改正建築物省エネ法(令和4年6月17日公布)により、2027年(令和7年)4月(予定)から、「全ての新築建築物」に「省エネ基準への適合」が義務付けられ、また、4号特例の見直しにより、木造建築物に係る構造規定等の審査・検査が省略される規模が大幅に縮小する。
また、2026年(令和6年)1月以降に建築確認を受けた新築住宅について、「住宅ローン減税」を受けるためには、原則として「省エネ基準への適合」が要件となる。
このような大幅な制度改正に対応するため、省エネ計算に不慣れな方や、4号特例の見直しに伴う構造関係資料等の作成へ不安を抱える設計者は多い。
この改正により、省エネ基準適合義務となる建築物の棟数は、改正前の14,000棟から改正後は445,000棟と約32倍に審査件数が増加する。木造住宅等は仕様基準に基づいて省エネ設計されるものもあるので、一定量減ずるものと思われるが、それにしても大幅な業務量の増加になるだろう。
住宅性能評価・表示協会が発表している「省エネ適合性判定に係る審査実績」を見ていると、日本ERIが全体の25%程度、ビューロベリタスジャパンが全体の約10%程度の審査実績となっている。審査実績のすくない機関は実質的な省エネ審査担当者が少なく、審査経験が蓄積されない傾向があるので、省エネ適判機関の選定は注意する必要がある。
弊社が省エネサポートをしている経験からも、省エネ担当者が一人しかいないため省エネ適判も確認申請もワンストップだというわりには事前受付審査期間が長時間だったり、省エネ審査を実質担当している補助員が、建築士無資格者であった為、質疑が頓珍漢であったこともある。質疑ぐらい省エネ適判員が確認してから送るべきだ。現状でも問題が噴出している現場が対応できるのだろうか
又、現在の省エネ適合判定では、モデル建物法による計算が主流だが、今後の省エネ適合基準引き上げやZEB対応に伴い標準入力法を用いるケースが増えるだろうと予想されている。
ただでさえ設備設計者・環境設計者の人材が少ない建築業界。どうなるかな。
【今後の規制強化の予定(非住宅)】
2024年 : 大規模建築物に係る省エネ基準の引き上げ BEI=0.8程度
2025年 : 小規模建築物の省エネ基準への適合義務化
2026年 : 中規模建築物に係る省エネ基準の引き上げ BEI=0.8程度
遅くとも2030年 : 中大規模建築物について誘導基準への適合率が8割超えた時点で、省エネ基準をZEB基準(用途に応じてBEI=0.6又は0.7)に引き上げ、小規模建築物についてBEI=0.8程度に引き上げ・適合義務付け。あわせて2022年に引き上げた誘導基準の更なる引き上げ
以上が予定されている。