借地借家法28条・立ち退きの正当事由

立ち退きの正当事由とは、賃貸人が賃借人に対して立ち退きを求めるだけの合理的な理由のことを指す。入居者に立ち退きを求める際には正当事由が必要である。

立ち退きの正当事由とは、賃貸人(家主)が賃借人(入居者)に対して、賃貸借契約の解除や更新拒絶を行うために必要な合理的な理由のことを指す。

つまり、賃貸人の一方的な都合だけでは賃借人を立ち退かせることはできず、社会通念上、立ち退きを求めるだけの十分な理由が必要とされているのです。この正当事由について定めているのが、借地借家法28条です。同法では、賃貸人が賃貸借契約の解除や更新拒絶を行う際には、正当事由の存在が必要であると規定されています。つまり、正当事由がない限り、賃貸人は賃借人に対して一方的に立ち退きを求めることはできないということです。

借地借家法28条では、正当事由の判断にあたって考慮すべき5つの要素が定められている。

①:賃貸人と賃借人の建物使用を必要とする事情
②:建物の賃貸借に関する従前の経過
③:建物の利用状況
④:建物の現況
⑤:立退料の申し出

この立ち退きの為の正当事由を明らかにするために「法遵法性調査」が判断材料のひとつとして利用されている事は、意外と知られていない。

ここでいう「法遵法性調査」は「建築基準法遵法性調査」とは、その法の範囲や内容が少し異なり、建築基準法と関係規定について「適合・既存不適格・不適合」と逐条別に分類するような一般的なものではない。

借地借家法28条では、正当事由の判断にあたって考慮すべき5つの要素のうち「③建物の利用状況」「④建物の現況」については、より専門的なコミットメントが求められる。

建物の利用状況は、「賃借人が建物をどのように使用しているか」「その使用方法は賃貸借契約で定められた用途に合致しているか」「建物の使用頻度はどの程度か」といった点が判断材料となる。

建物の現況は、建物の老朽化の程度や、大規模修繕等の必要性、また現在の建物が立地地域の標準的な使用形態に適合しているかどうかなどが考慮される。

建物の老朽化が進行し、安全性に問題が生じている場合、建て替えのための立ち退きが正当化される可能性がある。しかし他社の報告書見ると、単に築年数が経過しているというだけで、取り壊し事由と記している場合等もあるが、これでは不充分である。建物の倒壊や設備機器の故障など、具体的な危険性が認められることが必要となる。また、建て替え計画の詳細や実現可能性なども考慮されるとされている。

弊社では、借地借家法28条・立ち退きの正当事由を目的とした「法遵法性調査」を受任している。

賃貸人(家主)・代理人弁護士からということもあるし、賃借人(入居者)・代理人弁護士から依頼されることもある。

賃貸人(家主)からは、賃借人(入居者)を退去させて既存建物を解体し更地にして転売する場合が多い。賃借人(入居者)からは立退料の交渉に利用されることが多いようだ。

「要綱飛ばし」

不動産業界の人が昔使っていた脱法行為の手法の事

現在は、多くの特定行政庁で条令化された「ワンルームマンション条令」。条例化する以前は「要綱」だった時期がある。その要綱について特別区と誓約書を締結し、建築確認申請もその要綱に沿って作成し確認済証の交付を受けながら、実際に作る建物は戸数とか、駐車台数、駐輪台数も異なる建物を建設し、完了させる。

当然ながら工事完了検査済証はない。検査済証がなくても登記できたし、銀行融資も何の問題もなく実行された時代。

私が調べた建物は、SRC14階建ての都内の賃貸マンションで、当時の基準だと計6回の中間検査が必要にもかかわらず、1度の中間検査も受検していなかった。中間検査の受検の有無は、特定行政庁に出向き知らべてもらうと判る。施工は、全国的には名の通っているゼネコン。

屋外階段から道路への避難経路(令128条)がない。建築確認申請図書で避難経路となっている部分は、しっかりテナントの店舗となっていた。火災が起きたらどうするんだろう。

まあ、こんな既存建築物は、今でも都内にゴロゴロしている。

こういう脱法行為を推奨する不動産業者と設計者がグルになっていたのが建設業界。

今頃になってコンプライアンス・コンプライアンスと言われたって、違法部分を見つけるのも直すのも費用とエネルギーがかかる話。構造安全上、避難安全上問題が多い建物は、早く解体した方が世の中の為。

