生産施設の建築関連法調査に着手

 敷地面積 約57,000㎡、延床面積 約39,000㎡、総棟数 約37棟の既存の生産施設(工場)の建築関連法調査業務に着手した。

 9月の中旬に2日間にわたり現地詳細調査を行う。

 大規模な調査を2日間で行うので、調査スタッフは13名となった。

 まだ1ケ月前だが、前泊を含めた宿泊先や打合せ会食先の予約。調査資料の整理、デジカメ、ヘルメット、空調服の用意等と準備することが沢山ある。10名程の宿泊先をひとつのホテルに予約するのは大変だった。ホテル代も高騰しているし・・・。事前にWEBで調査員会議も開催し業務の内容を徹底しなけばならない。今回の調査から副責任者を選任し、調査員に対して連絡・調整をしてもらっているので、爺さんはラクチンだ。

 「建築関連法調査」としているのは、弊社の場合は、建築基準法のみならず、都市計画法、工場立地法、消防法、県市条例と建築プロジェクトに関連する法規制全般について調査することが多いからだ。

 今回の調査にあたって、建築基準法適合状況調査にあって用意してもらいたい書類の表を作成した。もうだいぶ前に作成したものがあったが、今回は全面的に更新した。

 また、建築基準法適合状況調査の一般的な手順も付け加えた。更に調査対象棟数が多いので棟別に受領した書類・図面がわかるように新たに「既存建物書類チェックシート」も作成した。

 既に今春 現地下見、調査概要は作成していて、質疑も上げているので、クライアント側から既存図面等を用意してもらうと準備は概ね整う。

 今回の調査は基本的調査でPHASE-1となり、2025年8月から2025年12月までの業務期間となる。その後 本格的な建築基準法適合状況調査(新ガイドライン調査)はPHASE-2で、非破壊、微破壊、既存図面の復元、構造計算書の復元等の業務を2026年に実施する予定である。

 そのあとは、どう業務が展開していくは調査の状況を見なければならない。

「改訂版 既存不適格建築物の増改築・用途変更」大手前建築基準法事務所株式会社

 建築基準法では、既存建築物は、「現行法適合建築物」「既存不適格建築物」及び「違法建築物」に分かれます。古い建物が既存不適格建築物ではなく、新築時の確認申請済証、検査済証があり、その後の法律で不適合箇所が生じたものが既存不適格建築物です。

 この既存不適条項への訴求と緩和の規定は、建築基準法の中でも最も難しい部分と言われており、その内容を熟知し活用するのは容易ではありません。

 本書は、わかりやすく解説されており、既存建築物の業務に携わる者にとっては必読書的な存在になるでしょう。

 先に紹介した「建築基準法 改正履歴確認のポイント」大手前建築基準法事務所株式会社共編と合わせて活用されることをお薦めします。

 さて既存建築物の法適合状況調査を行う場合には、その調査目的を明確ににしておく必要があります。

1、既存建築物の増築や用途変更等に係る建築確認申請の手続きのため・・・一般的です

2、不動産の売買に際する資産評価の資料とするため・・・最近、リート投資法人に聞いた話では、「建築基準法適合状況調査(新ガイドライン調査)は、法的位置づけのない任意の規定であり、民間指定確認検査機関の交付する書類であるから、仮に適合証明が交付されたとしても検査済証に代替できるものではないの不動産投資の世界では、検査済証のないものとして扱う」と聞きました。あくまでも取引のあるリート投資法人で聞いたことなので全てのリートが同じ扱いかどうかは知りません。

3、既存建築物を用いた他法令の許認可を受けるため・・・弊社で最近多いのは、検査済証のない既存建築物の建築基準法適合状況調査を行い、法適合を証明し「倉庫業を営む倉庫」(陸運業)の許可を受けるというものです。既存建築物も色々で、あまりに老朽化が進んだもの、建蔽率がオーバーしているもの、もともと倉庫ではないので倉庫にすると積載荷重の設定が異なり補強工事が過大となるもの等。

 初期に渡される数少ない情報・図書で物になるか判断をしていかないとなりませんので、結構集中して進めます。

 まあジャンクな物件の中からは、たまに金が出ますので、さながら砂金とりの気分になりますね。

階避難検証法による改修工事完了

 港区内の延12,000㎡の事務所ビル。1フロア1,500㎡で機械排煙設備(天井チャンバー方式)が設けられていたが、テナント区画発生(天井裏まで間仕切壁)により法不適合箇所が生じるビルを階避難検証法により機械排煙設備、防煙垂れ壁を緩和する改修設計が2024年6月から始まり、現場調査、テナント図の作成、検証法の計算を経て2024年11月末に日本建築センターから「改修計画の法適合性審査報告書(意匠)」が交付された。

