「つながる美術館」宮崎浩+プランツアソシエイツ編著

2021年4月にリニューアルオープンし館名を信濃美術館から長野県立美術館に変更した。

その長野県立美術館の設計から完成までのメイキング・ドキュメント。ほとんどが関係者へのインタビューでまとめられている。

この建物は、善光寺本堂への主軸線と隣の東山魁夷館との軸線という二つの軸線を持つ。そして周辺との高低差10mを読み切っている。もともと「ランドスケープ・ミュージアム」というのが このプロポーザルの発注者側のテーマであるが「つながる」美術館というコンセプトで見事に解決している。

この美術館のプロポーザルで、宮崎さんは屋上から善光寺本堂への軸線のパースを書いた。普通は外観イメージを書いてしまうものだが、そうでないもので勝負している。

プロポーザルで限られた図面に何を表現するのかというのは、誰しも悩むところ。

谷口さんの東山魁夷館とカスケード(水庭)を介して独立しているので、それぞれの建物が魅力的に見える。この配置上の距離感は絶妙。

しかもこのカスケードは落差があり、霧の彫刻を展開する中谷美二子氏の「霧」が不定期に現れる。

山肌を覆う霧や雲のごとく。

とても楽しい空間に包まれる。

街路を歩くように美術館の中をめぐることができるので外部空間や内部のカフェ、アートスペース、ミュージアムショップと「つながる」ことができる。

とにかく見どころ満載の美術館。