経済学者の宇沢弘文先生は「ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を安定的に維持する-このことを可能にする社会的資源が『社会的共通資本』である」と定義した。
この表現から国連のSDGs(持続的発展目標)を想起する。SDGsの17のゴールが有機的につながることによって誰一人取り残さない社会が構築され、この17のゴールを有機的につなぐものが、「社会的共通資本」という理論と言われている。
自然環境や電気や水道などの社会インフラ、教育や医療といった制度資本を、現在だけではなく、次世代にとっても社会の共通の財産として守り、持続的に維持管理をしていく。それが、定常状態、経済成長が右肩上がりでなくても成立するゆたかな社会をつくり上げることにつながっていく。
宇沢弘文先生の長女であり、内科医・宇沢国際学館代表取締役の占部まり氏は、
「父は「医療の本質は、サービスではなく信任である」ともよく言っていました。サービスであれば、お金を受け取った分だけ提供するという発想ですが、医師と患者は、「困った状態の時に、患者は信任し、医師に託す。医師はそれを受けてベストを尽くす」という関係にあります。突き詰めて言えば、インフォームド・コンセントも必要がないくらいの人間関係が出来上がることが、一番高い目標なのではないでしょうか。
医師をはじめとする医療集団がプロフェッショナルとして機能していれば、そこにかかる費用は全てカバーし、経済学者はそのためのシステムを作るべきだ」というのが父の主張でした。」と語っている。
https://www.m3.com/news/open/iryoishin/570832
2011年の東日本大震災の時、公営住宅は被災者の受け入れをしたが、旧雇用促進住宅は、2011年12月末の時点で5068戸、1万5千人が入居していた。
仮設住宅は災害救助法により給湯器やエアコン、照明器具、ガスコンロ、カーテンが設置される。
ところが旧雇用促進住宅は同法が適用されておらず、入居時はガスコンロと照明器具しか設置されておらず、エアコンも被災者からの要望で、やっと設置された状況だったと聞く。
2024年の能登半島地震を受けて、各地の公営住宅で被災者の受け入れを開始しているが、常設的な施設を一定程度保有管理し、維持することが必要なのではないかと思う。