既存建築物の図面復元

 既存建物の遵法性調査やリノベーション、レイアウト変更を行う際、新築時の図面が全部または、一部しか残っていなかったり、当時の図面と異なっていることがある。

 不動産が流動化する時代では、既存建物の図面、図書等整備も資産価値を下げない一つの要素である。

 現状を実際に把握しないと方針は決まらない。とにかく図面がなければ次の展開には進められない。

 検査済証があろうが、無かろうが、既存建物を活用しようと思ったら「まず調査」から始めないといけない。実際には一度ならず追加調査が必要だったりする。そしてその調査の野帳は、自分だけでなく他人が判別できるものでなければならない。それには一定のレベルの人材による作業が必要である。

 実際の図面復元は、アナログの極致で平面・断面・立面の各部位を実測し野帳図に書き込み、写真や動画を撮影して、現在ではCADで作図する。図面の復元と言っても意匠、構造、設備、電気等 どこまで復元するかによって人手と費用は大きく変わる。

 

 上記の2枚の画像は、10年近く前だが木造家屋の調査で私が担当した断面野帳。フリーハンドでも、他の人が見て判りやすい野帳にする必要がある。

 もっとも最新鋭技術で、建物全体を3Dデータ化することで、3DCAD上で建築図面を再現することができるそうだ。まあ高額なので中々一般には普及しないとは思うが。

 一方で図面復元をしたことを、ことさら「すごいでしょう」と吹聴したり、過大評価する第三者がいたりするから世の中面白い。図面復元をしたことがない人達からしたら大変な業務なのかもしれないが、古民家や木造住宅、社寺仏閣のリノベーションの世界では当たり前の作業。

 筆者も学生時代から伝統建築物の調査や図面復元に関わっているので、汗をかきかき灼熱の天井裏で調べたり、狭くてかび臭い床下にもぐり調査したり大変な作業であることは間違いない(尚、最近は体積が多くなり過ぎたのと加齢のため、小屋裏、床下の調査があっても若い人にお願いしている)が、だからといって全体を指揮して調査し図面を復元するのは苦にはならない。

 現場に行くこと、汗をかく仕事を避ける設計者もいるようだが、古来より「現場に神宿る」と言われている。歳をとっても、それだけは譲れない。

RC構造体の耐用年数評価がでた。

かねてより依頼していた既存鉄筋コンクリート建築物の構造体の耐用年数評価(ドラフト版)が(財)日本建築センターから送られてきた。(財)日本建築センターに設置する「既存建築物の耐用年数評価委員会」(委員長:宇都宮大学名誉教授 舛田佳寛)において確認されているとある。

評価書によると調査時点(コア試験体採取年=2023年)からの推定耐用年数は80年。

既に築年数44年の建物だから竣工時からの推定耐用年数は124年。予想していた耐用年数より寿命が長い。

先に耐震診断の結果も出ていて、構造耐震指標が一番低い1階のX方向でIso=0.96あった。層間変形角1/250での目標値Iso=0.6を超えており、安心していたところだった。

