弁護士を代理人とする場合、住民側代理人も建築主側代理人も建築審査請求は初めてという事も多く。結構、頓珍漢なやり取りが交わされたりする。
又、数々の建築審査請求の事例を見ていると、手練れの建築専門家が加われば・・・とか思うことも多い。
建築審査請求は、指定確認検査機関制度になってから増えたようにも思うが、以下に整理して記載しておこう。
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1.審査請求とは
• 建築基準法に基づく(建築確認)処分に不服がある場合やこれらによる申請を出したのに、処分が行われない(不作為)場合に、市町村や都道府県の建築審査会に不服を申し立てることができる。
•申し立てを受けると建築審査会で審理を行い、申立てに対する裁決を行います。処分又は不作為が違法又は不当と判断された場合は、裁決により処分が取消される。
2.審査請求の申立先
•物件所在地を所轄する建築審査会へ申し立てる。
•審査請求書の提出は、建築審査会の事務局。(最寄の特定行政庁へ相談)
まず、特定行政庁に建築確認申請図書の開示請求(情報公開請求)を行う事。その請求に基づいて特定行政庁は、処分庁等に対して建築基準法第12条第5項報告を求める。とにかく確認申請図書を入手して建築の専門家達が検証することが不可欠になる。まれにパフレットとか新聞折り込み広告、住民説明用計画図等で建築審査請求を提起する人がいるが、図面開示とその検証に基づき、法的な文書の作成が必要
3.審査請求ができる期間
審査請求は処分のあったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければならない(行政不服審査法第14条第1項)。
また、処分があった日の翌日から1年が経過すると審査請求はできなくなる(行政不服審査法第14条第3項)。
上記の期間を過ぎた後になされた審査請求は、原則として不適法なものになり、却下裁決となる。
4.審査請求の流れ
審査請求は、原則として書面で審議を行う。
審査請求人、処分庁の双方から書面の提出を受け、口頭審査(口頭審理)を経て、裁決をする。
5.裁決の種類
•認容裁決
処分に違法又は不当が認められ、処分が取消される裁決です。取り消されると、処分は、処分をした日に遡って効力を否定される。
不作為についての審査請求では、不作為庁に対し、速やかに申請に対する何らかの行為をすべき旨を裁決する。
•棄却裁決
処分に違法又は不当が認められず、審査請求を退ける裁決です。
•却下裁決
審査請求が法定の期間を経過した場合や、処分を取消す利益がないときなど不適法であるとき、審査請求を退ける裁決です。審査請求の中身については審理されない。
6.その他
・執行停止申立て
審査請求をしても、処分は裁決で取消されるまでは有効として扱われるので、処分の執行を停止したいときは、執行停止申立てをする必要がある。処分の執行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認められたときは、執行が停止される。
(建築確認処分に対する審査請求をしても、建築確認処分の効力は裁決で取消されるまで継続する。この場合、建築確認処分の効力が存続しているので、工事は継続して行われる。工事が継続することにより何か重大な損害を受ける場合等は、執行停止申立てをする必要がある。
・審査請求と裁判の関係
建築基準法令に基づく建築確認処分や都市計画法令に基づく開発許可処分などについての取消しの訴えは、 原則として審査請求の裁決を経た後でないと、提起できない(行政事件訴訟法第8条第1項ただし書、建築基準法第96条、都市計画法第52条)。
【参考】用語解説
•不作為
法令に基づく申請に対して、相当の期間内に何らかの処分をするべきにも関わらず、何の処分もしないこと
•裁決
審査請求に対する審査会の決定。裁判の判決と同様なもの
•異議申立て
審査請求と同様に処分等に対して不服を申し立てる制度。審査請求とは違い処分庁自身が、申立てに基づいて決定を下す制度