「建築の保存デザイン~豊かに使い続けるための理念と実践」田原幸夫著

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現在、京都工芸繊維大学大学院特任教授の田原幸夫さんが、2003年に書かれた本・学芸出版社から発行された本です。

田原さんは、日本設計で歴史的建造物の保存活用設計に携わった後、2003年JR東日本建築設計事務所に移籍して丸の内駅舎プロジェクトを担当されました。

この本は、季刊「ディテール」(彰国社)に連載されていた原稿をもとに全面的に書き直したものと書かれています。

歴史的建造物の保存デザインについて「修復の手法」「置換の手法」「付加の手法」「新たな手法」の四つに分類整理し、世界各地の事例をあげ説明を加えています。

出版から10数年経過していますが、全然内容が色あせていない本です。

『「保存」においても「復元」においても、決して歴史をごまかしてはならないのである。そして歴史を正しく表現するなかから、本物の環境が形成されてゆくのだと思う。そこにこそ「保存デザイン」の目指すべき原点があるる』という田原さんの指摘は、今とても重要な指摘だと思います。

この本は、田原さんがベルギーのルーヴァン・カトリック大学コンサーベーションセンターにベルギー政府給費生として留学されたからだと思いますが、ベルギーの保存デザインの事例が多く紹介されており、ベルギーで保存活用の建築物を見る場合の参考になります。