既存の建築物の「用途変更」は、ちまたに建築基準法違反の案件がゴロゴロしているなかで中々厄介な問題を秘めている。
あるビルの所有者からの相談
新たに中古で3階建ての飲食店ビルを買ったが、よくよく調べてみたら、そのビルの2階と3階の用途は「事務所」で建築確認申請を出してあり完了検査済証も取得している。2階、3階部分は現在「飲食店」で使用されており用途変更確認申請の手続きはしてなかったようだ。
消防の検査は受けているので、防災設備は法に適合している思うが、後出しで用途変更の確認申請が出せるかという内容だった。
オーナー曰く「法は遵守したい」と・・・よくよく聞くと、ビルを新たに飲食店として借りたいというチェーン店から用途変更が出ていないのはまずいと言われ動き出したとのこと。
用途変更申請そのものが忘れやすい(意図的に?)手続きらしく、店舗の内装が完成して消防に防火対象物設置届を提出しに行ったら、「用途変更は出したの?」「出さないと営業出来ないよ」と言われ慌てて相談に来られたことがあった。
行政や消防に連絡をとり状況を説明して「良いことをするのだから」と説得して「後出し用途変更申請」を受付けた事例は、指定確認検査機関に勤務していた時にあった。
今回の事例は、長い年月のあいだ「手続き違反」が放置されていた建物の「後出し申請」(実態違反は調査してみないと結論を出せないが)
たぶん行政に相談したら 以下のような回答があるのではないか。
- 確認申請完了時点の状態に復旧し、それを確認検査後、用途変更申請を受け付ける
- 次回の確認申請(増築・用途変更等)の時点で、既存が適合であることが証明できれば受け付ける
これはこれで至極ごもっともな見解ではある。
1,については、 今更、一旦事務所にもどすなど、無駄な工事費をかけるなんて非経済的と所有者は言うだろうし、中々納得はしないだろう。
2,については、当分新たな建築行為・用途変更の予定がない場合はどうするの? 違反建築物を放置していても良いと言うようにも聞こえる。実態違反が少なさそうだったら、当面は執行猶予状態だと行政は言うのだろうか。
関連の条文を調べたのだが、用途変更確認申請に関しては、いまひとつ申請時期が明確ではない。 用途変更確認申請は、法第6条等の「準用」だが、 用途変更においてはそもそも「建築等の工事を着手する前に」に該当する部分がないので、 後出しの確認申請が有効と考えることも出来なくはなさそう。
確認申請・完了届をせずに「使用」しているわけだから、 建築基準法違反で罰則に該当することは明白だ。 それでも罰則を覚悟した上で、確認申請を後出しするということは、見上げた心がけと言える。
手続き上も実態上も適合状態にする=「良いことをする」のであるから「後出し申請」に、行政が弾力的に対応してくれれば 世の中から違反建築物は少しは減ると思うのだが。