構造体としては、とても良い状態の既存建築物だとわかった。同時に幾つかの問題点も判明しているので部分的な改善工事をしなければならない。

調査をして既存建物の潜在能力(ポテンシャル)がわかり。それを生かす方向でプロジェクトが進んでいく方向になってきたことは、調査者・設計者としてとても嬉しい。

塗装のタッチアップ

6/26にコンクリートコアを採取した現場の塗装タッチアップに朝から立会

塗装屋さんも、足場鳶も、コア採取業者も自分で手配しているので現場に立ち会わなければならない。

パテ処理をして塗装

この日、都心は36.5度。朝から暑い一日だった。

通常はたまにしか外に出ないので、陽を浴びてビタミンDを生成しなければ

朝8時30分には、塗装屋さんが来ていて外壁の色と色合わせをしていた

塗装する場所を一通り案内して、1時間あまりで完了

職人さんがいて我々の調査や設計の仕事が

成り立つのだぞえ

耐用年数評価の為のコンクリートコア採取

蒸し暑い一日だった

耐用年数評価用+耐震診断用のコンクリートの中性化、圧縮強度を

調べるためのコンクリートコア等を採取した。

ちょつと声をかけたら見学者が6人、皆真剣に作業を見守っていた

2階の外壁部分からコアを採取する為に足場を建てた

未確認部分だった1階屋根の部分には、

図面には設備基礎が書かれていたが無い事が判明した。

鉄筋クロス部分を露出させて発錆状態を確認

コンクリートかぶり厚は、5cm

外壁側2cmの増し打ち、打放コンクリートの上に外壁塗装という事を確認

フェノールフタレイン液を噴霧して、中性化状況を確認

これが全部で5箇所

圧縮強度+中性化試験の他に塩化物調査用、含水率調査用を別に採取

夜7時まで延長して全てのコア抜き、斫り調査は終わったが、

コア抜き箇所の無収縮モルタル詰めは翌日の午前中作業となった。

現場主義を貫きファクトに向きあうと得るものも大きいが、

身体には応える

それでも この案件の大掛かりな現場調査は無事終了

耐用年数評価・耐震診断・耐震補強計画・改修計画に進む

耐震診断の為の図面照合と重量物調査

今日は耐震診断の為の図面照合調査でRC壁の開口寸法の調査

上記の写真のようにRC壁を貫通してるダクトや配管等も調べる

併せてコンクリートブロック壁の配筋調査。

CB壁の鉄筋探査はボッシュの簡易測定器で

全ての内壁のブロック壁は有筋だった

その他設備機器類の基礎を計測、体積計算をした。

これらの調査野帳を整理しCAD図に記載して構造事務所に送らねばならない。

今日の調査の弁当は、のり弁山登りの「大漁」

鶏肉、鮭、竹輪等が容器にみっしり

クライアント、調査員らと、本日も和気あいあいと、

だが食べている時は黙々と食した

耐用年数評価の現地調査

鉄筋コンクリート造の既存建物(築43年)の実質耐用年数評価を日本建築センターに依頼した。その現場調査を行い実際にコンクリートコアを採取する箇所等を現場で決めた。

上記の写真は、鉄筋探査機(電磁波レーダー)で鉄筋のかぶり深さを計測しているところ。この箇所は5cmと計測できた。

赤い紙テープは鉄筋の位置

内部の空調機械室

この日は、日本建築センターから3人、非破壊検査会社から3人、弊社、クライアントが調査に参加。

コンクリートコアは圧縮強度試験、中性化試験をする他、塩化物調査用、含水率調査用、じゃんかがある箇所、両面打放コンクリートの箇所等、耐久性調査だけでなく建築病理学的に興味がある箇所も抜くことにしたら、凡そ30カ所になった。こうした調査の際に建築病理学的な見地からの調査を加味すると後学の為の資料が蓄積できる。

築43年の既存建築物をあと20年利用したいという場合は、この実質耐用年数評価・調査はしなかったかもしれない。43+20=63年なので建築学会でいう一般的なRC造耐用年数60年~65年に相当するから。だが30年~35年というと43+30=73年~78年なので、対外的なエビデンスとして必要だろうと判断しクライアントに説明し了解を取り付けることができた。

クライアントの担当部長説明から始まって、社長・役員・技術顧問が並ぶ中で必要性をプレゼンした。ここに至るまでには結構隠れた苦労があるのです。

斫り箇所の中性化状況の確認は5箇所だけ、非破壊検査会社の人は現場での中性化試験はやったことがないというので、アナログ経験者である私がやることにした。

フェノールフタレン液だけは、新しいものを買ってこよう

そういえば何年か前に、現場での中性化試験をやったはずと思い、自分のサイトを検索してみた。8年前にやってました。

この記事を書いたら、「大田区の町工場の親父(社長)みたいだ」という最高の誉め言葉をもらったのを思い出した。

これに追記するとコンクリート粉を飛ばすエアダスターと、濡れた場合の為にぼろ布が必要だったはず。準備せねば。

現場でのコンクリート中性化試験は科学の実験みたいで楽しいですね。

正確に記しておくと現場での中性化試験は、コンクリートを斫り鉄筋を露出させて、その腐食状況を確認するのが第一の目的。日本建築学会「建築保全標準・同解説IAMS3-RC」によれば、鉄筋の腐食グレードと腐食状態は5段階あると書かれている。

