今月中旬に調査した既存建物の石綿分析結果(速報)が送られてきた。予測どおりPタイル、ソフト巾木、石膏ボート等から石綿有の結果だった。
カテゴリー: ソリューション
ミッドナイト in ジジババ
これから改修工事をする建物の事前石綿含有調査に立ち会った。一昨日は日中に設計担当者二人と石綿含有調査者で約30検体採取した。始めにどこの部位を採取するのか方針を伝えなければならないので調査の最初に立ち会った。そのあとの検体採取は夕方まで設計担当者二人に立ち会ってもらった。
昨晩は、深夜にエレベーターシャフト内の石綿含有調査を行った。ほぼ最終電車に揺られジジババは日が変わった頃に現場に向かう。11月の半ばになると流石に深夜は寒い。我々と石綿含有調査者とエレベーター管理会社の4人。エレベーター管理会社も社長さんが来ていた。「社員は休ませなくちゃ」と言う。まあどこも同じ。
娘が心配して言う「もうみんな終活をし始めている歳なのに、うちの両親は拡大化している」と。特別拡大しているわけではなく、既存建物の業務ではフィールドワークを重視しているからで、それは手離すことはできない事。各地に仕事があって呼ばれたり、行かなくてならなくなっているだけなのだ。
現場調査・設備電気現況調査

PH階外壁配筋探査

1階外壁CONコア採取前の配筋探査

コンクリートコア採取
今日は朝から鉄筋コンクリート造既存建物の建築基準法適合状況調査
コンクリートコア採取場所、鉄筋かぶり厚さ測定箇所の指定を朝一番に行う。図面上で想定していても現場で位置を変えたほうが良い場合があり、職人さんと相談し適時変更していく。
開口部の寸法採取、窓ガラスの種類の確認、階段の各部寸法測定などをする。
午後からは、設備・電気設計者に現場に来てもらい現況確認と設計の方向性について打合せをした。
調査は夕方に終了。
生産施設の第一回現地詳細調査終了
敷地面積 約57,000㎡、延床面積 約39,000㎡、総棟数 約37棟の既存の生産施設(工場)の建築関連法調査業務の現地詳細調査を実施した。
2日間にわたる現地詳細調査は、机上調査、外部、ドローン、内部3エリアの2人ずつ6チームに分かれて無事終了。総勢14名の調査チームで20代から70歳代までと幅広い年齢層になった。
始めて調査に参加した人から「参加されている皆さんのこころざしの高さやパワフルさに終始圧倒されっぱなしでしたが、勉強させられることが多い中、とても楽しく仕事ができて大変良い経験になりました。良いご縁に恵まれて感謝しております。」とメールがきていた。
皆で会食し、ひとつホテルに泊まり交流することで、単に調査に参加するだけではわからない一人一人の個性がわかる。最近は会食とか多世代交流が減っているので、やっぱりこういう試みは大事だなと思う。
若い人たち(20代、30代)が今回は4名と3割近くになったせいもあるが、40代以上の人達は、若い人たちに何らかの刺激を受けたみたいで、初心に返ってパワーがわいてくるみたいです。
学歴や職歴・経験値や年齢ではない。それぞれが持っている「志」の高さを応援したいと思う。
外部調査に20代、30代を重点的に配置したせいで、外部調査は1日目で終了。2日目には内部調査チームに各1人ずつ増員できた。
これから膨大な写真、動画、ドローン映像、図面、書類との格闘が始まる。
ざっくり調査内容を確認していたところ、クライアントに中間報告をする前後に補充調査は必要だなと思った。
生産施設の建築関連法調査員打合せ
敷地面積 約57,000㎡、延床面積 約39,000㎡、総棟数 約37棟の既存の生産施設(工場)の建築関連法調査業務の調査参加者とのweb打合せを行った。
2週間後に迫った2日間の現地詳細調査は、机上調査、外部、ドローン、内部3エリアの2人ずつ6チームに分かれるので、調査の目的、写真撮影の注意点、熱中症対策等、多岐にわたる説明と質疑が行われた。今回は首都圏と中部圏の合体調査なので、お互いに初顔合わせの人もいた。
各建物の調査ルートと随行するクライアント側担当者の割り振りが送られてきたので、その説明をした。当初同一建物を1日目は、写真撮影+既存図面と現況の相違点。2日目は実測等に充てる予定だったが、2日分の調査内容を1日で行い、順次別建物に移動する方法に変更した。
また外部調査に一人増員することにした。
生産施設の建築関連法調査に着手
敷地面積 約57,000㎡、延床面積 約39,000㎡、総棟数 約37棟の既存の生産施設(工場)の建築関連法調査業務に着手した。
9月の中旬に2日間にわたり現地詳細調査を行う。
大規模な調査を2日間で行うので、調査スタッフは13名となった。
まだ1ケ月前だが、前泊を含めた宿泊先や打合せ会食先の予約。調査資料の整理、デジカメ、ヘルメット、空調服の用意等と準備することが沢山ある。10名程の宿泊先をひとつのホテルに予約するのは大変だった。ホテル代も高騰しているし・・・。事前にWEBで調査員会議も開催し業務の内容を徹底しなけばならない。今回の調査から副責任者を選任し、調査員に対して連絡・調整をしてもらっているので、爺さんはラクチンだ。
「建築関連法調査」としているのは、弊社の場合は、建築基準法のみならず、都市計画法、工場立地法、消防法、県市条例と建築プロジェクトに関連する法規制全般について調査することが多いからだ。
今回の調査にあたって、建築基準法適合状況調査にあって用意してもらいたい書類の表を作成した。もうだいぶ前に作成したものがあったが、今回は全面的に更新した。
また、建築基準法適合状況調査の一般的な手順も付け加えた。更に調査対象棟数が多いので棟別に受領した書類・図面がわかるように新たに「既存建物書類チェックシート」も作成した。
既に今春 現地下見、調査概要は作成していて、質疑も上げているので、クライアント側から既存図面等を用意してもらうと準備は概ね整う。
今回の調査は基本的調査でPHASE-1となり、2025年8月から2025年12月までの業務期間となる。その後 本格的な建築基準法適合状況調査(新ガイドライン調査)はPHASE-2で、非破壊、微破壊、既存図面の復元、構造計算書の復元等の業務を2026年に実施する予定である。
そのあとは、どう業務が展開していくは調査の状況を見なければならない。
「木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について」

