年6月1日改正版が最新ですが、調査部位や調査方法が明確になり、書式等も統一されており実務に則しています。関西圏では、この「取扱要領」が浸透しています。

しかし法適合性チェックや申請手続きなどの具体的運用については各特定行政庁の判断にゆだねられていたようで、特定行政庁・指定確認検査機関の役割分担のあり方を踏まえ、既存建築物の法適合性の確認方法や審査方法における法的課題や審査リスクについて整理・検討が始まっているようです。こちらも来年には、改訂版が出てきそうです。

「検査済証のない既存建築物の増築等」は、「ガイドライン」に沿った「登録指定確認検査機関」しかできないという誤ったセールストークをする審査機関もあるようですが、そんなことはありません。

全国的視野に立ってみると、登録指定確認検査機関による「ガイドライン」調査は、一つの方法でしかありません。

「大連協」の改訂作業は、とても注目しています。

12条5項報告の現地調査立ち合い

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豊島区に提出していた法12条5報告の豊島区建築課職員による現地調査の立ち合いをしました。

築26年の鉄骨造3階建ての建物です。1・2階がアパートで3階がオーナー住居ですが、3階住居専用のエレベーターを設置したいということでした。増築申請が必要ですが工事完了検査済証が無いということで、巡り巡って弊社に相談がありました。

確認申請の副本が保存されていた事、違反部分がなかった事、色々な書類が残っていたため豊島区と打合せさせていただいて構造関係の調査はせずに建築基準適合性状況調査を行い、法12条5項報告書を提出しました。

道路幅員の確認、隣地境界からの建物の離隔距離の確認、内外観の目視・計測等で現地確認をしてもらいました。私の目からみても問題のない建物でしたのでスムーズに現地調査は終了。弊社の提出した12条5項報告書は見本にしたいような体裁とお褒めの言葉をいただき、年甲斐もなくちょつとうれしかったです。

この案件は、調査だけでなく増築申請のための設計もお受けしましたので、珍しく図面も書いています。現地調査が終わり12条5項報告が決済になったら建築確認申請を豊島区に提出できるので、少しピッチをあげなくてはなりません。

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