
2025年 年初に買った本の中の一冊
新しいプロジェクトを構想しているとき、傍に置いて参考にしている
勿論、この本の中で取り上げられているような、
大きなプロジェクトには関与していないが
構造設計者とプロジェクトについて対話するときの
ヒントになる事が書かれている
ずっと半年ぐらい結論が出せていないデザイン・構造上の
悩みを抱えている
幾度か間をあけて計画しているが、ピタッとくる解決方法が見つからない
そういう時に、いろんな本を引っ張り出してきて苦悶する
建築法務/ 建築ストック再生・活用 /長寿命化/ 環境建築 / 建築設計監理 / ㈱寺田建築事務所・一級建築士事務所
2025年 年初に買った本の中の一冊
新しいプロジェクトを構想しているとき、傍に置いて参考にしている
勿論、この本の中で取り上げられているような、
大きなプロジェクトには関与していないが
構造設計者とプロジェクトについて対話するときの
ヒントになる事が書かれている
ずっと半年ぐらい結論が出せていないデザイン・構造上の
悩みを抱えている
幾度か間をあけて計画しているが、ピタッとくる解決方法が見つからない
そういう時に、いろんな本を引っ張り出してきて苦悶する
清水建設(株)はこのほど、日本ヒルティ(株)の協力を得て、短工期・低コストで鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体(コンクリート躯体)に鉄骨小梁を接続する「あと施工アンカー」の設計・施工法を確立、この設計・施工法の信頼性を証する初の強度指定を国土交通大臣から取得した。
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2024/2024057.html
2022年3月の国土交通省告示第1024号の一部改正後、強度指定を取得した「あと施工アンカー」については、用途が拡大し、従来の既存コンクリート躯体とその耐震補強部材との接合に加え、鉄骨小梁など常時荷重を受ける部材との接合にも適用が可能になっていた。
鉄骨階段の取付け、床開口における小梁の取付け等、工期短縮とコストダウンに多大な寄与は間違いない。
清水建設と日本ヒルティに感謝!!
2025年最初に購入して読んだ「佐々木睦朗作品集 1995-2024」
実は、建築構造が好き
20代の頃 世話になった先輩達が、
みんな構造設計者だったという事もあるかもしれない
「本格的に構造をやれ」と何度も言われたけど、
D値法を少しやったくらいで終わった。
それでも構造家の本を見るのは好き
「せんだいメディアテーク」のコンペから、もう30年経ったんだなと思うと考え深い。
磯崎新、伊東豊雄、妹島和世+西沢立衛/SANAAなどと協働し、
世界を舞台に活躍を続ける
日本を代表する構造家・佐々木睦朗さん。
「せんだい」「金沢21世紀美術館」「ROLEXラーニングセンター」
「豊島美術館」などの代表作から
最新「あなぶきアリーナ香川」までの30作品収録。
空間構造の最高賞 「トロハメダル」受賞(Torroja Medal, 2023)。
その構造ディティールの美しさに魅了される。
国土交通大臣登録 耐震診断資格者講習・耐震改修技術者講習の講習修了証明書が一般社団法人日本建築防災協会から届きました。
昨年の鉄筋コンクリートに続き、今回講習が終了したのは鉄骨鉄筋コンクリート造の部門です。
耐震診断には、かれこれ30年ほど前から関わっていますが、近年は高強度コンクリートの開発もありRC造が主流でしたが、現在大規模改修時期を迎えている集合住宅の建物はSRCも多く、SRCも勉強しておこうと思い受講しました。
WEB講習でしたが、顔認証システムが導入されていたので、少し静止していると「顔写真」と判断するのか動画が停止し、うつ向いていると「真面目に聴講してない」と判断するのか動画が停止するというシステムなので、意外と真面目に聴講しました。顔認証システムは良いシステムだと思います。
先人達が遺した手書きの図面の美しさには、いつも惚れ惚れしている
この表紙に使われている断面詳細とファサードの青図もそうだけど、報告書に掲載されている幾つもの元設計図には目を奪われる。
いま100年後の人達が目を留める図面を書いているのか。と自問自答
