「日本史を暴く」磯田道史著

地方巡業の旅で電車での移動が増えたので、合間に少し本を読めるようになった。まぁ大概は寝てるのだが・・

上野駅の本屋さんで見つけて買った「日本史を暴く・戦国の怪物から幕末の闇まで」磯田道史著を読んだ。

帯にある「歴史には裏がある。歴史には闇がある」はインパクトのあるコピーだ。

磯田さんは「毎日、私が古文書のホコリと闘いながら、まことにアナログな手法で、自分で一つずつ集め、日本史のある面を暴いていったものである」と書く。その現場主義、一次資料を確認する研究姿勢が好きだ。

私も既存建物の調査で、いつまで現場主義を貫くのかと聞かれる。現場調査は若い人に任せ、報告書だけまとめれば良いのではないか。報告書を検証する立場でも良いのではないかと言われる。しかし現場に出向かないとわからない空気感がある。同じ年月を経過した建物でもメンテナンスがちゃんと行われているかどうかで、こうも違うのかという事を知ることができた。同じ建物でも地域の管理者の姿勢も違う。紙になった報告書ではわからない別世界の魅力みたいなものに取りつかれている。

流石に10万㎡とかの規模だと体力的に自信は無くなったが、1万㎡以下ならまだ大丈夫なようだ。夏の40度の時期から、気温数度の季節になったが、あの夏の時期に現場調査を行ったので今の寒さぐらいは快適でもある。

さて 磯田さんの本の事に戻そう。

都合の悪い事は古来より文書に残らないもののようだが、奇跡的に文書が残っている事があるそうだ。例えば1811年(文化八年)に奈良県の薬種商が書き残した「関東一見道中記」には、珍しく道中の「女郎」に関する価格と出費、品定めが詳しく書かれているそうだ。それによると大体の相場は六百文・現在の価格で約3万円だったらしい。

聞くところによる新宿大久保公園に立つ女性の相場がホテル代別で2万前後と聞くから、今も昔も相場は変わらないのかも知れない。

江戸後期の庶民の旅費は一日当たり四百文。当時の一文は米価格なら現在の約10円、労賃価格で約50円なので、旅費は一日2万円。これも旅費・宿泊費を含めれば 今とさほど変わらないのかもしれない。

まあ、こんな感じで様々な歴史の裏と闇が暴かれていくのは痛快だ。