非常用照明器具は、マーケット・病院・劇場・ホテルなど多数人の集まる場所で、火災その他不慮の事故で停電したとき、居合わせた人々を速やかにかつ安全に避難できるように、室内や通路を照らし出す照明器具。
既存建物を調査して思うのは、この非常用照明があまり大事にされていない事だ。
電池が無いもの、電球がないもの、非常用照明そのものがなくなってしまったりと 扱いがおざなりにされている建築設備のひとつ
テナントが入居しているビルでは、工事区分がビル所有者工事とテナント工事区分とに分けられたりするが、防災設備関係はビル所有者工事区分になることが多いせいか、店舗の照明器具は新品だけど、非常用照明だけはタバコヤニで黄ばんでいたりする。
■非常用照明器具の基本要求機能
【1 照明器具】
(1)直接照明で、床面において水平面照度で1lx(蛍光灯の場合は2lx)以上確保できること(地下街の地下道は10lx以上)
(2)常用電源が保たれた時、予備電源により即時点灯する光源を有すること。
(3)周囲温度の40℃の雰囲気の中で30分間点灯を維持できるものであること。
(4)照明カバー、その他付属するものを含み、主要な部品は不燃材料にて造り、または覆うこと。
■電源
電池内蔵型と予備電源別置型がある。どちらを選定するかは建物の規模、構造、用途、取り付け場所、配線の方式、耐熱処理の有無、電源の種類などにより異なるため、その都度検討する必要がある。
【1、電池内蔵型】
電池内蔵型は配線規制を受けない。また、予期しない事由により、器具に至る配線がしゃ断されても点灯するので、安全で非常用照明装置を設ける目的に合致。配線規制のないこと、予備電源装置が不要で施工が簡単。
【2、予備電源別置型】
予備電源を別置する場合は、配線は耐火規制を受けるが、予備電源の寿命が長く、電源確保の信頼性が高い。
また、内蔵電池がないので、器具の意匠上も有利。
一般的に電池内蔵型は設備費は割高だが、予備電源が不要で、配線規制を受けないことで増築、改築の場合や小・中規模の建物に適している。大規模の建物では、予備電源装置が必ず設けられるので、電池内蔵型より予備電源別置型の方が経済的。
■非常用照明器具の配置設計
【 照明設計上の注意事項】
(1)照明範囲〔令第126 条の5、告示1830 号、通達住指発第44 号〕
照明は直接照明として、床面において水平面照度で、1 lx 以上の照度を確保します。蛍光灯を使用する場合は、常温において、1 lx 以上というのを、2 lx 以上におきかえて設計する。
床面必要照度は、避難行動上のさまたげとならない隅角部や居室、通路、階段などで柱の突出による陰の部分や物かげなどを除いた部分で規定の照度が確保できるように計画する。