この建物は、鉄骨鉄筋コンクリート造で営業室吹抜けの天井(下弦材)と屋根(上弦材)の二重スラブは、コンクリートスラブと一体となったラチス梁(梁成6尺6寸)となっている事を知った。この構造はメラン式橋梁と同じ構造方法とある。復元図によると約14.544mのスパンであり、石膏繰型の大きな面積で重量のある天井を実現する為に採用されたものと思われる。このメラン式構造はあまり見たことが無かった。
全体として良くまとまっている報告書だとは思うが、やっぱり建築史家の視点のまとめ方だと思った。昔の自分ならこれで充分満足していただろうと思う。
この報告書には記載されない調査はあるようにも思うが、コンクリートの圧縮強度、中性化、塩化物イオン量、躯体の劣化状況等の建築病理学的視点の報告も盛り込んで欲しいと思った。
鉄筋コンクリート造の既存建物の耐震診断をするにあたって、構造事務所と一緒に現場確認をした。
外部・内部の劣化調査は既に済ませてあるが、これから耐震診断のための「図面照合調査」(既存図面と現況の主として壁種別の確認、壁開口の大きさ確認、実測)をする為の下見。
耐震診断業務も調査から計算まで一貫して依頼出来る会社もあるが、現在弊社で検討している耐震補強設計の技術的難易度が高そうなので、対応できる構造事務所と弊社で手配する調査チームの共同業務にした。
RC壁でも写真のように上部にダクトが貫通していると右側部分は耐震壁として評価できず、左側のみの評価となる。現地調査をして図面に壁種別と開口寸法を記載していく調査。
屋上には、何のための基礎だったか良くわからない基礎が残っていたりする。こういう設備基礎の類も実測しなければならない。これを「屋上重量物調査」という。
建築・設備を含めた竣工図が残っていない既存建物、長い期間の間で更新されて変わってきた設備類の記録が整理・保管されていない既存建物は、まことに手間がかかる。
既存建築物の活用では、こうしたアナログ調査が不可欠で、身体を使い汗をかく。こういうところが敬遠される所以なのかもしれないと思うこの頃。まあ爺さんは楽しみながらやっているが。
「建築構造設計指針2019」(通称オレンジ本)は、2010年以来9年振りの改定本。
構造専門事務所ではないと普通はあまり購入しない本です。(高価だし・・)
この本の第11章「構造審査要領」や第12章「東京の地域特性を考慮したは建築構造における建築審査の要領」は都内行政庁や指定確認検査機関が構造審査をする上での法解釈及び運用の統一性を確保し、建築審査の業務円滑化の為に、東京都建築構造行政連絡会で執筆を担当しています。私はとりわけ第11章の「構造審査要領」は既存建築物を扱う設計者(構造設計者のみならず意匠系ゼネラリスト)は必読の部分だと思います。
一般社団法人 東京都建築士事務所協会では「既存建築物活用に係る建築基準法令とその解説(案)」の発行に向けて以前より準備を進めていましたが、2021年度法制委員会の下にワーキンググループとして「リノベーション専門委員会(法規集編纂)」を立ち上げ、私は誘われてその委員の末席に加わっており、2023年出版に向けて毎月1回2時間~2時間半の委員会で熱い議論が交わされています。
私は「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(以下「ガイドライン調査」)の章の執筆をしています。
現在、ほぼ全部の章の初稿が出稿されており、ブラッシュアップ中です。私もこの本を参考にしているところがあるので読み直しているところです。
ガイドライン調査は一様ではなく国交省届出機関は、その方法論で幾つかに類型化することができます。又各社色々な制限事項を設定していますので調査機関を選択する時には注意が必要です。まだ詳しい執筆内容は書けませんが、色々と新しい取り組みを交えながら、設計者の視点で解説しています。
1階が鉄筋コンクリート造、2階・3階が木造の建築物は、平成19年5月18日に国交省告示第593号第4号(最終改正・令和元年6月25日告示第203号)により、RC部分も木造部分も許容応力度計算が必要となった。
【H19国交省告示第593号第4号の概要】
・地階を除く階数が2又は3であり、かつ、1階部分を鉄筋コンクリート造とし、2階以上の部分を木造としたもの