2024年10月3日国土交通省から発表された「木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について」を見ていた。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_kijunhou0001.html
https://www.mlit.go.jp/common/001766698.pdf

旧法6条1項4号建築物から新2号建築物になる2階建て木造一戸建て住宅がリフォーム。リノベーションを行う場合に大規模の修繕又は大規模の模様替の建築確認申請が必要になるということを注意喚起するもの。
新2号建築物は階数2以上又は延べ面積200㎡以上で、これまで無法状態だった旧4号建築物のリフォーム、リノベーションに法規制の網がかぶさってきた。軸組だけ残すスケルトン・リフォームやスッポッポン・リフォームも確認申請が必要となる。

例えば木造2階建で耐震等級を「3」にアップするようなリフォームを含有する場合、床合板、野地板合板、壁面合板等を張り替えないと耐震等級を上げることはできないので、当然ながら大規模の模様替えの確認申請が必要になる場合が想定される。
もうひとつ忘れてはならないのが、旧4号建築物は、検査済証がない手続上違反建築物や実態上の違反建築物が街場にゴロゴロしているということだ。
当然ながら大規模の模様替え確認申請の前段階として、検査済証が無い場合は、建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)等が必要となる。
現場の中の美

前述のコア抜き立会中、一挙手一投足、そばにいて見ているわけではないので、現場の中をプラプラ。
この壁は、ブロックなんだけどボードを貼るときのGLボンドの跡が、壁一面に展開されていてきれいだった。