 今回、改修計画の第三者機関による設計と工事後の現場検査により適合性を審査してもらったのは、この建物がリート案件(不動産投資)だったからだった。今後も所有者は変遷していく可能性があったので、弊社からクライアントの信託銀行・リート投資法人に提案したものだった。

 設計の結果、一部鋼製不燃扉を防火2号(遮煙)に改修する工事が必要になり、2024年12月から2025年4月までは、建具施工図の確認、試し施工で実際の使い勝手と工事時間を確認した。そのうえで一部改良を加えて建具施工図の承認。テナントとの工事日の調整を行った。実際の工事は2025年4月連休開始とともに始まり、作業は土日限定で行われ6月上旬には工事は完了したので実質工事期間は2か月だった。当然ながら工事監理も土日に現場に足を運ぶこととなった。このトライアル施工で不具合を確認して進めたのは、その後の工事の出戻りがなく、とても良かったと思う。

 日本建築センターに施工後の現場検査をしてもらい6月末に「改修計画の法適合性審査報告書(意匠)」(計画変更に伴う追加審査)及び(現地の法適合性調査)が交付された。

 ビルの所有者・管理者が変わるという事で「館内細則」「貸方基準書」、テナント向けに「避難検証法取扱い書」も弊社で作成したが、新ビル管理者からの質疑がさみだれ式に続き、7月は落ち着かなかった。

 「避難検証法取扱い書」は、避難検証法の一般的な注意事項を記載し、テナントが内部計画図(内部間仕切り図)を作成する際に、計画図に記載する事項を書き、計画図段階で避難検証専門事務所(弊社)の確認を経る手順とした。

 ともかく1年近くのプロジェクトは無事完了した。

 

ECI方式

ECI方式(ECIほうしき、英語: Early contractor involvement、アーリー・コントラクター・インボルブメント方式)あるいは先行発注型三者協定方式とは、主たる元請業者がプロジェクトの初期段階で関与して設計段階への意見を提供する建設契約の一種。

従来、設計段階の終わりになってから請負業者を参加させる設計-入札-施工方式(DBB方式)とは対照的。

このモデルにより、請負業者はスキームの設計に情報を提供し、バリューエンジニアリングの変更が提案可能となる。

弊社では、以前より既存建築物の活用に係る建築工事については、ある時期から建築主の了解を得て建築業者を選定し、プロジェクトの情報開示を行い色々な技術的提案を受けている。ただ規模が比較的小さかつた事もあり、プロジェクト建築工事会社として内定してから工事請負契約までの期間もさほど長くなく、検討業務もさほど過大なものでなかったので、その業務報酬は話題にもならなかったし実際発生する事もなかった。

弊社から工事会社を推薦しても、建築会社から一切のバックマージンを貰わない事を宣言している。あるいは特定の材料・構法等を指定し採用されたとしてもバックマージンをもらう事はない。そうすることで仕事を通じて親しくなっても工事金額の査定、チェックには厳密でいる事ができる。

現在進行形の既存建築物のプロジェクトでは、このECI方式で建築会社の書類選考を実施している最中である。

ところが要領を受け取った建築会社も、言葉は聞いたことがあっても、実際に経験した事がある人はいないようで、とりわけ上層部に戸惑いがあるようだ。勿論、弊社もECI方式に基づく本格的な業者選定は初めてで、役所の要領を書き換えて単純化したが、それでも固い固い書類になった感は否めない。メンゴ。

大規模でもあり工事仮設計画や安全計画、エスカレーターやエレベーターの早期発注もあり、またVEを含む工事費の調整なども勘案しECI方式を提案したのだが、「令和の時代」の大規模な既存建築物の工事発注方式では最も適切な方法なのではないかと思っている。

現場

連休初日の日曜日、

鋼製不燃扉を防火二号(遮煙)に改修工事中の現場へ

告示仕様での防火二号への改修、

テスト施工して、施工図を修正・微調整して本工事に臨んだので

スムーズに施工は進んでいるようだ

隙間なく施工できていた

事務所ビルの居ながら改修なので、土日祝日が工事日となるため

工事監理も、それに合わせて出向かなければならない

この現場は、6月中旬まで土日施工で工程表が提出されている

既存建築物を相手にしていると、どうしても夜間とか土日祝日が仕事になる

休息や個人的時間をどのように確保するのかが一苦労

まあ、用事のない時は昼間でも寝ているのだが

新ガイドライン調査への懸念

 2025年4月1日から 既存建築物の増改築等の確認申請には、新ガイドラインに基づく現況調査書の作成、添付が必要となる。

 国土交通省から2024年12月に発表された、この新ガイドライン(第1版)。3月末までには、木造以外の構造についてや、特殊建築物に言及した第2版以降が発表されるのかなと思っていたが、どうやら第1版のまま新年度を迎えるようだ。(2025年3月25日現在)