耐震診断のための現場確認

鉄筋コンクリート造の既存建物の耐震診断をするにあたって、構造事務所と一緒に現場確認をした。

外部・内部の劣化調査は既に済ませてあるが、これから耐震診断のための「図面照合調査」(既存図面と現況の主として壁種別の確認、壁開口の大きさ確認、実測)をする為の下見。

耐震診断業務も調査から計算まで一貫して依頼出来る会社もあるが、現在弊社で検討している耐震補強設計の技術的難易度が高そうなので、対応できる構造事務所と弊社で手配する調査チームの共同業務にした。

RC壁でも写真のように上部にダクトが貫通していると右側部分は耐震壁として評価できず、左側のみの評価となる。現地調査をして図面に壁種別と開口寸法を記載していく調査。

屋上には、何のための基礎だったか良くわからない基礎が残っていたりする。こういう設備基礎の類も実測しなければならない。これを「屋上重量物調査」という。

建築・設備を含めた竣工図が残っていない既存建物、長い期間の間で更新されて変わってきた設備類の記録が整理・保管されていない既存建物は、まことに手間がかかる。

既存建築物の活用では、こうしたアナログ調査が不可欠で、身体を使い汗をかく。こういうところが敬遠される所以なのかもしれないと思うこの頃。まあ爺さんは楽しみながらやっているが。

配筋検査

工事監理中の現場で配筋検査兼諸打合せ

確認申請図書で柱脚埋込式になっていたのに内部を解体したところ柱脚露出形式になっていたので構造解析し柱脚根巻形式に改修中。

以前調査の為に掘削した土間スラブも配筋し、コンクリート打設は柱脚と同時期に施工

工事看板類がA3版程度の大きさで掲示されていた。

この日は気温29度になったとかで、外にいると溶けそうだった。

既存建物の「負のオーラ」

 人間の場合、「負のオーラ」とは一般的に、「ネガティブな印象や雰囲気」のことを言います。 周囲に暗い雰囲気やマイナスな印象を与えてしまうので、負のオーラを放つ人は周囲からは敬遠されがちです。 考え方がネガティブな人は、負のオーラが出てしまうと言われています。


 既存建物も「負のオーラ」を放っているものがあります。それを感受するかどうかは個人差があります。


 そして、それらの多くは事故物件でもあります。既存建物調査の際に「事故履歴」が添付されてくるものがありますが、ほとんどが「事故履歴無し」と記載されてきます。

 しかし弊社では一応「大島てるの事故物件サイト」で確認をすることにしています。すると書類上は「事故履歴なし」という建物でも「自死」「殴殺」「焼死」「孤独死」「飛び降り自殺」等などがあったりします。

 既存建物から「負のオーラ」を感じる人は感受性の強い人、霊感のある人で、私は鈍感な方ですが、妻は霊感が強いので最近は既存建物の室内には極力入らないようにしています。

 鈍感な私でも今までいやだなと思った既存建物は幾つかあります。

 長年放置された地下室の照明が全くない空間。とある工場の用地取得でオーナーに同行した時、うっそうとした樹木の中に古い蔵と墓場があった。敷地内に墓場あるところは西日本では結構見られるが、「近づくな」と言われているように思ったこと。

まあ思い起こせば結構あるかな。

「負のオーラ」を感じたら「正のオーラ」を受容して中和しなければならない。

神社に御参りして清浄な空間に包まれるようにしています。



マムシ

既存建物の調査で、周囲が田であったり、川べり、農業水路がまわりにある立地がある。敷地の外周部を歩いて写真を撮っていると雑木林に「マムシ注意」と書かれていたころもあった。

敷地内でも草刈りをしていないと夏場は結構草も伸びるので藪となる。

受水槽やポンプ室まわり、浄化槽、敷地外周部なんかの周りは、草むらになっている事も多い。

聞くところによるとマムシの子育ての時期である8~10月はマムシも攻撃的になっていて特に用心が必要とか。

基本的にはこちらが近づきすぎない限りは向こうからは襲って来ないとは聞いたが、調査箇所が草むらに覆われていると入っていくのも躊躇する。

ということで、膝まである長靴を用意したのだが、今のところ出番はない。

デジカメ達

調査用のデジカメ達

上左:CASIO、上右:CANON

中左:NIKON、中右:SONY、右:GOPRO10

下2台:FUJIFILM

デジカメは守秘義務の徹底の意味もあり、画像の外部流出防止とアスペクト比の統一、画像サイズを統一するために、協力してもらう調査員にもこれらのデジカメを貸与している。