・高さが13メートル以下で、かつ、軒の高さが9メートル以下であるもの
・延べ面積が500平方メートル以内であるもの
【構造計算の概要】
・RC部分は壁量の確認が必要となり木造部分、RC(WRC)造部分ともにルート2-1相当の構造計算が必要となる
・木造部分の軸組計算
・木造部分の許容応力度計算(2階以上の剛性率6/10以上、2・3階の偏心率15/100以下の確認)
・RC部分の許容応力度計算(1階の偏心率15/100以下の確認)
以上をすべて満たさない場合は、構造適判対象となる。
まあ、新築ならばこの基準で構わない。これから建築するのだから。
H19年の告示以前は、このような混構造の建物はどう扱ってきたかというと、RC部分は許容応力度計算だが、2階・3階は、法6条第4号建物とし軸組計算による筋違を配置して来た。
こうした都心ではどこにもあるような建物が、増築をしたいと思った時、混構造は法第6条第3項建物となり、一体増築の場合は、上記のように全体を許容応力度計算を行い安全性を確認しなければならい。
RC部分が地階だからと安心する事なかれ、建築基準法施行令第1条ニ号の「地階」と構造上の地階は異なるのだ。構造上の地階・地上階の判定は、地盤面かの外周囲が地階全周囲の75%以上かどうかを計算し確認しなければならず、結構地上階扱いとなることが多い。
こうした混構造の建物を増築する場合、大概は内部スケルトンリフォームとなる場合が多い。耐力壁が不足していることが多いので筋違や構造用面材で耐力壁を増やす。2階床の剛性を高めるために床を張りかえる必要がある ということは壁も天井も壊さざるをえなくなり、結果として内部スケルトンリフォーム。場合によっては外壁もということになり既存部分に改修工事が波及するので 改修工事費が嵩んでくる。
もともと長い事 混構造の取扱いはRCと木造は別物としてきたのだし、構造性状は異なるのだから、せめて既存建築物は告示第593号の適用は再検討して欲しい。既存ストックの活用というのなら、こうした細部の規定も見直し緩和をして欲しいと思う。
*2022年3月31日改正されました
令和4年国交省告示第413号「特殊な許容応力度及び材料強度を定める件の一部を改正する件が2022年3月31日付で公布・施行された。あわせて、あと施工アンカーに係る運用について国住指発第1597号技術的助言が通知された。
これにより「増改築や新築において補強以外の用途にあと施工アンカーを使用することが可能となった」
あと施工アンカーは、平成18年2月28日の「告示改正」までは建築基準法上で許容応力度が設定されていませんでした。このH13国交告第1024号の改正後も、条文が「既存の鉄筋コンクリート造等の部材とこれを補強するための部材との接合に用いるもの」となっているため、改正後も耐震改修に用いる時しか許容応力度が設定されていません。(国住指発3021号「あと施工アンカー、炭素繊維、アラミド繊維等に関する許容応力度及び材料強度の指定について(技術的助言))
したがって、今でも新築・増築工事の構造設計にあたって構造要素として使うことができません。
しかし、現在土木・建築分野では広く「あと施工アンカー」は使用され、臨床的には充分強度があると実証されていますし、様様な研究論文も発表されていますが、残念ながら現在のところ建築基準法上は不可となっています。
現在「あと施工アンカー」の問題は、法律が現実に追いついていっていない典型的な事例となっています。
指定確認検査機関や構造計算判定機関でも、増築部分の既存との取り合いについては、あと施工アンカー云々と記載させず、建築主や施工者判断に任せているところも増えています。
既存の基礎と増築部分の取り合いについて、同じ案件で構造計算適合判定機関と指定確認検査機関の構造審査者の間で対応が異なり苦慮することもありました。又既存のRCの建物にエレベーターを敷設する工事で、鉄骨小梁のRC部分に取り合い部分についてもめたこともあります。
東京都建築士事務所協会主催の「RC耐震診断基準の改訂等を踏まえた 2017年改訂版実務のための耐震診断・補強設計マニュアル」講習会に参加して来た。