30年前の墨だしの文字が、達筆に思えた。30年後内装が解体されて、こうして他人に見られることなど意識していないだろうけど。
現場は楽しい。
たかがコア抜き、されどコア抜き

今日は、都内某ホテルの地階飲食店テナントの入れ替えに伴う設備用配管の為のコンクリートのコア抜きに終日立会。
たかがコア抜き数本の為に、何故立ち会わなければならないのか。
天の声「RC壁に穴開けて構造的に大丈夫なのか、エビデンスは?」
天の声「ちゃんと検討書と施工写真とか残しておきなさい」
天の声「鉄筋を切った時の補強方法はどうするのか」
と言った。声のもとで、私に相談が来たのは、かれこれ2か月前
担当「設備用配管のスリーブを抜きたいので構造的見解とコア抜き、施工記録の写真、補強方法の検討書とか、まとめて頼めない?」
私「出来るし手配も出来るけど、うちは工事会社・現場監督じゃないんで、鉄筋探査、コア抜き、足場、天井の解体とか必要なので、それらに全部立ち会うのは時間的に無理かも」
担当「じゃ天井解体は、テナント内装工事会社に頼み、足場も別に手配するから」
私「了解」

ということで、構造的検討とか補強方法の検討も済み、本日無事 新規コア抜き完了。
たかがコア抜きだけど、区画隣のテナントは営業中なので午前中9時半から11時半。午後15時から17時までの変則的な工事時間。

今回新たにダイヤコアドリル用真空パッドという道具を知った。これはコアドリルを所定の位置にセツトするときドリルで穿孔する必要があるのだけど、このドリルで穿孔する時の振動が結構響く。そこで真空パッドを使用して吸着して固定するという道具。

真空パッドの吸着面。ゴムの中をコンプレッサーで真空にする。

もうひとつ、新たに知った道具は、HILTI PX-10というトランスポインター。
これは壁の反対側からしかコア抜きがしずらいときに、壁反対側から位置を発信し、反対側で受信して位置を決めるときに使う。今回別の壁のコア抜きに利用した。
常に道具は進化する。
ということで、工事現場はエアコンが無いので、とても暑かったが夕方5時にコア抜き、片付け完了。写真も撮影したし、明日から報告書をまとめなきゃ。
そうそう。築30年のRC造なので、頼まれてもいないのに圧縮強度と中性化試験用に、もう1本コアを抜いた。まあ資料にはなるし、後学の為に。
3Dスキャンによる既存建物の図面復元-2
9月上旬に3Dスキャン計測をして点群データを取得したプロジェクトの復元図面があがってきた。その一部を紹介しよう。
3次元計測機器は、FARO Focus Premiumである。

【3Dスキャンの元画像】
↓

【3D処理した後の、当該部分の画像】
↓

【3Dから2Dにした図面】
上記の図面は、アナログ調査による加筆等を加えていない状態の図面。
実測のための高所作業、足場は不要となった。遠隔地への調査員派遣人数が軽減でき、交通費+人件費が低減できた。計測から既存図面復元迄約3週間だった。
建築ストックの再生と活用において、既存図面の復元は避けられない業務だが、もっとも多くの調査員が必要で、かつ汗を一杯かく分野だったが、光が見えてきた。
3Dスキャンは、現状でも充分実務に耐えられることが検証できた。
3Dスキャンによる既存建物の図面復元
既存建築物の図面復元を目的に3Dスキャンによる撮影調査を行った。既存建物本体と あとから増築した部分が多くあり、尚且つ アナログで調査するにしても足場が必要だし、高所作業となるために3Dスキャンを採用した。

3Dスキャンによる点群データから3Dを復元し、そこから2Dの図面(平面図・立面図・断面図)を復元する。それをもとに構造図も作成する予定。
近年3Dスキャンは、著しく普及し始めたと感じる。だれでもかんたんに3Dモデルを作成でき、共有できる安価な機種が出てきた。
ただ既存図面の復元に採用できるレベルの高精度の場合は、どうしても測量で使用するような高性能のスキャナー、専属の撮影者、ハイスペックなPCが必要である。今回は測量並みの点群データ密度を求めた。