 ここで個人的意見、懸念を記しておきたいと思う。

1、全て建築士(設計者)に責任をおっかぶせてきた。建物全体の中の、わずかな調査箇所で適法か否か、あるいは既存不適格なのか判断するのは勇気がいる。

2、新ガイドラインに基づき現況調査をしたとしても検査済証のない既存建築物の増改築等の確認申請を受け付けない特定行政庁、指定確認検査機関が多数あるだろう。まず受付するか否か事前に確認しておかなければならない。

3、新ガイドライン調査、作成費用が嵩む。増改築等確認申請手数料が増額になる。つまり建築主の費用負担増となるだろう。

4、街場には、違反建築物が溢れている。既存建築物となれば尚更で、違反建築の宝箱みたいなものだ。どの段階で是正するのか、確認申請前に是正するのか、あるいは計画の増改築等で是正工事をすれば良しとするのか。確認申請決裁者が判断すればよいのでしょうかね。

5、多くの建築士は、既存建築物の増改築等の相談を受けたら右往左往するだろう

以上 とりあえずの懸念

深夜のお仕事

 華金の深夜に東京を横断して既存建物のエレベーター入れ替えのための設計調査に立ち会いました。

 25時のテナントの閉店を待って調査開始。上の写真はエレベター。

 こちらはエスカレーター。保守点検を兼ねたメーカーの技術者と設計担当者による調査で、色々な個所を計測していました。エスカレーターも新規入れ替えなのですが、もしかしたらエスカレーターの構造体であるトラスは残して現行法の層間変計角はクリアーできるかも知れないということで、詳細な調査が進みます。

 今日はメーカーから設計3人、技術5人、立ち合い2人、警備員さんと深夜の店舗はにぎやかです。

 それにしても夜中は寒い。

ジャンク不動産

 「ジャンク」(junk)とは「廃品・ガラクタ・不用品」を指すらしいが、「ゴミ」とは異なり、まだ利用できるものとのこと。

 日本FP協会ジャーナル2024年12月号に「『問題不動産』の解決に向けたFPアドバイスという記事を、クライアントから見せてもらったら「問題不動産」として

「法的な問題があり利活用・処分が困難な不動産」として1、接道義務違反。2、違反建築物。3、既存不適格を挙げている。

 また「法的な問題はないが利活用・処分が困難な不動産」として1、境界が不明または境界トラブルがある。2、相続登記をしていない。3、私道に持分登記をしていない。

 ファイナンシャルプランナーの立場から見たら、こうした案件が「問題不動産」なのだという。問題不動産=ジャンク不動産ということではないだろうが、近いものを感じる。

 一方不動産屋さんから見ると、1、建物の老朽化が進んでいる。又は倒壊寸前の建物。2、ゴミ屋敷。3、事故物件。4、過疎地の一軒家。5、誰も住んでいない実家等がジャンク不動産らしい。

 私から見ると「ジャンク不動産」とは、1、検査済証がない。2、違反建築箇所が多い建物。3、再建築不可物件(接道)となる。

 「検査済証がない」と既にリート(不動産信託)案件の商品とはならないし、売却もしずらかったり、値引きさせられる金額が多いと聞く。また今後日本社会で建築ストックが積みあがってくると更にジャンク枠入りが濃厚である。「違反建築箇所が多い」のは、あまりに違反箇所が過大だったりすると是正工事費がかかり、投資対効果が悪くなる。「再建築不可物件」は、要するに接道義務違反である。

 こうして考えると、さながら弊社は「ジャンク不動産・専門事務所」と言えるかもしれない。

清水建設 あと施工アンカーの設計・施工法に初の強度指定

 清水建設(株)はこのほど、日本ヒルティ(株)の協力を得て、短工期・低コストで鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体(コンクリート躯体)に鉄骨小梁を接続する「あと施工アンカー」の設計・施工法を確立、この設計・施工法の信頼性を証する初の強度指定を国土交通大臣から取得した。

https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2024/2024057.html

2022年3月の国土交通省告示第1024号の一部改正後、強度指定を取得した「あと施工アンカー」については、用途が拡大し、従来の既存コンクリート躯体とその耐震補強部材との接合に加え、鉄骨小梁など常時荷重を受ける部材との接合にも適用が可能になっていた。

 鉄骨階段の取付け、床開口における小梁の取付け等、工期短縮とコストダウンに多大な寄与は間違いない。

 清水建設と日本ヒルティに感謝!!