今年、日本建築防災協会の「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準」が実に16年振りに改訂されたが、この改訂を踏まえたマニュアルとなっている。
都内では、東京都建築士事務所協会+日本建築構造技術者協会+耐震総合安全機構の三団体が協力して東京都条例「東京における緊急輸送道路沿い建築物の耐震化を推進する条例」に対応したところの「三団体耐震診断マニュアル」を作成し運用して来た。
東京都では、緊急輸送道沿道建築物の旧耐震建物約4700棟の耐震診断が完了しているという。その内、事務所協会が担当した2012年1月から2013年3月に耐震診断確認1000棟から浮かび上がってきた課題に基づいた見直しが図られている。
「理論→実践→課題→理論再構築」は、実務者団体だからこそ素早く対応できるのではないかと思っている。16年も改訂しないなんて信じられない。そういえば東京都建築事務所協会「構造設計指針2010(オレンジ本)」も増改築・用途変更に関わる構造部分は、そろそろ改訂してもらいたいものだと思っている。
弊社が関わる耐震診断はリノベーションに伴うもので多くは民間建物だが、実に様々な構造種別や架構形式に出くわす。最近は比較的小規模で完了検査済証の無い鉄骨造の増築や用途変更が多いので、鉄骨造の補強方法について苦慮する事がある。毎回色々な課題が浮かび上がるから大変だが、それが楽しいのだからやめられない。
先人曰く、知恵はタオルを絞るがごとく絞り切らないといけないらしい。
東京都建築士事務所協会主催の「耐震改修事例に学ぶ実務者講習会」に参加してきました。上の写真は本年度版のテキストです。
耐震改修事例の紹介は下記です。
事例1、2、3はガチガチの構造的説明で専門用語が多くてわからないところが多かったのですが、他の事例は、コンバージョンの一部としての耐震補強や耐震補強工事の施工上の問題点・苦労話でよく理解できました。
事務局によると参加者の4割が意匠関係者ということでしたので、内容も構造技術者しか分かり合えない内容だけでなくしたのかもしれません。耐震改修というと建築主や管理組合の人達に、専門的な判断をどう伝え、理解してもらえるか苦労しますね。
大規模な事例が多く、しかも一般的な工法が少なかったので もう少し中高層の建物の補強方法を知りたい思っていたら、過年度のテキストにそれが掲載されているということで事務局の方に頂戴しました。
これは過年度のテキストで「耐震診断と補強設計の要点」「補強設計マニュアル」という、知りたかった事が満載されていました。
これは平成27年のテキストで(実物は青い表紙)「耐震診断と補強設計における課題」は役立つ内容でした。
弊社は、ストック活用の一部として耐震診断・耐震補強に関わりますので、調査方法や耐震補強工法の選択に関心があります。こうした実務者向けの無料講習会に参加することができただけで事務所協会に加入してよかったなと思えました。
それにしても連日講習会にに参加していると毎回設計事務所時代の同僚や指定確認検査機関時代の同僚と顔を合わせます。中には、しばらく連絡が途絶えていた人もあり近況を伝え合えることができました。やっぱり、引きこもりは良くないなと思ったところです。
自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-明日館講堂」に参加してきました。
現在、耐震対策工事が進められている重要文化財・自由学園明日館・講堂の修理現場の見学ということで以前から楽しみにしていました。
「講堂」は、1927年(昭和2年)に建てられ、昭和25年頃屋根葺替、昭和37年に部分修理、平成元年に屋根葺替・部分修理、平成13年に設備改修が行われ、平成26年11月から平成29年7月にかけて屋根葺替、耐震補強工事等が行われています。
築90年の建物が今まで比較的良好な状態で利用されてきたのは、この屋根の葺替を始めとした幾たびかの修繕工事がなされてきたからだと思います。
修理工事中の写真は撮影させていただきましたが、インターネットでは公表しないという約束になっていますので、工事看板だけ掲載しておきます。
設計監理は文建協、施工は大成建設東京支店で、見学では文建協の田村さん、大成建設の方から詳細な説明を受けました。