狭い室内の改修の現場とか、人がレーザーを使用し測定するような安価な機種も出始めたが、こうした使用用途によっては素早く撮影でき、AIが自動的に3Dモデルを作成してくれるというようなこともできる。ようは点群をどのような利用用途で使用したいかとということにつきる。
ドローン調査
既存建築物の劣化状況等を把握する為に、ドローンによる動画撮影調査をした。
使用したドローン(無人航空機)は、DJI Mavic 3 pro

調査場所が名古屋飛行場に近かったので、県営名古屋空港事務所、航空自衛隊 小牧基地、所轄警察署について、それぞれ、ドローンの飛行に関する通報と届出をした。国土交通省については、DIPSでの通報と許可申請済。

建物本体と、あとから増築した部分の取り合いが多くあり、地上からでは確認できない事。確認するにしても高所作業になる事から、今回はドローンによる動画撮影を選択し、発注者の了解を得られた。


撮影されたMP4の動画が1ファイル約3分で平均3.5GB。合計23ファイル撮影され約70分弱。容量は73GB。
全て見直したら 屋根の劣化状態や屋根の取り合い等地上からでは解らなかった事も判り、ドローン撮影は有用だった。
借地借家法28条・立ち退きの正当事由
立ち退きの正当事由とは、賃貸人が賃借人に対して立ち退きを求めるだけの合理的な理由のことを指す。入居者に立ち退きを求める際には正当事由が必要である。
立ち退きの正当事由とは、賃貸人(家主)が賃借人(入居者)に対して、賃貸借契約の解除や更新拒絶を行うために必要な合理的な理由のことを指す。
つまり、賃貸人の一方的な都合だけでは賃借人を立ち退かせることはできず、社会通念上、立ち退きを求めるだけの十分な理由が必要とされているのです。この正当事由について定めているのが、借地借家法28条です。同法では、賃貸人が賃貸借契約の解除や更新拒絶を行う際には、正当事由の存在が必要であると規定されています。つまり、正当事由がない限り、賃貸人は賃借人に対して一方的に立ち退きを求めることはできないということです。
借地借家法28条では、正当事由の判断にあたって考慮すべき5つの要素が定められている。
①:賃貸人と賃借人の建物使用を必要とする事情
②:建物の賃貸借に関する従前の経過
③:建物の利用状況
④:建物の現況
⑤:立退料の申し出
この立ち退きの為の正当事由を明らかにするために「法遵法性調査」が判断材料のひとつとして利用されている事は、意外と知られていない。
ここでいう「法遵法性調査」は「建築基準法遵法性調査」とは、その法の範囲や内容が少し異なり、建築基準法と関係規定について「適合・既存不適格・不適合」と逐条別に分類するような一般的なものではない。
借地借家法28条では、正当事由の判断にあたって考慮すべき5つの要素のうち「③建物の利用状況」「④建物の現況」については、より専門的なコミットメントが求められる。
建物の利用状況は、「賃借人が建物をどのように使用しているか」「その使用方法は賃貸借契約で定められた用途に合致しているか」「建物の使用頻度はどの程度か」といった点が判断材料となる。
建物の現況は、建物の老朽化の程度や、大規模修繕等の必要性、また現在の建物が立地地域の標準的な使用形態に適合しているかどうかなどが考慮される。