ひとつの報告書のなかでアスペクト比とかが統一されていない画像は見苦しい。

現在使用中なのは、この国産の6台。それぞれスペアの充電池を複数所有、メモリは32Mカードにしている。

ほとんど中古というか売れ残っていた商品で、確か現在国産カメラメーカーで製造を継続しているのはSONYだけかと。また製造を復活して欲しい。

中国産の安いデジカメも売っているが、接写のピントが甘いらしい。エレベーターの点検証とか消火器とか各種設備機器の製造年月日ラベルとか撮影するので、安ければ良いというわけでもない。

1回の調査で1000枚/台ぐらい撮影することもあるのでデジカメの消耗は激しい。

GOPRO10は、建物全体とか屋根等の高所を動画撮影したものを静止画にして報告書類に利用することもある。後で調査対象の連続的な状態を確認するのに役立っている。

デジカメ達に感謝して 手入れをする。

地方巡業の旅 -10

今回は、地方巡業の旅の番外編・スピンアウト的な事を書いておく。

それは「兵站」(へいたん)について。

兵站は軍事用語で英語でMilitary Logisticsというのだが、戦闘地帯から見て後方の軍の諸活動・機関・諸施設を総称したもので戦争において作戦を行う部隊の移動と支援を計画し、また、実施する活動を指す用語。兵站には物資の配給や整備、兵員の展開や衛生、施設の構築や維持などが含まれるとされる。

既存建物調査も単体ならば、さほど頭を使う事はないが、地域が分散し複数の施設を調査し報告書を作成していく場合は、その移動方法、宿泊先、日帰り入浴先、食事、持参する調査道具や着替えなど、結構頭を使う。

以前は車の利用度合いが多かったが、最近は歳ともに公共交通機関+車という移動手段に変更した。

弊社の場合は「兵站」を総括しているのは妻で、公共交通機関で調査地点近くまで移動して車をレンタルする時間から、宿泊先となるホテルの選定、調査箇所への道筋、食事をする場所(出来るだけホテル)と詳細な実施要領が事前に提出される。しかも金銭の精算も一元化している。おかげで私は調査の事前調査と報告書作成に専念できる。

この「兵站」は、あまり重視されないかも知れないが、弊社が現在行っているエンジニアリングレポートの一部を支援する既存建物の劣化調査と遵法性調査においては、地域が分散した多数の調査対象を計画的に実行していくには欠かせないものとなっている。

仕事には思いがけない副産物もある。

ひとつの県でも、行った事がなかったところが圧倒的に多いし、その地域の雰囲気を垣間見ることができた。宿浜施設や日帰り入浴施設にも詳しくなった。こうして記録を残しておくと後々役に立つ事もある。

空調服

【画像は参考例】

真夏の調査は、熱中症対策がかかせない。

兵隊・士官・司令官とその時々で位置を切り替えるが、

やっぱり現場は面白い。

この夏、職人さんたちが着ている「空調服」を用意した。

腰のあたりに換気扇をつけるタイプの半袖の作業着

妻に、ペアルックにしようと言ったら断られた。

彼女はベストタイプのものを選択した。

中々快適である。

バッテリーが3時間ぐらいしか持たないので、

スペアバッテリーが必要かもしれない。

外目には、服が膨れ上がってハイパーおデブさんになる。

安藤忠雄の建物のコンクリートコアを抜いてみたい。

専門業者に依頼しているコンクリートのコア採取。部位別に鉄筋探査を行い、鉄筋の無い部分からコンクリートコアを採取し、検体を指定検査機関に送付し、コンクリートの圧縮強度試験、中性化試験をしてもらうのだが、最近は専門業者さんの現場調査に付いて写真を撮影するのは、妻の任務にしている。

妻は建築の専門教育を受けてきたわけではないが、私のほとんどの既存建物の調査や視察に同行しているので、そんじょそこらの建築士よりは建築に詳しく、感覚的に感想を語る。