設計者の遠藤新は、自分が設計する講堂の構造の特徴・空間デザインの特徴を「三枚おろし」に例えて論じています。従来の講堂建築は、構造を梁行(輪切り)で設計されていたが、風や地震で倒壊することが多く椀木や控柱で補強するよう法規で決められていたそうです。
この明日館講堂は、市街地建築物法第14条による「特殊建築物」だった思われますが、その第14条は、「主務大臣ハ學校、集會場、劇場、旅館、工場、倉庫、病院、市場、屠場、火葬場 其ノ他命令ヲ以テ指定スル特殊建築物ノ位置、構造、設備又ハ敷地に關シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得 」とあり「必要な規定を設けることができる」とありますが、勉強不足で まだその規定は探し出せていません。
明日館講堂は、平面を桁行方向に三分割し、さらに前後に空間を設けて合わせて九つのゾーンを連続的でありながら、それぞれのゾーンにふさわしい機能を持たせています。遠藤新の空間デザイン論は、中々優れてると思いました。
この講堂は、耐震診断の結果「大規模な地震の際には倒壊の危険がある建物」であること、解体調査の結果、講堂の外壁が外側に倒れ、屋根の棟は中央を最大に垂れ下がっている状態だったそうです。その事は、既存の構造体が屋根の重量を完全には支え切っていなかった事を表しています。
補強工事に際しては、遠藤新の思想を残しつつ「基礎と軸組の健全化」「内在骨格の強化」「壁面・床面・屋根面の補強」の三点を軸に行われたと説明を受けました。
すでに屋根の葺き替えは完了し、新しい銅板屋根が黄金色に輝いていました。
既存建物にエキスパンションジョイントを設置して増築する建物で、エキスパンションジョイントのクリアランス(有効な隙間)が問題になりました。
隙間(クリアランス)は設計者が変位量の大きさにより決定します。
参考文献としては、ちょっと古いですが日本建築センター発行の「構造計算指針・同解説1991年版」(現在は、「2015年建築物の構造関係技術基準解説書」に統合)に「相互の建築物の一次設計用地震力(建築基準法施行令第88条第1項に規定する地震力)による変形量の和の2倍程度以上を推奨」と記載されています。
また1995年10月「阪神・淡路大震災における建築物の被害状況を踏まえた建築物耐震基準・設計の解説」では、エキスパンションジョイントのクリアランスは、大地震時にも建物相互が衝突しないように、構造計算により算出し設定することが望ましい」と記載されています。
施行令第82条の2【層間変形角】には、「建築物の地上部分については、第88条第1項に規定する地震力によって各階の高さに対する割合が1/200(地震力による構造耐力上主要な部分の変形によって特定建築物の部分に著しい損傷が生ずるおそれのない場合にあっては、1/120)以内であることを確かめなければならない」とあります。
なので上記による略算式としては、クリアランス=エキスパンションジョイントの地上高さ×1/200×2(双方の建物が地震で変形する為)×2倍となります。
10mだと 10000/100×2=200mm
20mだと 20000/100×2=400mm
30mだと 30000/100×2=600mm
という結果になります。略算式だと3階建て程度で200mmのクリアランスが必要ということになります。
問題になった案件は構造計算ルート1-1で、軒高9m以下鉄骨造3階の増築です。
層間変形角の計算は不要なのですが、X・Y方向の層間変形角を算出したところX方向で1/500、Y方向で1/1400でした。パラペット高さを9600mmとしてX方向の変位量は19.2mm、Y方向の変位量は6.9mmとなります。以上により一般的なクリアランスである50mmに設定しました。
既存建物に増築する場合のエキスパンションジョイントのクリアランスは、低層の建物は略算式によらず 実際の変位量、層間変形角から判断して決定した方が良いと思います。
「武士の家計簿」「無私の日本人」の歴史学者・磯田道史氏の「天災から日本史を読みなおす~先人に学ぶ防災」をいっきに読んだ。
地震・津波・火山噴火・異常気象。史料・古文書に残された「災い」の記録を丹念にひも解いている。