 

てら小屋チーム・第15回WEB打合せ

 プロジェクトの検討課題が多い時は、隔週開催していたWEB打合せ。このところ一ヶ月に一回だが、今回から新たに中部地域から2名参加したので新鮮だった。

 冒頭、現在進行形のプロジェクトのCG下図を基にデザイン検討の打合せ。大規模改修工事における鋼製建具の工事別分類方法とキープラン、建具表の書き方について説明。そして2025年5月に開催が決まった「てら小屋セミナー2025」の企画案について担当者から説明があった。

 今回のメインは、地階RC、1・2階木造の混構造の検査済証の無い建物を建築基準法適合調査(ガイドライン調査)を行い増築申請した事例で、実際にガイドライン調査機関に提出した書類一式を見てもらい説明を加えた。一般的なリノベ―ションの為の調査と大きく異なるのは、弊社では建築基準法の条文毎に適合、不適合、既存不適格を明確にするチェックリストを作成する事にしている事。

 次回は1月。要望により重量鉄骨造検済無し建物のガイドライン調査、増築申請、検査済取得をした事例について説明することにした。

新ガイドライン「既存建築物の現況調査ガイドライン(第1版)」

2024年12月6日国土交通省から「既存建築物の確認審査の円滑な運用について(技術的助言)」国住指第318号が発表された。

これは、「法第6条第1項第4号に掲げる建築物のうち改正後の法第6条第1項第2号に掲げる建築物に該当する建築物の増築、改築又は移転をしようとする場合には、建築確認・検査における審査・検査の項目が増加するとともに、大規模の修繕又は大規模の模様替をしようとする場合には新たに建築確認・検査を受けることが必要となるため、既存建築物に係る確認審査等(法第18 条の3第1項の確認審査等をいう。以下同じ。)の業務が増加することが見込まれる。」という事が予想されるため。そして新たに「既存建築物の現況調査ガイドライン(第1版)」が公表された。

 今回の新ガイドラインの公表に伴い、「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(平成26 年7月2日付国住指第1137 号により通知。「旧ガイドライン」)は、2025年(令和7年)4月1日をもって「既存建築物の現況調査ガイドライン」に統合・一本化され廃止される事となった。

 直近の建築関係者での集まりでも、2025年4月1日から法6条1項4号から新2号への移行に伴いリフォーム業界には激震が走っていると聞いた。新築そっくりさん的な大規模なリフォームを売りにしてきたところ。再建築不可地(未接道)の大規模リフォームの会社等では影響が大きいだろうし、技術的に対応できないところは淘汰されるだろうと言うような話が出ていた。

 今回公表された新ガイドライン。今のところ木造2階建ての一戸建て軸組工法を想定したチェツクリストだけだし、まだ第1版なので、今後の継続的な発表を待ちたいと思う。

「建築ストックの選択」JRMA2024.12

日本不動産経営協会(JRMA)2024年12月例会で「建築ストックの選択」というテーマで話をしてきました。JRMAは不動産経営者の団体で、月1回の例会の外部講師として招かれました。

所有する建築ストック(既存建築物)が改修等の岐路にあるとき、どのような選択肢があり、それぞれにどんな課題、留意事項があるかという整理をしました。

5つに分けた選択肢のそれぞれで特に留意する事をキーワードとして説明しました。赤字は弊社で特に留意、重視している事項です。

これから、高度経済成長期の建築ストックが築30年、40年の大規模改修時期を迎える一方、人口減少時代、マーケットが縮小していく社会のもとで、どういう事に留意する必要があるかということを、弊社で担当した実例の紹介を交えて説明しました。

不動産経営者ばかりなのか、実に質疑応答が多かったです。それとびっくりするほど多くの人と名刺交換をしました。

講演の後 近くの居酒屋で30名ほど参加の懇親会に。

爺さんは、喋りすぎて疲れました。

てら小屋チーム・第14回WEB打合せ

 今までは、単独プロジェクトの設計チームのWEB打合せだったが、同時並行で進んでいるプロジェクトも増えてきたことから、今回から名称を「てら小屋チーム」WEB打合せにした。

 そこで相談が増えている「新2号建物の建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)」について説明した。

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 2025年4月より建築基準法第6条1項4号の木造2階建てが、新2号に改正されるのに伴い、木造住宅等で大規模なリフォームをする場合に建築基準法上の「大規模な修繕」「大規模な模様替え」に該当し建築確認申請を提出する必要が出てきます。

 木造戸建て住宅の建築確認申請検査済取得率は、1998年(平成10年)当時は、取得率40%以下でした。大規模なリフォームの実施要望がある戸建て住宅は、築20年から築30年ぐらいの建物と言われていますから、今後戸建て住宅の大規模リフォームの相談案件の過半は検査済証がないので、建築基準法適合状況調査のあとに建築確認申請を提出する必要が増えてくるものと思います。

 建築基準法適合状況調査に沿った調査(ガイドライン調査)や改修設計に精通した設計者は多くありません。現在弊社には、全国から一級建築士を始めとした設計者から多くの相談が寄せられています。

 そこで緊急的に、検査済み証が無い建物の建築基準法適合調査に沿った調査(ガイドライン調査)→申請→改修設計→各種確認申請→検済取得のプロセスを、ひとりひとりがイニシアチブをもって実務を行えるようになるためのガイダンスを今後継続的に開催することにします。