建物の老朽化が進行し、安全性に問題が生じている場合、建て替えのための立ち退きが正当化される可能性がある。しかし他社の報告書見ると、単に築年数が経過しているというだけで、取り壊し事由と記している場合等もあるが、これでは不充分である。建物の倒壊や設備機器の故障など、具体的な危険性が認められることが必要となる。また、建て替え計画の詳細や実現可能性なども考慮されるとされている。
弊社では、借地借家法28条・立ち退きの正当事由を目的とした「法遵法性調査」を受任している。
賃貸人(家主)・代理人弁護士からということもあるし、賃借人(入居者)・代理人弁護士から依頼されることもある。
賃貸人(家主)からは、賃借人(入居者)を退去させて既存建物を解体し更地にして転売する場合が多い。賃借人(入居者)からは立退料の交渉に利用されることが多いようだ。
「要綱飛ばし」
不動産業界の人が昔使っていた脱法行為の手法の事
現在は、多くの特定行政庁で条令化された「ワンルームマンション条令」。条例化する以前は「要綱」だった時期がある。その要綱について特別区と誓約書を締結し、建築確認申請もその要綱に沿って作成し確認済証の交付を受けながら、実際に作る建物は戸数とか、駐車台数、駐輪台数も異なる建物を建設し、完了させる。
当然ながら工事完了検査済証はない。検査済証がなくても登記できたし、銀行融資も何の問題もなく実行された時代。
私が調べた建物は、SRC14階建ての都内の賃貸マンションで、当時の基準だと計6回の中間検査が必要にもかかわらず、1度の中間検査も受検していなかった。中間検査の受検の有無は、特定行政庁に出向き知らべてもらうと判る。施工は、全国的には名の通っているゼネコン。
屋外階段から道路への避難経路(令128条)がない。建築確認申請図書で避難経路となっている部分は、しっかりテナントの店舗となっていた。火災が起きたらどうするんだろう。
まあ、こんな既存建築物は、今でも都内にゴロゴロしている。
こういう脱法行為を推奨する不動産業者と設計者がグルになっていたのが建設業界。
今頃になってコンプライアンス・コンプライアンスと言われたって、違法部分を見つけるのも直すのも費用とエネルギーがかかる話。構造安全上、避難安全上問題が多い建物は、早く解体した方が世の中の為。
建築基準法が出来てから70数年のうち60年ぐらいは「ザル」だった法律。後始末は、そりゃ大変さ。
既存建築物の図面復元
既存建物の遵法性調査やリノベーション、レイアウト変更を行う際、新築時の図面が全部または、一部しか残っていなかったり、当時の図面と異なっていることがある。
不動産が流動化する時代では、既存建物の図面、図書等整備も資産価値を下げない一つの要素である。
現状を実際に把握しないと方針は決まらない。とにかく図面がなければ次の展開には進められない。
検査済証があろうが、無かろうが、既存建物を活用しようと思ったら「まず調査」から始めないといけない。実際には一度ならず追加調査が必要だったりする。そしてその調査の野帳は、自分だけでなく他人が判別できるものでなければならない。それには一定のレベルの人材による作業が必要である。
実際の図面復元は、アナログの極致で平面・断面・立面の各部位を実測し野帳図に書き込み、写真や動画を撮影して、現在ではCADで作図する。図面の復元と言っても意匠、構造、設備、電気等 どこまで復元するかによって人手と費用は大きく変わる。