著者は若い時から災害に係る史料を収集していたとある。東日本大震災のあと、防災に係る本は沢山だされたが、この本は人間が主人公の防災史の本であり、災害から命を守る先人達の知恵と工夫が満載されている。
建築法も 近代以降に限ってみても国内外の災害に対応して修正されてきた経緯がある。
さて現代の建築基準法では、地上部分の地震力は、当該建築物の各部分の高さに応じ、当該高さの部分が支える部分に作用する全体の地震力として計算される。具体的な数値は、当該部分の固定荷重と積載荷重の和に当該高さにおける地震層せん断力係数を乗じて計算する。(Q=Ci・ΣWi)
地震層せん断力係数は、Ci=Z・Rt・Ai・Coで算出する。
そのうち地域係数Zは、「その地方における過去の地震の記録に基づく震害の程度及び地震係数活動の状況その他地震の性状に応じて1.0から0.7までの範囲内において国土交通大臣が定める数値」である。(令第88条、昭和55年建告第1793号)
熊本市はZ=0.9、八代市・水俣市・宇土市はZ=0.8である。
先般地震があった函館市もZ=0.9で軽減されているが、今後この地域係数は変更されるのだろうか。ちなみに東京はZ=1.0 で沖縄県がZ=0.7
これら軽減地での今後の耐震診断・耐震補強において地域係数Zは軽減したままで良いのだろうか、と ふと考えてしまった。
国土交通省国土技術政策総合研究所(以下、国総研)の平成28年(2016年)熊本地震による継続的な建築物等被害調査報告がとても興味深い。
第一次調査報告(その1)4月15日(本震前)、第一次調査報告(その2)4月16日(本震後)も読んでいたが、5月2日に発表された第二次調査報告(速報)は、熊本市内20棟、宇土市内3棟、宇城市内1棟の鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物が24棟調査されている。
一次調査(その2)で、益城町役場庁舎(RC3階建て)は、4/15には外観上無被害であったが、4/16には庁舎正面の搭状部分の頂部、中間部分の損傷がみられ、基礎底盤と周辺地盤に隙間が拡大。渡り廊下も損傷している。と報告されていたが、これまでは木造建築物の被害報告が大半だった。
今回の第二次報告書では特殊建築物(RC造・SRC造)のまとまった件数の学術的な視点での調査報告がなされている。
新耐震基準以降に建設された建築物や耐震補強がなされた建築物で、構造被害が甚大であった建築物を注視したい。
構造だけでなく各分野の多角的な詳細調査を行い、被害要因の分析がなされることがまたれる。
つらつらと昨年度の一級建築士設計製図試験の課題をみていた。スパン割りは、7m×7m=49㎡とか6m×8m=48㎡が標準のようだ。スラブ厚は200mm程度にしている。
設計製図の課題の場合は、建築面積から単位グリッド(スパン割り)の目安をつけ、敷地の形状・敷地ゾーニング計画から決定する。設計製図の場合、均等スパンが基本だろうから、7m×7mあるいは6m×8m等の、どのスパンが適正なのか判断しないとならないだろう。
私が一級建築士を受けた1982年今から34年前は6m×6m=36㎡、スラブ厚120mmだったように記憶している。戦前昭和12年頃のオフィスビルの図面をみていたらスパン割りは5.4m×5.4m=29㎡でスラブ厚120mmだった。
これにはコンクリート強度も関係があって、現在はFc24N/m㎡が標準だが、戦前はFc13.5N/m㎡。80年間の建築技術の進歩を感じる。
最近読んだJSCA(日本建築構造技術者協会)の資料で、「梁せい-スパン-コスト」に関するものを読んだ。これはエクスナレッジ刊「スパッとわかる建築構造」に書かれている。
RC造の大梁のせい、スパンを変化させ、適正断面を検討したもので、RC5階建ての4階の大梁を想定していた。6m×8mの場合で大梁のせいを変化させたとき、梁せいを小さくすると鉄筋量が増えコストアップにつながり、梁せいがL/11~L/10の範囲ではコストはさほど変わらないようだ。
久しぶりに一級建築士の設計製図試験の課題をながめてみたが、要求図面+面積表+計画の要点について記載しないとならなくなっており、より実務的というか、かなり幅広い建築知識が必要なものになつていると感じた。設備計画などは、設備設計一級建築士の試験を思い出した。