 まずは建築基準法適合状況調査を木造から始め、非木造・特殊建築物に知識・技術を発展させてください。

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 質問も多く2時間も喋ったものだから病み上がりの身体には堪えた。

既存RC造の開口補強工法

既存コンクリートの構造体に新たに開口を作りたい場合。鉄筋を切断する為に開口補強が必要な場合が多々ある。今回、開口寸法・厚み等が同一条件で幾つかの工法を比較した。耐震壁で開口両面施工を前提にしている。

1、鋼板接着工法

鋼板接着工法は、構造物に鋼板をアンカーボルトで固定し、空隙にエポキシ樹脂を注入し、鋼板をコンクリートに接着する工法で、鋼板とコンクリート躯体の間にエポキシ樹脂を注入することで一体化を図り、構造物の耐力及び剛性の向上を指向している。
本件で検討した場合、必要な鋼板は割と大きく、1枚の鋼板の重量も重くなるため現場での取り扱いに難がある。又アンカーボルトを数多く穿孔させないとならない。しかも壁の両面に施行しなければならないので、他のテナントが可動中の建物で施工するには振動、騒音の発生があり採用が難しい。

2、CFラミネート工法

CFラミネート工法は、構造部材のコンクリート表面に、CFラミネートを粘性の高いエポキシ樹脂系接着剤を用いて貼り付ける補強方法です。
アンカーボルトを使用しないため振動、騒音は少なく。ラミネートが50mm幅の帯状の素材の為に施工現場での取り扱いは容易です。


ただし、欠損した鉄筋の剛性をラミネートの接着力で置換する為に、補強範囲が広く必要になり、開口部の周囲にそれだけの施工スペースが必要となるが、そのスペースが確保できるかが課題。

3、リダブル工法

この工法は、鋼板接着工法とCFラミネート工法を組み合わせた工法です。炭素繊維シート、炭素繊維プレート及び端部専用定着金物を用いて補強するものです。
アンカーボルト穿孔の騒音、前述の補強工法に比べて振動は少なくなり、補強範囲も狭いものとなります。
ただ、メーカーが炭素シート50m巻、接着剤18kg缶のみでしか販売しない為に、施工箇所が少ない場合は、少量の材料と短時間の施工時間で済む場合でも高上りのものとなります。

既存コンクリートの開口補強は、比較的大きな場合、例えばエレベーターシャフトの床開口の場合は、スラブをカットして鉄骨梁など補強するなどすればよいのだが、梁、壁、床で空調ダクトとか換気ダクトとかの新設スリーブを抜く場合の補強方法は、色々と検討の余地がある。

「木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について」

2024年10月3日国土交通省から発表された「木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について」を見ていた。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_kijunhou0001.html

https://www.mlit.go.jp/common/001766698.pdf

旧法6条1項4号建築物から新2号建築物になる2階建て木造一戸建て住宅がリフォーム。リノベーションを行う場合に大規模の修繕又は大規模の模様替の建築確認申請が必要になるということを注意喚起するもの。

新2号建築物は階数2以上又は延べ面積200㎡以上で、これまで無法状態だった旧4号建築物のリフォーム、リノベーションに法規制の網がかぶさってきた。軸組だけ残すスケルトン・リフォームやスッポッポン・リフォームも確認申請が必要となる。

例えば木造2階建で耐震等級を「3」にアップするようなリフォームを含有する場合、床合板、野地板合板、壁面合板等を張り替えないと耐震等級を上げることはできないので、当然ながら大規模の模様替えの確認申請が必要になる場合が想定される。

もうひとつ忘れてはならないのが、旧4号建築物は、検査済証がない手続上違反建築物や実態上の違反建築物が街場にゴロゴロしているということだ。

当然ながら大規模の模様替え確認申請の前段階として、検査済証が無い場合は、建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)等が必要となる。

建築ストックにおける建築基準法の取扱い

 先月、「床および階段の改修に関する建築基準法上の取り扱いについて」の技術的助言が国交省(国住指第208号 令和6年8月28日)から通知された。
 これは建築基準法第6条第1項より、同第一号から第三号までに掲げる建築物の大規模の修繕※1や大規模の模様替えをしようとする場合には、確認申請が必要になるが「床および階段の改修に関する建築基準法上の取り扱いについて」の技術的助言がまとめられたもの。

