「社会的共通資本」宇沢弘文著

Looking back on 2020

「2020年を振り返る」今年は、英語を使う事が多かった。喋ることは不得意だが、英文メールのやり取りで頭が活性化した。一般社団法人や特定非営利法人等の私企業ではないところとの仕事が多かったのも今年の特徴だ。複数の非営利的事業所が集まって一つの建物を建築するような仕事にも関わりを持つた。

2020年は新型コロナウイルスとの闘いに始まり、今まだ感染拡大の只中で2021年を迎えようとしている。「私・共・公」について考え、コモンを強く意識した一年だった。

そうした中で思い出したのが、宇沢弘文さんの「社会的共通資本」という20年以上前の岩波新書。宇沢さんの晩年・72歳のときの啓蒙書を再読した。

宇沢さんは「社会的共通資本」を次のように定義している。

「社会的共通資本は、一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置を意味する」

宇沢さんは社会的共通資本の重要な構成要素として

(1)自然環境(大気、森林、河川、土壌等)

(2)社会的インフラストラクチャー(道路、交通機関、上下水道、電力・ガス等ど)

(3)制度資本(教育、医療、司法、金融等)-を挙げている。

市場経済(資本主義社会)は「市場」の領域と「非市場」の領域で成り立っている。ところが、主流派経済学(新古典派経済学)はもっぱら「市場」領域のみを分析の対象とし、市場システムの正当性ばかりを強調しがちだ。主流派経済学が新自由主義、市場原理主義の色彩を強めたのも、分析対象が市場の領域に偏りすぎていたことと無関係ではない。

宇沢さんによれば、市場経済制度がうまく機能するかどうかは、どのような社会的共通資本のネットワークのうえで市場が営まれているのかに左右される。市場経済は「市場」だけで成り立っているのではなく、「非市場」という土台を必要とする。そして、「非市場」領域の実態こそ、「社会的共通資本のネットワーク」なのであるとする。

この本を再読して色々と考えが拡がっている。