この日も、今日のコンクリートは「あまりよくない」と言う。確かにそうだ。

以前調査した、あそこの現場のコンクリートはきれいだったと言う。その現場のコンクリートは築28年だけど37N/mm2あった。確かに、きれいなコンクリートコアは強度がある。

以前視察した安藤忠雄の建築について語りあう。

私「安藤さんの大きな建物は、やたらと歩かされて方向感覚がなくなることがあるから、そこは僕は嫌い」と言う。

妻「でも安藤さんのコンクリート打ち放しはきれいだったね、安藤さんの建物のコンクリートコアを抜いたら、とっても美しいコアが採取できるのではないか」と言う。

妻「一度コアを抜かせてもらいたい」と。

飾っておきたいようなコンクリートコアが採取できて、もしかしたら商品化できるかも知れない。「住吉の長屋45」とか。まるでスコッチウイスキーみたいだねと笑った。

この日、コンクリートコアを抜きに来てくれた専門業者の若い職人さん達と一緒に昼食の弁当を食べる。若い職人さんたちの話が聞けて楽しかった。

若い職人さんからスマホの「電子小黒板アプリ」の存在を教えてもらった。

責任者の人が、まだ新入社員の人に鉄筋探査機の使い方やコア採取後の無収縮モルタル(今はすでに配合された商品がある)の水分量、固さの確認方法等を口伝で教えていた。まだ30代だという責任者の人は、左官屋さんを見て自分の感覚でモルタルの固さを覚えたという。穴埋めと言っても結構難しい。素人がやると水分量が多すぎたり、埋めた後に凹んだりする。技術の継承と言うのは、やっぱり口伝なんだろうなと思った。

相続税の小規模宅地等特例

2020年のコロナ僻の頃から、住宅系の相談が増えた。
親と同居する、子供の家族と同居するので古い建物を増改築したい。ついては検査済み証が無いので調査して、申請後に検査済み証を取得したい。そうした相談が多くなった。

検査済証のない既存建物の活用には、三つのハードルがある。ひとつは法律のハードル、二つ目は技術のハードル、三つ目は資金のハードルがあり、それらを乗り超えて成就できる案件は 必ずしも多くはない。

戸建て住宅の中で、既存建物の活用が増えているのは、コロナ僻で在宅勤務が増えたという事だけでもなさそうで、詳しく聞いてみると相続税の小規模宅地特例というのがあって、不動産の評価額を80%下げることができ、その分相続税を下げることができるそうだ。この特例を活用するには、相続する人が配偶者か、同居していた親族か、持ち家のない親族である必要があり、同居については結構厳しく判断されるとの事だ。

同居していた。というのは下記の4つの観点から判断されるとあります。
1.日常の生活がどんな状況だったか
2.相続人が家に同居した理由
3.家の構造や設備の状況
4.相続人が、ほかに生活の拠点となる場所があるかどうか

普通に親と子供が1つの家で、一緒に暮らしていた場合は同居として見なされます。

二世帯住宅で一緒に暮らしていた場合は、同居として見なされる場合と、見なされない場合があります。その違いは、住宅の構造ではなく、登記の仕方にあります。登記には2種類あり、共有登記と区分所有登記があります。共有登記は一棟の建物の中で割合を決めて複数人が一緒に住む形態の登記です。区分所有登記は、一棟の建物の中で区分を分けて複数人が一緒に住む形態の登記です。このうち、共有登記は同居と見なされますが、区分所有登記は同居と見なされないのだそうだ。

検査済証の無い建物を子供に相続させたくない。そうした親心が大きく働いているのだなぁ~と思った。





ボッシュ電動工具 総合カタログ2021

ボッシュの電動工具・総合カタログ2021を貰って来た。最近は、こういう生産に直接関わるパンフレットやカタログを見るのが楽しい。

レーザー距離計・電動ドリル・オートレベル・下地探査機等 いつのまにか調査用の機器が揃ってきた。たぶんちょっとしたDIYもできる道具達。

とにかくボッシュの電動工具。沢山種類があって悩む。販売員に聞いても要領を得ないし。工具を実際に使っている職人さんに色々聞くんだが、お店にもそういうコンシェルジュを配置してもらいたいものだ。