【床の改修】
次の行為は、大規模の修繕および大規模の模様替えには該当しないものと取り扱うことも可能です。

床の仕上げ材のみの改修等を行う行為
既存の仕上げ材の上に新しい仕上げ材をかぶせる改修

【階段の改修】
次の行為は、大規模の修繕および大規模の模様替えには該当しないものと取り扱うことも可能です。

各階における個々の階段の改修にあたり、過半に至らない段数等の改修を行う行為
既存の階段の上に新しい仕上材をかぶせる改修を行う行為

以上の内容程度でわざわざ技術的助言を通知しなければならないほど、審査の現場は混乱しているというのだろうか。

実際、建築ストックの設計・監理に携わっていると、もっと重要かつ取扱いが分かれている事があるだろうと言いたくなる。

例えば

「装飾か増築か」

 既存の壁面にルーバーをつける程度なら装飾で、植栽棚(点検床あり)のようなものは装飾と言ってよいのか。床面積が発生しないなら装飾か。装飾物が既存躯体にどの程度応力を負担させるなら増築と取り扱わなくて良いのか。いちいち審査機関に確認するのが面倒だ。そもそも増築の定義が建築基準法では明文化されていない。今日の状況に合せて定義する必要があると思う。

「庇をつければ増築?」

新しく開口部の上に庇をつければ増築だという。建築面積が生じなく幅1.8m程度なら増築ではないという。建築面積はともかく幅1.8mの根拠は如何に。

「RCかぶり厚の補正」

内装を解体してみたらRC梁のジャンカが多い。クラックが多い、鉄筋のかぶり厚が少ない場合等がある。この時の補正・補修はポリマーモルタル等を使うんだけど、鉄筋かぶり厚を確保する為に厚塗りするのは、建築基準法的にはどうなのと思う。モルタルは鉄筋コンクリートとは違うし。一体となったものがRCと言えるのか?

その他にもいろいろある。「エレベーターピット下の居室利用」「エレベーターのオーバーヘッド確保の為にエレベーターシャフト部分だけ高さを増す事」

事件は現場で起きているんだよ

現場の中の美

前述のコア抜き立会中、一挙手一投足、そばにいて見ているわけではないので、現場の中をプラプラ。

この壁は、ブロックなんだけどボードを貼るときのGLボンドの跡が、壁一面に展開されていてきれいだった。

30年前の墨だしの文字が、達筆に思えた。30年後内装が解体されて、こうして他人に見られることなど意識していないだろうけど。

現場は楽しい。

たかがコア抜き、されどコア抜き

今日は、都内某ホテルの地階飲食店テナントの入れ替えに伴う設備用配管の為のコンクリートのコア抜きに終日立会。

たかがコア抜き数本の為に、何故立ち会わなければならないのか。

天の声「RC壁に穴開けて構造的に大丈夫なのか、エビデンスは?」

天の声「ちゃんと検討書と施工写真とか残しておきなさい」

天の声「鉄筋を切った時の補強方法はどうするのか」

と言った。声のもとで、私に相談が来たのは、かれこれ2か月前

担当「設備用配管のスリーブを抜きたいので構造的見解とコア抜き、施工記録の写真、補強方法の検討書とか、まとめて頼めない?」

私「出来るし手配も出来るけど、うちは工事会社・現場監督じゃないんで、鉄筋探査、コア抜き、足場、天井の解体とか必要なので、それらに全部立ち会うのは時間的に無理かも」

担当「じゃ天井解体は、テナント内装工事会社に頼み、足場も別に手配するから」

私「了解」

ということで、構造的検討とか補強方法の検討も済み、本日無事 新規コア抜き完了。

たかがコア抜きだけど、区画隣のテナントは営業中なので午前中9時半から11時半。午後15時から17時までの変則的な工事時間。

今回新たにダイヤコアドリル用真空パッドという道具を知った。これはコアドリルを所定の位置にセツトするときドリルで穿孔する必要があるのだけど、このドリルで穿孔する時の振動が結構響く。そこで真空パッドを使用して吸着して固定するという道具。

真空パッドの吸着面。ゴムの中をコンプレッサーで真空にする。

もうひとつ、新たに知った道具は、HILTI PX-10というトランスポインター。

これは壁の反対側からしかコア抜きがしずらいときに、壁反対側から位置を発信し、反対側で受信して位置を決めるときに使う。今回別の壁のコア抜きに利用した。

常に道具は進化する。

ということで、工事現場はエアコンが無いので、とても暑かったが夕方5時にコア抜き、片付け完了。写真も撮影したし、明日から報告書をまとめなきゃ。

そうそう。築30年のRC造なので、頼まれてもいないのに圧縮強度と中性化試験用に、もう1本コアを抜いた。まあ資料にはなるし、後学の為に。

3Dスキャンによる既存建物の図面復元-2

9月上旬に3Dスキャン計測をして点群データを取得したプロジェクトの復元図面があがってきた。その一部を紹介しよう。

3次元計測機器は、FARO Focus Premiumである。

【3Dスキャンの元画像】

【3D処理した後の、当該部分の画像】

【3Dから2Dにした図面】

上記の図面は、アナログ調査による加筆等を加えていない状態の図面。

実測のための高所作業、足場は不要となった。遠隔地への調査員派遣人数が軽減でき、交通費+人件費が低減できた。計測から既存図面復元迄約3週間だった。

建築ストックの再生と活用において、既存図面の復元は避けられない業務だが、もっとも多くの調査員が必要で、かつ汗を一杯かく分野だったが、光が見えてきた。

3Dスキャンは、現状でも充分実務に耐えられることが検証できた。

「てら小屋セミナー2024・建築ストック長寿命化の進め方」を開催しました

 2024年9月20日、弊社主催の「てら小屋セミナー2024・建築ストック長寿命化の進め方」を(一財)日本建築センター、既存建築物技術審査部長・元木周二氏をお招きして開催しました。

