「トビウオが飛ぶとき」桑原亮子著

 この本は、NHK連続テレビ小説「舞い上がれ!」の脚本家であり歌人の桑原亮子さんが、「舞い上がれ!」の中から選んだ短歌集です。

 ほとんどテレビを見ないので「舞い上がれ!」も見ていませんが、短歌集は字が大きく電車で読むには、うってつけなので、最近は色々な歌人の短歌集を集めています。

 さて特に気に入った短歌を書いておきます。

梅津貴司の第一歌集「デラシネの日々」より

「トビウオが飛ぶとき他の魚は知る水の外にも世界があると」

「支えきれなかった。ごめん。落ちていくバラモン凧の糸の悲しみ」

「デラシネ」とは「故郷を喪失した人」「根無し草」という意味であり、懐かしい言葉に出会った。五木寛之の初期の作品に「デラシネの旗」という小説があった。五木寛之自身のパリ滞在時の経験をもとに、フランスの5月革命を描いたもの。昭和44年(1969)刊行の本だが、青年時代に読んだ記憶がある。当時「デラシネ」という言葉は結構流行っていたように思うのだ。

 自分自身の一生を振り返ると、生まれ故郷に帰る事もなく、ひとつの地域にこだわるでもなく根無し草の人生だったようにも思う。

 短歌というのは、不思議なもので他人が詠んだ歌でも、自分の記憶とシンクロすると過去の情景が浮かび上がり、感情が揺さぶられることがある。

 短歌を詠む一人ひとりが違う人間で、何を面白いと思うのか、どんな言葉を使うのかはみな違うので出来上がる短歌も違ってくる。誰とも違う自分が詠んだ短歌は、ときには他の人の力となる事もある。短歌というのは、本当に不思議な力を持っていると思う。

 この本の中から 最近孫娘に贈った短歌

「君が行く新たな道を照らすように千億の星に頼んでおいた」