先頃、某指定確認検査機関から立派な体裁のダイレクトメールが郵送されてきた。
千葉県に本拠地がある指定確認検査機関が新宿の超高層ビルに新たに事務所を開設したという営業案内で、御丁寧に「ご来店記念品引換券」が同封されていた。
千葉県から始まって 東京、埼玉、神奈川に支店網を築き上げ、社員は200余名という規模になったとある。
数日後
この指定確認検査機関の女性から電話がかかってきた。
ダイレクトメールを郵送したところには電話営業をしているようだが、住所や電話番号は、設計事務所登録のリストから抽出しているのだろうか。
ダイレクトメールの宛名は、弊社が法人にする前、一年余り個人で設計事務所登録していた時の名称で郵送されてきていた。
関東地方整備局指定で、戸建て中心だと聞いていたので これまであまり関わりのなかった指定確認検査機関だったが、新宿事務所は大規模推進事務所らしくマンションなどの特殊建築物を主体に審査していきたいらしい。
巷の話を聞くと、この会社だけでなく相変わらず指定確認検査機関の申請料の値引き、営業攻勢は活発らしい。
東北の震災復興の山は越えた。次は2020年東京オリンピックに向けた東京の民間投資に営業的活路を見出そうという動きなのかもしれない。今後、首都圏の指定確認検査機関の競争も一層激化していくのだろうか。
ところで、くだんのダイレクトメールには「建築プロジェクトの最上のサービスを目指す」とある。
指定確認検査機関の最大の顧客とは、デベロッパーや建設会社、ハウスメーカー、住宅会社、設計事務所等の「業者」であるから、「業者」へのサービスが顧客サービスとなるのだろう。
業者にとって指定確認検査機関から受けたいサービスとは何だろうか。
「審査期間を短く」「審査・検査料金を安く」「質疑はまとめて一回だけ」「計画段階からの適切なアドバイス」「法的取扱いの柔軟な対応」・・・
建築確認申請・諸々の審査・検査を扱う「建築基準法の番人」であるべき指定確認検査機関が、建物に住む人、利用する人ではなく、往々にして業者しか見ていないのはいかがなものだろうか。
業者へのサービスを重視すればするほど、諸刃の刃で指定確認検査機関の存在が危うくなる要素を秘めているのだが、ここでは あまり書くのは止めておこう。
日本建築行政会議の倫理憲章には下記のようにある。
(社会的責任の認識と信頼の確立)
1 指定確認検査機関等は、建築基準法の目的を十分に認識して、指定確認検査機関等のもつ社会的責任と公共的使命の重みを自覚し、常に厳正に確認検査業務等を行うものとする。
(法令やルールの厳格な遵守) 2 指定確認検査機関等は、建築基準関係規定の法令やルールへの違反が、確認検査制度全体の信頼を失墜させることを認識した上で、これらを遵守し、社会的規範にもとることのないよう、公正に業務を遂行する。
果たして業者の顔しか見ないで、社会的責任と公共的使命を達成できるだろうか。