東洋大学客員教授の天神良久先生の三部作
天神先生は、工学部とか建築学部で教えているのではなく東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻とのこと。
2013年に国が「インフラ長寿命化基本計画」を策定し、総務省が自治体に「公共施設等総額管理計画」の策定を発令した。各自治体での対策の主要な柱は、「延床面積の総量圧縮」「長寿命化」「財源確保」「広域連携」を揚げている。
本書では建物の「長寿命化」とは、60年の建て替え周期を80年~100年間利用する施策だと記載してある。それには個別具体的に耐用年数を評価することが必要で、それともうひとつは遵法性調査であり、計画のファーストステップは、この二つを同時並行的に進めるべきだと私は思っている。
最近都内の地方自治体が策定した学校施設の「長寿命化計画」を見ていたところ、老朽化対策の検討に当たって「日本建築学会が示す鉄筋コンクリート造の物理的耐用年数60年を参考とし、おおむね築60年から築65年を目安に学校施設の老朽化対策を実施する」と記載してあり、結局のところ60年から65年程度で改築するという方向性に持っていっている。なんとも教科書的な方針だと思った。こりゃ施設参謀が頭でっかちではないかと・・・
さて この三冊の本には、主として公共施設の長寿命化例が豊富に紹介されている。既に旧知の事例も多いのだが、VFM分析の視点からのアプローチなので参考になる。
なんといっても建物の長寿命化の利点は経済合理性だ。
既存建物を解体し新築する(改築)するときの再建築価格(設計監理費、工事費、解体処分費等)と長寿命計画による大規模改修コストを比較して何割程度で出来るのかどうかが問題で、その割合が小さいほどVFMが高いと判断できる。
リノベーションとかリフォームとか部分的なものではない総合的視点に立つ「長寿命化計画」が、これからは求められているのだろう。