建築基準法が出来てから70数年のうち60年ぐらいは「ザル」だった法律。後始末は、そりゃ大変さ。

既存建築物の法適合性の確認の取扱い@奈良県

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奈良県庁

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丹下健三の香川県庁舎を踏襲したような、戦後モダニズムを彷彿させる建物

 何となく懐かしいというか・・・。

今回は、建物の見学記録(後で建物の写真は掲載)ではなく、仕事の記事。

「遊んでばかりいるんじゃないの」と言われる事があるので

完了検査済証を取得していない建物について、奈良県庁建築課に御相談に行きました。

奈良県は「既存建築物の法適合性の確認の取扱い」というのを

平成25年6月に制定していたので、今回具体的プロジェクトについて打合せをしてきた次第

奈良

これから種々の調査・非破壊検査をすることになるが

法第12条5項報告の提出となりました。

添付する様式は、大阪府のものを参考にしたように思える

それにしても現行法上は12条5項で処理するのが最適と思うが

なかなか やってくれない行政が多いんだよね~

(愚痴)

http://www.pref.nara.jp/3916.htm

プライオリティー(priority) ・・・2

【遵法性調査における調査対象物の選定・・・2   目的・階層】

遵法性調査を 依頼主が本音はどのような目的で使いたいかということにもよるが、

「どのくらいの建物が再建築できるか?」という目的があるとすると、容積率・建蔽率・斜線関係の集団規定チェックが中心になる。

「避難関係に不安がある」というと、防火区画・避難経路・東京なら都安全条例第8条区画。非常用照明・代用進入口等が中心になる。

その場合、どんな建物を優先順位に選択するかというと法第35条の特殊建築物、階数が3以上の建築物だろうか。

階数が3以上だと地下1階と地上1,2階で三層。

地上1,2,3階も三層

ということになるが、

地階が物販店・飲食店というのも要注意である。

竣工後に地階を店舗等に改装して営業しているが排煙設備がない店舗は多い。100㎡以上あっても昔の内装業者さんは、へっちゃらで用途変更など出していないものも多いし、建築基準法など念頭にない方も多かったようだ。

階数が3以上の建築物 では、

実に防火区画の考え方というか実態が多様で感心してしまう。

恐らく竣工後に店舗階段を作り、店舗を縦に広げたのではないかと思われるのだが、階段を作ることで増築や大規模修繕に該当するのではないか?という発想もないようで、ほとんど無届。

昔の中高層建築物で東京都安全条例第8条区画が取れているのが珍しいくらいだ。

まぁ やみくもに調査対象建築物にしても「調査の為の調査」になるから、優先順位をつけ調査件数を絞り込んで、より中身の濃い調査した方が良いということです。

 

 

プライオリティー(priority) ・・・1

【遵法性調査における調査対象物の選定・・・1  検査済証があるか?】

既存建築物の遵法性調査において調査対象が多数ある場合、どういう優先順位(プライオリティー・priority)で調査対象を決めるべきか。

まずは、その建物(あるいは入居しているビル)が、建築確認申請の確認済証を取得しているか、工事完了検査済証を取得しているかという事を調査し仕分けする必要がある。

このことは、遵法性調査に限らず、増築・用途変更・大規模修繕などの場合は、大前提である。

工事完了検査済証があれば既存不適格建築物であり、なければ違反建築物である。

弊社の全国的調査では、既存建築物の半数以上の建物が工事完了検査済証を取得していない違反建築物である。

H12年法改正以降はかなり改善されてきている。

「ストック活用」と言っても、違反建築物を増築・用途変更・大規模修繕することはできない。

違反建築物に違反的内装工事を積み上げている重度な物件もある。

検査済証のない建物の法適合調査を行い適合していれば既存不適格建築物として扱うという事例も増えてきたが、それらを認めていない。あるいは事実上厳しく制限している特定行政庁もあり、またその調査方法論も弊社でも毎回試行錯誤の最中である。

昨今は、賃貸借契約にあたってテナント側から検査済証の有無確認や用途変更確認申請の必要をオーナーに問うところが増えており、コンプライアンス意識が社会的に向上してきている。

今日では、検査済証の無い建物は不動産としての価値(価格)は著しく低いものになる。

既存建築物の増築・用途変更確認申請時における法的手続き状況と必要調査

既存建築物の増築・用途変更確認申請をする際には、既存不適格調書等の添付が必要とされているが、建築主が保有している書類・図面。また確認申請・副本・検査済証の有無等によって必要な調査の組み合わせが変わってくる。

