その昔、社会人になりたての頃のこと
先輩に「意匠設計者にとって一番大事な事、勉強しなければならないことは何だと思う?」と問われて 少し逡巡して「デザインでしょ」と言った。
先輩は、「法規」だよと言った。
これにはガツーンときた。
実は、若い時は法規は苦手だった。大学で建築法規の勉強はしたし法令集は持っていたが、どうも法文が頭に入らず苦手意識が抜けなかった。
社会人になってほどなく担当したのが、ある会社の川崎の寮だったが、都市計画法の開発行為(都計法29条)をしなければならなかった。測量以外の手続きはすべて行えというのが上司の指示だったが、苦手な建築法規だけでなく 一度も見たこともない都市計画法と施行令、開発行為の手引きに悪戦苦闘した。
公園、道路、水路、排水と各担当課と協議を整え同意文書をつくりと毎日のように役所に通い苦労していたが、先輩に聞いても誰も開発行為の許認可をしたことがなく教えてもらえずに役所の担当者に教えてもらいながらの業務だった。多分土木系の事務所に外注した方が経費は掛からなかったと思うが、今考えると良い勉強をさせてもらったと思う。
建築や都市をつくる上で、法規の役割はとても大きい。社会人になればすぐ直面するのが建築法規を理解しているかどうかだ。
大学教育における建築法規は、今も昔も2単位らしい。
知人に聞くと、建築士試験対応の授業内容で演習中心になっているところもあると聞く。常時使用する法令集は昔の3倍(2分冊)ぐらいの厚さになっているから、それだけ関係法も含めて法令が増えたということだろう。
建築基準法、関係規定だけでなく民法、不動産登記法等、もっと広範囲の法令を教養として勉強してきてもらいたいものだ。
若い設計者からは すっとんきょな質問を時々受け面喰う。
「自分の敷地なのに 何で こんな規制うけなくちゃならないんですか?」「非常用照明なんか必要なんですか?」書き上げると疲れてくるからやめよう。
最後に
「建築基準法はザル法なんでしょ」
「建築基準法が悪いんじゃない。使う人たちがザルにしているだけ」と答えるようにしている。
お願いだから大学や専門学校で建築法規をもっと勉強させて。