その昔 東急ハンズには、分野ごとのスペシャルリストのような詳しい販売員がいて感心したし、品ぞろえもオタクぼっかったが、今は特徴が無くなった。

鉄筋探査

鉄筋探査は、コンクリート構造物の鉄筋の配筋状態・かぶり厚などの調査を、構造物を破壊せずに行います。施工管理状態の品質確認や改修工事・耐震補強工事などの際に鉄筋切断や埋設物の損傷事故を防ぐために事前調査として使用されます。

測定原理としては「電磁誘導法」と「電磁波レーダー法」によるものが主流です。

既存住宅状況調査技術者 講習テキスト等でもさらっと紹介されていますが、RC造やS造等の特殊建築物の調査の場合は、もう少し詳しく特徴を把握しておいた方が良いと思います。

「電磁誘導法」とは
試験コイルに交流電流を流してできる磁界内に、試験対象物を配置する試験方法によりコンクリート構造物内の鉄筋位置やかぶり測定ができます。
また、機器の種類によっては鉄筋径の推定も可能です。特徴としては、コンクリートの湿潤状態や品質等による影響を受けないため、かぶりが比較的浅い場所では非常に有効で、浅ければ浅いほうが分解能も良く確実な探査が可能です。

橋梁上部工の鉄筋探査・建築物のかぶり厚検査・コア抜き・耐震補強のアンカーを打つ位置の確認等に適していると言われています。

「電磁波レーダー法」とは
電磁波をアンテナからコンクリート表面に向けて放射することにより、コンクリートと電気的性質の異なる物質である鉄筋や空洞等との境界面で反射され、機器の受信アンテナの受信に到るまでの時間から、反射物体までの距離を知ることができます。
平面的な位置は、機器を移動させることにより、位置情報を得ることができます。

特徴としてはコンクリートの湿潤状態や品質等に影響を受けやすいため、比誘電率をキャリブレートすることで鉄筋かぶり厚の精度を高めることができます。電磁誘導法より精度面は落ちますが、かぶりが厚い場合には有効な手段です。

コンクリート橋脚・大型コンクリート建造物等の耐震補強工事・改修工事のあと施工アンカー工事等に適していると言われています。

以上のように建築物では鉄筋の位置、かぶり深さを非破壊で調査することは可能ですが、鉄筋の太さを確認するのは 一部コンクリートを破壊しないとなりません。

既存の地中梁とかフーチングを丸ごと探査して位置・かぶり深さ・鉄筋径を3Dで結果表示してくれる機械があればなぁ~といつも思っています。

デジタル検知器

RC造やS造の配筋状態を調査する場合には、高精度の機器がある専門業者に依頼しているのだが、配筋の有無だけを調べたいときはデジタル検知器を使用している。

このデジタル検知器は、壁うらの鉄筋、非鉄金属、通電線、間柱、同縁を探知可能で
最大測定深度:金属:120mm、非鉄金属:80mm、通電線:50mm、木材38㎜なのでまあまあ使える。

上の写真は、ブロック塀の配筋状態を探査している。テープを張っているところが鉄筋が探査できたところ。

上2枚の写真は、軽量鉄骨造の鉄筋ブレースの有無を調べている処

このデジタル検知器は、住宅関係では布基礎の鉄筋の有無などの調査や壁筋違の有無などを調査する時に使われていると聞きますが、特殊建築物の基礎的な調査でも結構使えます。昨今は、簡易的な調査用機器が手頃な価格になってきて助かります。

調査現場での衛生管理

多数の人間が集中して調査を行う現場には、業務調査責任者とは別に衛生全体を指導する衛生管理者を配置している。コロナ感染リスクは長期間継続すると思われるので、こうした衛生管理の徹底を図っていきたい。

上の写真は、さる調査現場で説明した厚生省手洗いの手指の2回洗いの推奨。手洗い前と手洗い後の細菌数の調査では、1回洗いだと50%程度しか減じないが、2回洗いで90%程度まで減じる調査データがあるそうです。

手洗いには、ミューズ石鹸、消毒液、手拭き用ぺーパー、アルコール綿、専用ゴミ袋等を配置した。

トイレ使用時の説明、人-物感染防止の徹底。共用トイレでの人-物感染リスクが高いらしいが、あまり重視されていないとのこと。

弊社では、所有していた無水エタノールに精製水を加え消毒用エタノールを作っている。無水エタノールも現在では価格が高騰。平時の5倍ぐらいになっている。

ゴムラテックス手袋の装着を推奨、使用済みマスクや手袋などは専用のゴミ袋を用意。マスクは一日に何度か取り換えるように推奨している。マスクの価格は落ち着いてきており、市場に出回りつつある。