上記の2枚の画像は、10年近く前だが木造家屋の調査で私が担当した断面野帳。フリーハンドでも、他の人が見て判りやすい野帳にする必要がある。
もっとも最新鋭技術で、建物全体を3Dデータ化することで、3DCAD上で建築図面を再現することができるそうだ。まあ高額なので中々一般には普及しないとは思うが。
一方で図面復元をしたことを、ことさら「すごいでしょう」と吹聴したり、過大評価する第三者がいたりするから世の中面白い。図面復元をしたことがない人達からしたら大変な業務なのかもしれないが、古民家や木造住宅、社寺仏閣のリノベーションの世界では当たり前の作業。
筆者も学生時代から伝統建築物の調査や図面復元に関わっているので、汗をかきかき灼熱の天井裏で調べたり、狭くてかび臭い床下にもぐり調査したり大変な作業であることは間違いない(尚、最近は体積が多くなり過ぎたのと加齢のため、小屋裏、床下の調査があっても若い人にお願いしている)が、だからといって全体を指揮して調査し図面を復元するのは苦にはならない。
現場に行くこと、汗をかく仕事を避ける設計者もいるようだが、古来より「現場に神宿る」と言われている。歳をとっても、それだけは譲れない。
RC構造体の耐用年数評価がでた。
かねてより依頼していた既存鉄筋コンクリート建築物の構造体の耐用年数評価(ドラフト版)が(財)日本建築センターから送られてきた。(財)日本建築センターに設置する「既存建築物の耐用年数評価委員会」(委員長:宇都宮大学名誉教授 舛田佳寛)において確認されているとある。
評価書によると調査時点(コア試験体採取年=2023年)からの推定耐用年数は80年。
既に築年数44年の建物だから竣工時からの推定耐用年数は124年。予想していた耐用年数より寿命が長い。
先に耐震診断の結果も出ていて、構造耐震指標が一番低い1階のX方向でIso=0.96あった。層間変形角1/250での目標値Iso=0.6を超えており、安心していたところだった。
構造体としては、とても良い状態の既存建築物だとわかった。同時に幾つかの問題点も判明しているので部分的な改善工事をしなければならない。
調査をして既存建物の潜在能力(ポテンシャル)がわかり。それを生かす方向でプロジェクトが進んでいく方向になってきたことは、調査者・設計者としてとても嬉しい。
塗装のタッチアップ

6/26にコンクリートコアを採取した現場の塗装タッチアップに朝から立会
塗装屋さんも、足場鳶も、コア採取業者も自分で手配しているので現場に立ち会わなければならない。

パテ処理をして塗装

この日、都心は36.5度。朝から暑い一日だった。
通常はたまにしか外に出ないので、陽を浴びてビタミンDを生成しなければ
朝8時30分には、塗装屋さんが来ていて外壁の色と色合わせをしていた
塗装する場所を一通り案内して、1時間あまりで完了
職人さんがいて我々の調査や設計の仕事が
成り立つのだぞえ
耐用年数評価の為のコンクリートコア採取

蒸し暑い一日だった
耐用年数評価用+耐震診断用のコンクリートの中性化、圧縮強度を
調べるためのコンクリートコア等を採取した。
ちょつと声をかけたら見学者が6人、皆真剣に作業を見守っていた

2階の外壁部分からコアを採取する為に足場を建てた

未確認部分だった1階屋根の部分には、
図面には設備基礎が書かれていたが無い事が判明した。

鉄筋クロス部分を露出させて発錆状態を確認
コンクリートかぶり厚は、5cm
外壁側2cmの増し打ち、打放コンクリートの上に外壁塗装という事を確認

フェノールフタレイン液を噴霧して、中性化状況を確認
これが全部で5箇所
圧縮強度+中性化試験の他に塩化物調査用、含水率調査用を別に採取
夜7時まで延長して全てのコア抜き、斫り調査は終わったが、
コア抜き箇所の無収縮モルタル詰めは翌日の午前中作業となった。
現場主義を貫きファクトに向きあうと得るものも大きいが、
身体には応える
それでも この案件の大掛かりな現場調査は無事終了
耐用年数評価・耐震診断・耐震補強計画・改修計画に進む
耐震診断の為の図面照合と重量物調査

今日は耐震診断の為の図面照合調査でRC壁の開口寸法の調査
上記の写真のようにRC壁を貫通してるダクトや配管等も調べる

併せてコンクリートブロック壁の配筋調査。
CB壁の鉄筋探査はボッシュの簡易測定器で
全ての内壁のブロック壁は有筋だった

その他設備機器類の基礎を計測、体積計算をした。
これらの調査野帳を整理しCAD図に記載して構造事務所に送らねばならない。

今日の調査の弁当は、のり弁山登りの「大漁」
鶏肉、鮭、竹輪等が容器にみっしり
クライアント、調査員らと、本日も和気あいあいと、
だが食べている時は黙々と食した
耐用年数評価の現地調査