下記の表は、筆者がそれぞれのケース毎に必要調査を整理したものである。個別のケースでは、さらに必要書類・作成図面等が変わってくる。

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*7/12 上図の一部を修正し差し替えました。 

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遵法性調査の対象関係法令

「遵法性調査」と言っても、建築基準法と関係法令は膨大で、法令のどこまでを調査対象とするのか、事前によく取り決めておかなければならない。

  1. 建築基準法
  2. 建築基準法に基づく条例
    建築基準法に基づく条例は地方公共団体が制限内容を定めていて適合義務がある。敷地、道路等の制限、地域地区等の制限、日影規制等多くの項目が含まれている。
  3. 消防法
    火災予防や消防設備に関する事項が定められており、建築基準法と並んで安全上重要な法令。
  4. 建築基準関係規定
    消防法を含め、屋外広告物法・駐車場法・バリアフリー法等確認審査の対象となる法令(全18法律)。
  5. 確認手続き以外の手続きを要する法令
    都市計画法、土地区画整理法、省エネ法、電波法、文化財保護法、ビル管法等に基づく許可・届出等及び地方公共団体が定める条例(中高層建築・福祉・景観等に関する)に基づく届出等。
  6. 要綱・基準・指導等
    地方公共団体が定める条例に基づかない強制力のない指導という位置づけであっても遵守することが望ましいもの。
  7. 業務・営業に関する手続き
    医療法・学校教育法・児童福祉法・大店舗立地法・工場立地法・風営法等に基づく許可・届出等。
  8. 宅地建物取引業法上の重要事項説明義務対象法令
    都市計画法・建築基準法を始め重要事項として説明すべき法令に基づく制限にかかる対象法令(全47法律)。

※5~7は通常オプション調査項目。 ※1の内、法第20条に基づく「構造計算の検証調査」は、オプション調査項目となる。

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建物遵法性調査(建築基準法適合判定調査)の世界

現在、企業のコンプライアンス(法令順守)意識が高まっていると感じる。

遵法性調査で建物の現地調査をしてみて思うのだが、日本の建築ストックには、使い勝手や経済性を優先しての違法行為や法的知識の不足による改修工事、用途変更によって不適合状態になっているものが多く見られる。

また、増改築、用途変更をしようとすると既存の建物に検査済証がないという場合も数多くある。

このような物件は遵法性が確認されないと、売買、賃貸、融資等の不動産取引において大きな損失を背負う。値引き交渉などの裏づけ資料となることも多い。

さらには火災などの重大な事故が起こった場合には企業の存続をも危うくすることにもなりかねない。

遵法性調査は、一般的には確認申請図書等の机上調査と現地調査との両面からの調査が必要なのだが、調査員には実務経験と法的知識が必要である。

実務経験で言えば、例えば壁を叩いてみて下地の予想がつく。熱感知器と煙感知器を見ただけで峻別できる。目視しただけで外壁や床が傾斜しているのではないかと疑いを持つ等など。

建築基準適合判定資格者や一級建築士の資格者が調査にあたるのだが、日本の資格者制度では、資格者=技術者ではなく 資格はあるが実務はさっぱりわからないという人が沢山いる。

指定確認検査機関は資格者は多いが、設計をしたことも天空率の計算、避難安全検証法の計算も、日影図もなにもやった事がない。建物の建設過程を見たこともない人が多く、それらの一級建築士が審査をし、そうした人達が審査実務経験を経て建築基準適合判定資格者に合格すれば建築検査員(通称として民間主事)になっていく。

しかし審査・検査はそれでもやれるというところが現在の確認制度の事務処理たる所以。

建築確認における法的領域は狭く建築基準法と関係規定(消防法・都市計画法等)だけだが、現在の建築プロジェクトにおいて関係する法令は、その何倍もあるのだ。

「建築ストックの再生と活用」をテーマに遵法性調査、法適合性調査の実務をやっていると豊富な設計監理実務経験と関連法や設備関係も含めた幅広い法的知識を持った人材が求められていると感じる。

経験を積んだシニア・シルバーの世代の活躍できる世界が広がっている。

*今、遵法性調査・法適合性調査の出来る次世代の人材を、業務を通じて育成中である。この分野に興味のある人は当社に連絡を