2013年に解体された最後の同潤会アパートの解体前の耐久性調査の報告書「同潤会上野下アパート材料調査報告」(2015年3月、日本建築学会・材料施工本委員会)を読んだ。
この同潤会上野下アパートは、竣工が1929年(昭和4年)である。
ここは建替事業でザ・パークハウス上野(三菱地所レジデンス)として生まれ変わるのだが、もう完成して入居開始が始まっただろうか。まあ 新しい建物にはあまり関心が無いので、この報告書についてだけ書いておこう。
今、戦前の鉄筋コンクリート建築物のコンバージョン・プロジェクトに参加しているので、どうしてもその頃の建築物や法令に触れることが多い。
この調査報告書では、コンクリート採取数が1号館で38本、2号館で31本 合計69本と4階建て延べ床面積2,093.99㎡(1号館556.80㎡、2号館1,537.19㎡)と約30㎡/1本となり採取コアが多い。現在の耐震診断の基準である3本/階から見ると約3倍の数となっている。
このコンクリートコアの圧縮強度試験は、柱・梁・壁・床と部位別と全体が示されていて全体で平均圧縮強度21N/m㎡という結果が報告されている。ただし床データを除外した場合には平均が19.5N/m㎡、標準偏差6.1N/m㎡となっている。
戦前の建物の構造部位別の調査報告というのが少ない。「同潤会アパートの施工技術に関する調査研究」(古賀一八他、2004年)で同潤会大塚女子(1930年)、同潤会青山(1927年)、同潤会江戸川(1934年)では、平均圧縮強度の部位別の内訳が不明なため強度や標準偏差の単純比較ができない。
今、関わっているプロジェクトでも数年前に耐震診断調査が終わって構造評定を取得している建物なのだが、コア採取が内部壁だけなので良くわからないことが多い。
ともあれ、学術調査でこれだけ念入りな調査を行い、調査報告書が世にでてくることは大変ありがたいことだ。
執筆者の一人から案内があり、Amazonから取り寄せて読んでみた。
とても解りやすく、豊富なイラスト・写真で木構造を巡る問題を説明している。
さすが山辺構造設計事務所
けして初心者向けの本ではない。私が興味深く読んだのは「不整形の建物の場合の構造計画」「スラブ状ベタ基礎の問題点」「壁量計算用の床面積の算定」等。
木造の設計・耐震診断・調査・補強方法まで、木造住宅に携わる人にとっては必需品のような本に仕上がっている。
最近、木造2階建て住宅の許容応力度計算の計算書をペアチェツクする機会があったが、小屋裏物置などはH12年国交省告示第1351号で規定されているにも関わらず、まったく指摘がされてなく壁量算定が過小評価されていた。建築確認許可を取得した時点の指摘事項は、不整合箇所の指摘と是正のみで、最近の審査は、どうやら間違い探しに終始しているような傾向が見られる。
かって四号建築物(三号も)の建築確認申請の審査をしていたことがあるが、木造住宅を設計している人達の技術が低下しているなぁと感じたものだ。
意匠設計者が木造伏図も書けずプレカット屋さんに全面依存し、 筋違計算も構造事務所に依頼すると聞いて 、確認申請に筋違計算書も伏図も不必要となり、「書かないから」「書けない」となってしまったのだろうか。
生産現場と乖離して図面だけ書いていると歳をとっても本当の事は何も知らない資格者(一級・二級建築士)ではどうなんだろうか。
久しぶりに「建築知識」を買ってみたが、イラスト・画像満載でリアルにわかった 気がするだけの本に進んでいるのではと思った。
まぁ こんなことを書いても年寄りの冷や水になりつつあるが・・・
飛騨高山市内の伝統構法建築物を耐震改修する場合は、このマニュアルに沿ってという事で、高山市役所でもらってきた。高山市のサイトでもPDFで公開している。
労作である。長年にわたる調査研究に基づき限界耐力計算に近い計算方法である近似応答計算で耐震計算を行っている。
高山市から耐震診断・耐震改修費の補助金をもらう場合は、このマニュアルの講習修了者に耐震診断を頼まないとならないらしい。受講者は、ほとんど高山市内の人達。ちょつとクローズ気味の制度。
補助金を貰うかどうかわからないが、高山市内で伝統構法の耐震改修をする場合は、このマニュアルに沿って実施してみたいと読み始めた。