 弊社クライアント、業務上関わりのある方々にお声かけし会場の都合で参加人数を限定しての開催となりましたが、27名の方に参加していただきました。

 レジュメと資料をもとにパワーポイントで説明をいただき、建築ストックの長寿命化というのは現代の経済的社会的要請に沿うものだと再認識しました。

セミナーの後、同じ会場で懇親会を開催しました。普段あまり触れあうことがない人達同士で話が弾み、あっという間に時間が過ぎました。

3Dスキャンによる既存建物の図面復元

 既存建築物の図面復元を目的に3Dスキャンによる撮影調査を行った。既存建物本体と あとから増築した部分が多くあり、尚且つ アナログで調査するにしても足場が必要だし、高所作業となるために3Dスキャンを採用した。

 3Dスキャンによる点群データから3Dを復元し、そこから2Dの図面(平面図・立面図・断面図)を復元する。それをもとに構造図も作成する予定。

 近年3Dスキャンは、著しく普及し始めたと感じる。だれでもかんたんに3Dモデルを作成でき、共有できる安価な機種が出てきた。
 ただ既存図面の復元に採用できるレベルの高精度の場合は、どうしても測量で使用するような高性能のスキャナー、専属の撮影者、ハイスペックなPCが必要である。今回は測量並みの点群データ密度を求めた。

 狭い室内の改修の現場とか、人がレーザーを使用し測定するような安価な機種も出始めたが、こうした使用用途によっては素早く撮影でき、AIが自動的に3Dモデルを作成してくれるというようなこともできる。ようは点群をどのような利用用途で使用したいかとということにつきる。

ドローン調査

 既存建築物の劣化状況等を把握する為に、ドローンによる動画撮影調査をした。

 使用したドローン(無人航空機)は、DJI Mavic 3 pro

 調査場所が名古屋飛行場に近かったので、県営名古屋空港事務所、航空自衛隊 小牧基地、所轄警察署について、それぞれ、ドローンの飛行に関する通報と届出をした。国土交通省については、DIPSでの通報と許可申請済。

 建物本体と、あとから増築した部分の取り合いが多くあり、地上からでは確認できない事。確認するにしても高所作業になる事から、今回はドローンによる動画撮影を選択し、発注者の了解を得られた。

 

 撮影されたMP4の動画が1ファイル約3分で平均3.5GB。合計23ファイル撮影され約70分弱。容量は73GB。

 全て見直したら 屋根の劣化状態や屋根の取り合い等地上からでは解らなかった事も判り、ドローン撮影は有用だった。

借地借家法28条・立ち退きの正当事由

立ち退きの正当事由とは、賃貸人が賃借人に対して立ち退きを求めるだけの合理的な理由のことを指す。入居者に立ち退きを求める際には正当事由が必要である。

立ち退きの正当事由とは、賃貸人(家主)が賃借人(入居者)に対して、賃貸借契約の解除や更新拒絶を行うために必要な合理的な理由のことを指す。

つまり、賃貸人の一方的な都合だけでは賃借人を立ち退かせることはできず、社会通念上、立ち退きを求めるだけの十分な理由が必要とされているのです。この正当事由について定めているのが、借地借家法28条です。同法では、賃貸人が賃貸借契約の解除や更新拒絶を行う際には、正当事由の存在が必要であると規定されています。つまり、正当事由がない限り、賃貸人は賃借人に対して一方的に立ち退きを求めることはできないということです。

借地借家法28条では、正当事由の判断にあたって考慮すべき5つの要素が定められている。

①:賃貸人と賃借人の建物使用を必要とする事情
②:建物の賃貸借に関する従前の経過
③:建物の利用状況
④:建物の現況
⑤:立退料の申し出

この立ち退きの為の正当事由を明らかにするために「法遵法性調査」が判断材料のひとつとして利用されている事は、意外と知られていない。

ここでいう「法遵法性調査」は「建築基準法遵法性調査」とは、その法の範囲や内容が少し異なり、建築基準法と関係規定について「適合・既存不適格・不適合」と逐条別に分類するような一般的なものではない。

借地借家法28条では、正当事由の判断にあたって考慮すべき5つの要素のうち「③建物の利用状況」「④建物の現況」については、より専門的なコミットメントが求められる。

建物の利用状況は、「賃借人が建物をどのように使用しているか」「その使用方法は賃貸借契約で定められた用途に合致しているか」「建物の使用頻度はどの程度か」といった点が判断材料となる。