鉄筋コンクリート造の既存建物(築43年)の実質耐用年数評価を日本建築センターに依頼した。その現場調査を行い実際にコンクリートコアを採取する箇所等を現場で決めた。
上記の写真は、鉄筋探査機(電磁波レーダー)で鉄筋のかぶり深さを計測しているところ。この箇所は5cmと計測できた。

赤い紙テープは鉄筋の位置

内部の空調機械室
この日は、日本建築センターから3人、非破壊検査会社から3人、弊社、クライアントが調査に参加。
コンクリートコアは圧縮強度試験、中性化試験をする他、塩化物調査用、含水率調査用、じゃんかがある箇所、両面打放コンクリートの箇所等、耐久性調査だけでなく建築病理学的に興味がある箇所も抜くことにしたら、凡そ30カ所になった。こうした調査の際に建築病理学的な見地からの調査を加味すると後学の為の資料が蓄積できる。
築43年の既存建築物をあと20年利用したいという場合は、この実質耐用年数評価・調査はしなかったかもしれない。43+20=63年なので建築学会でいう一般的なRC造耐用年数60年~65年に相当するから。だが30年~35年というと43+30=73年~78年なので、対外的なエビデンスとして必要だろうと判断しクライアントに説明し了解を取り付けることができた。
クライアントの担当部長説明から始まって、社長・役員・技術顧問が並ぶ中で必要性をプレゼンした。ここに至るまでには結構隠れた苦労があるのです。

斫り箇所の中性化状況の確認は5箇所だけ、非破壊検査会社の人は現場での中性化試験はやったことがないというので、アナログ経験者である私がやることにした。
フェノールフタレン液だけは、新しいものを買ってこよう
そういえば何年か前に、現場での中性化試験をやったはずと思い、自分のサイトを検索してみた。8年前にやってました。
この記事を書いたら、「大田区の町工場の親父(社長)みたいだ」という最高の誉め言葉をもらったのを思い出した。
これに追記するとコンクリート粉を飛ばすエアダスターと、濡れた場合の為にぼろ布が必要だったはず。準備せねば。
現場でのコンクリート中性化試験は科学の実験みたいで楽しいですね。
正確に記しておくと現場での中性化試験は、コンクリートを斫り鉄筋を露出させて、その腐食状況を確認するのが第一の目的。日本建築学会「建築保全標準・同解説IAMS3-RC」によれば、鉄筋の腐食グレードと腐食状態は5段階あると書かれている。
耐震診断のための現場確認
鉄筋コンクリート造の既存建物の耐震診断をするにあたって、構造事務所と一緒に現場確認をした。
外部・内部の劣化調査は既に済ませてあるが、これから耐震診断のための「図面照合調査」(既存図面と現況の主として壁種別の確認、壁開口の大きさ確認、実測)をする為の下見。
耐震診断業務も調査から計算まで一貫して依頼出来る会社もあるが、現在弊社で検討している耐震補強設計の技術的難易度が高そうなので、対応できる構造事務所と弊社で手配する調査チームの共同業務にした。

RC壁でも写真のように上部にダクトが貫通していると右側部分は耐震壁として評価できず、左側のみの評価となる。現地調査をして図面に壁種別と開口寸法を記載していく調査。

屋上には、何のための基礎だったか良くわからない基礎が残っていたりする。こういう設備基礎の類も実測しなければならない。これを「屋上重量物調査」という。
建築・設備を含めた竣工図が残っていない既存建物、長い期間の間で更新されて変わってきた設備類の記録が整理・保管されていない既存建物は、まことに手間がかかる。
既存建築物の活用では、こうしたアナログ調査が不可欠で、身体を使い汗をかく。こういうところが敬遠される所以なのかもしれないと思うこの頃。まあ爺さんは楽しみながらやっているが。
配筋検査

