今や、既存建築物に増改築等の確認申請を提出する場合に必須となった「既存不適格調書」。
確認申請書の副本(構造計算書含む)が保存されており、1敷地1建物ぐらいのものは、建築基準法の各条文の履歴をチェックしていくだけなので、多少勉強すれば作成するのは容易だろう。しかし構造関係の既存不適格を判定するのは、結構難易度が高い。構造事務所に依頼しても受けてくれるところは そう多くない。
1敷地に多数の建物がある場合、例えば工場・学校・病院などで、その中の1つの棟に増築等をする場合は、既存不適格調書を作成する前の事前の調査、書類の整理が必要になる。
これが結構大変な事務量となるのだ。大概の設計者は、まずこの事前調査でギブアップする。教科書はなく、その人の持つ総合力が決め手となる。
とある設計事務所で公立校のひとつの棟にEVを増築する基本設計を受注したが、担当者が2ケ月半かかっても既存不適格調書が出来上がらないと弊社にヘルプを求めてきた。増築の図面はとっくに完成しているのに、発注仕様書にある「既存不適格調書」の作成が終わらないのだ。担当者は、よく本を読んで勉強しているようだが、毎日悶々としていたようだった。相談に乗ってあげて、少しは雲が切れたようだった。上司に聞けばいいではないかと思うかも知れないが、上司の時代は、こういう書類は必要なく、既存不適格関係に詳しい設計者は稀である。
既存建物の書類を調査する場合、既存建物の確認申請書副本が保存されていない場合、図面類がまつたく残っていないが記載台帳証明書のみがある場合、役所に建築確認台帳が残されていない時代の場合(例えば名古屋市では平成4年以降のみで、昭和の時代の台帳が残されていない)、調べてみたら検査済証がなかった場合など、様々なケースがある。
もっとも「既存不適格調書」は、建築確認済、検査済がある場合や、それらが台帳証明で確認できる場合に作成する図書で、検査済証がない場合は「現況調査書」というのを作成する必要がある。



