気がつけば、最近は構造関係の文書ばかり読んでいる。どうも関心事が広がりすぎて自分でも制御しきれない。
爺さん婆さんが二人で営む「拉麺専門店」を指向していたのだが、だんだん「食堂」になりつつある。
ともあれ、木造に関心がある人には読んでもらいたい一冊。
京都市役所で売っていたので購入。
帰りの新幹線で概略目を通してみたが、建築基準法の成立(昭和25年)以前にその多くが建てられた「京町屋」の実証的研究に基づいているので中々面白かった。
平成15年に「京町屋耐震調査」が行われ、約30軒の京町屋を対象に詳細な検討が行われた。「京町屋」は、伝統的な軸組構造だが、下記のような構造的には幾つかの既存不適格箇所が生じている。
ここで既存不適格は構造的欠陥ではない。あくまでも現行建築基準法の仕様規定を満足していないという事である。
社寺仏閣を始めとした伝統的軸組構造の新築・増築には、性能規定型の設計方法である「限界耐力計算」を用いるのは以前から知られていたが、この本は木造の限界耐力計算を詳しく解説し、耐震改修方法を説明している。
写真は、紀尾井町パークビル・1976年に建てられた旧耐震基準の10階建てSRC、RCのオフィスビル。
テナントビルなので建物内部に一切補強工事をしない。内部は使いながら施工する為に、アウトフレームグリッド工法(鉄骨造外付耐震架構)を採用している。
単に耐震性能を満たすだけでなく耐震補強材によって建物の新しい顔を出現させている。
「外付け耐震補強」は、新しい補強方法ではない。テナントが入居したままの補強工事が可能なこと、意匠性に配慮したい建物などの場合に、これまでも事例がある。
例えば「宮田商店伏見ビル」(愛知県名古屋市)
ただしデザイン的完成度で言えば紀尾井町パークビル。
上の写真は、四国銀行本店(高知市)の耐震改修後の写真で縦格子鋼板耐震壁が採用されている。
t=25のフラットバー格子とt=10のパネル材が市松に配置されている。開口率が50%なので採光も確保できている。
この縦格子鋼板耐震壁は、大成建設が特許を取得している。
桜設計集団と鯰組の設計施工標準化プロジェクトによる木造住宅の構造見学会に行ってきた。
奈良県吉野で天然乾燥した杉の柱・梁とパネル床(国産杉直交三層・Jパネル)の現し
この床のJパネルは、準耐火構造の床に現しで使えるということで以前カタログと見本を(協)レングスさんからいただいていた。
吉野杉もJパネルも実際施工された現場を見ると きれいだなぁ 良いなあと思った。
聞くところによると準防火地域だそうだが、外壁は落とし込み板壁で(杉板30厚+24厚)ガリバリウム鋼板壁で、ガルバリウム下地に石膏ボードを用いない防火構造となっているとのこと。
軒裏は、垂木・面戸板・野地板12厚現しで準耐火構造軒裏になっているそうだ。
所用の途中に しかも路駐して見学をさせてもらったので、ほんのわずかな時間しか滞在できなかった。
後で知ったが鯰組の岸本さんは、私が学生時代から幾度か叱咤激励をいただいていた真木建設の故田中文雄さんの御弟子さんらしい。挨拶してくればよかった。
防火地域内に建築基準法第6条第1項第4号建築物(木造住宅)を建築する場合、構造を準耐火構造にすることによって、100m2未満であれば建築可能となる。
木造2階建てで準耐火建築物(イ準耐)とする場合の層間変形角の確認はどうするか。
層間変形角の確認要求は施行令109条の2の2で規定されており、令第10条の確認特例の条文には該当しない。
令109条の2の2
法2条第九号の三イに該当する建築物の地上部分の層間変形角は1/150以内でなければならない。ただし、主要構造部が防火上有害な変形、き裂その他の損傷を生じないことが計算又は実験によって確かめられた場合においては、この限りではない。
確認申請の4号特例は、施行令第46条について免除されてはいない。
この事について特定行政庁や指定確認検査機関では、どのような取扱いがされているだろうか。
「2」か「3」が適用される場合が多い。
準耐火建築物の「防火設計指針(平成5年6月25日)」p73では、木造軸組工法の場合として「一般的に層間変形角が1/120 と1/150程度の差であれば・・・・・木造軸組工法については、施行令46条に定める必要壁量に1.25を乗じた数値により設計すればよい。」と記載されている。