ゴミは分別

鉄筋検査(監査)

久しぶりに鉄筋の検査をしました。配筋検査ではなく、工事現場事務所で書類上の検査(監査)です。

鉄筋の場外加工の場合、問屋から出荷された鉄筋は加工場に搬入されます。そして加工場で加工された鉄筋が、後日工事現場に搬入されます。

通常受入検査時に工事管理者(現場監督)は、下記の点を確認します。
・メタルタグに記載の製造番号とミルシートに記載の製造番号が一致しているか。
・ミルシート記載の鉄筋の規格、径、長さ、本数などが設計図書と整合し間違いなく搬入されているか。
・ロールマークより鉄筋の規格、径、メーカーなどを設計図書と確認する。

ようするに、頼んだ鉄筋が間違いなく納品されているかの確認・検品作業です。

検査員は、これらが書類として整理されているのを確認するのですが、鉄筋検査は久しぶりだったので写真で整理されていた書類のロールマークの見方を忘れていました。でも写真を見ているうちに思い出してきました。検査予習は常に必要です。

上記の写真の見方は、D25、東京鉄鋼、SD345です。

住宅医に認定されました。

1月23日、一般社団法人 住宅医協会の住宅医検定会に臨みましたが、本日2月5日認定通知が届きました。

これから正会員登録をして正式に住宅医となります。

検定会の講評等で寄せられた意見・質問には、この場で回答したいと思います。

たぶん住宅医検定会に参加した人にしか、解りづらいものとなるかも知れませんが御容赦ください。


【Q :  リノベーション物件の不動産としての資産価値については どのように考えていますか】

【A :  既存建築物の検査済証の無い建築物は、建築基準法の集団規定が違反していなければ現在のところ購入の際に銀行融資は可能のようですが、既存建築物を売却したい場合「検査済証」が無いと買い手が中々つかないようです。買い手がついても売却希望価格よりかなり低減されると聞いています。本件のように検査済証の無い既存建築物を増築し全体として工事完了検査済証を取得して適合化することは、資産価値(価格)の下落を防ぐことができます。】


【Q  : 既存との一体増築ではなくEXP.Jにより構造的に分離することにした理由を、もう少し詳しく説明してください。】

【A : これは「増築等に係る制限緩和の主な条件(令第137条の2関係)・出典 東京都荒川区」PDFを見てください。kanwa-joken

本件は「増改築部分の床面積が既存部分の1/2以下」ですが → 「増改築部分の床面積が既存部分の延べ面積の1/20以下かつ50㎡以下又は大規模の修繕・模様替」ではありません。50㎡以下ですが1/20を超えています。 → 「増改築後に法第20条第四号となる建築物」とはなりません。軒高が9mを超えています。 → 「増改築部分と既存部分が構造上分離」ここで一体増築と分離増築の分岐点となります。一体増築なら既存部分は、現行法の「耐久性関係規定」に適合させなければなりません。分離増築ならば既存部分は「地震に対する耐震診断+暴風積雪に対する許容応力度計算」となります。

本件は、平成9年に確認済証取得で今回実施した建築基準適合性状況調査により適合しており新耐震建築物なので、既存部分の暴風積雪に対する許容応力度計算を実施しました。

一方、一体増築の場合は既存部分と増築部分を現行の耐久性等関係規定に適合させ地震+地震以外の構造計算を行わなければならない規定になっています。また既存は構造計算ルート2の建物ですから全体として構造適判の対象となることを避けました。増築部分は軒高を9m以下にしてXY方向ともルート1で構造計算を行いました。】