工事監理中の現場で配筋検査兼諸打合せ
確認申請図書で柱脚埋込式になっていたのに内部を解体したところ柱脚露出形式になっていたので構造解析し柱脚根巻形式に改修中。

以前調査の為に掘削した土間スラブも配筋し、コンクリート打設は柱脚と同時期に施工

工事看板類がA3版程度の大きさで掲示されていた。
この日は気温29度になったとかで、外にいると溶けそうだった。
既存建物の「負のオーラ」
人間の場合、「負のオーラ」とは一般的に、「ネガティブな印象や雰囲気」のことを言います。 周囲に暗い雰囲気やマイナスな印象を与えてしまうので、負のオーラを放つ人は周囲からは敬遠されがちです。 考え方がネガティブな人は、負のオーラが出てしまうと言われています。
既存建物も「負のオーラ」を放っているものがあります。それを感受するかどうかは個人差があります。
そして、それらの多くは事故物件でもあります。既存建物調査の際に「事故履歴」が添付されてくるものがありますが、ほとんどが「事故履歴無し」と記載されてきます。
しかし弊社では一応「大島てるの事故物件サイト」で確認をすることにしています。すると書類上は「事故履歴なし」という建物でも「自死」「殴殺」「焼死」「孤独死」「飛び降り自殺」等などがあったりします。
既存建物から「負のオーラ」を感じる人は感受性の強い人、霊感のある人で、私は鈍感な方ですが、妻は霊感が強いので最近は既存建物の室内には極力入らないようにしています。
鈍感な私でも今までいやだなと思った既存建物は幾つかあります。
長年放置された地下室の照明が全くない空間。とある工場の用地取得でオーナーに同行した時、うっそうとした樹木の中に古い蔵と墓場があった。敷地内に墓場あるところは西日本では結構見られるが、「近づくな」と言われているように思ったこと。
まあ思い起こせば結構あるかな。
「負のオーラ」を感じたら「正のオーラ」を受容して中和しなければならない。
神社に御参りして清浄な空間に包まれるようにしています。
マムシ

既存建物の調査で、周囲が田であったり、川べり、農業水路がまわりにある立地がある。敷地の外周部を歩いて写真を撮っていると雑木林に「マムシ注意」と書かれていたころもあった。
敷地内でも草刈りをしていないと夏場は結構草も伸びるので藪となる。
受水槽やポンプ室まわり、浄化槽、敷地外周部なんかの周りは、草むらになっている事も多い。
聞くところによるとマムシの子育ての時期である8~10月はマムシも攻撃的になっていて特に用心が必要とか。
基本的にはこちらが近づきすぎない限りは向こうからは襲って来ないとは聞いたが、調査箇所が草むらに覆われていると入っていくのも躊躇する。
ということで、膝まである長靴を用意したのだが、今のところ出番はない。
デジカメ達

調査用のデジカメ達
上左:CASIO、上右:CANON
中左:NIKON、中右:SONY、右:GOPRO10
下2台:FUJIFILM
デジカメは守秘義務の徹底の意味もあり、画像の外部流出防止とアスペクト比の統一、画像サイズを統一するために、協力してもらう調査員にもこれらのデジカメを貸与している。
ひとつの報告書のなかでアスペクト比とかが統一されていない画像は見苦しい。
現在使用中なのは、この国産の6台。それぞれスペアの充電池を複数所有、メモリは32Mカードにしている。
ほとんど中古というか売れ残っていた商品で、確か現在国産カメラメーカーで製造を継続しているのはSONYだけかと。また製造を復活して欲しい。
中国産の安いデジカメも売っているが、接写のピントが甘いらしい。エレベーターの点検証とか消火器とか各種設備機器の製造年月日ラベルとか撮影するので、安ければ良いというわけでもない。
1回の調査で1000枚/台ぐらい撮影することもあるのでデジカメの消耗は激しい。
GOPRO10は、建物全体とか屋根等の高所を動画撮影したものを静止画にして報告書類に利用することもある。後で調査対象の連続的な状態を確認するのに役立っている。
デジカメ達に感謝して 手入れをする。