建築ストックの長寿命化計画

 もともと「長寿命化」という言葉は、文科省が10年ほど前に使い始めたような記憶があります。

 鉄筋コンクリート造の公立学校施設は、従来老朽化の進行に伴い建築後およそ40年ぐらいで改築が行われていましたが、技術的には劣化等の状況に応じて必要な対策・改修等を行う事により、70~80年程度使用することは可能でした。それは民間の建物も同様です。

 長寿命化は、既存建物の構造体を利用する為に、構造体の構築が不要であり、また既存建物の取り壊しを行わないので、それらに係る工事費を削減できます。又排出される廃棄物量も削減されるので改築(スクラップ&ビルド)に比べて極めて安価な工事費で、しかも短い工事期間で実施することができます。一般的には、改築コスト総額の60%程度を上限にすると考えられています。

 またライフラインや建物環境の改善などもあわせて行うために新築(改築)と同様な環境改善を図ることが出来ます。

 鉄筋コンクリート造の場合、第一段階として構造体の劣化状況等の把握が不可欠です。コンクリートの中性化深さや鉄筋の腐食状況、鉄筋のかぶり厚等の状況を確認しますが、耐震診断や耐震補強を実施している場合は、その時の資料は参考になりますが、時間が経過している場合もあり、又耐震診断で調査するコンクリートの圧縮強度や中性化の試験体数は極めて限られている為に、耐用年数評価をする場合は、建物全体にわたっての調査が必要となります。

 建物を改築とするか長寿命化とするかは、個々の建物毎に判断しなければなりません。結局は長寿命化整備とその後の維持にかかる費用が判断基準となることが多いと思います。これには総合的な判断、将来を含めた全体を俯瞰した判断が必要となります。

 弊社では建築ストックの長寿命化計画にあたって、第一段階で耐久性評価と遵法性調査を一体的に進めます。民間の建物の場合、改修計画、リーシング計画、概算工事額の算出、長期修繕計画、事業収支計画を一体的に行います。

 これは今までの私(弊社)の設計・監理経験、建築審査の経験、エンジニアリングレポート等の業務経験等を全て生かせる業務です。

 そろそろ「建築法務専門事務所」という肩書は変更しなければならないかも・・・