【Q  : 検査済み証の無い建物の増築にあたって「ガイドライン調査」ではなく「法12条5項報告」で行った理由をもう少し詳しく説明してください。】

【A :  平成26年7月に国土交通省は、既存建築物の建築当時の法適合状況を調査するためのガイドラインを公表しました。調査者は、国土交通省に登録した指定確認検査機関のみに限定しています。この通称「ガイドライン調査」は、法的根拠がない任意の制度です。そもそも指定確認検査機関は、特定行政庁の確認事務をおこなっているにすぎません。法第6条の2第8項に規定されているように特定行政庁が法に適合してないと認めたときは、民間指定確認検査機関の確認済証は効力を失います。その結果、指定確認検査機関、確認検査員、設計者は処分を受けることがあります。

既存建築物の現場では、調査方法や調査結果の判断も含めて建築主事の法的判断が必要となることが多く、決してマニュアルだけでは解決できない問題に直面します。

何故弊社が多くを「ガイドライン調査(民間指定確認検査機関)」ではなく「法12条5項報告(役所)」を選択しているかというと、危機管理意識の問題だと思います。その他具体的には様々な相違がありますが、それは個別に回答します。】

不動産の再構築

日本は、少子高齢化や建築物の老齢化、経済活動の低迷の影響を受け、従来のスクラップアンドビルドから、環境面にもやさしいストック活用型に移行しつつあり、今後もその傾向は一層拡大していくことでしょう。

高度経済成長時代(1965年~1973年)に作られた、企業や官庁の施設・インフラ等は、これから軒並み耐用年数を迎え、所有する不動産の再構築が必要となります。

補修して使い続けるのか、解体するのか、別の用途に変更するのか、新しく建て直すのか、色々な選択肢があります。

民間はCRE戦略、公的不動産はPRE戦略といいますが。各自治体では公的不動産の活用についての検討が進んでいます。

豊島区では、区議会の中に「公共施設・公共用地有効活用対策調査特別委員会」が設けられており「学校跡地、公共施設及び公共用地のあり方に関する調査」を行っています。調査項目としては 1.公共施設の再構築等に関する諸課題、 2.施設・用地の有効活用に関する諸課題について検討をしています。

公共施設の再構築を図るためには、すなわち「公共施設等総合管理計画」を具現化するためには、施設の現状把握が不可欠です。

その為には、各種調査診断(遵法性調査・劣化調査・耐震診断・省エネ診断等)を行い、施設の状態を正確に分析・評価することから始めなければなりません。

弊社の不動産の再構築のための建物調査診断は、

  1. 設計会社・施工会社とは立場の異なる専門建築事務所として建物を調査診断します。
  2. 目視だけでなく専門機器による科学的調査分析により建物の健康状態を正確に診断します。
  3. 補修箇所や補修方法を適切に判断し工事の優先順位付けを実施します。
  4. 耐震診断から補強設計、耐震化工事までを提案し実施します
  5. 長年の経験をもとに建築・設備等の総合的な調査を実施します。
  6. 建築基準法、消防法等、建物関係法令が遵守されているか法的な調査検証を実施します。
  7. リノベーション(増築・用途変更)等を想定した調査診断を実施します。

超音波厚さ計

中国の計測器メーカー品の「超音波厚さ計」

あまり薄いものは測れませんが、安価だったので買ってみました

取説が英語版のみ

息子に訳してもらい操作方法を教えてもらいました

たぶん測定器の価格よりアルバイト代の方が高くつきそう

錆止め塗装を落としカップリング材を塗っているところ

鉄骨埋込柱脚部からコラムの板厚を計測してみました

作業をしているのは、今年21歳になるインターンシップのI君

UT検査でもコラムの板厚は計測できていたので

板厚は、12mmというところでしょうか

「建築ストック再生・活用技術セミナー」 IN 大阪 終了しました。

【講師の伊藤さん】

5月15日、「建築ストックの再生・活用技術セミナー」IN  大阪は、会場一杯の参加者を得て終了しました。住宅医スクール関係・MOKスクール関係の人達の参加が多かったので、どうしても木造関係の話の方が馴染みやすかったようです。

これで企画・構想から始まった6ヶ月間の独自セミナーは終了しました。シナリオライターとしては、朝ドラが一本 ようやく終わったと言う感じです。

セミナー事務局長兼講師で、しかも 講師の中で一番長い90分という時間に変更したので、両方の準備が重なり 講師の方の準備が疎かになりがちでした。

それでも、この5年程の仕事をリフレクションでき、形にすることができたことは、大きな成果だったと考えています。

また、次の展開に向けての 足掛かりができました。