建物の現況は、建物の老朽化の程度や、大規模修繕等の必要性、また現在の建物が立地地域の標準的な使用形態に適合しているかどうかなどが考慮される。

建物の老朽化が進行し、安全性に問題が生じている場合、建て替えのための立ち退きが正当化される可能性がある。しかし他社の報告書見ると、単に築年数が経過しているというだけで、取り壊し事由と記している場合等もあるが、これでは不充分である。建物の倒壊や設備機器の故障など、具体的な危険性が認められることが必要となる。また、建て替え計画の詳細や実現可能性なども考慮されるとされている。

弊社では、借地借家法28条・立ち退きの正当事由を目的とした「法遵法性調査」を受任している。

賃貸人(家主)・代理人弁護士からということもあるし、賃借人(入居者)・代理人弁護士から依頼されることもある。

賃貸人(家主)からは、賃借人(入居者)を退去させて既存建物を解体し更地にして転売する場合が多い。賃借人(入居者)からは立退料の交渉に利用されることが多いようだ。

「要綱飛ばし」

不動産業界の人が昔使っていた脱法行為の手法の事

現在は、多くの特定行政庁で条令化された「ワンルームマンション条令」。条例化する以前は「要綱」だった時期がある。その要綱について特別区と誓約書を締結し、建築確認申請もその要綱に沿って作成し確認済証の交付を受けながら、実際に作る建物は戸数とか、駐車台数、駐輪台数も異なる建物を建設し、完了させる。

当然ながら工事完了検査済証はない。検査済証がなくても登記できたし、銀行融資も何の問題もなく実行された時代。

私が調べた建物は、SRC14階建ての都内の賃貸マンションで、当時の基準だと計6回の中間検査が必要にもかかわらず、1度の中間検査も受検していなかった。中間検査の受検の有無は、特定行政庁に出向き知らべてもらうと判る。施工は、全国的には名の通っているゼネコン。

屋外階段から道路への避難経路(令128条)がない。建築確認申請図書で避難経路となっている部分は、しっかりテナントの店舗となっていた。火災が起きたらどうするんだろう。

まあ、こんな既存建築物は、今でも都内にゴロゴロしている。

こういう脱法行為を推奨する不動産業者と設計者がグルになっていたのが建設業界。

今頃になってコンプライアンス・コンプライアンスと言われたって、違法部分を見つけるのも直すのも費用とエネルギーがかかる話。構造安全上、避難安全上問題が多い建物は、早く解体した方が世の中の為。

建築基準法が出来てから70数年のうち60年ぐらいは「ザル」だった法律。後始末は、そりゃ大変さ。

「既存建築物の法適合調査ガイドー円滑な改修のためのAtoZ」(一財)日本建築センター

2024年5月17日に初版が出版された「既存建築物の法適合調査ガイドー円滑な改修のためのAtoZ」が一般財団法人・日本建築センターが届いたので早速一読。

日本建築センターだけあって流石に全体的であり項目も過不足なく網羅されている。

図書の全体構成が、建築基準法の概要・既存建築物に関する法令の整理・建築基準法の変遷・既存建築物に関する調査方法・増築等又用途の変更の改修計画と展開される。

既存建築物の法的調査に関する文献は随分と充実して来た。それだけ既存建築物の再生と活用業務が増加してきているのだろう。

「既存建築物の再生と活用分野」のひとつの課題は、既存建築物の改修に法(建築基準法だけでない)の適用関係を理解し、適法な改修をする為の実務に精通している設計者が少ないことだ。

人間の医療で言えば「診察・検査・診断」=既存建築物の調査・検査・診断と「治療」(手術等)=改修方法・補修方法は一体不可分なのだが、それらに精通した設計者・技術者は多くない。

一級建築士事務所なら、これらのことに精通しているだろうと思われるが、ところがどっこいで、一級建築士といえども昨今では、医療で例えるとメスも使えない、傷の縫合もしたことがない出来ない。つまり実務が出来ない設計者も多い。図面はドラフトマン。設備や構造は別の人。現場に行った事もないから、当然配筋検査もしたくない出来ない。そうした分業化や極端なアウトソーシングの弊害も大きい。

設計者は、医療の分野で言えば「臨床医」であり、「森を見る」ドクター・ゼネラルでなければならないのだ。

私が考える、もうひとつの課題は、建築病理学が確立していない日本では、既存建築物の補修方法が、建築基準法の構造規定に適合しているとは一概に言えない。判断に苦慮するということだ。これについては現在悪戦苦闘中でもあり、別の機会に記したい。

とにかく、この本「既存建築物の法適合調査ガイドー円滑な改修のためのAtoZ」は、「既存建築物の再生と活用」を担いたい者にとって必読本である。

是非、購入をお薦めする。