「一の建築物(一棟性)」

建築基準法では「一の建築物(一棟性)」についての明確な規定がないが以下の判例がある。

「東京地方裁判所 判決 平成11年行ウ第156号」

「『一の建築物』とは、外観上分離されておらず、また、構造上も外壁、床、天井、屋根といった建築物の主な構造部分が一体として連結し、あるいは密接な関係を持って接続しているものを指すと解すべき」

「東京地方裁判所 判決 平成18年行ウ第482号」

「社会通念に照らし、構造上、外観上及び機能上の各面を総合的に判断して、一体性があると認められる建築物は『一の建築物』に当たると解するのが相当」

日本建築行政会議では、平成14年に全国の行政・指定確認検査機関にアンケート調査を実施して以来検討を重ねて、平成21年(2009年)の日本建築行政会議全国会議の「部会検討結果報告」に整理された。

「基準総則部会報告」の最初に、「一の建築物(一棟性)に係る検討」が記載されている。

その中の「取り扱い案」の一部を紹介すると

【一の建築物とする判断要件】

複数の建築物が用途、床面積の発生する部分で接続し、外観(形態)上、構造上、機能上接続している場合、一の建築物と判断する。

外観(形態)上、構造上、機能上については、以下の要件が考えられる。
1.外観(形態)上一体であるとは、どの方向(目視の可否にかかわらず)から見ても物理的に一体をなし、一棟と判断できる十分な接続をもつもの。
2.構造上(構造耐力に関わらず)一体であるとは、床又は壁を共有(EXP.Jの有無に関わらず)し、一棟と判断できる十分な接続をもつもの。(当要件にかかわらず、主要構造部を共有し構造計算上一体のものは一棟)
3.機能上一体であるとは、接続していなければいずれの建築物に必要な機能(避難上、運営上など)を満足しない部分が生じるもの。

とし、具体的な判断事例として四つのタイプをあげている。

外観上、機能上一体ではあるが別の棟として判断できる場合として、「部分として構造を異にする建築物の棟の解釈について」(昭和26年建設省住防発第14号)がある。